石油化学新聞 2002/5/20
早く統合の相乗効果を サービス含め高品質追求
輸出も特殊化で適正利益を確保 UMG ABS社長 宮本利雄氏
宇部サイコンと三菱レイヨンのABS系樹脂事業を統合した新会社として、UMG・ABSが宇部興産約43%、三菱レイヨン約43%、米GE約14%出資で4月1日に発足、営業開始した。初代の宮本利雄社長は旧・宇部サイコン社長からの就任となる。
「ABS樹脂を取り巻く事業環境が厳しさを増し、単独で生き残るのが一段と難しくなるなか、2年ほど前から事業統合に向けた協議を進めてきました。両社はともに特殊品重視といった方向が似ており、得意分野が宇部サイコンはOA機器、三菱レイヨンは車両というように異なるため、相互に補完し合えると判断、今回の事業統合となったわけです。新体制のもと、相当な相乗効果が引き出せると確信しています」
同社は、6月までに新会社として最初の中期経営計画をまとめる計画。メーンの目標は相乗効果をいかに早く引き出すかということと、それによってグローバルな市場でブランドネームを高めること。
「数値目標としては、3年後に売上高で380億円(現在は両社合算で375億円)、ROS
(売上高経常利益率)で7%くらいを目指します。事業環境は今後も厳しさを増すと思われますが、徹底したコストダウンに加えて、重合だけでなくコンパウンドや技術サービス、リサイクルなど下流部門でも高品質を追求し、差別化を推進していけば十分に達成可能な数値だと考えています」
目標を達成するうえで、とくに注力するのはコンパウンドを含む顧客サービスでのクオリティ追求。同社は、コンパウンドで宇部に年産12万t
、大竹に同3万t強の自社設備を持ち、重合能力(宇部に11万t
、大竹に6万6千t)に対する内製化率が同業他社に比べて高い。この強みを有効に生かし、国内だけでなく世界最大のABS市場である中国など海外でも国内と同様に品質、納期ともに安定した特殊ABSを供給し、同業他社との競争に打ち勝つ考え。
「すでに当社は日系ABSメーカーとして中国で最大のシェアを誇り、株主でもあるGE社の支援や、中国などで知名度の高いGEブランド『サイコラック』も活用しながら特殊ABSメーカーとしての存在感を高めていきたい。宇部、大竹は地理的にも中国と近く、中国にコンパウンド拠点を持っていないことは他社と比べて不利とは思わない。宇部サイコンで確立した短納期のシステムを新会社でも適用していけば、むしろ日本から供給する方が納期、品質ともに確実だし、より競争力を発揮できるはずです」
同社の出荷全体に占める輸出比率は40%前後。日系ユーザーの海外シフトに伴って比率はさらに上昇する傾向にある。特殊品の比率を高めることで、輸出市場でも適正な収益を確保できるようにする考えだ。とくに注力する特殊ABSは、両社が得意としてきた耐候性タイプ(ASA、AES)、高耐熱タイプ、難燃タイプなど。また、ポリマーアロイも混ざりやすい接着剤や、ベースレジンにABSだけでなくASAやAESも保有する強みを生かし、差別化することで応用領域を広げていく考え。すでに特殊品の比率は、国内外を含めて全体の65%前後にも達している。
コスト億円削減へ
「コストダウン目標も掲げており、3年後までに25億円の削減を目指します。その内訳は生産合理化で10億円、経費削減で10億円、グローバルソーシングや物流面で5億円。その一環として、研究所は登戸や大竹にある三菱レイヨン側の研究部門を9月までに宇部へ統合します。受注センターは宇部に統一しましたが、受注システムも今期中に一本化する。ただし、差別化に伴う生産の多品種少量化は無理に改めようと思いません。内製、外注を含めて工夫しながら、最も高い生産性を実現していきたい。実際に宇部サイコンでは、ロットサイズが小さくなった中で生産性を向上させており、これを新会社でも追及していく」
リサイクルも先行
同社は、マテリアルリサイクルでも国内同業他社を大きくリードしており、これも顧客が地球環境対応を進めるなかで大きな強み。旧・宇部サイコンは、富士ゼロックスとの協業のもと、クローズドシステムとして98年から品質保証した再生ABSを国内で供給しており、このほど海外供給も開始した。
「すでにクローズドシステムとしては年間数千tをリサイクルしています。他社が納入したABSの使用済み品も含め、当社の品質保証のもとに再生するオープンリサイクルも事業化してから半年以上を経過、軌道に乗ってきました。さらに使用済み樹脂へ新しい機能を付与し新しい用途への展開するための開発も進めており、さらに再生品の領域を広げたい」
ABSは汎用品と特殊品とに二極化する傾向にある。もちろん、同社が狙うのは後者だ。「今は樹脂のレボリューションの時代。樹脂単体で適正な収益を確保するのは難しくなっており、配合の工夫やソフト、システムを含めたソリューションの提供がますます重要になるでしょう」とのこと。
事業統合した両社は、ABSが厳しい市場環境下にあることを考慮すれば、特殊化路線の推進で比較的健闘していた。事業規模も、今回の統合により国内で最大手のテクノポリマーに匹敵するメーカーとなった。しかし、グローバル化が進む市場で競争力を発揮し、収益を伸ばしていくのは容易でない。新体制での宮本社長のカジ取りに注目したい。
早稲田大学理工学部応用化学科卒。東京都出身、60歳。
宇部興産、三菱レイヨンのABS事業統合会社「UMG ABS」誕生
宇部興産と宇部サイコン、三菱レイヨンの3社は、1日付でABS樹脂事業
統合新会社「UMG ABS株式会社」を正式発足させた。
ABS樹脂事業を取り巻く環境は、市場の国際化とともにますます厳しさを増しており、3社は統合によるコストダウンや体質強化策を模索してきた。その結果、ABS樹脂の品質、用途面で宇部サイコンはOA機器分野に強く、三
菱レイヨンは車両向けに強みをもっているなどから、補完的効果が大きいとし
て4月1日付で統合新会社を誕生させた。
「UMG ABS社」は資本金16億円、出資比率は宇部興産と三菱レイヨ
ン各42.7%、米ゼネラル・エレクトリック・カンパニー14.6%。社長
には宇部サイコン社長だった宮本利雄氏が就任した。両社合わせた設備能力は
年産17万6,000トン。従業員は500人。
本社は〒104−6591
東京都中央区明石町8−1、聖路加タワー(30階)に設置。
電話は 03−5148−5170番。
テクノポリマー、上海の研究所の竣工式挙行
テクノポリマー株式会社(本社:東京都中央区、社長:大 建二郎)がかねてから建設・開業準備をすすめてきたその「上海テクニカルセンター」はこのほど本格稼動を開始、関係先を招いて竣工式が行われました。
テクノポリマー(株)の「上海テクニカルセンター(中文名称:大科能樹脂(上海)技術発展有限公司)」は、特に中国に進出した日系需要家を対象として「サービスの現地化」を図り、迅速且つ的確なサービスを行うことを目的に設立されました。上海交通大学高分子材料研究所の張 勇教授を顧問に迎え、総経理は古山建樹当社取締役四日市事業所長が兼務、中国で採用した若手を中心に総勢6名の陣容でスタートをきりました。
開業当初は日本の開発研究所と業務を分担致しますが、先々は隣接するコンパウンド会社:上海虹彩塑料有限公司と有機的な連携を保って、独自で既存製品の品質向上、開発製品の迅速な量産化を行っていく計画です。
テクノポリマー(株)は1996年7月の日本合成ゴム(株)(現JSR(株))と三菱化学(株)のABS事業統合による設立以来、国内のみならずアジアを中心として積極的な海外事業展開を行ってきましたが、このテクニカルセンターがこの一層の推進に大きな役割を果たすものと期待されます。
テクノポリマー 上海に研究拠点を今秋設立/内外で特殊化路線を推進
テクノポリマー、ABS樹脂の収益指向加速〜大建二郎社長に聞く
テクノポリマーは、96年7月に日本合成ゴム(現JSR)と三菱化学のABS樹脂事業を統合する形で設立してから5年目を迎えた(JSR60%/三菱化学40%出資)。その後の事業環境の変化を踏まえ、6月末に3年ぶりに同社社長に就任した大建二郎社長に今後の経営方針や見通しなどを聞いた。そのなかで大社長は、ABS樹脂がアジア全体で大幅な需給ギャップを抱え、事業環境が当面厳しい状況が続くことを前提に、付加価値の高い特殊品の拡販を進めることで、収益指向を一段と加速する方針を示した。またアジアの最大市場である中国での特殊品拡販を狙い、今年秋に中国・上海のコンパウンド拠点に研究拠点を新設、今後も機能を拡充していく意向だ。
▽3年ぶりの社長に就任ですがこの間のABS樹脂市場の変化を踏まえ今後の経営方針をお聞かせ下さい
日本のABS樹脂市場は、自動車分野が依然として厳しい状況にあり、OA機器や家電分野も顧客の海外生産シフトで伸び悩んでいる。また環境問題に起因する非ハロゲン化の動きから、臭素系の難燃ABS樹脂がPC(ポリカーボネート)/ABSアロイに代替が進むなど、市場は大きく変わった。一方、雑貨・建材用途は大幅に拡大し、需要構造も大きく変化したが、全体の内需そのものはほとんど伸びていないのが実 情だ。
またこの間の一番の出来事は、アジアの大不況だ。それがABS樹脂の需要低迷と市況下落をもたらし、当初計画していた姿からかけ離れる要因となった。現在でもABS樹脂のアジアの需給バランスは供給 300万トンに対して需要200万トンで100万トンのオーバーサプライを抱えており、今後も中国での自製化の動きもあり、当面は厳しい状況が続きそうだ。
こうしたなか、当社は徹底した合理化を進めてきた。本社組織をスリム化し、本社従業員を設立当初の約3割、研究員は約半分に絞り込み、全従業員は当初の約600人から350人程度に減少した。
この結果、これまでに(年間ベースで)約60億円のコスト削減を達成したが、残念ながら原料高もあって合理化効果は吸収された。97年10月に数値目標として掲げた2001年度売上高600億円(99年度は450億円弱)、対売上高経常利益率5%には及ばないのが現状だ。
当社は設立当初、スケールの拡大を追求していたが、今後は収益指向を徹底し、汎用から特殊化への流れを一段と加速する。難燃や耐熱、透明、メッキなど特殊グレード、ポリマーアロイ、木粉とのコンパウンドといった特殊品の国内売上高比率は現在60%程度だが、これを70%に引き上げるのが当面の目標だ。
また私が社長を兼務する(JSRグループの樹脂コンパウンド会社の)日本カラリングとの一体運営も大きなテーマになる。9月1日から、日本カラリングの東京事務所を当社と同じフロアに移転させる予定だ。
▽テクノポリマーはアジアに4現地法人、上海にコンパウンド拠点を持ち、アジア市場の開拓に力を入れてきました。今後の海外展開についての考え方は?
当社は上海・香港・シンガポール・タイ(バンコク)に現地法人、上海にコンパウンド拠点(JSRグループの上海虹彩塑料有限公司)を持ち、連結ベースで海外の利益の寄与も少なくない。
海外でも汎用品の拡大は「枝葉の議論」であり、会社全体として特殊化路線で収益指向に徹底するとなると、従来の限界利益ベースで輸出するという考えは払拭して、今後は特殊品をどのように拡大できるかが重要になる。
こうしたなか、海外で特殊化路線により収益をあげるための布石として、上海に研究所の分室を今年秋に設置する。ここでは当初、製品の評価や試験など簡単な業務から開始するが、インターネットを通じて情報のやりとりができることもあり、日本(四日市)の研究機能を徐々に中国に移管する方針で、5年も経てば中国での(研究機能の)ウエイトはかなり高まっているだろう。また当面は(中国に進出した)日系メーカーへの対応となるが、中国での自動車やIT(情報技術)産業の拡大による特殊品の需要拡大に伴い、将来はローカルのユーザーにも対応していくことになる。また中国の優秀な人材を積極的に雇用していきたい。
▽リサイクルへの対応は?
2001年度に施行される家電リサイクル法に関連して、顧客からのリサイクルへの要望が強まるなか、当社は昨年、リサイクル推進室を設置した。家電やOA機器の特定の部材を同じものに戻すには技術が確立しているが、もう少し幅広い部材を集めてリサイクルするには仕分けの面で技術が必要になる。
2001年度までの2年間の計画で、NEDOからの委託研究として三菱電機と共同研究を進めている。
テクノポリマー、中国でABS事業拡充
上海のコンパウンド増強・技術センターも来月始動
テクノポリマーは、中国のアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂事業の基盤拡充へ動き出す。上海のコンパウンド拠点の生産能力を、現状の1万4千トンから近く2万トンに増強する計画のほか、新規需要開拓に向け同拠点に設置したR&D部門の活動を来月から開始する。
ABS樹脂の主力ユーザーであるOA機器や家電、自動車などのメーカーは海外へ生産をシフトさせており、とくに中国では大幅な需要拡大が見込まれている。同社では研究開発から生産体制まで強化し、同市場向けコンパウンド製品の展開を積極化していく考え。
テクノポリマーは96年、JSRと三菱化学のABS樹脂部門が統合して設立され、年29万トンと国内最大の生産能力を持つ。シンガポール、タイ、香港、上海に4つの現地法人を有する。
さらに上海にコンパウンド製造会社「上海虹彩塑料有限公司」があり、近く生産能力を40%以上増強し2万トン体制にする計画。またR&D部門「上海テクニカルセンター」は、日本から1名を派遣するほか、現地で3名採用しスタートする。
ABSの需要は現在、中国で大幅な成長をみせている。台湾や韓国、欧州勢が需要の増大を見込み、同地で大規模な新増設を中期的に計画しており、汎用品の同地向け輸出は今後あまり期待できない状況となっている。同社では、同地のコンパウンド拠点の研究開発を強化することでニーズに即応できる体制を整え、特徴ある付加価値品の展開を積極化させていく考え。
(日経夕刊 2001/8/30)
ABS樹脂事業を買収 テクノポリマー 鐘淵化学から
鐘淵化学はABS樹脂事業から撤退し、経営資源を他部門に集中する。
テクノポリマー、鐘淵化学工業の超耐熱・耐熱ABS事業を譲り受け
〜特殊ABS事業を強化〜
テクノポリマー(株)(本社:東京都中央区、社長:大建二郎)は、鐘淵化学工業(株)(本社:大阪市北区、社長:武田正利)が保有する超耐熱・耐熱ABS樹脂(商標名:「カネカMUH」)の営業権および製造技術を、2002年10月をめどに譲り受けることで同社と合意しました。
「カネカMUH」は1966年の事業化以来、自動車用途を中心に耐熱ABS分野で高いシェアを獲得しており、2001年3月期の事業規模は年産1万数千トンです。
このたびの合意は、ABS樹脂の国内トップメーカーとして特殊ABS樹脂の業容拡大を目指す当社と、コア事業への集中による事業基盤の再構築を進めたい鐘淵化学工業(株)の意向が一致したものです。
当社は1996年7月の日本合成ゴム(株)(現JSR(株))と三菱化学(株)のABS事業統合による設立以来、国内、東南アジアを中心に事業を展開しています。鐘淵化学工業(株)が国内および海外で行っている超耐熱・耐熱ABS樹脂の営業権を引き継ぐことで、今後ABS樹脂において一層強固な事業基盤を構築していきます。
2002/9/30 テクノポリマー
テクノポリマー、超耐熱・耐熱ABS樹脂「テクノMUH」の営業開始
〜特殊ABS樹脂分野の業容拡大〜
テクノポリマー株式会社(東京都中央区、社長:大 建二郎)は、鐘淵化学工業株式会社から超耐熱・耐熱ABS樹脂(商標名「カネカMUH」)の営業権を、本年10月1日付けで譲り受け、同日から「テクノMUH」の商標名で営業を開始する。
本営業譲渡は、昨年春に両社の間で合意し、それ以降製造技術の移転やお客様での評価、アメリカ(デトロイト)での営業拠点となる現地法人の設立、広島営業所開設等の準備作業を進めてきたが、予定どおり進捗し、万全の体制で譲渡日を迎えることとなったもの。
耐熱・超耐熱ABS樹脂「MUH」は、自動車用途分野を中心に、市場の高い評価を得ており、テクノポリマーの特殊ABS分野での業容拡大への寄与が期待される。
テクノポリマーは、1996年7月に、日本合成ゴム(株)(現JSR(株))と三菱化学(株)のABS樹脂事業を統合して設立され、当分野の日本国内でのトップメーカーとして、国内のほかにアセアン・中国へ進出した日系ユーザーを中心に事業活動を行っているが、「テクノMUH」の営業引継を契機に、事業活動エリアをワールドワイドに拡大し、さらに強固な事業基盤を構築していく所存である。
(Chemnet
Tokyo 2001年10月29日)
→ 新会社概要発表(2002/1/21)
三菱レイヨン、宇部サイコン、ABS樹脂で、来年新会社
宇部興産と米ゼネラル・エレクトリック・カンパニーの合弁会社宇部サイコン、三菱レイヨンは29日、両社のABS樹脂事業を統合することで合意、2002年4月をめどに新会社を設立すると発表した。
わが国ABS業界各社は、家電、自動車など需要産業の海外シフトやアジア地域の競争激化などから国内、輸出とも出荷が落ち込み、厳しい経営環境にあるが、宇部サイコンと三菱レイヨンはこれまでともに高付加価値製品を重視し、安定した、収益力を保ってきたこと、用途分野も宇部サイコンはOA機器分野、三菱レイヨンは車両向けに強みをもち、補完効果が大きいこと、さらに製造面でも効率的な生産体制が構築できると判断、事業統合することにした。
宇部サイコンは宇部に年産11万トン、三菱レイヨンは大竹に同6万6,000トンのABS樹脂設備をもち、合計17万6,000トンと、国内ではテクノポリマー(29万トン)に次いで第2位、国内シェアは22.8%となる。
<統合新会社の概要>
◇商号 | 未定 | ||
◇資本金 | 未定 | ||
◇株主割合 | 宇部興産 三菱レイヨン ゼネラル・エレクトリック・カンパニー |
約43% 約43% 約14% |
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◇事業内容 | ABS樹脂事業 ABS、ASA、SAN、AESの各ポリマー及びそれらを使用する コンパウンド品、並びに他の樹脂とのアロイ製品にかかる事業) |
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◇代表者 | 代表取締役を宇部興産・三菱レイヨンが1名ずつ指名し、 社長は宇部興産からの指名者とする。 (なお取締役会の人数構成は株主割合に応じたものとする) |
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◇本店所在地 | 東京 | ||
◇工場 | 宇部市(山口県)、大竹市(広島県) | ||
◇設立形態 | 会社分割制度を活用した共同新設分割 | ||
◇設備能力 | 176,000t(ABS樹脂重合設備能力) | ||
◇従業員数 | 500名程度 | ||
◇商標 | 原則として、ABS樹脂については「サイコラック」(サイコラックは GE所有の登録商標)、他の製品については新会社独自の商標を使用する。 |
||
◇売上高 | 設立後3年目の目標として、売上高380億円を目指す。 | ||
◇統合効果 | 生産体制の効率的集約化、物流費・原料費・固定費の削減等により、 年25億円程度の統合効果を実現させる。 |
||
◇設立年月 | 2002年4月予定 |
1963 設立 宇部興産 51%、Borg Warner Chemical 49%
1988/9 GE Plastics(GEP)がBorg Warnerの化学部門を買収
宇部 51%、GEP 49%
ABS一体化会社の現況と展望 日本エイアンドエル
10%配当目指し中計スタート
ABS樹脂では特殊化路線の推進へ
住友化学工業の1OO%子会社である住化エイビーエス・ラテックスと三井化学のABS樹脂、SBRラテックス事業が統合され、1999年7月1日に設立された日本エイアンドエルは、2000年4月から3年間の中期経営計画をスタートさせた。ABS事業では特殊化比率の向上とコスト競争力の強化を、SBRラテックス事業ではシェアの拡大と最適生産体制の確立による利益の拡大を図ることを目指しており、最終年度の2002年度に売上高300億円、経常利益率5%、コンスタントに配当できる経営基盤の確立を目指している。
同社の事業の柱であるABS樹脂は、台湾に1社で日本の生産量を上回る規模を誇る世界最大のメーカー奇美実業が存在すること、国内でもABS事業に従事する企業が9社あるなどの理由から、事業展開が限られてきた。住友化学と三井化学の両社は、このような限られた選択肢の中で、96年設立のテクノポリマー(JSRと三菱化学の事業統合会社)に続いて99年7月に事業を統合した(出資比率は国内シェアにほぼ匹敵する住友化学67%、三井化学33%)。
同社のABS樹脂の生産拠点は、乳化重合法年産7万トン設備がある愛媛工場と、バルク重合法3万トンプラントがある大阪工場の2工場体制である。愛媛工場のプロセスはバッチ式で特殊グレードの製造に適している特徴があるが、1系列当たりの規模は小さい。ここではABS樹脂グレードの1品種としてAES樹脂1万トンを生産している。一方の大阪工場ではABS樹脂の1品種としてAS樹脂を生産してきたが、事業統合時に生産効率のアップを図る狙いからAS樹脂2万トンのうち1万トンを設備廃棄しており、現在の能力は1万トンである。
この規模では汎用グレードを中心に年間100万トン規模で生産する奇美実業との製造コスト差は明らかなだけに、徹底した合理化・省力化によるコスト削減と独自性の高い特殊グレード開発・新しいマーケットの創造に活路を見いたそうとしている。これは2000年度からスタートした中期経営計画の最重点課題にも設定されているが、2生産拠点を持つメリットを生かす狙いから、集中生産によるコストダウン、物流の最適化によるコストダウンなどを考慮して総合的な立場からの最適生産を優先している。今後、この効果は確実に表れると期待され、スタート当初の350人体制からの人員削減が進んでいる。
日本エイアンドエルの概要 本社 大阪市中央区北浜4丁目5番33号 事業内容 ABS樹脂ならびにSBRラテックスなどの製造・販売・研究開発 事業所 営業所:東京、名古屋 工場:愛媛、大阪、千葉 研究所:愛媛、大阪 資本金 60億円 株主 住友化学工業 67% 三井化学 33% 設立 99年7月1日 従業員数 350人(99/12末現在) 売上高 年間(予想)260億円 生産能力 ABS樹脂 10万トン/年 SBRラテックス 8万5千トン/年 |
重合技術のシナジー効果に期待
今後のABS事業展開で最も期待されているのが両社の技術のシナジー効果。乳化剤を使用する乳化重合と使用しないバルク重合法との合体は新たな展開の可能性を生み出しており、重合段階における特殊化路線を進めるうえでの効果が期待されている。
一般的にバルク重合法で生産される樹脂は熱安定性、耐侯性、加工性などが優れるとされているが、両社の技術を持ち寄ったことで、すでにコンパウンドでの特殊化、アロイ領域における新しい知見を見いだしているほか、ABS樹脂の透明グレードでは具体的に技術のシナジー効果が表れている。
汎用品から特殊品へのシフト、特殊品比率のアップなどの事業展開を進めるうえで、コンパウンド、アロイなども重要な要素になるだけに新しい知見を生かしても展開を模索すると同時に、自製化部分を含めて能力アップなども検討することにしている。
さらに、両社の技術融合で新たなシナジー効果が期待されるだけに、現在は愛媛、大阪に分離している研究所を統合・一本化することを目指している。
今後、さらなる業界再編も
同社は事業統合で生産規模はテクノポリマーに次ぐ国内第2位のメーカーに浮上しているが、シェアは約14%にとどまり、圧倒的な地位を確保したとは言えない。依然、国内メーカー9社が存在する状況は、今後も特殊品中心の国内市場で激しい競合が繰り広げられる可能性が高いことを示している。今後、どのような業界再編成が進むかは予断を許さないが、3強の一角を占めるために、今後も製造・物流・販売の合理化に積極的に取り組むことにしている。
SBRラテックスは千葉工場の増強でシェア拡大へ
SBRラテックスは、その需要の約8割を塗工紙が占めている。塗工紙は情報化社会の進展とともに、これまで年率10%程度の高い伸びを示してきており、今後も5,6%程度の成長が期待されている。SBRラテックスは原単位の減少もあり、塗工紙ほどの高い伸びはしていないが、それでも年率で2,3%の伸びが期待できる成長分野だけに、同社は今後も拡販によるシェアの拡大によって生産量の増加を目指す方針である。
SBRラテックスの生産拠点は、統合以前は住化アイビーエス・ラテックスが愛媛と完成間もない千葉、三井化学が大阪、千葉県茂原の4拠点となっていた。住化エイビーエス・ラテックスの千葉工場の設備は99年春に完成した最新鋭設備で、年産1万5000トン能力。SBRラテックスの主需要先である塗工紙の生産量が多い東日本における拡販、販売シェアの上昇を狙い建設したものである。製造拠点としては三井化学・茂原もあったが、主体は愛媛、大阪の西日本地域にあったために、販売の中心も西日本主体で推移しており、東日本地区の販売量は他社に比較しシェアが低かったのが実状である。事業統合後は生産効率の向上を図る狙いから茂原の年産1万トン設備を休止しており、現在の生産能力は8万5000トン。
SBRラテックスは重量の約半分が水分で物流コストも高くなるため、拡販にはユーザーに近接しての生産拠点が欠かせない。事業統合で愛媛、大阪、千葉の東西3製造拠点となったことで、効率的な生産・物流体制が確立したことになる。将来的には東日本における販売量の拡大を図り、千葉工場での設備拡張を狙っている。
この分野でも両社の技術の融合で強度、光沢、高速塗工など塗工紙メーカーの幅広い二一ズに対応できる体制を作り上げることを目指している。
中期経営計画達成で安定収益基盤を
2000年度からスタートした中期経営計画では同社の2本柱であるABS事業、SBRラテックス事業のいずれについても技術の融合によるシナジー効果による事業の拡大が計画されている。統合に先立ち両親会杜で人員削減を実施し、350人の体制でスタートした同社だが、今後、各項目の見直しを進める申で合理化を進めることにしている。3年後の2002年度には現在の売り上げ目標260億円から300億円に拡大する中で、収益構造を安定化させ、1O%の配当を実施できることを目指している。
インタビュー 変化に強いたくましい企業に
日本エイアンドエル社長 松山 紀由
ー スタートしてから1年近くが経過しましたが、事業はいかがですか。
松山 当社はABS樹脂とSBRラテックスの2事業で構成されており、事業の展開策は大変異なっていますが、両親会社の研究開発や技術の融合化を進め、シナジー効果を上げる中で事業展開を図っていきたいと考えています。
一 ABS樹脂事業は世界最大のメーカーがアジアに存在するだけに厳しいですね。
松山 ABS樹脂はもともと不況業種であり、最適生産、最適物流によるコストダウンが求められています。加えて東南アジアには日本全体の能力を上回る規模を誇る奇美実業が存在します。汎用品分野では日本企業の競争力はまったくありません。日本企業としては持てる技術力をべ一スに汎用品離れ、奇美離れをいかに具体化するかがポイントになっています。価格で勝負してもむだと割り切ることが必要で、付加価値のある、新しいマーケットを創造することが求められていると考えています。幸い当社は技術の融合化が進み、技術におけるシナジー効果も上がっており、コンパウンドやアロイなどの領域で新しい事業展開の素地ができつつあります。
ー 具体的にはどのような成果が出始めているのですか。
松山 乳化剤を含まないバルク重合製品はユーザーからアロイ用として高い評価を得ています。三井化学側では当たり前の性質も乳化重合をやっていた住友化学側からみると面白い特徴になるわけで、いずれ特徴を組み合せた製品を出せると思います。
ー もう一方のSBRラテックス事業分野での事業展開はいかがですか。
松山 この分野の需要の大半は情報化とも関連の深い塗工紙が占めており、成長分野として今後も需要の拡大が期待されます。当社はもともと関西が生産の基盤であり、大手ユーザーのいる東日本のシェアが低かっただけに、今後、千葉の最新鋭設備を活用してシェア拡大を目指したいと思います。
一 2000年4月から中期経営計画をスタートしましたね。
松山 負の遺産を整理し、独り立ちできる企業を目指しており、中期経営計画の最終年度の2002年度には安定的に配当できる会社になりたいと考えています。そのためにも今後さらに合理化に向けた努力を続けていきたいと思います。
ー 事業統合によりシナジー効果は上がっていると思いますか。
松山 個人的には住友化学と三井化学は似ていると感じています。両社の合弁で、技術のみならず生産、販売などさまざまな面で両社を合算した以上のシナジー効果が出ることを期待しています。そのことが結果的に収益改善に寄与すると信じています。
一 ところで御社はこれまで何回も社名を変更してましたね。
松山 当社は住化とユニロイヤルの合弁による住友ノーガタックとしてスタートしましたが、そのユニロイヤルが抜け、住化単独事業となりました。その後、新たにダウケミカルが加わり住友ダウになりましたが、ポリカーボネート樹脂の独立で住化エイビーエス・ラテックスとなり、さらに三井化学との事業統合で現在の社名に変わりました。今後は変化に強いたくましい会社にしていきたいと思います。
ABS一体化会社の現況と展望 テクノポリマー
中国に研究拠点、アジア展開を強化
人員削減など合理化額60億円
テクノポリマーは汎用樹脂事業統合の先駆けとして96年7月にJSR60%、三菱化学40%出資で設立され、同年10月から営業を開始し、1年半後の98年4月に当初予定通り製造部門を統合した。資本金は30億円で変化がない。JSRはABSのトップメーカーであり、三菱化学も2番手グループにあったことから、テクノポリマーは世界4位の規模をもつABS企業としてスタートした。世界のABSメーカーは奇美実業を筆頭にBayer、ボルグワーナーを買収したGEが大手3社である。
スタート時の目標は、1)アジアにおいて25%のシェアを確保する、2)国内で名実ともにリーディングカンパニーとなる、3)高機能品を低コストで生産する技術開発を行う、4)ABS以外のコポリマーやアロイなど特殊樹脂を事業化する、5)売上高利益率5%以上の安定収益基盤を確立することであった。
元来、両社は三菱化学の旧三菱モンサント化成時代を含めて四日市という同一地域に立地し、製品融通を行ってきたこと、JSRの難燃グレードに対し三菱は冷蔵庫などへのシートグレードを得意とし、競合するケースが少なかった。
設立後は省力化によるコスト削減、グレード統合、製造ラインの集約、小口取り引きのロット集約などによる変動費削減に取り組み、現在までに当初目標の40億円を上回る60億円を達成している。とくにABS事業部門の人員は製造、研究開発、管理、営業を含めて統合時に両社で600人であったが、業務合理化により97年8月520人、98年8月480人、現在は360人と大幅に減少している。
中でも製造部門を統合した98年度は「リストラの年」として400人体制を目指した合理化と取り組み、人員削減と品種統合を柱とした合理化の第1弾を完了する年となった。コンピューター・システムは三菱化学を基本に再構築している。こうした結果、最初の中期計画は1年前倒しで実現した。
合理化の第2弾は99年度から2001年度の完了を目指して取り組みが進められている。主な内容は2001年度に販売32万トン、売上高600億円、経常利益30億円を目標に、1)生産設備の統廃合でグレードを250まで削減する、2)99年4月から用途開発プロジェクトを開始しエンプラやアロイ品を開発する、3)リサイクル技術室を設置し2000年末にリサイクル拠点を10カ所設置して、再生樹脂使用化率を30%に高める、4)併産MBSを99年6月から韓国のLG化学に委託する、5)60%の水準にある特殊化率を70〜80%とすることである。
事業環境は統合前に想定した予測に比べ、難燃ABSがPC/ABSアロイに代替されたことやアジアの通貨危機で価格競争が加速されたことなど、はるかに早いスピードで悪化したが、合理化効果により黒字決算を実現し、配当を初年度から行っている。
99年3月期の売上高は440億円であり、海外法人を含めると約500億円となっている。2000年3月期も国内売り上げは横ばいであったが、海外は円高の影響を受けてやや落ち込んだ。海外における売り上げは2000年度に80億円を目標としている。
ただ、上記の当初目標のうち、アジアにおける25%の市場シェアという目標は、中国における汎用品需要の急増と規模拡大の事業アライアンスが容易に進展する状況にないため目標から外され、収益優先による付加価値・特殊化路線を明確に打ち出している。
また収益レベルが目標の5割程度にとどまっており、一段の合理化が不可欠と判断して新たにコンパウンド事業のあり方、物流のあり方、製造現場の人員配置などの見直しに着手する。
テクノポリマーの概要 設立 96年7月(lO月営業開始) 製販統合 98年4月 資本金 30億円 出資比率 JSR60%、三菱化学40% 売上高 440億円(単独一ほかに海外60億円) 従業員 360人(うち研究開発50人) 生産能力 ABS樹脂29万トン(協同ポリマーの3万5,000トン含む) AS・AES樹脂4万トン 製造拠点 四日市 |
アジアでのプレゼンスを確保
設備能力は協同ポリマーの3万5000トンを含めて29万トンとなっており、協同ポリマーはダイセル化学工業の必要量をテクノポリマーが供給する形となっている。ダイセル化学はべ一スポリマーの供給を受けて難燃分野などへのコンパウンド事業を展開する。ABSのほかにAS・AES樹脂能力が4万トンあり、AESはブタジエンの代わりにPEゴムを入れることで耐侯性を向上させたもので、自動車やオートバイの外装、建材向けに使用される。
テクノポリマーの特徴は、シンガポール、香港、バンコク、上海に現地法人を持ち、上海では合弁でコンパウンド事業を行っていることである。JSRのABS技術は、韓国のLG化学、台湾の国喬石油化学および台湾化繊それに中国の吉林化学に供与され、数量ではバルク銘柄に特化する台湾の奇美実業に及ばないが、技術的にはトップの地位を築いている。輸出比率が40%に達する事業だけに現地法人の役割は大きい。
99年6月から開始したLG化学へのMBS樹脂の生産委託は、従来はABS設備で切り替え生産していたが、効率が悪いため技術提携先でMBS2万トン強の専用設備を持つLG化学に年間数千トンの生産を委託したものである。
上海のコンパウンド会社である上海虹彩塑料(SRC)は年産1万トンの能力を持ち増設を検討しているが、2000年6月には国内の研究開発の一部を同社に移設して中国での市場開拓を強化した。SRCは敷地面積が広く、研究開発施設を設置して分室としての役割を持たせる。国内のR&Dを絞り込む中で中国でできるものは極力現地で行うことを基本に人材も可能な限り現地で雇用する。その成果は日本にも持ち込むが、技術サービスなどは相当部分を中国が担うことになる見通しである。
130万トンに達した中国市場の獲得いかんが事業盛衰のかぎを握るため、販売・開発の両面で中国シフトを敷く方針である。中国の需要は2010年には200万トンに達するとみられている。
特殊化路線を強化、新用途開拓も
同社の経営戦略は基本的には発足時と変化していないが、現時点では、1)特殊化路線の継続、2)新用途開発による需要創造、2)コストダウンの推進、4)アジアにおけるプレゼンス確立、5)環境保全に向けた取り組みとしている。
特殊化路線としては車両向け耐熱・塗装グレード、電気冷蔵庫用シートグレード、透明グレード、建材用途、非ハロゲン難燃グレードなど、汎用品と比較して付加価値の高いグレードヘのシフトである。新用途開発では塩ビ代替を狙った木粉入り建材の開発に取り組んでいる。
コストダウンは業務効率化による省力化、グレード統合、小口ロットの集約などによる徹底的なコストダウンの続行であり、アジアでのプレゼンスは現地法人を活用した日系を中心としたユーザーとのビジネスの拡大を図る。環境保全はすでにISO14000を取得し、2000年4月にはISO9000を取得した。また樹脂リサイクルの技術開発と事業化に向けた体制整備を進めている。
このリサイクル事業は、家電リサイクル法の成立などで電機会社などのユーザーが回収した部品からABSだけをクラッシュして、それにニ一トレジンを入れてフレッシュなABSに仕立て直すもので、目下NEDOの補助金事業として三菱電機と共同で研究を進めている。
組織の簡素化も進めている。海外現地法人は海外部の管轄であったが営業部との共管とし、いずれ部署の統一も視野に入れている。研究開発は発足時からJSRの四日市研究所内に集約しているが、本社の技術部を四日市事業所の生産統括部と統合して技術生産統括部として開発研究所とともに四日市事業所の管轄とした。物流センターは三菱化学の四日市工場内に設けている。
しかし、経営計画については大建二郎新社長の下で大幅に見直しされる可能性がある。それは特殊化路線の追求を徹底すると、主として統合前に三菱化学が展開してきたコンパウンド事業を強化、拡大する必要に迫られてきたためで、関係会社の日本カラリングの運営を含めグループとして最適なビジネスモデルを構築する。具体的には、テクノポリマー本体とグループ関係会社の効率的一体運営であり、大口取引は本体に取り込む一方、小口関係は移管して機動的な運営体制とする。
この新体制は早ければ年内に決定される見通しである。その前提となる収益は売り上げが500億円程度となるものの、利益は現在目標と同じ30億円を必要とする。これにより、レジンからコンパウンドまでの製造部門の最適化と取り組み、さらにスリムな体制とする。
インタビュー 特殊化路線を推進し体質再構築
テクノポリマー社長 大 建二郎
ー 設立後4年を過ぎましたが、これまでを総括して下さい。
大 一番プラスだったのは意思決定の迅速化です。当初40億円という合理化目標を掲げていたが、コストダウンを中心に60億円近い実績を上げたし、人員も当初の600人を4割ほど削減している。損益の悪化に即応して遅れずに合理化を進められたことが大きかった。
一 国内のリーディングカンパニーという目標がありましたが、その点はいかがですか。
大 まだ3割弱のシェアでしかなく、残り70%のところに8社がありリーダーシップを取るのは難しい。やはり3つか4つのグループに集約される必要がある。ポリスチレンもひどい状態だったが、利益を上げられるまでに回復しており集約化のプラスは大きい。
ー アジア地域でシェア25%という目標を掲げていましたが。
大 相当時間がかかりそうだ。アジアでは中国マーケットが圧倒的に大きい。この汎用品の分野に相当の投資をしていかないと25%というシェアを維持できない。当分収益性に重点を置いたアクティビティということになる。
一 中国のコンパウンド事業に力を入れていますね。
大 コンパウンドはABS事業の1つの生命線です。コスト、品質とも大きな影響がある。グループの日本カラリングと一緒に上海に進出し、ようやく去年から配当するようになった。能力は1万トンだが増設を計画している。ここ2〜3年、中国製の品質に対するポテンシャルが上がってきている。コストは日本の1O分の1くらいだから労働集約的なものをどう活用するかが大きなテーマだ。
最近のトピックスは上海の拠点であるSRC社に研究開発施設を置くことを進めている。ABSは中国が世界マーケットの3分の1を占めるので、そこを1つの技術拠点として活用し、併せて国内あるいは東南アジアを含めた技術拠点にしようと思っている。
ー 技術面では用途開発プロジェクトやリサイクル技術室を設置していますね。
大 今は用途開発とリサイクルが大きな目玉になっている。用途開発は一言ではIT関連、それから塩ビ代替の建材関係です。リサイクルはお客さんからの要望が強いので、NEDOからの委託研究として要素技術の開発を進める。
ー ABS業界は特殊化路線を競っていますね。
大 日本という市場に根差して考えると特殊化、付加価値路線に行かざるを得ない。当社も50人近い技術、研究開発陣をもってやっている良さはそこにあるので、これを汎用路線に変えたら競争力はなくなる。最初は汎用にも相当魅力を感じていたが、この3年間に見えてきたことは収益思想に徹して特殊化路線を行くということで、それが基本路線になった。
ー さらなる合理化の具体策は何ですか。
大 大きな柱は製造部門とコンパウンド部門の一体的な運営です。私が日本カラリングの社長を兼務することになりましたので、これをいかに効率的なあり方に変えるかです。先ほどの中国なども活用して全体のビジネスモデルをもう一度見直す。それにより人が減る可能性があり、生産の形態が変わり、生産の場所が変わってくる。いろんな意味でメスを入れて新しいやり方に変える。
住友ダウの改組について
住友化学(社長:香西昭夫)と、米国ダウケミカル(社長:W.S.スタブロプロス)は、このたび、両社折半出資の合弁会社である住友ダウ株式会社(以下、住友ダウという)の事業に関し、本年12月末を目途に住友ダウをポリカーボネート(PC)事業専業会社に改組するとともに、ABS樹脂およびSBRラテックス(ABS/ラッテクス)事業についてはこれを分離し、新たに住友化学の100%出資の会社において運営することで合意いたしました。
住友化学とダウケミカルは、1988年にPCの日本での事業化を機に提携し、以来住友ダウにおいて上記の3事業を展開してまいりました。この間、PC事業は順調にプレマーケティングを終え、本年4月、ダウケミカルの技術により愛媛工場内に年産能力4万トンの最新鋭の生産設備を完成、既にフル操業に入っております。PCは今後も国内外の旺盛な需要拡大が期待されてり、住友化学とダウケミカルは両社の一層緊密な協力によって、住友ダウのPC事業を強化、拡大してまいりたいと思います。
一方、ABS事業は、アジア地域での競争激化や汎用樹脂との競合により厳しい事業環境に晒されております。特に、為替レートの変動と国内産業の空洞化現象の進行は競争環境を一変させており、コスト競争力の強化が今後の事業展開の鍵となっております。今回、住友化学はABS事業をSBRラテックス事業と共に100%出資の事業とし、自らの石油化学事業との連携を強化することで、市場開発力と技術開発力の一層の向上が可能になると判断いたしました。
住友化学とダウケミカルは、このように住友ダウを事業拡大期にあるPC事業と、成熟期にあるABS/ラテックス事業に戦略的改組を行うことが、それぞれの事業の今後の発展を期す上で、最適な選択であると合意に達した次第であります。
European Chemical News. 15-22 April 2002
Company | Location | Capacity |
---|---|---|
BASF | Ludwigshafen, Germany | 200 |
Ulsan, South Korea | 200 | |
Altamira, Mexico | 130 | |
Geleen, Netherlands | 60 | |
Bayer | Dormagen, Germany | 150* |
Addyston, Ohio, US | 200 | |
Tarragona, Spain | 130 | |
Mab Ta Phut, Thailand | 70 | |
Camacari, Brazil | 40 | |
Dow Chemical | Terneuzen, Netherlands | 120 |
Allyn's Point, Connecticut, US | 29 | |
Hanging Rock, Ohio, US | 52 | |
Midland, Michigan, US | 115 | |
Torrance, California, US | 14** | |
GE Plastics | Ottawa, Illinois, US | 150 |
Washington, West Virginia, US | 160 | |
Amsterdam, Netherlands | 70 | |
Grangemouth, UK | 60 | |
Villers-St-Sepulchre,France | 70 | |
Polidux | Monzon, Spain | 35 |
Polimeri Europa | Mantova, Italy | 30 |
Ravenna, Italy | 50 |
* 25 000 tonne/year expansion due by end 2002
**temporarily idled
Dow Chemical is adding a sixth train at Terneuzen, the
Netherlands, by the end of 2002. The 75 000 tonne/year line will
take Dow's total European capacity up to 200 000 tonne/year.
Bayer is debottlenecking at Dormagen, Germany, with an extra 25
000 tonne/year due online by the end of this year. The company
also has plans for a further expansion at Tarragona, Spain,
during the next three to four years.
Tabriz Petrochemical's new 35 000 tonne/ year plant in Tabriz,
Iran, was due onstream early this year.
Source: ECN/CNI
Toray Plastics(Malaysia)Sdn. Berhad. (TPM)
所在地 | : マレーシア国ぺナン島 |
従業員数 | : 240人(内東レ出向者10人) |
設立時期 | : 1990年7月3日 |
事業内容 | : ABS樹脂゛トヨラック"の製造販売 |
売上高 | : 602.2百万RM (170億円) |
資本関係 | : 東レ80%、Penfabric(マレーシア・東レ系)10%、 Penfibre(マレーシア・東レ系) 10% |
<TPM社の特徴>
日系ABSメーカーとして唯一海外に重合プラントを持ち、日本と同一品質の材料をASEANをはじめ中国・香港から
欧米まで幅広い範囲でご提供いたします。
汎用グレードから耐熱、難燃グレード等を取り揃えお客様の幅広いニーズにお応えいたします。
世界各地の東レ関係会社(着色加工、成形組立、商事、日本本社)と連携しお客様のご要望に迅速に対応いたします。
1990/7 TPM設立(資本金51億4千万円)
92/4 ABS樹脂設備稼働開始 35千t/年(50億円)
94/1 ABS倍増設備稼働 +35千t/年(50億円)
96/8 ABS樹脂増設稼働 +80千t/年(80億円)
合計 150千t/年→170千t/年
2002/7 +50千t/年
合計 220千t/年
2001/7/10 東レ発表
マレーシア・TPM社におけるABS樹脂の生産設備の増強について
東レ(株)は、この度、中国およびアセアンの旺盛な需要に対応するため、マレーシアのトーレ・プラスチックス・マレーシア(TPM)社において、ABS樹脂“トヨラック”の生産設備を年産5万トン増強することを決定しました。約20億円を投資し、2002年7月からの生産開始を目指します。
これにより、生産能力は年産22万トンとなり、日本の千葉工場の生産能力年産7万トンと合せると、東レグループでは年産29万トンの規模になります。
ABS樹脂の世界需要は約380万トンと推定され、今後も年率5%前後の安定成長が予測されます。特に、アセアン・中国は、世界中の自動車、家電、OA機器などのメーカーの製造拠点が増加しており、大幅な需要増が期待されています。2005年には、年率8%の成長により、世界需要の50%弱の230万トンに達する見通しです。
東レは、1990年にTPM社を設立以来、(1)アセアン・中国への拡販、(2)高収益が期待できる特殊品へのシフト、(3)コンパウンド・成形品事業との連携、(4)グローバル・オペレーションの促進、を基本方針にグローバル戦略を展開中です。
日本の千葉工場は、これまで培ってきた製造工程技術や開発力などを活かし、特殊品主体の製造拠点とします。
TPM社は、コスト競争力のある汎用品主体に生産してきましたが、自動車・二輪車およびOA機器向け特殊品の比率を高めていきます。引き続き、アセアン・中国への拡大を目指しますが、同時に4月から日本への供給を本格的に開始しました。
また、コンパウンド・成形品事業においても、中国、タイおよびマレーシアの設備を増強しており、樹脂から成形品までの総合力を活かした事業展開を拡大させます。
東レは、ABS樹脂事業をコア事業の1つと位置付けており、世界規模での事業拡大を図ると同時に、コスト競争力を強化することにより、さらなる収益拡大を目指してまいります。
トーレ・プラスチックス・マレーシア社の概要
1. 会社名 トーレ・プラスチックス・マレーシア社
(Toray Plastics(Malaysia)Sdn.Berhad)2. 資本金 150百万マレーシアドル(4214百万円)
東レグループ100%
(東レ86.6%、PAB社6.7%、PFR6.7%)3. 社長 青山 敏和 4. 本社所在地 マレーシア、ペナン州プライ・フリー・トレード・ゾーン 5. 工場所在地 マレーシア、ペナン州プライ・フリー・トレード・ゾーン 6. 設立 1990年(平成2年)7月 7. 事業内容 ABS樹脂“トヨラック”の生産・販売 8. 売上高 約220億円(2000年度) 9. 従業員 261名(日本人10名)
2001/1 分社 (ダイセル化学 100%)
製品 AS樹脂 セビアン N MS樹脂 セビアン MAS ABS樹脂 セビアン V 難燃ABS樹脂 セビアン 難燃PC/HIPS樹脂 ノバロイ X 難燃PC/ABS樹脂 ノバロイ S PA/ABS樹脂 ノバロイ A PBT/ABS樹脂 ノバロイ B PC/ABS樹脂 ノバロイ S 帯電防止樹脂 ノバロイ E 原料樹脂 広畑工場 AS樹脂 20千トン 協同ポリマー AS樹脂、ABS樹脂
*協同ポリマー ダイセル化学 50%、JSR 50%
*ノバポリマー
1982 ダイセル堺工場で爆発事故
1983 ノバポリマー設立(ダイセル50%、住友ノーガタック 30%、住化20%)
住化愛媛内でAS樹脂(ダイセルサスペンジョン法)
10千トン+5千トン(1985)1999 解散
(2000/9/29発表)
ダイセル化学工業株式会社合成樹脂事業分社の件
ダイセル化学工業株式会社(社長:小川大介)は、このたび合成樹脂事業部門における樹脂事業ならびに製品事業の事業基盤強化と収益性向上を図るため、2001年1月初旬を目途として両事業の分社を行なう事を決定いたしました。
AS・ABS樹脂・エンプラアロイ等のコンパウンド品および押出しシートの製造・販売・研究開発を行なっております樹脂事業につきましては、高機能コンパウンド・シートの樹脂加工技術を生かした事業会社としてダイセルポリマー株式会社を新たに設立し独立させ、徹底的なコストダウンおよび経営のスピードアップにより収益確保を図り、今後のダイセル化学グループにおける高分子事業の中核会社を目指してまいります。
各種容器成形品の製造加工・販売・研究開発を行なっております製品事業につきましては、グループ内の株式会社大同商工(社長:谷尾唱一)と事業統合し、新会社ダイセルパックシステムズ株式会社として一体運営を行なう事により、事業効率と収益性の向上を図ってまいります。
2002/7/18 日刊工業新聞
旭化成、ABS樹脂事業を強化−中間原料の相互融通加速
旭化成はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂事業を、中間原料の相互融通を加速して強化する。9月にも耐候性に優れた仕様品を外部調達する一方で、難燃性に強みを持つ同社品を供給する。ABSの需要低迷をにらみ、中間原料の開発コストを抑え、経営資源を用途別の開発に集中させるのが狙い。ターゲットを絞った高付加価値の特殊加工品の全体に占める供給比率を04年度に現在比20ポイント増の60%に高める方針。
同社が相互融通するのは、製品として混練(コンパウンド)加工する前の中間原料。特定の国内ABSメーカーと提携し、自動車のドアミラーなどとして耐候性が問われる同原料を買い受ける。同時にパソコン本体の外枠などに使われる非ハロゲンで難燃性に優れた同原料を同社が提供する。
住友化学、スチレン系樹脂の特殊化比率を70%に拡大
住友化学工業は、三井化学との共同出資会社である日本エイアンドエル(日本A&L)で手掛けるスチレン系樹脂の特殊化比率を、2006年度末までに現在の60%から70%に高める。液晶テレビなどに使用され、透明性に優れるMS(スチレン・メタアクリレート)樹脂といった高付加価値型の製品比率を高めることで、事業基盤を強化するのが狙いだ。
日本A&Lは、住友化学67%、三井化学33%の出資比率で1999年7月に設立した。家電製品や自動車部品に使用するABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂やAS(アクリロニトリル・スチレン)樹脂、SBR(スチレン・ブタジエン・ゴム)などスチレン系の合成樹脂や合成ゴムの製造・販売を手掛けている。
主要製品は家電や自動車に使用されるABSで、今後はMS樹脂や透明ABS、ポリスチレン(PS)に比べて露光性や耐光性に優れ、照明部品にも使用されるAS樹脂といった特殊品の拡大を目指す。とくに、MS樹脂は、スチレンとメチルメタアクリレート(MMA)を共重合した合成樹脂で、透明性や成型加工性に優れることから、カメラレンズや照明器具に使用されている。その他にも、光学特性に優れるとして液晶テレビ向けに採用が進むなど、IT(情報技術)関連製品への販売拡大を狙う。
日本A&Lは、愛媛(新居浜市)、大阪(高石市)、千葉(袖ケ浦市)の3工場があり、ABSやAS、MSなどのスチレン系樹脂を年間12万トン、SBRやラテックスコンパウンド(成形前材料)など合成ゴムを同12万トン生産している。
住友化学は現在策定中の来年度から始まる3カ年の中期計画で、医農薬、情報電子などのスペシャリティー分野に戦略投資の7割を投入する一方、日本A&Lを含む石油化学部門は高機能化を進めることで、収益性を高める戦略を打ち出している。
熱可塑成形材料事業の営業譲渡について
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=85750
日立化成工業株式会社(執行役社長:長瀬寧次、以下日立化成)は、熱可塑成形材料事業の営業をUMG ABS株式会社(社長:宮本利雄、以下UMG)に譲渡することで、このたび、同社と基本合意しました。
日立化成では、1970年より熱可塑成形材料であるAAS(アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体)樹脂を販売してまいりました。AAS樹脂は、耐候性に優れかつ成形後の外観が良好なため塗装コストを低減できるほか、リサイクルが容易であるというメリットがあり、主に屋外用途として自動車用部品や建築材料に使用されています。
しかし近年では、AAS樹脂の販売価格の下落に加えて、スチレンモノマーやアクリロニトリルなどの原料価格の高止まりから、日立化成の熱可塑成形材料事業は、収益の低迷を余儀なくされています。
日立化成では、固定費削減や品種統合による合理化、海外展開による売上拡大等に取り組んでまいりましたが、さらなる原料価格の高騰、また、この原料コストの上昇を製品価格に転嫁できないなど昨今の厳しい事業環境の下では収益の改善は困難であるとの判断に至り、熱可塑成形材料事業の営業をABS(アクリロトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂の大手メーカーであるUMGに譲渡することとし、このたび、同社と基本合意に達したものです。なお、AAS樹脂は顧客認定を必要とする部材に使用される例も多く、お客様への供給責任を完遂するために日立化成が一定期間製造を受託する予定です。
今後、同社との間で事業譲渡の詳細な条件交渉を進めるとともに諸手続きを経て、2005年4月の譲渡を目指して準備してまいります。
1.譲渡の内容
(1)譲渡する事業の内容
熱可塑成形材料事業(営業権のほか、知的財産権、生産ノウハウを含む)
(2)譲渡する事業の売上高
約23 億円(2004 年3月期実績)
(3)譲渡予定時期
2005 年4月
2.会社の概要
社名 | 日立化成工業株式会社 | UMG ABS株式会社 |
本社所在地 | 東京都新宿区西新宿2−1−1 新宿三井ビル |
東京都中央区明石町8−1 聖路加タワー30F |
設立 | 1962 年10 月 | 2002 年4月 |
資本金 | 153 億円 | 30 億円 |
事業内容 | エレクトロニクス関連製品、工業材 料関連製品の製造及び販売 |
ABS樹脂事業(ABS、ASA、 SAN、AESの各ポリマー及びこ れらを使用するコンパウンド品、並 びに他の樹脂とのアロイ製品にか かる事業) |
主要株主 | (株)日立製作所51.2% 日本トラスティ・サービス信託銀行 (株)(信託口) 7.8% |
宇部興産(株) 42.7% 三菱レイヨン(株) 42.7% 米ゼネラル・エレクトリック14.6% |
アセアン地域における樹脂の技術開発強化について
― マレーシアに「技術センター」を開設、生産技術・新製品開発、技術サービス機能を拡充 ―
http://www.toray.co.jp/news/pla/nr050318.html
東レ(株)は、このたび、樹脂事業のグローバル競争力を強化するべく、マレーシアのABS※樹脂製造販売子会社である
トーレ・プラスチックス・マレーシア社(Toray
Plastics (Malaysia) Sdn. Berhad、略称:TPM社、所在地:マレーシア国ペナン州、社長:佐々田泰彦)に「技術センター」(Technology
Centre)を設立します。成長著しいアセアン域内に樹脂の本格的な技術拠点を設置することで、マーケットニーズを的確に捉え、迅速に対応できる技術活動体制を構築します。同センターは3月21日に日本・マレーシア両国の関係者を招き開所式を行い、当初22名体制にて活動を開始します。
TPM社は1990年に設立され、現在、日系ABSメーカー唯一の海外重合拠点として年22万トンの生産能力を有しています。同社はABS樹脂“トヨラック”を、東レの国内生産拠点である千葉工場と同一品質にて中国・香港、およびアセアン地域を中心とした世界市場に供給しています。現在、塗装・難燃・耐熱・ガラス繊維強化等の高付加価値品の開発・拡販に注力すると同時に、内製コンパウンド品比率の拡大による競争力強化に取り組んでいます。
今回開設する「技術センター」では、マーケットニーズに密着した新製品開発をはじめ、生産性や品質の向上を目的とした生産技術開発、およびユーザー向けの技術サービスを展開します。重合装置や押出機等の製品試作設備の他、射出成形機、機械物性測定機や環境試機等の各種分析・評価装置を導入し、総合技術開発拠点としての機能を最大限発揮できる体制を構築しました。
東レは今回の「技術センター」設立を機に、TPM社を当社樹脂事業のアセアン地域における戦略拠点として新たに位置づけ、ABS樹脂事業のさらなる拡大を図る一方、「技術センター」の機能をフル活用し、“現地技術人材の育成”と“現地独自の技術ノウハウ構築”により、将来的には同社を東レ樹脂製品のアセアン地域における技術開発の中核拠点として確立していく計画です。
東レは樹脂事業において、2006年のマレーシアにおけるPBT樹脂の重合生産開始や、中国、タイにおけるコンパウンド設備の増強など、積極的な拡大投資と事業構造改革に取り組んでいます。今回の「技術センター」設立はその一環に基づき、研究技術開発体制のグローバル強化を図るためのものです。当社グループは引き続き、マーケットニーズに的確・迅速に対応できるグローバルオペレーション体制を構築していくことで、アジアにおける樹脂のメジャープレイヤーとしてのプレゼンスを一層強化してまいります。
※ ABS:アクリロニトリルブタジエンスチレンの略。主に一般家電製品や自動車部品に使用される。
2006/04/18 東レ
マレーシアでABS樹脂“トヨラック”の生産体制を増強
〜総投資額100億円 新たに透明ABS樹脂を現地生産開始〜
東レ(株)はこのたび、ABS樹脂“トヨラック”について、マレーシアにおける生産設備増強、および透明グレードの現地生産進出を決定しました。現地子会社のトーレ・プラスチックス・マレーシア社(所在地:マレーシア国ペナン州、略称:TPM社)の年間生産能力を11万トン増強すると同時に、高付加価値の透明グレード品の生産を開始します。総投資額は約100億円で、2008年3月からの稼働開始を目指します。これにより同社の生産能力は年33万トンに、国内生産拠点の千葉工場(千葉県市原市)を含むグループ合計では年40.2万トンに拡大します。
今回の生産設備増強は、アジア市場におけるABS樹脂の旺盛な需要増と、ユーザーニーズの多様化・高度化に対応するべく実施する戦略的拡大投資です。TPM社で高品質・高機能品の安定供給体制を構築する一方、世界ナンバーワンシェアを誇る透明グレードを導入することで製品系列を拡充し、“トヨラック”事業のグローバルオペレーションを質・量の両面から強化発展させます。
ABS樹脂の世界需要は約580万トンと推定され(2005年)、今後も年5%以上の高成長が期待されます。そのうち約330万トンを占めるアセアン地域および中国では、自動車や家電、OA機器メーカーの現地生産が拡大しており、2010年には世界市場の65%にあたる450万トンに拡大する見通しです。また、最終製品の高度化に伴いABS樹脂に対しても更なる品質向上・機能強化が求められており、透明・耐熱・メッキ・塗装等を中心とする特品需要が拡大しています。
TPM社は、自社コンパウンド機能と「技術センター」における地域密着型特品の開発や技術サービス機能に加え、今回の増設によるスケールメリットを活かして、アジアABS樹脂市場における“トヨラック”ブランドのステイタスを一層強化します。さらに同社は、トーレBASF PBT レジン社(所在地:マレーシア国パハン州、略称:TBPR社)で生産されるPBT樹脂についても全世界に供給を開始します。TPM社は、アセアン地域における東レ樹脂事業拡大の戦略的拠点として、新規市場開拓に取り組んでいきます。
一方、マザー工場である千葉工場は、長年培ってきた商品開発力と生産プロセス技術を基盤に、“トヨラック”の開発・生産面におけるグローバルヘッドクオーターとしての役割を一層明確にします。当社固有の「ナノアロイ」技術を活かした先端材料開発の推進と高効率生産体制への構造転換を加速します。これにより、製品の高機能化・多機能化、多品種・小ロット化が進む日本国内需要への対応を強化する一方、特品グレードのグローバル販売を拡大していきます。
東レは今回の安定供給体制の構築と併行して、“トヨラック”事業におけるグローバルオペレーションの最適化を推進します。日本、マレーシアの機能強化にとどまらず、中国の東麗繊維研究所(中国)有限公司(TFRC)との共同研究開発をはじめ、東麗塑料(深)有限公司(TPSZ)やタイTTS社(タイ・トーレ・シンセティックス)などコンパウンド拠点との生産販売連携を推進していきます。東レグループ樹脂事業の総合力を最適活用することで、成長著しいアジア地域におけるグローバルユーザー、ローカルユーザーのニーズに、より迅速かつ的確に対応できる事業運営体制の構築を目指します。
東レはABS樹脂“トヨラック”を、ナイロン、PBT、PPS、LCP等のエンジニアリングプラスチックと同様、当社樹脂ラインアップのコア製品として位置づけています。東レはTPM社の海外拠点機能の強化を軸に、“トヨラック”のグローバルオペレーションを一層深化させ、成長市場を確実に取り込むことでグループ樹脂事業のさらなる拡大を図ります。
トーレ・プラスチックス・マレーシア社(TPM社)概要
(Toray Plastics (Malaysia) Sdn. Berhad)
1.設立: 1990年(平成2年)7月
2.資本金: 150百万マレーシアドル(4,214百万円)<*>
3.出資比率: 東レグループ100%(東レ:86.6%、PAB社:6.7%、PFR社:6.7%)
4.社 長: 佐々田 泰彦(東レ(株) 常任理事)
5.事業内容: (1)ABS樹脂“トヨラック”の生産・販売
(2)PBT樹脂“トレコン”の販売
6.所在地: マレーシア国ペナン州プライ・フリー・トレード・ゾーン(本社、工場)
7.従業員数: 247名(うち日本人8名)
8.生産能力: 22万トン/年(2006年3月現在)
<*> 2006年3月末現在。本増設実施後は下記の通り。
資 本 金:325百万マレーシアドル(9,579百万)
出資比率:東レグループ100%(東レ:93.8%、PAB:3.1%、PFR:3.1%)
「ABS樹脂」
アクリロニトリルブタジエンスチレンの略。自動車・二輪車の各種パーツをはじめ、洗濯機、掃除機等の一般家電製品、OA機器、雑貨等に幅広く使用される。塗装、メッキ、耐熱、透明等のグレードがある。
2008/11/25 JSR
合弁会社の完全子会社化に伴う業務提携の解消に関するお知らせ
JSR株式会社は、三菱化学株式会社と平成8年5月17日付けで合弁事業基本契約を締結し、共同出資で設立したテクノポリマー株式会社について、当該合弁事業に関する業務提携を解消し、三菱化学が保有する全株式を取得し、同社を全額出資子会社とすることで本日基本合意に達しましたので、お知らせいたします。
1.合弁事業に関する業務提携の解消および株式の取得理由
テクノポリマーは、平成8年7月1日にJSR60%、三菱化学40%出資の合弁会社として設立以降、生産・販売・開発の各面で両社が持つ強みを結集し、ABS樹脂を中心にグロ−バルに事業を展開してまいりました。この間、同社は、世界的な規模での競争激化に対応すべく、プラント統合を進めるなど合理化、省力化を推進してきました。
JSRは、現在、中期計画「JUMP2010」を推進中であり、その中期経営戦略において各事業の収益改善および企業価値の最大化に向けて、あらゆる可能性を視野に入れて事業戦略の検討、遂行に取り組んでおります。こうした中、テクノポリマーにつきましては、これまで以上に迅速な意思決定と経営資源の有効活用や最適化を図り、企業価値を高めるために、JSRのポートフォリオの中で事業を遂行していくことが最適であると判断いたしました。
一方、三菱化学は、戦略事業分野への集中的な投資を加速するとともに、事業の集中と選択を推進しており、当社のABS事業強化の方針と合致したことから、今般、両社は円満に合弁を解消し、テクノポリマーを当社の全額出資子会社にすることで合意いたしました。
2.合弁事業解消の日程
今後、両社は具体的な協議を進め、平成21年3月31日に株式譲渡を実行し、合弁事業を解消する予定です。
3.テクノポリマーの概要(平成20年3月31日現在)
(1)設 立 :平成8年7月1日
(2)本 社 :東京都中央区新富2−15−5
(3)代表者 :伊藤 友一(JSR 上席執行役員)
(4)資本金 :30億円
(5)出資比率 :JSR60%、三菱化学40%
(6)事業内容
:ABS樹脂を中心とするスチレン系樹脂の製造、販売および研究
(7)事業年度末:3月31日
(8)売上高 :536億円
(9)従業員数 :256名
4.取得株式数および取得前後の所有株式の状況
(1)異動前の所有株式数 36,000株
(出資比率 60%)
(2)取得株式数 24,000株
(3)異動後の所有株式数 60,000株
(出資比率 100%)
【伊藤忠彦・JSR副社長の話】
テクノポリマーの国内シェアは25%程度で、事業環境が厳しいことは確かだが、完全子会社化することで迅速な意思決定ができるし、技術を含めて集中化できる。今後は車両用分野を中心に樹脂の高機能化、高付加価値化を図っていきたい。機能性フィルムなども将来性は十分あると思う。
【高下悦二郎・三菱化学常務の話】
旧三菱モンサント化成時代からの古い歴史のある事業だけに、深い感慨はあるが、JSRさんへの譲渡ということで納得がいくように思う。