鉄鋼製品に対する緊急輸入制限(セーフガード)
2003/12/26 中国 鉄鋼輸入制限を解除
2003/12/4 米大統領、鉄鋼セーフガードを撤廃
2003/11/10 WTO上級委、最終結論 米鉄鋼輸入制限は協定違反
2002/11/20 中国 鉄鋼製品5 品目に対する緊急輸入制限(セーフガード)措置を正式発動
2002/5/21 中国、暫定的セーフガード措置を発表(6ヶ月間)
2002/3/5 ブッシュ大統領がセーフガード措置の決定を発表
中国が鉄鋼輸入制限を解除 国内生産の急増で
中国商務省は26日、昨年11月に正式発動していた一部鉄鋼製品に対する緊急輸入制限(セーフガード)を同日から全面解除すると発表した。米国が今月4日に鉄鋼セーフガードを解除、国内でも鉄鋼生産量が大幅に伸びる中、セーフガード継続の必要性がなくなったと判断したとみられる。
中国の鉄鋼生産は、急速な経済成長による鋼材需要に支えられ急伸。今年の11月までの生産量は前年同期比21・5%増の2億19万トンに上り、「世界初の年2億トン生産国」(国家統計局)となっていた。
日本政府も北京の大使館などを通じ解除を申し入れていた。
昨年5月に暫定セーフガードを発動した際、中国は米国のセーフガード実施に伴う外国鉄鋼製品の中国市場への還流を防ぐことを理由に挙げていた。商務省は「現在の鉄鋼貿易情勢」を考慮して解除に踏み切ったとしている。
2003-12-29 Ministry of Commerce Notice No.76
The former Ministry of Foreign Trade and Economic Cooperation (MOFTEC) took final safeguard measures on five types of imported steel products as of November 20, 2002.
MOFTEC issued its Notice No. 48 on November 19, 2002, deciding to adopt final safeguard measures on imported cold-rolled thin plate, hot-rolled thin plate (strip), painted plate, non- grain-orientated silicon steel and cold-rolled thin stainless sheet (strip).
In view of the development of steel trade, approved by Customs Tariff Committee of the State Council, Ministry of Commerce decided to cancel the safeguard measures and stop levying additional tax on above steel products as of December 26, 2003.
米大統領、鉄鋼セーフガードを撤廃=ホワイトハウス
ブッシュ米大統領は、予定よりも16カ月早く、鉄鋼セーフガード(緊急輸入制限)を撤廃することを決定した。欧州やアジアからの制裁措置を回避するための決定だが、来年の大統領選挙に向けて、政治的な影響が出るリスクもある。
ホワイトハウスによれば、ブッシュ大統領は、予想外の輸入急増を避けるため、鉄鋼輸入の許可・監視(モニタリング)制度は継続する。
同大統領は、この制度の継続により、米国の鉄鋼産業に対して不公正に損害を及ぼすような輸入の急増がみられた場合には、米政府は速やかに対応できる、と述べた。
声明の中でブッシュ大統領は、鉄鋼セーフガードはその目的を達成し、経済環境の変化の結果、撤廃する時が来た、と説明した。
2003/11/10 共同通信
米鉄鋼輸入制限は協定違反 WTO上級委、最終結論
世界貿易機関(WTO)の紛争処理上級委員会は10日、米国の鉄鋼緊急輸入制限(セーフガード)はWTO協定に違反すると認定した最終報告書を関係国に配布した。訴えていた日本や韓国、欧州連合(EU)など8カ国・地域の主張を認める内容。
米国と日欧などが激突する大型通商紛争となった米鉄鋼セーフガード問題は、WTOを舞台とした紛争処理プロセスが終結。今後米国の出方次第では報復合戦に発展する恐れも出てきた。
米国が昨年3月に発動した鉄鋼セーフガードは3年間の時限措置で、継続、撤廃は大統領が最終決定する。日本、EUなどは、撤廃されなければ米国からの輸入品に報復関税を課すなど対抗措置をとると警告している。
ブッシュ米大統領には来年の大統領選を控え産業界の支持を固めたいとの思惑もあり、国際的な自由貿易ルールの順守と国内産業保護をどう両立させるかの難題に直面している。
《中国》 鉄鋼製品5 品目に対する緊急輸入制限(セーフガード)措置を正式発動
中国政府は、11月20日、鉄鋼製品5品目に対する緊急輸入制限(セーフガード)措置を正式発動した。昨年12
月の世界貿易機関(WTO)加盟以来、中国による同措置の正式発動は初めて。対象は熱延鋼板、冷延鋼板、カラー鋼板、電磁鋼板、ステンレス冷延鋼板で、上乗せ関税率は最高23.2%。
期間は今年5月からの暫定発動を含め3年で、2005年5月までとなる。
米国の鉄鋼セーフガード措置
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/t_safeguard/us_sg/sochi.html
1.経緯・今後のスケジュール
2002年 | ||
3月5日 | ブッシュ大統領がセーフガード措置の決定を発表 | |
20日 | セーフガード措置発動(3年間)。直ちに日本はWTO紛争解決手続に基づく二国間協議(GATT22条協議)要請 | |
4月11日 -12日 |
米国とWTO紛争解決手続に基づく協議を実施 (EU、韓国、中国、ノルウェー、スイスと共同開催) |
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5月17日 | セーフガード協定に基づき譲許停止措置(対抗措置)をWTO物品理事会に通報 | |
21日 | WTO紛争解決手続に基づきパネル設置を要請 | |
6月14日 | WTOパネル設置 | |
18日 | 米国に対する関税譲許の適用停止等を内容とする政令を施行。(ただし、譲許バランス回復のための関税引上げは行わず、当面現行の関税率を維持) | |
8月31日 | 平沼経済産業大臣が談話を発表。米国政府の建設的な対応を勘案し、6月18日に適用を停止した関税譲許については、WTO紛争解決手続の結論が出るまでの間、実際の関税引上げを行わないことを表明。 | |
10月以降 | WTO紛争解決手続においてパネルでの審理開始。 | |
2003年春頃 | にはパネル報告予定。その後上級委への上訴がある場合、最終決定は2003年秋以降の見込み。 (日本のパネルへの第1回意見書の提出) |
*セーフガード措置とは
ある産品の輸入が増加し、それにより同種の又は直接的に競合する産品を生産する国内産業に重大な損害が生ずるような場合、一時的にガットの義務を停止(関税引き上げや輸入数量制限)し、当該国内産業を保護するためにとられる輸入制限措置。
2.米国の輸入制限(セーフガード)措置の概要
以下の産品類計14品目に対して、3年間に亘る措置(2年目以降は関税率引下げ等措置を緩和)を実施。
(1) スラブ(鋼板に加工される前の半製品)
関税割当:540万トンの輸入割当(初年度)を超えた場合には30%の関税を賦課。
(2)
鋼板類(自動車、産業機器、食用缶等で幅広く使用)
30%の関税引上げ。
(3)
条鋼類(主に建設用の鉄筋等に活用される棒鋼等)
30%の関税引上げ(一部13%の関税引上げ)。
(4)
鋼管類(一般配管や機械構造用配管等で使用)
15%の関税引上げ。
(5)
ステンレス類(さびに強く、棒鋼、ワイヤー等多様な用途で使用)
15%の関税引上げ(一部8%の関税引上げ)。
*適用除外
(1) 適用除外国:FTA(自由貿易協定)締結国(カナダ、メキシコ、イスラエル、及びジョルダン)及び製品によっては米国向け輸出が僅少な開発途上国を措置から除外。
(2) 適用除外品目:措置決定発表から120日以内に適用除外品目を決定。
3.日本の対応
(1)
日本は、米国に対し措置の即時撤回を求め、本件をWTO紛争解決手続に付託し、加えて、補償の提供(注1)、除外品目の対象拡大(注2)を含めた適切な対応を求めてきた。
(2) しかしながら、5月17日の譲許停止措置(対抗措置)(注3)の通報期限までに決着を見なかったところ、権利の保全のため譲許停止措置(対抗措置)の通報を行い、また、6月18日に米国に対する関税譲許の適用(関税率に関する日本のWTO協定上の約束)停止等を内容とする政令を施行した。ただし、話し合いでの解決に全力を挙げるとの観点から、現行の関税率を維持した上で引き続き日米間交渉を続けてきた。
(3) その結果、8月31日、除外の認定等に係る米国の建設的な対応を勘案し、6月18日に適用を停止した関税譲許については、WTO紛争解決手続の結論が出るまでの間、実際の関税引上げを行わないことを決定。(EUは9月中旬に対応を決定する見込み。)
(4) また、WTOパネルは、6月14日に設置(その後、日本を含む8カ国(注:EC、韓国、中国、スイス、ノルウェー、NZ、ブラジル)のパネルは統合され単一化)され、10月以降本格的に審理に入る。(日本のパネルへの第1回意見書の提出)
(注1) 補償
セーフガード発動国は、セーフガード措置によって影響を受けた輸出加盟国との間で実質的に等価値の譲許その他の義務を維持するよう(引き上げた関税等と同等の関税引き下げ等を他品目について行うよう)努力することとされ、そのような補償の適切な方法を合意できるとされている。
(注2) 除外品目
今回のセーフガード措置発動にあたり、米国は、発動国(米国)での生産が困難な品目等については、業界が米国政府にセーフガード措置の適用除外を申請できるとしている。
(注3) 譲許停止措置
補償について合意が得られない場合、輸出加盟国は一定の要件の下で、譲許停止措置(いわゆる対抗措置。関税引き上げ等、実質的に等価値の譲許その他の義務の停止)をとることができる(輸入の絶対量の増加の結果としてとられたものであり、且つ、協定適合的なセーフガード措置に対しては、3年間は対抗措置をとることができない。)。
4.適用除外品目
米国は、日本関連の適用除外品目を8月末までに6回にわたり発表した。その結果、自動車鋼板用高品質鋼材等を含む合計約55万トンが除外されたため、そもそもセーフガード措置の対象外となっているもの等を合わせ、2001年の対米輸出実績(220万トン)の7割程度の水準がセーフガード措置の影響を受けないこととなった。
5.日米の鉄鋼貿易
(1) 日本の総輸出量(2001年)(財務省通関統計)
○ 総輸出 3,050万トン(1兆8,000億円)
○ 対米輸出は220万トン、うち今回措置の対象品目分は140万トン
(除外交渉等により65万トンまで減少)
(2) 日本からの国別輸出比率(2001年)(数量ベース、財務省通関統計)
1)韓国22%、2)中国15%、3)タイ8%、4)台湾8%、5)米国7%、6)マレーシア5%
(3) 米国の国別輸入比率(2001年)(数量ベース、米国輸入統計)
1)EU20%、2)カナダ15%、3)ブラジル10%、4)メキシコ10%、5)韓国7%、6)日本7%
6.米国のセーフガード措置の他国への主な影響
(1) EUは、米国の鉄鋼セーフガード措置による外国鉄鋼製品のEUへの流入の可能性を懸念し、3月28日、セーフガード調査を開始するとともに、同29日、鉄鋼輸入製品に係る暫定的セーフガード措置を発動(6ヶ月間)。9月2日、確定セーフガード措置の発動についてWTOに通報した。(日本は、暫定的セーフガード措置に係り、4月10日、セーフガード協定に基づく協議を実施。確定セーフガード措置に対しては、措置のWTO整合性や日本への影響等を総合的に考慮の上、対応を判断する予定。)
(2) 中国は、5月21日、暫定的セーフガード措置を発表(6ヶ月間)。(日本は、6月24日、セーフガード協定に基づく協議を実施。)
(3) ハンガリーは、6月3日、暫定的セーフガード措置を発表(6ヶ月間)。
ポーランドも、8月14日、暫定的セーフガード措置を発表(200日間)。
チェッコ共和国は、8月28日、セーフガード調査を開始。
(4) カナダは、3月25日、加国際貿易裁判所(CITT)が鉄鋼輸入製品に係るセーフガード調査を開始。7月5日、CITTが調査結果を発表。
(5) チリは、4月12日、セーフガード調査を開始。7月16日、確定セーフガード措置を発動。