1990/6/13 呉羽化学工業、サン・アロー化学、住友化学工業、日本ゼオン発表    

第一塩ビ販売グルーブ 塩化ビニール樹脂製造に関する合弁会社設立の件

 呉羽化学工業梶Aサン・アロー化学梶A住友化学工業梶A日本ゼオン梶A第一塩ビ販売鰍フ5社は、下記の通り合弁会社を設立し、新たに塩化ビニール樹脂の製造設備を建設することで合意致しました。
 呉羽化学工業梶Aサン・アロー化学梶A住友化学工業梶A日本ゼオン鰍フ4社は、昭和57年8月塩ビ事業をとりまく環境の変化に対応するため共同で「第一塩ビ販売梶vを設立し共同販売を行うと共に、種々の合理化計画の一環として、将来の共同投資を念頭におき現在まで各社の技術の相互公開と共同研究により、製品規格の統一、新品種の開発および新生産技術の確立等に努めてきました。
 今般、4社の設備の老朽更新期に当たり、昨今の塩化ビニール樹脂の需要増加に応えるため、第一塩ビ販売鰍含め関係5社で共同開発技術を基に最新鋭の製造設備を建設することにしたものです。 

1.合弁会社の概要
 @社名   第一塩ビ製造有限会社(仮称)
 A本社   東京都中央区
 B資本金   5億円(設立時2億円)
 C出資比率   呉羽化学工業 24%          
サン・アロー化学 12%
住友化学工業 36%
日本ゼオン梶@ 24%
第一塩ビ販売  4%
 D社長   未定(住友化学工業鰍謔闡I出予定)
 E設立時期   平成2年7月(予定)
2.立地    住友化学工業叶逞t工場内
3.生産能力   80千トン/年
4.製品引取   呉羽化学工業梶@ 20千トン/年
サン・アロー化学梶@ 10千トン/年
住友化学工業 30千トン/年
日本ゼオン 20千トン/年
5.採用技術   4社の共同開発技術
6.完成時期   平成4年初(予定)
7.運営   建設、運転その他の管理業務は合弁会社が住友化学工業鰍ノ委託

  


化学工業日報社説 1990/6/21

新しい風が吹き始めた塩ビ業界の課題

 塩化ビニル樹脂は、内需の好調に支えられ今年も順調に伸び、初の生産200万トン台乗せが見込まれている。1980年代初頭の構造不況を克服し、塩ビ業界は新しい時代を迎えたとみることができる。構造不況時に深い反省と、未来展望に立って発足した4つの塩ビ共販会社も、設立以来8年目に入った。塩ビ業界が最悪の時代を終えて、安定発展の道を歩みつつあることは確かである。その塩ビ共販の長年の懸案であった生産面に及ぶ共同化も、
第一塩ビグループの共同投資会社「第一塩ビ製造」の発足によって、新しい時代の扉を開くことになった。生産200万トン、新規設備の建設は、そのまま塩ビ業界の新しい世紀を予兆させるものだが、現実には設備の老朽化、原料高、低収益性など内包する課題は多い。塩ビ工業の真の安定発展のために、業界の英知を集めて山積する課題を解決して欲しい。
 塩化ビニル樹脂の需要増は力強いものがある。元来が使い易く、安価で、他樹脂とのブレンド化に馴じみ易い、などの特性を持つ上に、安定供給体制が確立されていたことから、この数年の景気上昇で一挙に需要を伸ばしたものだ。生産は1981年の112万トンをボトムに回復歩調に転じ、87年に166万トンと新記録を出し、以後88年183万トン、89年197万トンと急増、今年は200万トンの大台に乗ることが確実視されている。80年代初めの構造不況を経験した業界人には、まさに隔世の感があろう。
 今日の好況は、もちろん日本経済の拡大によるところが大きいが、83年に施行された産構法にもとづく、業界の構造改善策が、効果を層倍にしたもので、業界の自助努力は高く評価されてよい。とくに200万トンに達した設備の22.4%に当たる45万トンを休廃止した処置と、産構法に先駆けてスタートした4つの塩ビ共販が果たした役割は大きい。
 塩ビ共販については、単に販売の集約化に止まらず、グレード統合、交錯輸送の整理、生産受委託の拡大などを実施し、コスト低減を図ることが計画された。現実には販売の集約化のみが先行し、公正取引委員会から独禁法上の適用除外に当たらない、との疑念も出されたが、業界の宿題ともいうべき過当競争を断ち、需要家に安定供給の責任を果たしたことは事実である。今回、第一塩ビグループによる第一塩ビ製造が設立されることになったのは、設備の老朽化が進む中で、早晩、更新投資を迫られている業界が、共販8年の実績を通じて得た知見と信頼感を基盤に、効果を生産面にまで拡大しようとする理念による。この点からも塩ビ業界に新しい風が吹き始めた、と見ることができる。
 塩ビ樹脂業界は目下好調の波に乗ってはいるが、200万トン時代を迎えて、多くの難題を抱えていることも見過ごしにはできない。殆どの設備が設置後30年近く経過し、老朽化が著しいこと、設備更新時にきていると数年前から指摘されながらも、再投資の魅力も蓄積もないほどの収益性の低さも解決されていない。
 原料の塩酸、エチレンやエネルギーコストの高騰を吸収できる体質も、まだ十分できたとはいえない。過去の教訓を生かし、業界の英知を集めて、200万トン時代の塩ビ工業の新しい世紀を築いてほしいものである。


新第一塩ビ設立に伴う第一塩ビグループの動き

1994/12/5 日本ゼオン・住化・徳山曹達・サンアロー 新第一塩ビ設立発表
         呉羽化学 不参加発表

1995/1/1  呉羽化学 第一塩ビ販売から実質離脱(営業権再譲受)
    2/1  呉羽化学 第一塩ビ販売の持株を譲渡

住化、ゼオン、サン・アロ−が呉羽から第一塩ビ販売の株式を購入、同時にトクヤマがサン・アロ−持株の一部を買い取り。これにより出資比率は新第一塩ビの出資比率に合致。(ゼオン40% / 住化30% / サン・アロ−20% / トクヤマ 10%) 

1995/7/1  新第一塩ビ スタート
         第一塩ビ製造 改組
           出資比率  新会社 76%, 呉羽 24%,
           引取比率  新会社 3/4, 呉羽 1/4


日本経済新聞 1998/4/16

住友化学など3社 呉羽と塩ビ提携解消  老朽設備廃棄し競争力  

 住友化学工業、日本ゼオン、トクヤマの3社と呉羽化学工業は塩化ビニール樹脂での事業提携を解消した。住友化学など3社は今後、老朽設備の廃棄による競争力強化に取り組む。呉羽化学は他社との新たな提携を含め、抜本的な事業再構築をめざす。
 塩ビ事業では2月に電気化学工業が住友化学との提携を解消しており(注 千葉塩ビモノマー)、今後、石油化学業界では成長期に事業拡大のために結んだ提携関係の見直しが進みそうだ。  
 住友化学など3社の塩ビ事業統合会社、新第一塩ビは呉羽化学と共同出資する塩ビ製造会社、
第一塩ビ製造の株式のうち、呉羽化学の持ち株24%を引き取り全額出資子会社にした。これに伴い新第一塩ビは住友化学の千葉工場(千葉県市原市)内にある年産能力3万5千トンの塩ビ設備を10月にも廃棄する。  
 呉羽化学の塩ビ事業は今回の提携解消により事業規模が新第一塩ビの4分の1以下に縮小。今後、同社は錦工場(福島県いわき市)に塩ビ事業を集約し、設備の効率運用などを通じてコスト削減に取り組む。また、国内最北という立地を生かして東北地区を中心に販路の拡大を目指す。  
 住友化学など3社と呉羽化学は、82年に通産省の指導により塩ビ樹脂の共同販売会社、第一塩ビ販売を設立。90年には第一塩ビ製造を設立してシェア拡大を目指した。しかし、その後の石化業界再編・統合の動きの中で住友化学など3社が95年7月に新第一塩ビを設立、製造から販売までの塩ビ樹脂事業全般を移管、統合した。呉羽化学はこの事業統合には加わらず、独自で事業再構築を目指したため、提携関係にねじれが生じていた。


化学工業日報 1998/10/2

第一塩ビ製造を吸収 新第一塩ビ  

 新第一塩ビは、10月1日付で子会社の第一塩ビ製造を吸収した。第一塩ビ製造は同社と呉羽化学工業が出資していたが、塩ビ業界の再編成に絡み、同社が今春に呉羽化学の持ち株24%を引き取り全額出資子会社としていた。また住友化学工業・千葉工場の年産能力3万5千トン設備は、老朽化にともなって9月末で生産を停止した。  
 新第一塩ビの年産能力は、呉羽化学の委託分であった2万トンを加えると差し引き1万5千トン減少、全体では41万5千トンとなる。千葉地区では旧第一塩ビ製造の8万トン設備で集中生産を行うことになり、住化・千葉からの品種移管については年内までに完了する予定。