NEDO 新エネルギー・産業技術総合開発機構   

                 
http://www.nedo.go.jp/activities/shinsyo/shoene.pdf

エネルギー使用合理化 ガス拡散電極食塩電解技術開発
     平成11 〜14 年度,14 年度事業費 2.2 億円

 ソ ーダ工業は、食塩の電気分解により、苛性ソーダ、塩素などを生産する基礎素材産業ですが、電気をエネルギー源とするエネルギー多消費型産業であるためその省エネルギー化が望まれています。銀などを触媒とした
ガス拡散電極を食塩電気分解槽の陰極に用いることにより、従来法であるイオン交換膜法と比べて必要な消費電力の40%近くを削減できることが実証されています。本技術開発では、ソーダ工業における大幅な省エネルギーを実現するために、工業化に必要なガス拡散電極の耐久性の向上を図り、高度生産技術を開発し、実用規模電解槽での実証試験を行い、ガス拡散電極による食塩電気分解技術を確立します。


化学工業日報 2001/1/31

ガス拡散電極電解技術、東亞合成・名古屋で実用規模実証

 ガス拡散電極を使用した食塩電解技術開発は、実用規模の電解槽による実証試験に入る。東亜合成・名古屋工場で組み立て準備が進んでおり、来月中旬に運転を開始する。商業用電解槽と同等のスケールに引き上げて、ガス拡散電極法の性能評価を進めていくのが目的。また電極の量産技術確立については、性能を左右する大きな要因である充てん・塗工機の選定を終え、3月に導入される予定。これによって、すべての機器が揃うことになり、大量生産を目指した技術開発が加速される。現状の食塩電解技術に比べて40%の消費電力削減を可能にするガス拡散電極法の研究開発は、99年度から工業化研究の段階に入っている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が新化学発展協会に委託、日本ソーダ工業会も全面的に参加する体制となっている。期間は4カ年。


Chemnet Tokyo  2002/2/1

「ガス拡散電極」開発プロジェクト最終段階へ、東亞合成名古屋工場で実用化テスト

 ソーダ業界が1993年から取り組んできた「ガス拡散電極電解技術」開発プロジェクトは、基礎研究から実験設備によるテスト、さらに実験規模を大型化しての品質や耐久性評価といったように段階的に進めてきたが、最終目標年度の2002年度には、東亞合成名古屋工場に実用規模の電解槽を設置し、実証試験に入る。産官学共同の大型プロジェクトは最後の仕上げを迎える。
 
 「ガス拡散電極」というのは、食塩電解のさい陰極にガス拡散電極を使い、酸素からアルカリを得る技術のことで、本格的に工業ベースで利用できるようになれば世界ではじめての技術となる。消費電力は約40%削減できるとみられて、経済産業省でも高い「省エネ効果」に期待し、補助金をつけるなどの支援を行っている。
 
 研究はすでに最終項目である(1)ガス拡散電極の耐久性と量産技術の確立(2)実用化規模電解槽による実証運転試験の段階に入っている。
 
 具体的には、電解槽の電圧は期待通り2.2〜2.1ボルトの性能が得られるか、3〜5年の耐久性が保証できるか、などの点の確認が焦点になる。ただ、電解槽の構造には水平通電方式と垂直通電方式の2種類があり、このうち水平方式はこれまでの実証試験によって性能が確認されたが、電極構造としてはより実際的な垂直通電方式で確認する必要がある。

 東亞合成名古屋工場には今月下旬、水平式に続いて垂直式の第2電解槽が完成する。使用するイオン交換膜の大きさはは縦1.2m、横2.4mと、実機と同サイズ。垂直方式は2001年10月、この半分のサイズの中規模電解槽を完成してすでに各種の評価試験に入っている。実機サイズに拡大することで最終の“詰め”を行いたいとしている。「電極と構造体がクリアできれば問題はない。予定通りいきそうだ」と開発チームでは自身をみせている。


ガス拡散電極   ペルメレック電極梶@http://www.permelec.co.jp/TOP.htm

 水を電気分解をすると、陽極で酸素ガス、また、陰極で水素ガスを発生します。 逆に、陰極に酸素ガスを吹き込み、陽極に水素ガスを吹き込むと、それぞれが反応して電流を取り出すことができます。 これが燃料電池で、この原理は150年程も前にW.Groveによって発見されております。

電気分解反応   燃料電池反応
陽極反応 : 2H2O → O2 + 4H+ + 4e-   O2 + 4H+ + 4e- → 2H2O :陰極反応
          
陰極反応 : 4H+ + 4e- → 2H2   2H2 → 4H+ + 4e- :陽極反応
         
全反応 : 2H2O → O2 + 2H2   O2 + 2H2 → 2H2O :全反応
         

 不溶性金属電極DSEや白金電極などの平板電極を用いて電気分解した場合、発生したガスは速やかに電極から脱離しますので大電流を流すことができますが、これら電極に酸素ガスや水素ガスを吹き付けても反応は僅かしか進行せず、実用的な燃料電池を構成することはできません。この反応を速やかに進行させるために開発されたのがガス拡散電極GDEaです。

 ガス拡散電極GDEaは、ガス、電解液、触媒が同時に接触する三相界面が多数形成するように、構造体であるウェブと触媒から構成されております。 ペルメレックはE-TEK社(米国)の製品を、量産用の大量販売のみならず試験用の少量販売もしております。触媒を担持させたガス拡散電極GDEaの他、ウェブのみ、触媒のみの販売も致しております。

ガス拡散電極GDEaの電気分解への応用

 燃料電池では、2枚のガス拡散電極GDEaを陰極、陽極にそれぞれ利用しますが、片方のみの極を用いることもできます。 片方の極のみを用いた例としては、酸素ガス拡散電極を用いた空気電極が有名です。 電解プロセスにおいて、ガスを発生させる電極に換えてガス拡散電極GDEaを用いると、大幅な電圧低減が期待できるため、その応用研究が進められております。 具体的には、亜鉛の水素ガス陽極を用いた亜鉛の電解採取や酸素陰極を用いた食塩電解が研究されております。 ペルメレックも、幾つかの分野でガス拡散電極GDEaを用いたプロセスを開発、また、販売致しております。

酸素ガス陰極

酸素ガス陽極に特殊な触媒を用いることにより、酸素ガスから過酸化水素(H2O2)を合成することができます。 ペルメレックの販売する過酸化水素製造装置は、この原理を利用したもので、運搬や貯蔵に危険を伴う過酸化水素を使用現場で連続的に生成することができます。

水素ガス陽極

陰極で発生した水素を陽極で利用することによるハイドリーナシステムを塩素発生のない苛性ソーダ製造装置として、また、低電力消費型の酸アルカリ回収装置としての開発を進めております。


ペルメレック電極

  1969年6月30日
設立目的   不容性金属電極 DSE (Dimensionally Stable Electrode)の事業化
本社・工場   神奈川県藤沢市遠藤2023−15
事業内容   1.金属電極並びに関連機器、器具の輸出入、製造、販売及び賃貸
2.前号に関する機器、器具の利用、その開発及びその技術の販売
3.前各号に関連する事業
資本金   90百万円
株主構成   三井物産株式会社 50%
De Nora社 50% (イタリア)   
http://www.denora.it/
従業員   72人

 


化学工業日報 2004/2/16

「ガス拡散電極」環境世紀支える夢の電解技術、いよいよ実用段階に
 電圧、耐久性など目標値ほぼクリア来年度内にも製法確立

 ソーダ産業界が開発を進めている次世代の食塩電気分解技術「ガス拡散電極」が、いよいよ実用段階を迎えつつある。現在主流のイオン交換膜(IM)法による製造と比べて40%もの電力削減が可能となるもので、21世紀の環境時代を支える、まさに夢の生産技術。約20年をかけて行われてきた研究開発が、現在までに目標とする数値などをほぼクリアし、このほど事業化に向けた最終試験段階に入った。来年度いっぱいで実用レベルの製造法が確立できる見込みとなっており、あとは「夢の技術を夢で終わらせない」(業界関係者)ための投資決断を待つだけとなってきた。

 ガス拡散電極製造法は塩素と力性ソーダの製造に燃料電池技術を応用しようというもので、具体的には陰極に新規電極を組み込んだ電解槽と呼ばれる製造プラントの新規開発が進められている。日本は世界に先駆けて最先端のIM法と呼ばれる電解槽を採用しており、電力原単位はもともと低い。しかし新しい電極技術を活用すれば、さらに40%もの省エネにつながるとされる。
 1986年に業界から山梨大学への委託研究のかたちで本格化した開発は、国の補助金を受けて行われた「実用化研究」「工業化研究」を経て、今年度からは日本ソーダエ業会加盟8社を中心とした「事業化研究」に入っている。ここでは、電極の安定性達成のために、電流密度1m2当たり3KAにおける電圧2.1V以下、耐久年数5年間、高電流密度時の安定運転確認などを2年間の予定で進めている。
 これまでの研究成果を踏まえての最終開発といえるもので、垂直通電方式による中規模電解槽による実運転試験では、同3KA時の標準電圧2.10Vを得るなど目標数値を達成。引き続き高分子型電極と名付けた耐久性の高い新規電極を装着したプラントを今月から稼働させた。一連の研究が終了する2004年度中には実用化を可能とする実証結果とデータがすべて揃い、いつでも営業プラントを建設できることになる予定だ。
 国内の電解事業は長期にわたる事業不採算や国内需要の伸び悩みなどに直面しており、新規投資へのハードルが高いことも事実。しかし、力性ソーダ、塩素とも生産量が年間400万トンを超える大型汎用素材で幅広い産業を支えており、生産自体が消滅することは当分あり得ない。環境問題への貢献はもちろん、電力コストの割高な国内で生産を続ける以上は新プロセスヘの移行はいずれ必至になるとみられる。ガス拡散電極の開発は世界的に進められてきたが、現状日本がダントツで進んでおり、産業競争力の強化という観点からも業界をあげて行われてきた開発の一日も早い実用化を望む声が高まっている。