日本経済新聞 2002/9/5

スチレンモノマー 値決め透明化へ加速 「国際価格と連動」導入

 プラスチックの原料になるスチレンモノマーの価格決定方式が変わりつつある。従来は互いの収益状況などをにらみながらメーカーとユーザーが個別に決めていたが、今年に入って原料の国際価格などにスライドした「透明な値決め」を目指す動きが加速している。輸出入の拡大につれ、グローバルスタンダードの流れが価格決定にも押し寄せてきた格好だ。
 先べんをつけたのは旭化成と住友化学工業。両社は1999年から原料や製品の国際価格、為替相場を基に一定の計算式(フォーミュラ)で国内価格を決める方式を国内ユーザーに提案、現在は8割をこの方式で値決めしているという。
 具体的にどの要因にどれだけの比重を置くかは需要家との交渉に委ねるが、1年程度は計算式を固定し、これに基づいて納入価格を1−3カ月ごとに変えている。急騰・暴落を避けるため、価格の上下限をあらかじめ設定する場合もある。
 両社の動きに出光石油化学が追随、三菱化学も検討中という。
 スチレンモノマーなど石油化学製品はメーカーとユーザーがコンビナートでつながれ、「運命共同体」の意識が強かったのは事実。値決めの主流だった個別協議もこの意識のあらわれといえるが、「値動きの激しい国際価格とのかい離が解消できない」(住友化学)点が最大のネックだった。
 東アジアにおけるスチレンモノマーの指標価格を大きく左右するのが中国の動向。同国は年間約160万トンを輸入、このうち約25%をスポット(当用買い)で調達する。中国の動きによってスポット価格は激しく変動するのがパターン。今年以降の推移をみても、3月末にトン当たり760ドルと年初比85%上昇したが、8月から再び強含み、現在は730ドル前後で推移するという展開だ。
 過去には原料の値上がり局面でさえ、ユーザーからは逆に値下げを要求されることもあった。ユーザー側は「他社が安値で売り込んでくる」とちらつかせ、シェアを維持したいメーカー側が譲歩することもしばしばだったという。
 ただ現在はメーカーの本格的な減産で在庫は4年ぶりの低水準。これを機にユーザーの要求にひたすら応えていたメーカー側の強気の姿勢が目立つ。ユーザーの間でも「供給側との立場が逆転した」(二次加工会社)と方式変更もやむを得ないという空気が広がりつつある。