グラッドストーン計画   Boyne Smelters Ltd.              

 

(住友化学社史より)

 1978年4月、住友アルミニウム製錬はオーストラリアのコマルコ社(Comalco Ltd.)が提案した同国の豊富な石炭による低廉な火力発電電力を利用するアルミニウム製錬計画への参加を決めた。

 計画では製錬工場の年産能カは20万6800t(10万3400t,2系列)、総建設費は6億1841万豪ドル(約1546億円)を見込み、第1期1系列は1981年12月に操業開始を予定していた。

 工場の建設予定地は同国クインズランド州グラッドストーンのボイン島(Boyne Island)で、コマルコ社の関係会社のアルミナ工場に隣接し、アルミナをベルトコンベアーで搬入できるという立地条件にあった。製錬技術はコマルコ社が住友アルミニウム製錬のプリベーク式製錬法(住友東予アルミニウム製錬タイプ)を選定していた。

 この計画では各参加者が所要のアルミナをコマルコ社を通じて調達し、現地製錬会社に支給し、コストベースで地金への加工を委託する方式がとられた。

 住友アルミニウム製錬としては当時の財務状況から、この計画への参加には極めて消極的であったが、技術を供与することでもあるので参加を決定した。

 コストベース方式により、現地製錬会社には課税対象利益が発生しないため、計画参加各社はオーストラリアに支店または子会社を設置して納税する必要があった。このため住友アルミニウム製錬では、1979年7月、同国ビクトリア州に現地法人 Sumitomo Aluminium Smelting(Australia)Pty.Limited、住友オーストラリア社)を設立した。

 1979年3月、現地製錬会社 Gladstone Aluminium Ltd. が設立され、住友アルミニウム製錬は現地法人から4.5%の出資を行った。他の参加者と出資比率は、豪コマルコ社30%、米カイザー社20%、住友軽金属工業17%、神戸製鋼所、吉田工業(現、YKK)および三菱商事各9.5%であった。この計画における住友アルミニウム製錬の引取枠は年間9000tであった。

 製錬工場の建設は80年8月の着工以来、住友アルミニウム製錬の技術指導のもと順調に進み、82年2月に通電、84年夏にほぼフル操業に入った。この間、83年5月、同社地金の日本向け第1船が入港した。

 地金の引取価格はコストベースであったが、電力源が石炭火力であり、水力のエンザス社品よりは高価であった。

 なお、1982年1月、現地製錬会社は社名を Boyne Smelters Ltd. に変更した。

 現状


2002/6/7 神戸製鋼

ボインアルミ製錬プロジェクト権益譲渡の件          Comalco発表

 当社はオーストラリアのクイーンズランド州グラッドストーンで操業しているボインアルミ製錬プロジェクトに参加し、第1、2系列についてその9.5%の権益を保有しておりますが、6月6日この権益を
Comalco Limited(以下コマルコ社)に総額約78.5百万米ドルで売却することで基本合意に達しました。

1. ボインプロジェクト

ボインプロジェクトはオーストラリアのコマルコ社と日本側5グループで行っているアルミ製錬事業で、1982年に第1、2系列の操業を開始。その後増設を行い1997年より第3系列の操業を始めており、第1、2系列の約27.3万トンと合わせて、合計50.9万トンのアルミ地金を生産しております。当社はこの内第1、2系列のみの9.5%を保有しております。

2. 売却の理由

当社はアルミ地金の安定確保の観点から海外でのアルミ資源プロジェクトに参画してきましたが、コア事業であるアルミ圧延業に経営資源を集中するため、海外資源開発投資の縮小を進めております。
今年の3月に西オーストラリアのワースレーアルミナプロジェクトの投資会社Kobe Alumina Associates (Australia) Pty Ltd.の株式の一部を伊藤忠商事株式会社に譲渡しておりますが、今回の売却はそれに続くものです。

3. 今後の予定

本取引については参加者間契約に基づく他の参加者全員の同意、オーストラリアの政府機関の承認等の手続きが必要です。
これらの手続きが順調に進んだ場合、第三四半期中での譲渡を予定しております。


(御参考)

<Comalco Limited (コマルコ)社の概要>
 *総合資源開発大手 Rio Tinto Limited(リオ ティント)社の100%出資子会社。

@所在地 : オーストラリア ブリスベーン市
A代表者 : Sam Walsh(サム ウォルシュ)
B売上高 : 1,499百万米ドル(2001年12月期)
C従業員数 : 約3,400名
D事業内容 : ボーキサイト、アルミナとアルミ精錬(オーストラリア、ニュージーランド)


<ボインアルミ製錬プロジェクトの概要> 

コマルコ社と日本側5グループで行っているアルミ製錬事業で1982年に、第1、2系列にて稼動。1997年に第3系列を増設。
2001年生産実績は、第1、2系列で27.3万トン、第3系列で23.6万トンの合計50.9万トン。
各出資グループは出資比率見合いのアルミ地金を入手している。

出資比率:

        第1、2系列 27.3万トン       第3系列
23.6万トン
[現状] [譲渡後]
出資会社 比率(%) 比率(%)   比率(%)
コマルコ社   50.0   59.5    59.25
住友軽金属   17.0   17.0     1.00
住友商事    ー    ー     8.00
丸紅    ー    ー     8.00
三菱マテリアル    ー    ー     4.75
三菱商事    9.5    9.5     9.50
YKK    9.5    9.5     9.50
住友化学工業    4.5    4.5      ー
神戸製鋼    9.5    0.0      ー
合  計  100.0  100.0   100.00

      *第3系列出資比率は三井物産資料により追加


2002/6/6 Comalco

Comalco increases stake in Boyne Smelters Limited

Comalco, a wholly-owned subsidiary of Rio Tinto, has signed an agreement with Kobe Steel, Ltd. to purchase Kobes interest in the Boyne Smelters Limited aluminium smelter at Gladstone, Australia.

Kobe has a 9.5 per cent interest in reduction lines 1 and 2 at the Boyne Island smelter (and nil interest in reduction line 3).

The value of the transaction is approximately US$78.5 million. The transaction will increase Comalcos total shareholding in the Boyne Island smelter from 54.19 per cent to 59.39 per cent.

The transaction is subject to certain approvals, including the Foreign Investment Review Board, and the consent of the other Boyne Smelters Participants.


Boyne Island Smelter

http://www.comalco.com.au/05_operations/06_boyneisland.htm

The Boyne Island smelter is located near Gladstone in Queensland.



Boyne Smelters Limited is a joint venture with different equity for lines 1 & 2 and 3.

The smelter began operation in 1982 and, following the commissioning of a $1 billion expansion in 1997, has a production capacity of 490,000 tonnes of aluminium annually. It is the largest smelter in Australia and one of the largest in the western world.

The smelter operates three reduction lines, a metal casting house, an anode production plant and ancillary facilities.

Almost 60% of the aluminium produced is in the form of purity ingot for the Japanese and South East Asian market. T-bar is another purity product produced by the casthouse. The remainder is cast as alloy in the form of extrusion billet for further processing in Australia and for export to Asian extrusion mills.

Power for the smelter is supplied by Gladstone Power Station (GPS) and from the Queensland electricity grid. GPS was purchased from the Queensland Electricity Commission in 1994 by a group of companies, including some of the Boyne Smelters Limited participants, enabling surety of electricity supply.

This 1680 MW capacity station supplies over 800 MW of power to the Boyne Island smelter each year. The balance is available to the Queensland electricity market.