大洋塩ビ再編 経緯
日刊総合化学 1997/9/8
大洋塩ビ 資本金10倍の100億円に増資
親会社からの設備買い取り製・販一貫体制
東ソー、三井東圧化学、電気化学工業の3社は、塩ビポリマーの共同出資会社である大洋塩ビ(本社・東京港区赤坂、資本金10億円、日野清司社長)の資本金を(1997年)9月と10月の2回にわけて100億円へ増資することで合意したことを明らかにした。(注 分割は授権資本の関係) 増資分90億円の大半は、来年実施される親会社3社保有の塩ビ設備の譲渡金に充当される。
大洋塩ビに対する出資比率は東ソー、三井東圧が各37%、電気化学26%。この出資比率に基いて増資金を割り当てる。9月末に実施される第1回の増資金は30億円で、現行の資本金10億円を40億円とする。引き続いて10月末に第2回の増資として60億円を行い、100億円の資本金とすることにしている。大洋塩ビは現在、親会社3社に塩ビポリマーを委託生産する形をとっているが、98年には親会社の塩ビポリマー・プラント全ての譲渡を受け、製・販一体の塩ビポリマー専業会社として新たなスタートを切る。100億円への増資は、そのための譲渡資金に活用するもので譲渡額は約80億円と見積もられている。大洋塩ビは、赤字体質からの脱皮を図る3カ年計画で総額30億円の合理化計画を掲げグレード削減、商慣行の是正、物流・生産の合理化などに取り組んでいる。
日野清司社長の話
このたび親会社の理解を得て100億円への増資が本決まりとなった。増資金は、設備譲渡運用資金に充当するが、来年には文字通り製・販一体の塩ビポリマー専業会社としてスタートすることになる。塩ビポリマー事業は、未だ赤字体質から完全に脱却したとはいえないが、現在取り組んでいる合理化計画を製・販一体となることで確実にやりとげ、黒字転換を図って行きたい。グレードの削減も価格の先決めという商慣行の是正もユーザーの理解を得て6割方進行してきた。今後も収益改善に全カをあげていく。
日本経済新聞 1998/10/14
大洋塩ビ、製造も統合 東ソーなど出資3社の設備
来年3月移管 業界の再編加速
東ソー、三井化学、電気化学工業の塩化ビニール樹脂の共同販売会社である大洋塩ビは、来年3月末に3社から生産設備を移管し、製造部門も統合する。3社の塩ビ研究所も来春までに1カ所に集約する。大洋塩ビは国内最大の塩ビ販売会社だが赤字が続いているため、製販統合を機にコスト削減を進め2000年3月期の黒字転換を目指す。需要不振にあえぐ塩ビ業界では今後、再編が加速しそうだ。
大洋塩ビに移管するのは東ソー、三井化学、電気化学がそれぞれ三重県四日市市、大阪府高石市、千葉県市原市に持つ設備で、生産能力は年間61万トンと国内の20%強を占める。買い取り価格は設備簿価の約80億円になる見通し。また3社の製造設備に付帯して立地する研究所も東ソーの四日市に集約する方針。
大洋塩ビは原料の塩ビモノマーを出資元の3社から購入し製造を3社に委託している。製販一体化で各設備の稼働率調整による最適生産のほか、従来取り組んできた製品グレードの統合、物流の合理化を加速する。現在69人の社員は製造部門の一体化で来春に200人前後となる見通し。
同社は96年1月に東ソー、旧三井東圧化学、電気化学が塩ビの販売・研究開発部門を統合して発足。96,97年度の2年間で計20億円のコスト削減を実現したが、98年3月期で約120億円の累損を抱える。99年3月期も赤字は避けられない状況のため、3社は今期についてはモノマー価格や製造費の引き下げで大洋塩ビを支援すると見られるが製販一体化後は大洋塩ビが独自にコスト削減を進め、黒字を目指す。
下水道配管など建材やおもちゃに使われる塩ビは内需、輸出とも不振が続いており、今年度も業界全体で100億円以上の赤字が見込まれている。大洋塩ビのほか、日本ゼオン、トクヤマ、住友化学工業の3社が95年に樹脂事業を統合したものの、なおメーカーが乱立し供給過剰に陥っているため、事業統合や撤退の動きが進むとみられている。
日刊工業新聞 1999/2/5
大洋塩ビ 研究開発を四日市に集約
来年4月 要員も30人に削減
大洋塩ビは親会社の東ソー、三井化学、電気化学工業の塩ビ3工場と研究開発設備を10月に引き取り、2000年4月に研究開発機能を四日市に集約する。塩ビ生産3工場と研究開発設備の移管は当初、99年4月としていたが、塩ビの需要大幅減と市況下落が続いているため、大洋塩ビの償却負担発生を先送りした。
研究開発設備は3カ所で重複しているため選別して引き取るほか、研究開発人員も43人を30人に削減、合理化と効率化を図っていく。大洋塩ビの工場と研究所はそれぞれ、四日市(三重県四日市市、東ソー四日市工場内)、大阪(大阪府高石市、三井化学大阪工場内)、千葉(千葉県市原市、電化千葉工場内)にあり、大洋は生産を親会社に委託、研究開発設備も親会社から借りている。
移管時には3研究所の試作品の評価機器やパイロットプラントの引き取りを絞り込み、経費を節減し、その後、人員、規模とも大きい四日市に集約する。人員も一部、親会社に引き取ってもらい、人件費を1億3千万円ほど削減する。
化学工業日報 1999/3/10
大洋塩ビ 製販統合を先送り 99年度内実現めざす
自立へ合理化策強化
塩化ビニル樹脂最大手の大洋塩ビは、今年4月までに予定していた製販統合を見送り、99年度中の実施を目指す方針に変更した。国内の塩ビ樹脂市場は需要回復のめどが立たず、黒字転換が困難な状況下で製造設備を移管するのは負担が大さいと判断した。同社は99年度から親会社である東ソーなどと協力して収益改善に向けた新たな合理化策を進め、自立化のめどが得られた時点で製販一体化を実現したい考え。
大洋塩ビは東ソー、三井化学(旧三井東圧化学)、電気化学工業の塩ビ樹脂事業を統合、96年1月に発足した。当初は98年度までの3年間で30億円のコスト削減を行い、99年度スタート時に生産設備を移管し製販統合を実現する計画だった。
同社は人員合理化、物流コスト削減、品種統合などを進め、合理化目標をほぼ達成する見通しにあるものの、当初の予想を上回る需要の落ち込み、市況下洛で業績は赤字を余儀なくされている。98年度についても昨年12月に打ち出した価格修正が難航し、採算性の是正は難しい状況にある。
同社の生産能力は年61万トンあるが、20%前後の減産を継続中。そうしたなか、予定通り生産設備、それにかかわる人員を移管しても固定費負担が増大し業績を向上させるのは困難と判断、実施時期を99年度内に先送りすることにした。
今年末までには三井化学・大阪工場の原料ソースが東ソーに切り換わり、東ソーが3工場すべてに原料を供給する体制が整う。同社では原斜面の強さを生かすとももに、さらなる合理化、価格是正の実現に力を入れ、設備移管後に自立できる企業体質を構築する。また3工場に分散している研究開発機能は、四日市工場に集約する方針。
塩ビ樹脂業界は内需低迷の長期化もあって、生産設備の過剰問題が深刻化している。日本ゼオン、トクヤマ、住友化学工業が事業統合した新第一塩ビも赤字に苦しんでおり、99年度から新たな合理化策を実施する予定。
日本経済新聞夕刊 1999/4/14
東ソー 関連会社の累損処理
収益改善策 5年で社員3割減
ソーダ・塩化ビニール樹脂大手の東ソーは塩ビの関連販売会社の累損一括処理や5年間で全社員の30%に当たる約1100人の削減などを柱とする緊急の収益改善策をまとめた。(中略)
三井化学、電気化学工業と共同出資で96年に設立した大洋塩ビ(日野清司社長)について、東ソーの出資分(37%)に見合う50億円強を99年3月期に関連会社に関する特別損失として一括計上する。大洋塩ビは業界最大手だが、約150億円の累損を抱えている。
化学工業日報 1999/7/16
大洋塩ビ 10月めど再建計画
東ソー主導に衣替え 減資で累損一掃後、増資へ
東ソー、三井化学、電気化学工業は、3社の塩化ビニル樹脂の統合会社である大洋塩ビ(日野清司社長)の再建計画を10月をめどに策定する。3社は最適生産体制や製造設備の移管、出資比率の変更などについて具体的な検討に着手、すでに一定の合意に達している。14日に電気化学工業の矢野恒夫社長が会見の席上明らかにした。今後、細部の詰めに入るが、最終的には原料供給を担当する東ソーが株式の過半数を占める経営体制へと衣替えするものとみられる。東ソーの年100万トン規模の原料生産能力を武器に、大洋塩ビは生き残りを賭ける。
大洋塩ビは東ソー、三井化学、電気化学工業の塩ビ樹脂事業を統合し、東ソー、三井化学がそれぞれ37%、電気化学が26%出資して資本金10億円で96年1月に発足。当初は、98年度までの3年間で30億円のコストを削減し、99年度に生産設備を各社が移管して製販統合を実現する計画を掲げていた。
合理化計画はほぼ目標通りに果たしたが、予想を上回る国内需要の長期低迷と販売価格の下落により収益が大幅に悪化。これまでに資本金を100億円に増資したほか、当初の製販統合計画を先送りした。
しかし、塩ビを取り巻く環境は悪化の一途をたどり、前期末における同社の累積損失は資本金を上回る148億円に達した。そのため東ソーは累積損失の処理を図り、出資分(37%)に見合う54億円を特別損失として99年3月期決算に計上した。だが、三井化学と電気化学はこうした処理を行わず現在にいたっている。 出資3社における再建に向けた具体的な話し合いは、塩ビ業界の早期回復が難しいなかで一刻も早い抜本策が必要との認識で一致したもの。再建計画では、将来を見据えた生産体制の再構築、収益基盤の強化、さらに資本の枠組み変更などを明確に打ち出す。
すでに塩ビ事業の競争力を左右する塩ビモノマー(VCM)は、東ソーに集約されることが決まっている。東ソーはこのほど、南陽事業所に年81万トン、全社で同105万トン体制を確立し、電解からVCM,PVCまでのビニル・チェーンを構築している。
こうした状況から、まずは資本金を減資し累積損失の一掃を図った後、増資を行って新たな経営体制を構築する模様。従来の資本構成も変更することは必至とみられ、東ソーが株式の過半数を占めることになると思われる。
現在、わが国の塩ビ各社は、大半が大幅な赤字に陥っている。通産省がまとめた塩ビメーカー12社の98年度収益(塩ビ部門)は、売上高が前年比17.8%減の1966億円、経常段階では148億円の損失で、前年の130億円の損失をさらに上回った。
塩ビの損失処理急ぐ 電気化学社長会見(関連部分のみ)
電気化学工業の矢野恒夫社長は14日、都内で記者会見を行い、99年度の業績見通しとその達成に向けた経営体質の強化策などを語った。このなかで、同社にとって重要課題の一つとなる塩ビ事業(大洋塩ビ)について「99年度前半には、出資各社とともに再建計画を策定し、累積損失を処理する」との考え方を明らかにした。(中略)
同社はすでにポリスチレン(PS)やセメント事業でのアライアンスを実施しており、矢野社長は「残された課題は、塩ビ事業」とし、今年度前半にも出資各社との間で、大洋塩ビの再建策をまとめる意向を明らかにした。(略)
日本経済新聞 1999/11/29
東ソー・三井化学・電気化学
塩ビ生産を集約 共同販社に全面移管へ
東ソー、三井化学、電気化学工業の3社は代表的な合成樹脂である塩化ビニール樹脂の生産設備を来春、集約する。3社が出資する共同販売会社の大洋塩ビに全面移管し、一部の設備は廃棄する。同時に大洋塩ビは減増資などの実施で約150億円の累損を一掃する。3社は大洋塩ビの再建を通じて塩ビ事業を立て直す。最大手グループのリストラクチャリング(事業の再構築)の枠組みが固まったことで、過剰設備により収益低迷に苦しむ塩ビ業界の再編が一段と加速する見通しだ。
現在、東ソーは年間生産能力31万トン、三井化学は同21万トン、電気化学は同9万トンで合わせて同61万トンの塩ビ設備を持つ。このうち老朽設備3万トン程度は停止して廃棄、残る58万トン程度を来年3月に大洋塩ビに移管する。
これと並行して大洋塩ビは減増資と出資構成の変更などを実施する。現在、同社の資本金は100億円で東ソーと三井化学がそれぞれ37%、電気化学が26%を出資している。これを来年3月に全額減資後、60億円に増資し東ソーが67%、三井化学と電気化学がそれぞれ16.5%を引き受ける方向で最終交渉している。これにより東ソーが大洋塩ビの経営再建を主導する体制を鮮明にする。
化学工業日報 1999/11/30
「再建策、大枠で合意」大洋塩ビ 東ソーが2/3以上出資
電気化学の矢野社長は19日の会見で、大洋塩ビの再建策について「大枠について合意に達し確認作業を進めている」とし、新しい運営体制にめどが得られつつあることを明らかにした。
出資比率は「東ソーが3分の2以上を占めるのがアライアンスの柱」とし、東ソーが実質的な経営責任を持って運営していくことを改めて強調した。ただ、具体的な枠組みは「東ソーからは、協業の精神で始めたのだから、それなりに(出資に)応じて欲しいとの要望があり、加工会社の自消分など営業戦略的な側面もある」とし「最終合意には達していない」と語った。
電気化学は大洋塩ビの累損処理として、出資比率に見合う38億円の特別損失を下期に計上する予定だ。
2003/2/3 3社発表
大洋塩ビの再構築について
「大洋塩ビ株式会社」を発展的に解散
新たな運営体制のもと本年4月1日より営業を開始、新社名は引き続き大洋塩ビを継承
親会社3社の製造設備(四日市、大阪、千葉)に関しては、本年3月31日をもって同社に譲渡
研究所は四日市に集約
技術サ一ビスに関しては従来どおり上記3拠点で