2008年8月9日 読売新聞
9日午前6時ごろ、福島県会津若松市河東町東長原の「昭和電工」東長原事業所の工場で、作業に使用する有毒ガス「ホスゲン」が流出し、従業員12人と近所に住む女性(67)の計13人が気分不良を訴えた。
会津若松署によると、近所の女性を含めた10人が市内の病院に搬送され、残る3人が自力で病院に向かった。いずれも軽症という。
会津若松地方消防本部は、従業員が配管のバルブ操作を誤ったとみて調べている。
同社によると、同日午前7時ごろ、ガス濃度測定警報器のアラームが鳴り、流出が判明した。同署などによると、事業所の敷地外では有毒ガスは検出されていないが、市と同署などは周辺の約50世帯に自主避難を要請した。
搬送された女性は、従業員と接触があったらしい。
同社は、農薬や医薬品の原料としてホスゲンを使っている。ホスゲンは毒性が強く、呼吸困難などを引き起こす恐れがある。
2008年8月9日 昭和電工株式会社
東長原事業所漏洩事故についてのお詫び
本日午前6時15分頃、弊社東長原事業所内で塩化カルボニルが漏洩し、当社従業員・敷地内の企業の方計12名、および事業所正門前の商店の方1名、あわせて13名が不調を訴えて病院に運ばれました。
今回の漏洩により被災されました方、およびその関係者の方に対し心よりお詫びを申しあげます。
また、近隣の皆様を含め、ご心配をおかけし申し訳ございません。
既に12名の方は検査・治療後、いったん帰宅しております。敷地内企業の1名の方は現在病院にて治療中です。
原因はバルブの誤操作と想定しております。現在、警察・消防の調査が進んでおります。当社といたしましても原因究明を進めるとともに、安全管理を徹底し再発防止に努めてまいります。
東長原事業所 会津若松市河東町東長原字長谷地111
従業員数 107名 (2005年6月30日現在)
敷地面積 462,000m2
事業部 化学品事業部 特殊化学品部
化学品事業部 開発部
2008年8月10日 読売新聞
バルブ誤操作原因か
有毒ガス流出住民ら不安の声
有毒ガスのホスゲンが漏れる事故が起きた昭和電工東長原事業所 会津若松市河東町の「昭和電工」東長原事業所で9日早朝に起きた有毒ガス「ホスゲン」の流出事故。会津若松署は11日にも実況見分し原因を詳しく調べる方針だが、従業員の誤操作が原因とみられている。毒性の強いガスの流出だけに、付近住民からは安全な作業の徹底を求める声が相次いだ。
事業所は、9日午後4時すぎから記者会見を開き、能島弘充所長が深々と頭を下げて謝罪。さらに事故の原因については「バルブの誤操作とみている。安全管理を徹底し、再発防止に努めたい」と話した。
説明によると、事故当時、入社5年目の男性従業員が1人でホスゲンを無害化する作業にあたっていた。新商品の塗料用特殊添加剤を製造する過程で、アクリル酸とホスゲンの化学反応後、残ったホスゲンを棟外に隣接した除害塔に送り、カセイソーダの液体を使って無害化する作業にとりかかったが、閉めるバルブの手順を誤ったという。この従業員はホスゲンを無害化する作業は初めてだったが、能島所長は「研修や引き継ぎ作業でバルブの取り扱い方法は指導しており、現場にも作業工程が記されていた。作業員がなぜ間違えたのかわからない」としている。午前6時10分ごろにアラームが鳴った後、別の従業員がバルブを閉め直したという。
事業所の西側には住宅が密集しているところもあり、付近住民からは不安の声が上がった。事業所の目の前に住む無職土橋尋史(ひろぶみ)さん(66)は午前7時30分すぎ、工場内に設置されたスピーカーで「ガス漏れがあったので外に出ないで窓を閉めて下さい」というアナウンスを聞いた。「最初はたいしたことはないだろうと思い、外出したり窓を開けたりしたが、13人も病院に行ったと聞いて恐ろしくなった」と振り返った。
開店準備中に従業員と接触したため、妻が病院に搬送された酒屋経営の伊賀進さん(72)は「念のためガスが入らないように店のシャッターを閉めた。慣れから来たミスだと思うのでもっと基本に立ち返って仕事をしてほしい」と憤った。