日本経済新聞 2008/7/17

製造業の税負担率最低 国内より低い税率 海外利益、還流せず
 「税の空洞化」進む

 日本の製造業が国内外で連結利益に対してどれだけ税金を払ったかを示す企業の税負担率が、2008年3月期に38.9%と前の期に比べて0.3ポイント低下し、過去最低になったことが分かった。経営のグローバル化が進み、税率の低い海外で利益を増やしていることが背景にある。法人税率が高い日本に海外利益が還源しにくい構図で、「税の空洞化」が進んでいる。高い税率は海外からの投資を呼ぴ込みにくい一因にもなっており、今後の税制改正論議の焦点になりそうだ。

 日本経済新聞社が1595社を対象に、連結税引き前利益に対する税金の負担額の割合を集計した。日本に比べて税率が低い海外で利益が増えると、企業全体の税負担率は法人税や法人事業税などを合わせた日本の実効税率(約40.7%)よりも低くなる。
 松下電器産業の前期の税負担率は26.3%。40.7%を大きく下回っているだけでなく、前の期よりさらに17ポイント強低下した。有価証券報告書によると、税率が低いアジアなど海外での利益増が6.9ポイントも押し下げた。33.2%と7ポイント近く低下した旭化成も、中国や韓国での売り上げが増えたのが寄与した。
 税負損率が低下している背景には、海外の低い税率に着目した税務戦略の積極展開もある。HOYAは早くから海外利益を標準的な税率が25%強のオランダに集めて運用する体制を築いており、負担率が15%台にとどまる。日本電産や日立電線のように工場建設などで税優遇措置があるタイやべトナムに進出する事例も相次いでいる。
 税負担率が下がると、より多くの純利益が手元に残り自己費本利益率(ROE)などの上昇につながる。企業価値を高めるうえで税務の重みは増しており、グローバル企業ほど税の意識が高い。
 このため企業が利益を日本に還流させずに海外にため込む傾向も強まっている。税率20%の国の子会社が利益を上げた場合、日本の親会社が配当などの形で吸い上げると日本でも追加で課税されて計40.7%の税負担が生じるが、現地に置いたままなら税率は20%で済むからだ。
 ユニ・チャームは前期に97億円の海外営業利益を上げたが、配当で日本に戻したのは3億円だけで、残りはアジアなどへの再投資に回す。経済産業省によると日本企業の海外子会社が海外にためている利益は06年度に17兆円(前年度比37%増)に上る。その分が日本で課税されない所得となっている。
 米国の主要企業も税負担率が低い。ダウエ業株30種平均を構成する30社のうち16社が30%以下だ。今後も日本企業の海外進出は加速するとみられ、法人税率の引き下げなど抜本的な改革に踏み込まないと、税の空洞化が一段と進む可能性がある。

主な製造業の税負担率
 2008年3月期(%) カッコ内は前期比(ポイント)

HOYA 15.3(▲6.7)
トヨタ紡織 20.9(▲8.7)
日本電産 24.7(▲1.9)
松下電器産業 26.3(▲17.4)
デンソー 27.5(▲3.8)
住友金属鉱山 28.5(▲5.2)
アドバンテスト 29.3(▲12.5)
コニカミノルタホールディングス 30.3(▲0.3)
旭化成 33.2(▲6.7)
日立建機 33.4(▲5.9)
住友化学 34.4(▲2.0)
日本たばこ産業 34.5(▲1.5)
三菱電機 35.0(▲8.4)
マツダ 35.3(▲1.0)
リコー 36.3(▲0.6)
新日本製鉄 36.9(▲3.1)
ファナック 37.3(▲0.9)
トヨタ自動車 37.4(▲0.3)
三菱重工業 37.8(▲5.5)
武田薬品工業 37.9(▲7.8)