2004/4/26 日本経済新聞夕刊
微細化学チップ事業化 オムロンなど6社連合 発表
大日本スクリーン製造、オムロンなど6社は26日、樹脂などの基板の上に刻んだ微細な回路を化学反応などに利用するマイクロケミカル分野の企業連合(コンソーシアム)を設立すると発表した。これまで実験室や化学プラントなどで手掛けていた化学反応を数センチ四方のチップに小型化する新技術で、電機2社のほか、オリンパス、日本ゼオン、堀場製作所、山武が参加。技術の標準化や事業化に取り組む。
5月1日に「マイクロケミカル・イニシアティブ」を設立し、同月中に第一回の会合を開く。マイクロケミカル技術を使うことで、生化学反応などを高速、高効率に進められるようになり、新薬開発の期間短縮などにつながるという。
メーカー企業6社参画、「マイクロケミカル・イニシアティブ」を発足
マイクロケミカル技術分野で新しいコンセプトの企業連携を図り、ものづくりからの国際競争力と市場創出を目指す
http://www.screen.co.jp/press/NR040426.pdf
大日本スクリーン製造株式会社(本社:京都市上京区/社長:石田 明)は、オムロン株式会社(本社:京都市下京区/社長:作田 久男)、オリンパス株式会社(本社:東京都新宿区/社長:菊川 剛)、日本ゼオン株式会社(本社:東京都千代田区/社長:古河 直純)、株式会社堀場製作所(本社:京都市南区/社長:堀場 厚)、株式会社山武(本社:東京都渋谷区/社長:佐藤 良晴)の5社と共同で、本年5月に「マイクロケミカル・イニシアティブ(以下、MCI)」を発足します。MCIは、化学、創薬、バイオ、医療、環境、エネルギーなど幅広い分野で期待されている「マイクロ化学(ケミカル)技術」の事業化に向け、独自技術を持ったメーカー企業の集まりで、相互に技術協力やビジネス連携することにより、当技術の早期実用化を目指すものです。
マイクロ化学技術は、数百マイクロメートル(100万分の1メートル)の微小な流路(空間)を化学反応に活用する技術のことです。金属、ガラス、樹脂などで形成する、わずか数センチ四方のチップ(基板)上に微小流路を設け、化学反応や流体分離などに活用できるほか、複数のチップを複合型にしたモジュールやシステムなどを構築することも考えられています。想定される実用器具には、マイクロリアクター、血液検査用バイオチップ、ラボ・オン・チップ(チップ上の研究室)などがあります。いずれも、従来の手法より高速化、効率化が可能になり、安全で環境保全にも貢献するという数多くのメリットがあることから、その応用範囲は、化学やバイオをはじめ、環境やエネルギーの分野までと幅広く、さまざまな業界において実用化が期待されています。
既に海外ではヨーロッパを中心に、リアクターモジュールやシステムの販売、R&Dサービスの提供など実用化の段階にまで及び、(マイクロ化学分野の)技術標準化を積極的に進める動きもあります。また、米国を中心に、バイオチップやマイクロタス(高集積分析システム)などで応用範囲の裾野を広げています。一方、わが国では平成15年度より、経済産業省の推進する産官学研究開発プロジェクト(フォーカス21)の1テーマ「マイクロ分析・生産システムプロジェクト」が始動し、関連研究機関や企業が研究を進め、おのおのの成果から実用化に向けた取り組みが始まっています。
そこでわれわれ6社は、ものづくりの立場から研究開発を支援する環境や、事業化を目的とした基盤作りが重要と考え、MCIを発足しました。参画メーカー企業にとってのMCIは、それぞれの「既存技術」や「技術シーズ」といったビジネス資源を持ち寄ることで、相互に技術支援可能な提携企業を容易に見つけ出せる交流の場であり、外部のユーザーや研究者のニーズとそれらのビジネス資源をマッチングする場でもあります。MCIの活動は、国内においては新しい産業の確立に、また、国際市場においては技術立国日本の復権に貢献するものと考えております。
今後は、研究会、交流会、Webサイトなどを通して、マイクロ化学技術の関連情報を共有し、産官学の連携、技術の標準化活動など、積極的な展開をしていく予定です。
【関連用語、解説】
・マイクロ化学(ケミカル)技術: | |
: ; | 幅数十μm(マイクロメートル=100万分の1メートル)から数百μmのマイクロチャンネルと呼ばれる微細な流路を形成し、ここに液体、気体を流すことで化学的、生化学的な反応や物理化学的な分離を高速、高効率に行う技術。 |
・マイクロタス(μ TAS): | |
Micro Total Analysis
Systemの略称でポンプ、バルブ、センサーなどを小型化・集積化した化学分析システム。 微細加工技術を利用してガラスやプラスチックの基板上に溶液が流れる微小な溝(マイクロチャンネル)のネットワークを作成し、実験室で行うような生化学・化学の操作や検出を1枚のチップ上に集積化・小型化したものを指す。特に、医療や環境測定の分野においてその利点を最大限に発揮できると考えられる。主に欧州ではμTAS(Micro Total Analysis Systems)、米国ではLab-on-a-chip(チップ上の研究室)と呼ばれている。 |
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・ラボ・オン・チップ: | |
マイクロ化学技術を利用し、化学実験室をチップ上に実現しようとするもの。(μTASを参照) | |
・マイクロリアクター: | |
数μm〜数百μmの微小な流路によるマイクロ空間内の現象を利用した化学反応・物質生産のための混合・反応・分離などが可能な微小反応装置。 スケールが小さいため、比表面積が大きい・制御が容易などの利点があり、医薬・ファインケミカルの合成をはじめとする、幅広い分野で注目を集めている。従来のフラスコで実験を行うよりもはるかに高速に反応条件を最適化できたり、新現象、新反応を発見する確率が増大したり、また滞留時間や温度制御を精密に行うことにより非常に活性で不安定な化学反応を自由自在に扱えるようになると期待されている。 またナンバーリングアップ(並列化)により、実験室から工業的な生産への移行が迅速かつ効率的に行える。マイクロリアクターは、マイクロ化学プラント、つまり化学産業の中核となる高分子合成や有機合成の分野でのダウンサイジングへの取り組みとして研究されている。 |
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・MEMS (Micro-Electro-Mechanical-Systems): | |
マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ(微小電子機械システム)の略称であり、半導体加工、機械加工、電気的回路などの多種類の技術を融合した技術。半導体プロセス技術を用いて1つの基板上に電子と機械機構を融合させた微小デバイス。機械、光学、流体などの精密な機構部品やモジュールのマイクロ化や複合化を可能にする。 |
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マイクロケミカル・イニシアティブ(MCI)
URL http://www.mc-i.jp/
● 参画企業6
社の企業情報<五十音順>
MCIは幹事企業をあえて置かず、あくまでも対等な立場で交流を進めてまいります。今回の発表は、当社が発起人(企業)としての立場で、6社を代表して行うものです。
オムロン株式会社 | |||
参加想定分野 | : | 半導体微細加工技術、MEMS 技術 | |
事業内容 : | FA(ファクトリーオートメーション)システム、制御機器、電子部品、金融システム、公共システム、交通システム、健康機器・健康サービス、パソコン周辺機器の開発、生産、販売、サービス。 | ||
本社所在地 | 〒600-8530 京都市下京区塩小路通堀川東入南不動堂町801番地 | ||
代表者 | 代表取締役社長 作田 久男 | ||
資本金 | 640億8,200万円 | ||
連結売上高 | 5,350億7,300万円(2003年3月期) | ||
連結従業員数 | 23,745人(2003年9月末) | ||
オリンパス株式会社 | |||
参加想定分野 | MEMSおよび関連加工技術 | ||
事業内容 | 医療・健康、映像・情報、工業関連機器の製造・販売。銀塩カメラ、デジタルカメラ、録音機、双眼鏡、消化器・外科処置具・超音波分野の内視鏡関連機器、生物顕微鏡、分析機、ゲノム解析システム、情報機器、工業用内視鏡、工業顕微鏡、他。 | ||
本社所在地 | 〒163-0914 東京都新宿区西新宿2-3-1 新宿モノリス | ||
代表者 | 代表取締役社長 菊川 剛 | ||
資本金 | 408億3,200万円(2003年3月末日現在) | ||
連結売上高 | 5,643億4,300万円(2003年3月期) | ||
連結従業員数 | 23,975名(2003年3月末) | ||
日本ゼオン株式会社 | |||
参加想定分野 | 樹脂加工技術 | ||
: | 事業内容 | 合成ゴム、合成ラテックス、化成品、化学品、情報材料、高機能樹脂およびその加工品、RIM成型品、医療器材などの製造、販売。 | |
本社所在地 | 東京都千代田区丸の内2-6-1(古河総合ビル) | ||
代表者 | 代表取締役社長 古河 直純 | ||
資本金 | 242億1,100万円(2003年3月期) | ||
連結売上高 | 2,108億8,900万円(2003年3月期) | ||
連結従業員数 | 2,951名(2003年9月) | ||
大日本スクリーン製造株式会社 | |||
参加想定分野 | 金属エッチング加工技術 | ||
事業内容 | 半導体製造装置、FPD製造装置、プリント基板製造装置などの電子工業用機器および印刷関連機器など画像情処理機器の製造・販売を主な事業とし、関連する研究およびサービスなどの事業活動を国内外で展開。 | ||
本社所在地 | 〒602-8585 京都市上京区堀川通寺之内上る4丁目天神北町1-1 | ||
代表者 | 取締役会長兼社長 石田 明 | ||
資本金 | 445億円4,100万円(2003年12月末) | ||
連結売上高 | 1,679億4,100万円(2003年3月期) | ||
連結従業員数 | 4,451名(2003年9月末) | ||
株式会社堀場製作所 | |||
参加想定分野 | 最先端計測分析技術、MEMS技術 | ||
事業内容 | 計測・分析機器専門の総合メーカー。エンジン・半導体・環境・理化学・医用等の事業を、国内外グループ40社でグローバルに展開。MEMS技術関連では、超小型・高感度センサによる計測技術の基礎研究を進めている。 | ||
本社所在地 | 〒601-8510 京都市南区吉祥院宮の東町2 | ||
代表者 | 代表取締役社長 堀場 厚 | ||
資本金 | 71億6,047万円(2004年3月20日現在) | ||
連結売上高 | 785億円(2003年3月20日現在) | ||
連結従業員数 | 3,700名(2003年3月20日現在) | ||
株式会社山武 | |||
参加想定分野 | バイオチップ技術 | ||
事業内容 | ビルディング・オートメーション、産業オートメーション、ソーシャル・オートメーショ ンの機器、システムの製造、販売およびヒューマンケア事業。 |
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本社所在地 | 〒150-8316 東京都渋谷区渋谷2-12-19 (東建インターナショナルビル) | ||
代表者 | 代表取締役社長 佐藤 良晴 | ||
資本金 | 105億2,271万円(2004年3月1日現在) | ||
連結売上高 | 1,679億6,900万円(2003年3月期) | ||
連結従業員数 | 7,097名(2003年9月末日現在) |