2008/11/15  朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

泰山LCD、通貨オプションで420億円損失

 泰山LCDは14日、2008年7−9月期業績を発表し、為替ヘッジ用の通貨オプション商品に関連して6092億ウォン(約420億円)の損失を計上したことが明らかになった。清算損失5696億ウォンを含む取引損失が6039億ウォン、評価損が53億ウォンだった。

 損失規模は自己資本の88倍に相当し、昨年の年間売上高に匹敵する金額だ。同社の過去4年間の平均営業利益が約100億ウォンである点からみて、60年分の利益に相当する額の損失をわずか3カ月で出したことになる。

 泰山LCDはサムスン電子の主要納品業者で売上高6000億ウォン規模の中堅企業。為替変動に備えるため通貨オプション契約を結んだが巨額の損失を出したため、9月に会社再生手続きを申請し、現在は債権団による共同管理を受けている。

 

2008/10/09 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

【社説】手数料稼ぎのため企業に毒薬を売った銀行

 韓国の銀行が 主に国内の輸出企業を中心に、為替変動のリスクを回避するための金融派生商品「KIKO」を販売しながらも、そのリスクについて十分に説明していなかった ことが次々と明らかになっている。手数料の負担もまったくないかのように宣伝しながら、実は別の名目で商品の中に手数料を忍び込ませ、自分たちはしっかり と利益を確保していたという。ある銀行は企業に融資を行う代償として、「KIKO」を反強制的に販売した。そのためその企業は詳しい内容も理解できないま ま契約を行い、結果的にウォン安が進んだことで多額の損失が発生した。金融監督院は現在、「KIKO」が原因で発生した被害額について、520社で5兆 ウォン(約3580億円)に達すると推定している。

 銀行が米ウォール街の金融派生商品を模倣して作り上げた 「KIKO」。これを韓国の企業に集中的に販売したのは、昨年末から今年初めにかけての時期だった。SC第一・新韓・シティ・国民・企業・ウリ・ハナなど 8行から国営の産業銀行まで、すべての銀行が「KIKO」の販売に熱を上げた。中でも第一・新韓・シティ・外換4行の販売件数は全体の74%を占めている という。

 「KIKO」は約定期間の1年から2年の間に為替が一定の範囲内だけで動けば、企業は一定額のドルを市場よりも高く銀行に売って利益を得ることができる。しかしウォンが約定額を超えて安くなると、契約額の2倍から3倍にもなるドルを市場で高く買い取り、当初契約を行ったよりも安いレートで銀行に売 らなければならない。昨年末のようにウォンが高止まりする状況では、企業にとって利益となった。しかし最近のように一晩過ぎると大きくウォン安が進むよう な状況では、企業の損失は際限なく膨らんでしまう。為替の変動で企業が得る利益には制限がかかっている一方で、損失は無限大に責任を負わなければならない という奇怪な構造だ。銀行はこれを「先端的な金融技法を活用した安全な為替リスク回避型の商品」と宣伝し、企業に対し融資を行う代償として半ば強制的に購入させたという。

 銀行はこの「KIKO」に1%ほどの手数料を上乗せし、外資系銀行やヘッジファンドに売った。自分たちは何のリスクも負わずに数百億ウォン (100億ウォン=約7億2000万円)を稼ぎ出したことになる。銀行によるこのような手口は、世界の金融市場を破たんさせながら、自分たちだけ多額の ボーナスを持ち去るウォール街のハレンチな投資銀行経営者らと何も違わない。

 輸出品メーカーとして有望視されていた泰山LCDは、今年上半期だけで100億ウォンの損失を出しながら、「KIKO」の損失を埋め合わせること ができず、結局は倒産した。このような企業こそが、長い目でみれば銀行に利益をもたらしてくれる優良顧客のはずだ。銀行が目の前のわずかの手数料を稼ぐた めにこのような優良顧客を殺してしまえば、近い将来、自分の墓の穴を掘るような立場に追いやられてしまうだろう。

 

2008/10/08

「KIKO」損失額、1ドル=1300ウォン台なら5兆ウォン

  金融監督院によると、8月末現在、為替レートが一定幅以上変動すると通貨オプション契約が自動解消するノックイン・オプション、またはノックアウト・オプ ションと呼ばれる商品(通称KIKO)に加入した企業517社の総損失額は1兆6943億ウォン(約1300億円)だという。この数値は8月末当時のウォ ン相場、1ドル=1089ウォンで計算したものだ。

 現在のウォン相場は8月末と比べ、20%ほど下落している。7日には1ドル=1320ウォン台を割り込んだ。

 その結果、企業のKIKO関連累積損失額は4兆−5兆ウォン(約3000−3800億円)に増えるものと専門家たちはみている。

 

2008/10/30 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

KIKO被害:企業が銀行相手取り団体訴訟

 銀行で販売した金融派生商品「KIKO」(為替相場の変動に伴うリスクに備えた一種の保険)に加入し、ここのところのウォン安で膨大な損失を被った120社余りが来週初め、銀行を相手取って団体訴訟を起こす。

 「為替ヘッジ被害企業共同対策委員会」は29日、シティー、 SC第一、新韓、外換銀行など計13行を相手取り、訴訟を起こす意向を明らかにした。対策委員会側は「第1次としてまずは120社余りが訴訟を起こし、今 後は被害を受けた企業を中心にさらに募集し、第2次訴訟を進めていく計画だ」という。

 これに先立ち28日、対策委員会の依頼を受けた法務法人「ロゴス」がSC第一銀行を相手取り、「KIKO」の契約効力の中止を要請する内容の「オプション契約の効力停止仮処分申請」をソウル中央地方裁判所に提出した。

 


2008/10/08 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

なぜ「KIKO」は韓国で売れたのか

 通貨オプション商品「KIKO(ノックイン・ノックアウト)」は外資系銀行が設計し、韓国にやって来た「輸入金融商品」だ。他国ではそうでもないが、韓国では人気を呼んだ。それはなぜだろうか。

 KIKOは2005年ごろ、米国系のシティバンクが設計、韓国で初めて紹介されたといわれている。初期にKIKOに加入した企業は、商品設計通り実際にウォン高ドル安になったことから為替差益を得た。それ以降、KIKOは為替ヘッジ商品として知られるようになった。

 昨年からは外資系A銀行や韓国の複数の銀行が競い合うようにKIKO関連商品を発売、当時の外為市場の状況と相まって、契約は急増した。

 07年当時のレートはウォン高が進み、国内外を問わずほとんどの外為専門家がさらにウォン高になると予想していた。製品を売る際、為替差損で損をする中小輸出業者としては為替ヘッジに死活を賭けるしかなかった一方、手数料が入る銀行にとってはリスクゼロの収入源だった。

 金融業界のある人物は「10億ウォン(約7500万円)でKIKOを設計するプログラムを買い、コピーして売れば、黙っていても手数料として毎月10億ウォンがもうかるのだから、これを嫌がる銀行はない」と話す。

 一方、銀行の不十分な説明による販売や、銀行・中小企業間の不平等な契約関係も、KIKO加入増加に貢献した。銀行はこの金融商品を売る際、リス クについてきちんと伝えなかったり、(通常0.5‐2%程度の手数料を支払う)先物為替とは違い、手数料や証拠金なし、つまり事実上「無料」で為替ヘッジ するかのようにセールスしていた。このため中小企業としては、魅力的な為替ヘッジ商品にしか見えなかっただろう。

 しかも、銀行が直接KIKO加入を強要したケースもあったという。チョン・ソクヒョン為替ヘッジ被害企業共同対策委員長は6日、企画財政部の国政 監査証人として出席し、「銀行側は融資期限が来る時期にKIKOを勧め、これに加入すると期限を延長するケースもあった。さらにはKIKOに加入した企業 財務チーム関係者らを海外旅行に連れて行き、販促に力を入れていた」と語った。

 これに対し、都市銀行の関係者は「“ほかの銀行ではKIKOを売っているのに、どうして(この銀行では)売らないのか”という声も多かった。当時のレート予想を念頭に金融商品を売ったに過ぎない」と反発している。

 また、海外の投資資本が、海外の銀行と共に意図的にKIKOの販売をあおったという声も出ている。

 ハンナラ党の高承徳(コ・スンドク)議員は「韓国外為市場は規模が小さいため、いつでも投機筋のマネーゲームの場になる可能性がある。KIKOショックの背景には投機筋が介入している可能性も否めない」と主張している。