日本経済新聞 2000/1/26
チッソ 部門分社化案「政府に要請続ける」 社長会見
チッソは25日、2003年度を最終年度とする中期経営計画(再生計画)を発表した。社員削減や塩化ビニール樹脂などの縮小で合理化を進める一方、液晶を中心とする機能材料を強化、年40億円以上の経常利益を目指す。水俣病患者補償とチッソの事業部門を分離する分社化案については「政府に対し、引き続き実現をお願いする」(後藤舜吉チッソ社長)方針。再生計画は99年3月末で2151人いるグループ社員を1900人に減らす。物流費の低減なども合わせて、年間70億円の合理化効果を見込む。執行役員制度を導入して取締役を現在の15人から10人以下に減らす。
事業面では塩ビの販売権を鐘淵化学工業に売却、塩ビ加工に使う可塑剤は三菱ガス化学と事業統合する。農業用資材商社のヒノマル(熊本市)は1月中に保有全株式を29億円で積水化学工業に売却する。
後藤社長は会見で「取引金融機関のすべてから債権放棄などの金融支援に合意するという内諾を得た」と報告。日本興業銀行は25日、水俣病患者の補償で多額の債務を抱えるチッソ向け債権を放棄すると発表した。放棄する債権額は173億63百万円。
金利減免など日債銀が協力
特別公的管理(一時国有化)中の日本債券信用銀行は、チッソが策定する経営再建計画に金利減免などの形で協力する。国有化中の日債銀や日本長期信用銀行は、国民負担を抑制するために、融資先企業への債権放棄などには原則として応じない方針だが、水俣病患者への補償問題を抱えるチッソに関しては特例措置として再建に協力する。
Chemnet Tokyo 2000/1/25
チッソ後藤社長会見「水俣病補償完遂、地域経済にも貢献」
再生計画発表「機能材中心に選択と集中、合理化さらに追求」
チッソの後藤舜吉社長は25日記者会見し、関係金融機関や国、県の支援による同社の「再生計画」を中心に、鐘淵化学工業への塩ビ樹脂の商権譲渡や三菱ガス化学とのフタル酸系可塑剤合弁事業化など、一連の将来計画について明らかにした。
質問は具体的な支援内容から再生への取り組み、水俣病患者への補償や地域経済に及ぼす影響、効果など広範囲にわたったが、同社長は1時間半にわたり1つ1つ丁寧に答えた。
発言の要旨は次の通り。
1. 再生計画によって、金融支援が受けられるようになったが、当社にとっては患者補償を完遂し、地域経済の発展に貢献できるだけでなく、当社自身も長期的展望に立った経営戦略が展開できる。その意味でも画期的なことといってよい。 2. 今後は、これまでの汎用素材型企業から脱皮し、収益性の高い機能材料中心の会社づくりを目指したい。 3. 塩ビ樹脂事業は鐘淵化学に商権を譲渡し、フタル酸系可塑剤は三菱ガス化学と合弁事業化することになったが、業界環境は厳しく、以前から検討してきたことだ。今後とも分社化、アライアンスをできるだけ実施していきたい。選択と集中を図る一方で、合理化にも徹していく方針だ。 4. 多くの支援のおかげで、年間40億円の事業利益を見込むことができるようになった。この再生計画を達成し、目標をクリアしていくことが、私たちに課せられた最大の責任と思っている。
2000/1/25 チッソ
「チッソ再生計画」に基づく関係金融機関・国・熊本県等による金融支援措置の件
当社は、平成11年6月9日に提示された当社に対する政府による抜本支援策(以下「抜本策」と言います。)に基づき、「チッソ再生計画」を策定し、同年12月以降関係金融機関に対して、抜本策に示された「適切な協力」及び「既往金融支援対象債務についてより踏み込んだ支援措置」についてのご協力を要請してまいりました。
その結果本日までに、日本興業銀行、三和銀行をはじめ大方のご同意を得ることが出来ました。
また、近日中にはすべての関係金融機関のご同意が得られる見込みであり、その時点で「チッソ再生計画」を政府に提出する予定であります。これにより、国・熊本県等においても抜本策に示された支援措置の実施をお決めいただけるものと予定しております。
当社といたしましては、このようなご支援に応え、課せられた責任を完遂するために、今後、「チッソ再生計画」の実行に全力を挙げてまいります。
1.「チッソ再生計画」に基づき、免除していただくことを予定している債務の内容
(1) | 関係金融機関の金融支援措置関係について 平成12年3月末日の棚上利息及び棚上保証料累計額は約356億円となるものと見込まれますが、その全額について同日付けで免除していただくことを予定しています。 |
(2) | 国・熊本県等の金融支援措置関係について 水俣病問題解決支援財団から、解決一時金支払いの原資として約317億円をご融資頂いておりますが、そのうち85%相当額(約270億円)について平成12年3月末日付けで免除していただくことを予定しています。 |
2.「チッソ再生計画」の要旨
関係金融機関の同意を得た上で政府に提出する「チッソ再生計画」の要旨は、添付別紙のとおりです。
添付
・再生計画の要旨
・塩化ビニール樹脂の商権譲渡の件
・フタル酸系可塑剤事業における合弁会社設立の件
・子会社株式の売却の件
・業績予想の修正の件
チッソ再生計画の要旨
I.事業計画
当社を取り巻く事業環境は極めて厳しいが、「選択と集中」の促進による事業構造の転換と徹底した合理化を推し進め、課せられた責任を完遂するための利益水準の確保に最大限の努力を尽くす所存である。
1.事業環境の激変【国際競争】
○国内経済の低成長基調の定着
○東アジアにおける需給ギャップの大幅拡大
○国内外の競争激化による市況の極端な低迷
○生き残りをかけた企業の統廃合、再編の加速
2.事業戦略【選択と集中】
次の三つの事業区分別に戦略を一層明確にし、戦略強化車業に経営資源を集中し、事業構造の転換を図る。
○戦略強化事業→機能材料部門の拡大強化
・液晶および周辺材料 ・天然系食品保存料 ・有機珪素化合物
・電子部品 ・その他バイオ製品 ・環境関連事業
○収益安定事業→既存事業の特殊化、差別化
・ポリプロピレン ・熱鞍者性複合繊維 ・被覆肥料 ・有機化学品
○不採算事業→抜本措置を講ずる。
・塩化ビニール ・グアニジン系難燃剤 ・中間膜用特殊可塑剤
・肥料原料
3.合理化策【経営努力】
国際競争に対応できる体質への転換を図るため、徹底的な合理化を敢行する。合理化策の重点項目は次のとおりで、合理化効果は70億円を見込んでいる。
○人員のスリム化
・平成10年度末2,151人一平成15年度末1,900人
○固定経費の削減
○生産コスト低減の強化
○物流コスト削減
4.経営の効率化等
○現在行っている役員報酬カットの増大
○取締役人数を半数程度(10人以下)に削減
○執行役員制度導入
○組織、業務の徹底的な見直し
II.国、熊本県及び関係金融機関等による金融支援措置
「関係金融機関支援」は、平成11年6月9日水俣病に関する関係閣僚会議申合せ「平成12年度以降におけるチッソ株式会社に対する支援措置」において、当社に対する抜本的支援措置の政府案が提示されたことを受けて、同年12月に「チッソ再生計画」を策定し、関係金融機関に対して「適切な協力」及び「既往金融支援対象債務についてより踏み込んだ支援措置」についての実施をお願いしている事項である。
「公的支援」は、再生計画について関係金融機関の同意が得られた後、一国、熊本県等において実施をお願いする事項である。
1.公的支援 | ||
[1] | 平成12年度下期以降、患者県債方式は廃止し、チッソは経常利益から患者への補償金を優先的に支払っていく。 | |
[2]: | 既往公的債務について、熊本県は、チッソが、経常利益から患者補償金を支払った後、可能な範囲で県への貸付金返済が行いうるよう、各年度、所要の支払、猶予を行う。 | |
[3] | 財団法人水俣病間題解決支援財団は、平成12年3月末日に、チッソに対する一時金貸付金及びその利忠のうち85%相当額を免除する。 | |
[4] | 経済の急激な変動等によるチッソのー時的な収益変動に対して、熊本県の出資した3財団を活用し、補償金支払不足額のセーフティ・ネットを講ずる。 | |
2.関係金融機関支援 | ||
[1] | 関係金融機関は、今後のチッソ及び同社子会社の事業の継続に直接必要な資金について引き続き支援する。 | |
[2] | 関係金融機関は、現在チッソに実施している貸付金元本の返済猶予及び保証を平成15年3月末日まで継続する。 | |
[3] | 関係金融機関は、平成12年3月末日に、チッソに対する既往の棚上利息及び棚上保証料を免除し、平成12年4月1日から平成15年3月末日までの間、新規に発生する棚上利息及び棚上保証料を免除する。 | |
III.再生計画における損益推移および資金見通し
1.損益推移
平成11 年度 |
平成12 年度 |
平成13 年度 |
平成14 年度 |
平成15 年度 |
平成11〜 15合計 |
|
売上高 |
1,435 |
1,351 |
1,377 |
1,407 |
1,452 |
7,022 |
(事業利益) |
(40) |
(40) |
(40) |
(40) |
(40) |
(200) |
(無利子化相当額) |
(0) |
(13) |
(13) |
(13) |
(13) |
(52) |
経常利益計 |
40 |
53 |
53 |
53 |
53 |
252 |
注)この期間の設備投資は、主要子会社を含めて430億円を計画している。
2.資金見通し
平成11 年度 |
平成12 年度 |
平成 13年度 |
平成14 年度 |
平成15 年度 |
平成11〜 15合計 |
|
経常利益 |
40 |
53 |
53 |
53 |
53 |
252 |
(事業利益) |
(40) |
(40) |
(40) |
(40) |
(40) |
(200) |
(無利子化相当額) |
(0) |
(13) |
(13) |
(13) |
(13) |
(52) |
患者継続補償金 |
△30 |
△30 |
△30 |
△29 |
△29 |
△148 |
その他 |
12 |
△1 |
△2 |
- |
- |
9 |
小計 |
22 |
22 |
21 |
24 |
24 |
113 |
公的債務返済額 |
△24 |
△5 |
△5 |
△5 |
△11 |
△50 |
資金繰改善額 |
△2 |
17 |
16 |
19 |
13 |
63 |
3.2000/3末想定バランスシート
債務免除 実施前 |
実施後 | 債務免除 実施前 |
実施後 | ||
資産 |
918 |
918 |
その他債務 |
646 |
646 |
民間債務 |
814 |
458 |
|||
支援対象 |
764 |
408 |
|||
その他借入 |
50 |
50 |
|||
公的債務 |
1,455 |
1,185 |
|||
水俣病関連 |
1,369 |
1,099 |
|||
設備県債 |
86 |
86 |
|||
累積損失 (債務超過額) |
2,085 |
1,459 |
資本金・準備金 |
88 |
88 |
計 |
3,003 |
2,377 |
計 |
3,003 |
2,377 |
塩化ビニール樹脂の商権譲渡の件 鐘化発表
このたび当社は、塩化ビニール樹脂の販売商権を鐘淵化学工業株式会社(本社:大阪市北区、社長:武田正利)に譲渡することで同社と基本的に合意した。
当社としては塩化ビニール事業の不採算構造から脱却するために、かねて事業の縮小を軸に徹底した合理化の検討を行ってきたが、実施に当たっては、長期に亘り当社の塩化ビニール樹脂を使用いただいているお客様への影轡を極力回避するため、コア事業として塩化ビニール事業の強化を進めている鐘淵化学工業(株)の協力が必要と判断した。
具体的には、平成12年4月1日を目途に、当社は塩化ビニール樹脂の販売を鐘淵化学工業(株)に移管し、以後両社の販売は鐘淵化学工業(株)に一本化される。それまでの間に、当社の従来からのお客様に対して、両社共同して本件についてのご理解をいただくべくご説明とお願いにあがる予定であり、円滑な販売移管の実現に最大限の努力をする所存である。
当社は老朽化が進んでいる水俣工場、五井工場の設備については、適宜休止するが、新鋭設備の水島工場は運転を継続し、鐘淵化学工業(株)からの生産委託を受ける。
当社は、このたびの「チッソ再生計画」の中で、事業構造転換を掲げているが、本件はその一つの施策である。生産、販売の抜本的な合理化により塩化ビニール樹脂事業の縮小均衡を図り、これにより生じる経営資源を機能材料分野等の戦略強化事業に投入し、会社としての収益基盤の安定を目的とするものである。
フタル酸系可塑剤事業における合弁会社設立の件
三菱ガス化学株式会社
チッソ株式会社
三菱ガス化学株式会社(本社:東京都千代田区、社長:大平晃)とチッソ株式会社(本社:東京都千代田区、社長:後藤舜吉)は、それぞれフタル酸系可塑剤事業を展開しておりますが、今般両社のフタル酸系可塑剤事業の生き残りとさらなる発展を目指すためには、原料から生産、販売までの両社のフタル酸系可塑剤事業の一体運営により、事業全般に亘る効率化と合理化を図ることが必要不可欠であるとの認識から、フタル酸系可塑剤の合弁会社を設立することにつき、下記のとおり合意に達しました。
1.背景および趣旨
現在三菱ガス化学株式会社(以下「三菱ガス化学」という)においては50千トンのフタル酸系可塑剤設備を水島工場に有し、生産販売事業を展開するとともに、その主原料の一つであるフタル酸の生産を行っている。またチッソ株式会社(以下
「チッソ」という)においては、その100%出資の生産会社であるチッソ石油化学株式会社が70千トンの生産設備を五井工場に有し、フタル酸系可塑剤を生産するとともに、その主原料のーつであるオクタノールを生産し、販売をチッソが行う形で事業を展開している。
三菱ガス化学とチッソは、従来から独自に生産販売コストの削減に取り組むと同時に、相互に生産の受委託をし、両社連携によるコスト削減にも努力を傾注してきたところである。
しかしながら、現状での合理化努力には限界があり、国際競争力を強化するためにも、よりー層の効率化が必要不可欠であるとの判断から、このたび三菱ガス化学とチッソは、合弁会社を設立し、両社の販売と生産をー体化することにより、事業効率の向上を図ることで合意に至った。
2.内容
(1)新販売会社の概要
新販売会社の概要等は以下の通り。
[1]社名 未定
[2]資本金 4億5千万円
[3]出資比率 三菱ガス化学50%、チッソ50%
[4]設立時期 2000年3月上旬(予定)
[5]営業開始 2000年4月1日(予定)
[6]業務内容 可塑剤の製造・販売業務および付帯関連業務
[7]役員 取締役8名(常勤2名2、監査役2名
[8]従業員 常勤役員を含めて12名
[9]売上高 年間約100億円
[10]本店所在地 東京都
[11]営業拠点 東京、大阪
(2)新製造会社の概要
生販一体事業として運営するため、親会社から製造部門を分社化し、
二つの製造会社を設立する。
[1]水島の製造会社(社名:未定)
資本金 10百万円:三菱ガス化学 50% 新販売会社 50%
[2]五井の製造会社(社名:未定)
資本金 10百万円:チッソ 50% 新販売会社 50%
(3)営業権譲渡
本年4月1日を目途に両社のフタル酸系可塑剤に関わる営業権を新販売会社に譲渡する。
(4)シエア
新販宛会社の推定販売シェアは20%となる。
3.合弁事業化のねらい
[1 | ] | 三菱ガス化学、チッソ両社の販売・製造業務をー体運営し、人員、諸コスト等の削減を推進するとともに、東西2ケ所の生産拠点の活用により、物流の効率化を図る。 |
[2 | ] | 両親会社からそれぞれ原料(フタル酸、アルコール)を安定的に供給することにより、合弁会社の原料基盤の強化を図る。 |
[3 | ] | 生産技術・研究開発に関し、効率的連用を目指す。 |
子会社株式の売却の件
1.子会社の概要(平成11年3月31日現在)
[1]商号:ヒノマル株式会社
[2]所在地:熊本市九品寺5丁目7番29号
[3]代表者の氏名:取締役社長 是木 佶
[4]設立年月日:昭和22年2月6日
[5]事業の内容:
農業用資材全般並びにその他の農産物の生産、加工、売買
各種プラスチック製品の生産、加工、売買
土木、建築、管工事等の設計、施工、その他
[6]決算期:3月末日
[7]従業員数:524名
[8]資本の額:6.7億円
[9]売上高:405億円
2.異動の前後における当社の所有に係る子会社の議決権の数及びその議決権の総数に対する割合。
(異動前)
[1]当社所有議決権数 3,238千株
[2]議決権の総数 6,350千株
[3]議決権の総数に対する割合 50.99%
(異動後)
[1]当社所有議決権数 0株
[2]議決権の総数
6,350千株
[3]議決権の総数に対する割合
0%
3.異動の理由及びその年月日
[1] | 理由 |
このたびの抜本的支援措置を受けるに当たり、当社として出来る限りの財政状態の正常化をはかるため。 | |
[2] | 異動年月日 |
平成12年1月31日 株券引渡 |
4.譲渡金額
約29億円
5.譲渡先
商号 積水化学工業株式会社
代表者 取締役社長 大久保 尚武
所在地 大阪市北区西天満2丁目4番4号
業績予想の修正の件
1.チッソ株式会社単体
下記のとおり、債務免除益、株式売却益及び過去勤務費用(退職給与引当金積立不足額)の発生が見込まれるため、当第76期(平成12年3月期)の業績予想の修正を行います。
(発生が見込まれる利益及び損失)
債務免除益
626億円
(関係金融機関 356億円)
(水俣病問題解決支援財団
270億円)
株式売却益 ヒノマル(株) 25億円
過去勤務費用 △42億円
(チッソ株式会社単体)
売上高 | 経常利益 | 当期利益(損失) | |
前期予想(A) | 1410億円 | 40億円 | △25億円 |
今回修正(B) | − | − | 584億円 |
増減額(B-A) | 609億円 |
2.連結
上記のチッソ単体の業績修正およびチッソ石柚化学(株)、チッソポリプロ繊維(株)の過去勤務費用のー括計上等により、当期利益に大きな変動が見込まれるため、当第76期(平成12年3月期)の連結業績予想の修正を行います。
(発生が見込まれる利益及び損失)
チッソ単体修正分 609億円
過去勤務費用 子会社分 △34億円
過去勤務費用税効果会計 14億円
連結損益修正 △19億円
(連結)
売上高 | 経常利益 | 当期利益(損失) | |
前期予想(A) | 2100億円 | 51億円 | △21億円 |
今回修正(B) | − | − | 549億円 |
増減額(B-A) | 570億円 |
水俣病原因企業「チッソ」特例措置廃止へ…業績好調で
国と熊本県は、水俣病の原因企業「チッソ」(本社・東京)に対して続けてきた、同社の内部留保に関する特例措置を2005年度限りで廃止することを決めた。
05年度は特例措置の期限切れにあたるが、同社は近年、液晶材料など情報技術(IT)関連素材の販売が好調で、特例措置の延長を申し出なかった。
特例措置は、同社の経営存続が危ぶまれる状況になったことを受け、2000年度から開始された。
同社への金融支援策に絡み、当初は経常利益目標額(約53億円)を超えた分があれば、その2分の1を内部留保するとしていたが、経営再建と患者への継続的な補償を優先させるため、内部留保額を4分の3に増額するなどして、熊本県などへの借入金返済に充てるべき資金を内部留保に回すことを認めていた。
当初3年間の予定だったが、業績回復が十分でなく、03年度から3年間延長されていた。
特例措置に伴って、同社は新規投資などを行い、05年3月期決算の当期損益で、約7億6100万円の黒字を計上。06年3月期は、過去最高の100億円の経常利益を見込んでいる。
同社の公的債務は05年3月末で、約1300億円(元金ベース)に上り、年間26億円程度の患者補償を続けている。この一方で、県への借入金返済額は現在、年間約10億円。県によると、特例措置がなくなれば、年間20億円以上が返済される見込みという。
チッソは「液晶製品を中心に業績は改善してきた。このまま続けば、特例措置が廃止されても経営に影響はない」としている。