大手合繊メーカー、生分解性素材事業を強化
大手合繊メーカーが生分解性素材事業の強化に乗り出している。02年4月に米カーギル・ダウ社が原料となるポリ乳酸の年産14万トン規模の本格プラントを稼働、原料調達の増大が見込めるためだ。環境対応素材として需要拡大も見込め、ユニチカ、カネボウ合繊、クラレは同素材の用途開拓を進める。03年度からは新たに東レが繊維素材分野で本格参入するなど、市場拡大への期待が膨らんでいる。
ポリ乳酸はトウモロコシなどから作られる生分解性樹脂原料。合繊メーカーではユニチカ、クラレ、カネボウ合繊が米カーギル・ダウ社から同樹脂を調達、繊維や機能性樹脂、フィルムなどに製品化している。東レも03年度から繊維製品で参入。各社が自社ブランド製品を展開する。
日刊工業新聞 2003/2/7
カネボウ合繊、生分解性素材を本格展開−100億円事業に育成
カネボウ合繊は生分解性素材「ラクトロン」事業を数年で100億円規模に育成する。従来は繊維化した衣料、土木・農園芸分野向け加工品などに展開してきたが、生活資材分野での用途拡大を見込み非繊維分野の拡大に力を入れる。とくにゴミ袋、食器などの成型品をターゲットに、自治体向けの需要開拓を進める。03年度から欧米向けの海外展開を始める。
「ラクトロン」は生分解性樹脂素材「ポリ乳酸」を原料とした複合材料。これまで衣料用繊維や土木・園芸用製品に商品化し、02年度は前年比3倍強にあたる16億円となる見込みだ。
最近では環境対策として自治体が生分解性素材をゴミ袋や給食用の食器に採用する動きが出ている。この需要に向けラクトロンを樹脂やシート化した後で加工した食器やビニール袋などの成型品を展開する。欧米を中心に糸や綿の原料輸出も始める。
カネボウ合繊 ラクトロン http://www.kanebotx.com/brand/sabetsu/lactron.html
とうもろこしから生まれたエコロジー繊維 | ||
: | 「ラクトロンは、とうもろこし等のデンプンから得られる乳酸を原料にした、自然循環型の生分解性合成繊維(ポリ乳酸繊維)です。石油原料によらない、植物由来のまったく新しい合成繊維で、使用後に廃棄された場合も、土中あるいは水中の微生物のはたらきにより炭酸ガスと水に分解されるので、地球環境を汚染することがありません。また、生じた炭酸ガスは光合成により再び植物の体内に取り込まれ、デンプンの生産に役立ちます。このように、ラクトロンは自然循環型リサイクルが可能な、地球環境を考えたエコロジー素材なのです。
ラクトロンは、公共施設や産業施設で、生ゴミと同様にコンポスト化されると、二酸化炭素と水に分解されます。また、焼却された場合でも、燃焼ガス中にNOxの発生がないうえ、燃焼熱がポリエチレンやポリプロピレンなどの約1/3程度なので、焼却炉を傷めることがありません。 ラクトロンは、これまで開発された生分解性繊維の中で、最も融点が高く、マルチフィラメント、モノフィラメント、ステープルファイバー、スパンボンドなど各種の繊維形態をとることができ、しかも充分な初期強度をもっているので、産業資材分野や一般衣料分野において広い使用展開が期待されています。 |
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ラクトロンの特長 | ||
●非石油系の新しい合成繊維です。 ●自然循環・非公害型のエコロジー繊維です。 ●合成繊維としての基本物性・加工性を有しています。 ●シルキーな風合いと光沢を持っています。 |
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ラクトロンの安全性 | ||
ラクトロンは人間の体内にも存在する乳酸を原料としており、ポリマーとしても生体適合性が確認されています。ラクトロンに使用されているポリ乳酸樹脂は一般的な安全性が確認されており、ラクトロンの丸編布を用いた皮膚刺激性試験や着用テストにおいても安全性が確認されています。 | ||
ラクトロンの繊維物性 | ||
繊維の強力、伸度は製造条件で制御でき、ナイロン・ポリエステル系の合成繊維とほぼ同等の繊維物性を有しています。 | ||
ラクトロンの生分解性 | ||
各種用途を考慮して、土中埋め込み法、海水中浸漬法および、活性汚泥処理法で処理し、繊維の強度変化と重量変化を測定しました。 | ||
● | 土中埋め込み法では、重量の変化はあまりないが、強度は約2〜3年でほとんどなくなり、事実上分解します。 | |
● | 海水中の浸漬テストでも、土中埋め込み法とほぼ同様の傾向を示します。 | |
● | 活性汚泥中では、豊富に存在するバクテリア、微生物により急速に分解され、数カ月でほとんど強度はなくなります。 | |
● | 標準的なコンポスト法での生分解テスト(OWS法)でも、良好な分解性を示します。 | |
これに比較し、従来の繊維は、 | ||
● | 通常の合成繊維はほとんどの場合、生分解されず元の形状・物性を保持します。 | |
● | 綿、レーヨン等のセルロース系繊維は、一般的にポリ乳酸繊維よりも速い分解速度を示します。 | |
ラクトロンの用途 | ||
ラクトロンは、糸、織物、編物、不織布・スパンボンド等、従来の合成繊維と同じ各種の形態で展開が可能です。カネボウは、ラクトロンをニューファイバー素材として衣料用から非衣料用途まで幅広く展開しています。 | ||
クラレ
ポリ乳酸繊維 プラスターチ
http://www.e-next-kuraray.com/html/environment/plastarch/
全世界における合成樹脂
の生産量は、1億トンにものぼります。
しかし、プラスチックは廃棄しても分解されないため、環境汚染の一因として問題を抱えています。
次の世紀へ、次の世代へ、この美しい地球を守り、伝えていくことは、私たちの責務です。そのために、生分解性をもつプラスチックへの代替を少しでもすすめることが、急務といえるのではないでしょうか。
「プラスターチ」は、とうもろこし澱粉から生まれた乳酸からつくられる非石油系合成繊維です。
限りある資源である天然ガスや石油などの化石資源は一切使用しません。そして、加水分解され、最終的には炭酸ガスと水になります。
大地から生まれ、やがて大地へと帰っていく。「プラスターチ」は、自然循環型の次世代繊維といえます。
ポリエステルのような物性。多彩な表情が魅力です。
ほら、見てください。
最後は、炭酸ガスと水に。