朝日新聞 2004/4/3
 
女性ホルモンで東京湾の魚がメス化 尿に含まれ海へ
http://www.asahi.com/science/update/0403/001.html

 東京湾の魚にみられる「メス化」現象の主な原因は、下水処理水に含まれる天然女性ホルモンの可能性が高いことが、東京都環境科学研究所の調査でわかった。メス化は人工化学物質と女性ホルモンの複合的作用が原因とみられてきたが、同研究所は下水処理場近くの海域調査や実験を通し、「人工化学物質より、女性の尿などに含まれる女性ホルモンの影響が大きい」としている。


 同研究所によると、下水処理場からは、女性ホルモンを含む処理水が排出されている。人間の女性や動物のメスの尿などに含まれる女性ホルモンは、魚のオスが一定量を摂取すると、体内でメス特有のたんぱく質ビテロジェニンを生成し、精巣内に卵細胞を形成することがある。

 同研究所の和波一夫研究員らは02〜03年、東京湾の京浜運河など、下水処理場に近い海域を中心に魚19種類861匹を捕獲し調査した。

 結果によると、ボラ、コノシロ、サッパ、ヒイラギのオス計23匹のうち5匹の精巣内に、本来メスが持つ卵細胞があった。卵細胞はなくてもビテロジェニンの血中濃度が、汚染の少ない九州などの海のボラ(オス)と比べ、数百〜数千倍に上るボラもいた。

 下水処理水には、メス化の一因とされる人工化学物質の環境ホルモン(内分泌撹乱(かくらん)化学物質)も含まれるが、天然女性ホルモンの方がメス化を促す作用が強いという。同研究所は既に実験で、下水処理水で育てたメダカがメス化する現象を確認している。

 今回調査した下水処理場に近い海域の女性ホルモン濃度は、沖合の海水に比べて最高約4倍にのぼるなど、高かった。今後、ボラが食べる海底の泥なども分析し、さらに裏付けを進める。

 一方、男性の尿などに含まれる男性ホルモンの魚への影響については、世界的に調査研究例がほとんどなく、未解明な部分が多いという。魚のメス化は今のところ、生態系には影響していないとされるが、水産庁生態系保全室は「環境ホルモンと女性ホルモンの作用バランスを探ることは、将来の対策を考える上で重要な研究」と言う。

 和波研究員は「メス化の原因としては環境ホルモンが注目されがちだが、生態系保全のためには天然女性ホルモンを視野に入れた対策が必要だ」と話している。


日本経済新聞 2004/4/25

多極化する国際力学 BRICs 

 ブラジル、ロシア、インド、中国ー。4カ国の頭文字をとった「BRICs(ブリックス)」が世界を変え始めた。巨大な人口、国土、資源を抱える大国が技術力や企業経営力に磨きをかけ、政治・外交の舞台でも影響力が強まるばかりだ。

 

 BRICs4カ国合計の国土面積は地球の陸地の3割。人口は27億人で全世界の4割を占める。
 2002年の国内総生産(GDP)は2兆5千億ドルで米国の4分の1だが、2039年には日米英独仏伊のG6を追い抜くーー。BRICsの名付け親であるゴールドマン・サックスのエコノミスト、ウィルソン氏の試算だ。
 人口増加と国民所得の拡大が続けば、2025年には中国内を走る乗用車が1億2400万台に達するとの予測もある。日本の2倍以上に膨らむ巨大な消費市場の魅力に、先進国の企業は浮足立つ。
 ただ、バラ色の見通しには危うさも漂う。通貨危機がブラジルとロシアを襲い、投資マネーが国外に逃げ出したのはわずか6年前のこと。過熱感が強まる中国経済やインドの貧困層問題への懸念もぬぐえない。
 「均衡がとれた経済政策だけが国の将来を正しい方向に導く」。勢いづくBRICs経済を見つめるルービン元米財務長官のまなざしには、期待と不安が交錯している。


既存秩序揺さぶる

 ブラジルのルラ大統領が5月下旬、2003年1月の就任以来初めて東アジアを訪れる。真っ先に決めた訪問先は上海だった。
 中国は鉄鉱石や大豆などの需要が急増、一昨年に日本を抜いてブラジルの第二の輸出相手国に浮上した。ルラ流の世界戦略には中国は不可欠のパートナーとして組み込まれている。「ジャパン・パッシング」に気をもむ日本政府は必死で立リ寄りを働きかけたが、訪問は実現しそうにない。

広がる共同戦線
 「ブラジルが核施設への国際原子力機関(IAEA)の査察を拒否」ーー。4月4日のワシントン・ポスト紙が一面トップで報じた特ダネには、ルラ政権への米国の警戒感がにじんでいる。情報源は米政府筋との見方がもっぱらだ。
 ブラジルは米州自由貿易地域(FTAA)交渉で、農業自由化をめぐって米国と激突した。さらに戦線を世界貿易機関(WTO)の新多角的通商交渉(新ラウンド)に広げ、ブッシュ政権を激しく揺さぶる。
 昨年9月に決裂したメキシコ・カンクンのWTO閣僚会議。農業補助金を守りたい米国と欧州連合(EU)の筋書きを阻止したのはBRICs(ブリックス)だ。ブラジルが舞台裏で仲介し、それまで疎遠だった中国とインドが電撃的に協調したのが決め手となった。
 この三カ国を核に約20の途上国が団結し、総人口で世界の半分を超す「第三の極」が交渉舞台の中央に躍り出た。連携の輪は今、じわじわと他の経済交渉に広がりつつある。
 インターネットを誰が管理するかという問題では、中国が先頭に立ち、米国優位の現体制に挑んでいる。
 「社会制度や文化の多様性を尊重せよ」。王旭東情報産業相は、米政府と関連が深い非営利法人から国連に管理を移すよう要求。インドとブラジルがすかさず同調し、国連の作業部会の設置が一気に決まった。
 動きを速めるBRICs外交の源流を探ると、昨年6月の主要国首脳会議(エビアン・サミット)にたどりつく。主催者のシラク仏大統領は「多極的な世界」を演出しようと、途上国12カ国の首脳をサミットに招いた。ルラ大統領が胡錦濤中国国家主席と会い、訪中を決めたのはこの席だ。
 1月末、ジュネーブにルラ、シラク、アナン国連事務総長の三氏が集まった。「エビアンに続き、6月に米国で開くシーアイランド・サミツトにも途上国を呼んで対話を深めてほしい」。会談後の共同記者会見で、シラク大統領は米国にこんな要望を突きつけた。

米欧の亀裂突く
 イラク情勢に苦慮するブッシュ米大統領は、いまだに回答を示せないまま。業を煮やしたルラ大統領は、BRICs四カ国に南アフリカを加えた5つの地域大国で「対抗サミット」を旗揚げするという大胆な構想まで描いている。
 「ロシアがWTOに加盟する日は遠くない」。22日、モスクワでプーチン大統領と2時間半にわたり会談したEUのプロディ欧州委員長は、意味ありげな表情を見せた。日米が「10年はかかる」とみていたロシアのWTO加盟交渉だが、急転直下、5月下旬の欧ロ首脳会議までに前進する可能性が出てきた。
 交渉打開のカギとなったのは、大国ロシアが批准しない限り発効しない地球温暖化防止の京都議定書だ。議定書を“人質”にとり、WTO加盟でまずEUに譲歩を追るのがプーチン流の外交戦術。日米欧の分断を図るしたたかな狙いも透けて見える。
 自国の経済成長や米欧の亀裂を肯景に、BRICsは国際社会での影響力を着実に強めている。「多極的な世界」を動かす力学が、複雑になろうとしている。

 


2004/6/30 日本経済新聞

「住友化学の男女差別訴訟、解決金支払いで和解。」

 住友化学工業の社員や元社員の女性3人が「女性であることを理由に昇進や賃金で差別された」として、差額賃金分や慰謝料など総額約1億6千万円の支払いを求めた訴訟は29日、同社が解決金として3人にそれぞれ500万円を支払うことを条件に、大阪高裁(市川頼明裁判長)で和解した。
 訴えていたのは元社員の有森洋子さん(61)と社員の石田絹子さん(59)、矢谷康子さん(54)。1962―68年に高卒で入社したが、同学歴の男性に比べ管理職への昇進や月例賃金などの処遇で差別を受けたとして、95年に提訴した。
 一審判決は昇進や賃金で「著しい格差」があったと認定。しかし「採用時の社員としての区分が違うためで、男女差別ではない。試験などによる昇進や職種転換の機会も与えられている」と違法性を認めなかった。

住友化学工業の話 
 裁判所から和解の勧めがあったのを機に終止符を打つことが望ましいと判断した。


独立行政法人労働政策研究・研修機構 2004/6/30

1500万円支払いで和解 住友化学の男女差別訴訟 安易な姿勢に警鐘と女性側
http://www.jil.go.jp/kokunai/mm/hanrei/20040630b.html

 共同通信によると、女性であることを理由に昇進や賃金で差別を受けたとして、大手化学メーカー「住友化学工業」(大阪市)の女性社員ら3人が、会社に同期、同学歴の男性との差額賃金など総額約1億6,000万円の支払いを求めた訴訟は29日、同社が解決金として計1,500万円を支払うことで大阪高裁(市川頼明裁判長)で和解が成立した。

 提訴から9年近くを経た決着となり、女性側代理人の弁護士は「同社はコース別の管理を行い転換制度もあるが、外形的に制度を設ければいいという安易な姿勢に警鐘を鳴らすものだ。同様の転換制度を導入している企業は多く、和解の影響は大きい」としている。

 住友グループ3社に対する一連の男女差別訴訟で、和解成立は昨年12月の
住友電気工業に続いて2件目。住友金属工業については一審大阪地裁での審理が続いている。
 訴えていたのは大阪府の石田絹子さん(59)と矢谷康子さん(54)、愛媛県の有森洋子さん(61)=昨年4月に定年退職。

 大阪地裁は2001年3月、3人の賃金について「同期、同学歴の男性社員と比べ著しい格差がある」と認めたが「試験などに合格すれば昇進して男性と同じ処遇を得られる機会があった」として請求を棄却していた。
 一審判決によると、3人は高校卒業後、1962〜68年に入社。同社は70年に将来の幹部候補の総合職と、補助的業務中心の一般職の2コース制を導入し、総合職への転換制度もできたが3人は一般職のままで昇級などが遅れた。
 控訴審では住友電気工業訴訟和解後の今年2月以降、裁判所主導で和解協議が進められた。女性側によると、昇格についても協議したが合意せず、7月に石田さんが定年退職し、矢谷さんが専門職に転換することも踏まえ、解決金支払いを条件とする和解となった。


2004/01/06 日本経済新聞

住友電工男女差別訴訟、女性社員の昇格で和解

 住友電気工業の女性社員二人が「昇格や賃金などで差別を受けた」として、同社と国に対して男性社員との差額賃金分や慰謝料など計約1億5千万円の支払いを求めた訴訟は5日までに、同社が二人を昇格させ、
各500万円の解決金を支払うことなどを条件に、大阪高裁(井垣敏生裁判長)で和解した。一審判決で請求を棄却された原告側は「実質的勝訴の内容」としている。
 原告側代理人によると、地位確認を請求していない労働訴訟の和解で昇格が認められたのは初めてという。
 訴えていたのは白藤栄子さん(53)と西村かつみさん(55)で、1960年代に高校を卒業後、事務職(現・一般職)として採用された。
 和解は昨年12月24日に成立。西村さんは今月16日付で課長相当の「主席」に、白藤さんは係長相当の「主査」に昇格する。このほか、国に対し、企業が実質的に性別で雇用を管理していないかに十分な注意を払うことや、男女格差について紛争があった場合、積極的に調停を行うことなども盛り込まれた。
 原告の二人は1994年、「高卒の男性社員と比べて昇格や昇給などで差別された」として、男女雇用機会均等法に基づき労働省大阪婦人少年室(当時)に調停を申請したが、主張を認められなかったため、95年に提訴した。
 一審・大阪地裁は2000年7月、「憲法の趣旨に反する」と住友電工の男女格差を認めながら、「入社した当時の社会状況では違法とは言えない」として、調停の不開始を決定した国への慰謝料も含め、原告側の請求を全面的に棄却した。

 住友電工の話 和解に関するコメントはありません。
 厚生労働省の話 和解内容に沿って調停制度を含め男女雇用機会均等法の適切な施行に取り組んでいく。

 


October 29, 2004 New York Times

Osama bin Laden addressing the American people in a video tape

Following are excerpts from a speech by al Qaeda leader Osama bin Laden addressing the American people in a video tape, parts of which were aired by Al Jazeera television on Saturday, as translated by Reuters.

"O American people, I am speaking to tell you about the ideal way to avoid another Manhattan, about war and its causes and results.

"Security is an important foundation of human life and free people do not squander their security, contrary to Bush's claims that we hate freedom. Let him tell us why we did not attack Sweden for example.

"It is known that those who hate freedom do not possess proud souls like those of the 19, may God rest their souls. We fought you because we are free and because we want freedom for our nation. When you squander our security we squander yours.

"I am surprised by you. Despite entering the fourth year after Sept. 11, Bush is still deceiving you and hiding the truth from you and therefore the reasons are still there to repeat what happened.

"God knows it did not cross our minds to attack the towers but after the situation became unbearable and we witnessed the injustice and tyranny of the American-Israeli alliance against our people in Palestine and Lebanon, I thought about it. And the events that affected me directly were that of 1982 and the events that followed -- when America allowed the Israelis to invade Lebanon, helped by the U.S. Sixth Fleet.

"In those difficult moments many emotions came over me which are hard to describe, but which produced an overwhelming feeling to reject injustice and a strong determination to punish the unjust.

"As I watched the destroyed towers in Lebanon, it occurred to me punish the unjust the same way (and) to destroy towers in America so it could taste some of what we are tasting and to stop killing our children and women.

"We had no difficulty in dealing with Bush and his administration because they resemble the regimes in our countries, half of which are ruled by the military and the other half by the sons of kings ... They have a lot of pride, arrogance, greed and thievery.

"He (Bush) adopted despotism and the crushing of freedoms from Arab rulers and called it the Patriot Act under the guise of combating terrorism.....

"We had agreed with the (the Sept. 11) overall commander Mohammed Atta, may God rest his soul, to carry out all operations in 20 minutes before Bush and his administration take notice.

"It never occurred to us that the commander in chief of the American forces (Bush) would leave 50,000 citizens in the two towers to face those horrors alone at a time when they most needed him because he thought listening to a child discussing her goat and its ramming was more important than the planes and their ramming of the skyscrapers. This had given us three times the time needed to carry out the operations, thanks be to God...

"Your security is not in the hands of (Democratic presidential candidate John) Kerry or Bush or al Qaeda. Your security is in your own hands and each state which does not harm our security will remain safe.

 


日本経済新聞 2004/11/5

最高益でも世界の壁 日本企業vs.海外勢 収益力比較

 上場企業の2004年9月中間期決算は増収増益となり、すでに発表を終えたハイテクなど主力企業の好調ぶりが一段と鮮明になった。ただ収益規模や利益率は米欧トップ企業にかなわない。「最高益ニッポン株式会社」に世界の壁はなお高い。
 9月中間期は連結純利益が最高を更新する企業が相次いでいる。全体の売上高純利益率も3.1%と前年同期(2.4%)から上昇。リストラや資産・負債の見直しを終えた日本企業は特別損失の計上もほぼ一巡し、売り上げ増が純利益増加に直結する好循環に入った。

勝者も薄利多売 松下vs.サムスン
 代表例が中間純利益が561億円と前年同期比2.4倍に拡大した松下電器産業だ。アテネ五輸に向けて13機種もの薄型テレビを一気に投入して需要を取り込み、売上高純利益率は1.3%と前年同期の2倍強と改善した。中村邦夫社長も「上期は満足のいく結果」と振り返る。
 一方、同じ4−9月の6カ月間で、韓国サムスン電子が稼いだ純利益は5兆8220億ウォン(約5820億円、1ウォン=約0.1円)にのぼる。4日までに決算発表を終えた国内の電機49社の純利益の合計(6163億円)で、ようやく肩を並べるほどの規模だ。
 世界シェア3割のパソコンメモリーを収益源とするサムスンと松下を単純比較はできないが、収益率の差は埋めがたい。「デジタル家電の勝者」も、薄利多売の構図から脱しきれない様子がうかがえる。
 デジタル景気とコスト削減で純利益が7.6倍に拡大した日立製作所も純利益率は1%にとどまり、「総合経営」のお手本とされる米ゼネラル・エレクトリツク(10.6%)にほど遠い。
 石油化学製品の市況が上向き、中間期の業績が最高となる見通しの三菱化学(決算発表は11日)の利益率は2%。米ダウ・ケミカルは6%超で、圧倒的なシェアと販売力を背景に強い価格交渉力を持つ。

M&Aで格差開く 花王vs.P&G
 企業の合併・買収(M&A)戦略の違いが格差を招いているのは日用品大手の花王と米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)。P&Gは03年に7千億円強を投じ、ヘアケア大手「ウェラ」を買収し、規模と利益を拡大しているのに対し、健全財務を重視する花王がこれまで手掛けてきた買収案件の規模は小粒。2005年3月期で24年連続増益の「持続力」も、最大手の前ではかすみがちだ。
 世界のトップ企業と互角以上に戦っているのは自動車や新日本製鉄をはじめとする鉄鋼などごく一部。トヨタ自動車や日産は北米で販売を増やす一方で、合理化効果も追求。値引き競争で体力をすり減らす米ビッグスリーを尻目に最高益を続けている。
 欧米有力企業と渡り合うには、得意とする事業領域で圧倒的な技術力の優位性を確保する一方、M&Aなどをテコに規模のメリットを追求し、価格競争力を引き上げることがカギとなる。

日本企業と世界主要企業の収益カ

  時価総額
(億円)
売上高
(億円)
純利益
(億円)
純利益
率(%)

松下
ソニー

インテル
サムスン電子

37,384
34,577

154,153
65,990

43,185
33,144

17,511
29,323

561
764

3,882
5,822

1.3
2.3

22.2
19.9

日立
GE

22,532
384,717

43,299
79,825

411
8,453

1.0
10.6

コマツ
キャタピラー

7,350
30,607

6,839
16,125

260
1,113

3.8
6.9

花王
P&G

14,016
139,445

4,690
28,308

377
3,577

9.1
12.6

三菱化学
ダウ・ケミカル

6,729
45,868

10,400
21,110

210
1,380

2.0
6.5

新日鐵
アルセロール

17,153
13,050

15,092
19,846

810
1,176

5,4
5.9

トヨタ
日産

GM
フォード

148,370
52,214

23,228
26,797

90,256
40,079

99,646
86,705

5,840
2,388

1,887
1,516

6.5
6.0

1.9
1.7

(注)日本企業は9月中間期、海外企業は4−6月期と7−9月期の合計。
   アルセロールのみ1−6月期。
   1ドル=l06円、1ユーロ=136円、1ウォン=0.1円で換算。
   時価総額は日本企業とサムスンは4日、その他は3日時点

 


2004/11/23 朝日新聞

45年ぶりにイナゴ大群襲来 イスラエル

 イスラエル南部の都市エイラート周辺にこのほど、1959年以来となるイナゴの大群が北アフリカから襲来、農作物への被害を懸念する関係者が殺虫剤を散布するなど、封じ込めに躍起になっている。

 襲来したイナゴは、ピンク色の体に透明な羽を持ち、体長は最大10センチ程度。大群はエイラートなどの空を覆うほどで、農作物のほか樹木の葉などを手当たり次第食べ尽くしている。

 ただ、ここ数日は天候が荒れて気温が下がっており、関係者は活動が低下したイナゴに殺虫剤を散布して、産卵による群れの拡大阻止に努めている。一部の群れはエイラート北方約300キロの死海地方に達しているが、農業地帯の北部に到達する可能性は低いとされる。

 
イスラエル南部に大量飛来
したイナゴの大群
  イスラエル南部の路上で
イナゴの大群に襲われる若者

2004年9月8日   読売新聞 

なるほど経済

WTOが不当性認定 米バード法

◆日本、報復関税 体制整えるが… “被害”年118億円/「日米関係に水差す」の声

 アメリカが輸入品のダンピング(不当廉売)を阻止するために制定した反ダンピング関税分配法(バード法)について、世界貿易機関(WTO)は先月末、バード法の不当性を認め、日本や欧州連合(EU)などがアメリカに、総額約1億5800万ドル(約173億円)分の報復関税を発動することを認めた。日本政府は関税を上乗せする報復対象品目を選定し、今秋に発動できる体制を整える方針だ。ただ、政府内にも良好な日米関係への配慮を求める声もあり発動に踏み切るかどうか、慎重に判断する構えだ。

バード法とは

 米政府が不当に安値だと判断した海外からの輸入品に関税を上乗せし、この関税の収入を、ダンピング被害を受けた米企業に分配することを定めた法律。関税法を一部修正する形で、2000年10月に成立した。産業保護に熱心な有力政治家のロバート・バードRobert C. Byrd上院議員(民主党)らが主導したためこの名がついた。

バード法をめぐる動き

2000年10月   バード法が成立
   12月   日本、EUなど11カ国・地域が共同でWTOに提訴
2003年1月   バード法のWTO協定違反が確定
2004年1月   日本、EUなど8カ国・地域が共同で対抗措置の承認を申請
   8月   WTOが日本など8カ国・地域の申請を認める

 バード法の対象品目は現在、鉄鋼製品、ベアリングなど工業品を中心に38品目だ。日本製品に上乗せ関税を課して米企業に分配した金額は2001年度が約1億1000万ドル(約121億円)、2002年度が約1億800万ドル(約118億円)にのぼり、日本は最大の“被害国”となっている。

 一方、バード法の分配金は、国際競争力の弱い米鉄鋼業界の収益に大きく貢献し、なかには利益の半分が分配金という鉄鋼会社もあるといわれる。

 日本やEUは、バード法の成立当初から「上乗せ関税で米国産業を保護したうえに、分配金を企業に渡すのは二重保護だ」と反発。日本、EUなど11か国・地域は2000年12月にWTOの紛争処理機関に提訴し、WTOは2003年1月、日本などの主張を認めて協定違反と認定した。

 日本など8か国・地域は今年1月に米国製品に対する関税を引き上げる対抗措置をWTOに申請し、WTOは先月31日に8か国・地域で総額約1億5800万ドル(約173億円)、日本には約7800万ドル(約85億円)分と最大の対抗措置を認めた。

 

■農産物も対象か

 政府は、今秋をめどに関税・外国為替等審議会(財務相の諮問機関)で、具体的な上乗せ関税の対象品目を選定する。報復関税は、バード法の対象となった鉄鋼製品など38品目以外にも課すことができる。

 バード法同様にWTOが協定違反と認定した鉄鋼セーフガード(緊急輸入制限)では、日本は昨年11月、報復関税の対象品目を決定し、発動の準備を整えた。結局、米政府が昨年12月に鉄鋼セーフガードを撤廃したため報復関税は発動されなかったが、この時の対象からは、政治的影響力の大きいオレンジジュースなど農産物を除外し、米国に一定の配慮を見せた。

 ただ、今回のバード法への対抗措置では、「バード法の撤廃を促すためにも、影響の大きい農産品を選ぶことを考えていい」(経産省幹部)との強硬意見もある。

 

■米議会は反発も

 しかし、報復関税の発動をめぐって、日本政府内も必ずしも1枚岩ではない。産業界を所管する経産省には「WTOのルール通りに進めるべきだ」との強硬論が多いが、外務省には「良好な日米関係に水を差したくない」(幹部)との思いも根強い。米国が早期にバード法を撤廃して、報復を発動せずに済むのが最も円満な解決方法で、中川経済産業相も「実際の発動に至らないようバード法の早期撤廃を強く期待する」としている。

 米国側の事情も複雑だ。ブッシュ政権は以前からバード法の廃止に前向きで、今回の対抗措置を認める決定の際も、米通商代表部(USTR)は「米国はWTOの義務に従う」と廃止に前向きな声明を発表した。

 しかし、バード法廃止の権限を持つ米議会には依然として、国内産業の保護を求める声が強い。

 さらに、11月の大統領選を控え、民主党の大統領候補、ケリー上院議員はバード法の「クロ決定」について、「ブッシュ政権が貿易交渉の場で米企業や労働者の権利を守るのに失敗した」と述べるなど、攻撃材料にする構えも見せている。バード法の扱いは日米両国の国内事情も絡み、難しい判断が迫られている。