化学工業日報 2002/10/25
小名浜製錬 社長 川北 鎮雄 氏
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6月に硫酸協会会長に就任、安全対策などに力を注ぐ
化学の“コメ”啓蒙促進
「地味な印象があるかもしれないが、歴史は古く、極めて重要な役割を持っている。有機、無機問わず化学工業全般にわたって幅広く使われている基礎原料であり、いわば化学工業界のコメだ」と強調するのは今年6月に硫酸協会の会長に就任した小名浜製錬の川北鎮雄社長。硫酸は成熟製品としての色彩が濃いのは事実だが、かといって需要がなくなるわけではなく、「流通を含めて品質はもとよりサービスもより万全なものにし、ユーザーに絶対安心して使っていただけるようにしなければ」と語る。
わが国の硫酸生産量はここ10年、650万−700万トンで推移、量的にはエチレンに匹敵、「衣食住にかかわりを持つ」不可欠な基礎原料だ。しかし「国内産業の空洞化に起因した生産と内需のアンバランスが少しずつ拡大する」ことを心配する。硫酸メーカーが新需要を創造するのは「なかなか難しい」のが現状で、「中国を中心とした世界市場で円滑に販売していくことが非常に大事」とみる。
このなかにあって「業界共通の問題を解決する」硫酸協会の果たす役割は重要。とくに「安全や環境対応」を代表例に挙げ、「硫酸をもっと可愛がってもらえるように、微力ながら会長として尽力したい」と謙虚で実直な言葉の中にも強い意志が見え隠れする。
小名浜製錬は共同製錬会社で銅製錬の副生物として硫酸を生産。現在、鉱石を溶かす反射炉を利用した環境ビジネスに意欲的だ。川北氏は1999年11月に親会社の1つ、三菱マテリアルから社長に就任した。ちなみに大学ではノーベル化学賞受賞者の野依良治名古屋大学教授と同窓。
硫酸の事業提携および新会社の設立について
同和鉱業株式会社(本社:東京都千代田区丸の内一丁目8番2号、社長:川廣和)と住友金属鉱山株式会社(本社:東京都港区新橋五丁目11番3号、社長:福島孝一)は、このたび硫酸事業について、対等な立場で事業提携を行うことについて基本合意に至りました。両社は、折半出資により硫酸の生産および販売を行う新会社を設立し、平成15年4月1日を目途に営業を開始します。
国内における硫酸生産は、非鉄金属製錬での硫化精鉱処理により産出されるものと、硫酸生産を目的とした回収硫黄焙焼によるもの等がありますが、国内では肥料用・工業用ともに需要が減退するなど硫酸マーケットは年々縮小しており、販売状況は極めて厳しいものがあります。今回の提携はこのような状況をふまえ、今後硫酸メーカーとして生き残っていくためには、企業の枠をこえて協力・提携し、生産・物流・販売面での効率化をはかっていくことが不可欠と判断したことによります。
両社は、同和が持つ国内マーケットにおける販売面の強みと、住友が持つ品質面・立地面の優位性を結合することにより、現下の厳しい事業環境に対応していきます。
新会社は、秋田、小坂、小名浜、播磨、岡山、東予の国内6箇所の生産拠点、国内15箇所、海外2箇所の中継基地を有機的に活用し販売活動を行い、デリバリー、品質等顧客へのサービスをさらに向上させます。今後、全ての生産拠点を対象として、統廃合、増強や生産品種の見直しを進め、生産の最適化をはかります。
今回の提携による効果は、輸送の効率化、販売管理費削減、生産の効率化等により年間10数億円を期待しています。また、今回の提携をベースとして、今後両社は幅広く協力関係を強化してまいります。
なお、今後の業務提携の具体化にあたっては、公正取引委員会等関係官庁ともご相談しながら進めていきます。また、新会社の詳細については今のところ固まっておりませんが、今後両社が協議の上決定していきます。
硫酸の事業提携における新会社の設立について
同和鉱業株式会社(本社:東京都千代田区丸の内一丁目8番2号、社長:吉川 廣和)と住友金属鉱山株式会社(本社:東京都港区新橋五丁目11番3号、社長:福島 孝一)は、硫酸事業における事業提携のための新会社を本日設立いたしました。
事業提携により設立する新会社の概要は以下の通りです。新会社は両社の硫酸とその関連製品を一手に販売することになります。
社名 : 株式会社アシッズ Acids Co., Ltd. 代表者 : 代表取締役社長 原 哲夫(同和鉱業株式会社 執行役員) 資本金 : 1.5億円 出資比率 : 同和鉱業 50%、 住友金属鉱山 50% 事業内容 : 硫酸および関連製品の製造販売 本店 : 東京都港区新橋5-10-5 新橋同和ビル 設立 : 2003年2月14日 営業開始 : 2003年4月1日(予定) 年商 : 約120億円
日刊工業新聞 2003/8/19
同和鉱業、岡山の硫酸生産を休止
同和鉱業は18日、岡山工場(岡山市)での硫酸とその関連製品の製造を10月末で休止、住友金属鉱山の東予工場(愛媛県西条市)に集約すると発表した。両社は硫酸事業で提携し、販売は共同出資会社に統合しているが、生産に踏み込むのは初めて。物流費など両社を合計して年間約10億円のコスト削減効果を狙う。
同和鉱業が岡山工場で休止するのは、購入した硫黄を原料に硫酸を年間約17万トン製造している工程。コスト削減には、銅精錬工程の副産物として硫酸が得られる東予工場に、供給を置き換えることが得策と判断した。
2社を合計した硫酸の生産量は01年度実績で年間約165万トン。今回の生産集約を機に、採算が悪化した輸出量を減らし、生産量は01年度比で10%減に絞る。同和は岡山工場を硫酸の中継基地として使うほか、設備はバックアップ用として維持。硫酸製造の拠点は両社合計で5拠点となる。
昭和電工グループ、硫酸事業を営業一体化し強化
昭和電工は、硫酸事業を昭光通商と一体化して強化することを目的に、6月1日付で同事業の営業部門を昭光通商に移管する。これにより昭和電工グループの硫酸事業は、昭和電工が品質保証など含めた製造機能を、昭光通商が営業をそれぞれ担当する体制となる。営業一本化により意思決定のスピードを速め、需要家ニーズにより素早く応える体制を確立する。