2009/2/27 日本経済新聞

独禁法改正案きょう閣議決定 大型合併の審査重視
 審判制度 見直し先送り 与野党協議難航も

 政府は談合やカルテル行為への罰則強化などを盛り込んだ独占禁止法の改正案を27日に閣議決定し、今国会に提出する。昨年の通常国会では成立せず、廃案になった経緯があり、今回は新たに大型の合併審査を重視する半面、中小企業の合併前の届け出を免除する内容も盛り込んだ。ただ焦点になっていた「審判制度」の見直しは政府・与党内で調整が付かず、2009年度に先送りすることにした。

 政府は昨年の通常国会にも改正案を提出したが、独禁法違反の行政処分の是非を公取委が自ら判断する審判制度をめぐって、与野党協議が難航。審議されないまま廃案になった。民主党は審判制度の廃止を依然として主張しており、今国会で法案が成立するかどうか不透明な要素もある。
 政府は廃案となった改正案を基に、新たな措置も加えて再提出する改正案をまとめた。
 改正案は課徴金の適用範囲を広げ、大企業が下請けに不利な取引を強いる「優越的地位の乱用」などの違法行為も対象に加える。
 談合・カルテル摘発の強化に向けた対策も強化する。違法行為を自主申告した企業の課徴金を減免する制度について、グループ会社での申請も認める。一つの事件で課徴金を減免する企業数も、これまでの3社から5グループに増やし、公取委への情報提供が一段と進みやすいようにする。その一方で「主犯格」企業に科す課徴金は5割増しにする。談合やカルテルにかかわった個人への罰則を懲役3年から同5年に引き上げる内容も盛り込んだ。
 企業合併の審査方針も転換する。公取委に事前に届け出が必要な基準は、廃案となった法案では合併される側の企業の売上高でみた場合、「20億円以上」としていたが、今回は「50億円以上」に引き上げた。基準以下の届け出は不要。届け出件数は07年度の1284件から、「半数以下に減る見通し」(公取委)だ。審査期間の短縮化も見込まれ、企業再編を通じた事業改革を後押しすることにもなりそうだ。
 ただ審判制度をめぐる結論を先延ばししたことが、今後の国会審議などで争点に浮上する可能性は大きそうだ。
 公取委は今回、審判制度の見直し案として、談合・カルテルは裁判所で争い、不当廉売などの違反行為は企業の主張を聞いたうえで処分を決める「事前審判」を併せた制度を提案した。これに対して、経済界は「公取委自らが処分の内容の是非を判断する審判制度はそもそもおかしい」と全廃を主張。自民党の独禁法調査会でも「(制度存続は)公取委の組織防衛」との批判が上がり与党内でも調整が付かず、「09年度中に見直す」との付則を設け、先送りせざるを得なかった。
 審判制度の廃止を主張してきた民主党も制度全廃を盛り込んだ独禁法改正案を既に提出しており、今後の与野党協議も難航が予想されている。

独禁法改正案の主なポイント

〔課徴金制度〕


▽課徴金の適用範囲の拡大
  (以下の行為を追加)
 ・競合他社を市場から締め出す「排除型私的独占」
 ・原価割れで販売を続ける「不当廉売」
 ・下請けに不利な取引を強いる「優越的地位の乱用」
▽談合・カルテルの「主犯格」企業に科す課徴金を5割増し
▽課徴金を科す時効(除斥期間)を3年から5年に延長
▽自主申告企業の課徴金を減免する制度の拡充
 ・子会社を含めグループ会社を1社と数える
 ・1事件の減免を3社から5グループに増やす
〔企業合併〕
▽他社の株式を取得する際の事前届け出を義務付け
▽合併審査を大型案件に限定
〔審判制度〕
▽全面的な見直しを09年度中に検討
〔個人への罰則〕
▽談合・カルテルで個人への懲役を3年から5年に引き上げ