朝日新聞 2004/11/06

モーターショーで「尿素」注目 排ガス対策の切り札に

 千葉市の幕張メッセで7日まで開催される商用車の東京モーターショーで、化粧品にも使われる「尿素」が、ディーゼル車の排出ガス浄化の切り札として注目されている。
日産ディーゼル工業は新技術を採用した大型トラック「Quon(久遠)」を出品、11月中にも売り出す計画だ。三菱ふそうトラック・バスもエンジンを展示している。尿素の供給などインフラ整備が課題だが、来年10月に始まる世界一厳しい排出ガス規制に向け、各社とも売り込みに余念がない。

 新技術は、エンジンの燃焼温度を上げて粒子状物質(PM)の発生を抑制。その過程で増える窒素酸化物(NOx)に、尿素を水に溶かした尿素水を噴射して、水と窒素に分解する仕組み。高温燃焼のため燃費が良いことも利点だ。

 これまでは燃焼温度を下げてNOxを減らし、排気口にフィルターを付けるなどしてPMを削減する手法が主流だった。

 来年10月の新規制は現状規制よりPMを85%、NOxを40%削減するもので、適用時点では世界で最も厳しい。これをクリアするトラックを1年前倒しで投入する。

 課題は尿素水の供給体制の整備。日産ディーゼルは全国約1千の大型トラック向け給油施設と交渉し「約8割が供給する見通しになった」と言う。尿素水タンクなど付属品のコスト削減も課題。

 一方、日野自動車といすゞ自動車は、排出ガス再燃焼など従来の技術を改良したエンジンを出して対抗。「尿素水を補給するのは手間がかかる。従来の技術のほうが顧客の要望にあっている」(日野)と訴える。


2004年10月7日 日産ディーゼル工業

平成17年(新長期)排出ガス規制対応技術「FLENDS」を実用化
〜今秋発売予定の大型トラックに尿素SCRシステムを世界で初めて搭載〜
http://www.nissandiesel.co.jp/newsrelease/2004/1007scr.html

 日産ディーゼル工業(株)(社長 仲村 巖)は、平成17年(新長期)排出ガス規制対応技術として、超高圧燃料噴射と尿素SCR触媒※1を組み合わせた尿素SCRシステム「FLENDS(フレンズ)」※2を実用化する。
 この尿素SCRシステムは今秋発売予定の平成17年(新長期)排出ガス規制適合大型車に世界で初めて搭載予定である。

 平成17年(新長期)排出ガス規制は、世界で最も厳しいディーゼル排出ガス規制であるが、当社は、お客さまの燃料経済性と環境対応の両立という高い次元の要求に応えるべく、新大型車に「FLENDS」を採用し、規制開始に対して1年前倒しで市場へ投入する。
 尿素SCR触媒は欧州の主要なトラックメーカーが既に採用を決定している、次世代のNOx低減技術であり、今後のグローバルスタンダードとなりうるものである。

 また、「FLENDS」に必要となるNOx還元剤としての「AdBlue(アドブルー)」(尿素水)は、全国約800ヵ所のトラックステーションで供給される予定である。さらには弊社サービス拠点185ヵ所でもバックアップ体制をとる。

※1 SCR:Selective Catalytic Reduction(選択還元型NOx触媒)
※2 FLENDS:Final LOW Emission New Diesel System

1.平成17年(新長期)排出ガス規制への対応

 平成17年(新長期)排出ガス規制では、PM 0.027g/kwh、NOx 2.0g/kwhという規制値まで低減しなければならない。 当社の対応として、まず、超高圧噴射により、PMを大幅に削減する。この際、トレードオフ
※3により、NOxが大幅に増加するため、これを尿素SCR触媒で削減する。(イメージ図) これら一連の反応を総合的に制御するシステムが「FLENDS」である。

※3 トレードオフ:PMは低温時・燃料の不完全燃焼時に発生しやすく、NOxは高温時・燃料の完全燃焼時に発生しやすいという全く相反する性格を持っている。

(イメージ図)

2.「FLENDS」について

1)超高圧燃料噴射
 新世代のユニットインジェクタを採用し、燃料噴射圧力を高圧化することで、燃料が微細化し、空気との混合が促進され、完全燃焼することでPMの発生を抑えることができる。
 これにより、燃焼効率を大幅に向上させ、PMを低減するとともに、低燃費を実現した。

2)尿素SCR触媒
 NOxにAdBlue(尿素水)を混合すると、無害な水と窒素に分解されることから、エンジン内での超高圧燃料噴射とエンジン回転数に対応して、尿素水を適切な量とタイミングで添加する。
 触媒にAdBlue(尿素水)を添加することで、超高圧燃料噴射システムで増加するNOxを低減することができる。

3)システム図

4)環境性能
 新短期規制に対して、PMを85%、NOxを40%削減している。

3.「AdBlue」(尿素水)について
1)特長
 JASO(Japanese Automobile Standards Organization:日本自動車規格)にて制定された規格 「AUS32JASOE502」
※4の無色・無臭・無害、尿素32.5%の水溶液であり、取扱上の資格は不要。

※4 AUS:Aqueous Urea Solution

2)供給インフラ
@製造・流通・販売ルートについて
 AdBlue(尿素水)製造は
三井化学(株殿、流通は三井物産(株)殿、販売は鈴与トラックステーション(株)殿をはじめコーナンフリート(株)殿、太陽鉱油(株)殿、(株)一光殿、(株)宇佐美鉱油殿、(株)新出光殿、等に担当して頂く。これにより、AdBlue(尿素水)を販売するトラックステーションは787ヵ所(04年9月末現在)となる。また、バックアップとして弊社サービス拠点185ヵ所でも取扱を行う。
各トラックステーションにおいては、トラックへのAdBlue(尿素水)補給だけでなく、運送会社などの大口のお客様からの受注窓口や小型容器による販売も担当して頂く。

<AdBlue(尿素水)販売拠点数>
  鈴与トラックステーション(株)殿 85ヵ所
  コーナンフリート(株)殿 130ヵ所
  太陽鉱油(株)殿 72ヵ所
  (株)一光殿 100ヵ所
  (株)宇佐美鉱油殿、(株)新出光殿、等 400ヵ所
  合 計 787ヵ所

Aトラックへの供給方法
 トラックステーションや大口のお客様の車庫などでは、簡易スタンド(600g内蔵)やタンク(1000g)を活用して、トラックへ補給する。また、小型容器(10gまたは20g)による補給も可能とした。


2004/08/03 三井化学

ディーゼル車排出ガスNOx還元剤(高品位尿素水)の販売開始について
http://www.mitsui-chem.co.jp/whats/040804.pdf

 当社(社長:中西宏幸)は、日産ディーゼル工業株式会社(社長:仲村巌、以下「日産ディーゼル」)が、今秋、新長期排出ガス規制(平成17年規制)適合車として尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムを搭載した大型トラック(ディーゼル車)を発売開始されることに対応し、同システムに排出ガス(NOx)の還元剤として使用される高品位尿素水を新たに製造販売することと致しました。

<概要>
1.製 品:ディーゼル車排出ガスNOx還元剤(高品位尿素水)
2.商品名:AdBlue
3.製造設備:当社大阪工場内に設置
4.生産能力:20,000トン/年
5.スケジュール:着工:2004年7月
           完工:2004年9月
           販売開始:2004年10月
6.売上高:50億円(07年度)

 わが国の自動車排出ガス規制は、環境保全への取組みの高まりから年々強化されており、平成17年施行の新長期排出ガス規制に適合する自動車の開発が必須となっております。特に大型トラック等のディーゼル車の排出ガス低減は重要な課題でありますが、排出ガス中に還元剤として尿素水を噴霧し反応させ、無害な窒素と水に分解する尿素SCRシステムは、新長期排出ガス規制に適合する窒素酸化物(NOx)低減技術の1つとして、注目されております。

 当社は、中期経営計画において、レスポンシブル・ケア精神の下、環境問題に積極的に対応することとしており、尿素の国内トップメーカーとしてこのSCRシステムに着目し、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施した「高効率クリーンエネルギー自動車の研究開発」事業において、同システム導入に向けた課題検討に参画すると共に、同システムに対応した高品位な尿素水の安定的な製造方法の確立に注力して参りました。今般、日産ディーゼルが、尿素SCR システムを搭載した新長期排出ガス規制適合の大型トラックを発売開始されるのを機に、当社はNOx還元剤としての尿素水(商品名:AdBlue アドブルー)の商業生産を開始することとしたものです。
 EU各国においては、大型ディーゼルトラックに本システムがスタンダードとして採用されることがほぼ決定しており、わが国に於いても将来的にこのシステムがスタンダードとなる可能性が高く、その普及に伴いAdBlueの需要も増加していくものと期待されます。当社は、尿素SCRシステム搭載車の安全な稼動のために要求される厳しい品質基準を満たす高品位な製品を、全国各地の給油基地・トラックステーションに対し円滑に供給するため、当初は原料である尿素の製造プラントのある大阪工場を主力生産拠点と致しますが、順次国内各地に生産拠点を立ち上げ、整備していく所存です。


平成16年11月2日 三菱化学/日本化成

次世代超低公害ディーゼル車用尿素水の販売開始について
http://www.m-kagaku.co.jp/newsreleases/2004/20041102-1.html

 三菱化学株式会社(本社:東京都港区、社長:冨澤 龍一)は、今般、次世代超低公害ディーゼルトラックに導入される尿素SCRシステムに対応する高品位の尿素水の開発に成功しました。本年12月1日より、三菱化学グループの無機事業の中核を担う日本化成株式会社(本社:福島県いわき市、社長:一万田 道敏)において製造・販売を開始いたします。

 尿素SCRシステムとは、ディーゼルトラックのエンジンから接続される排気管内に尿素水を噴射し、排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を無害な水と窒素に分解することで、排気されるNOx量を大幅に低減する超低公害技術です。

 自動車、特にディーゼル車の排出ガス中のNOx量低減は、日本でも重要な課題となっており、平成17年には、一段と厳しい規制となる新長期排出ガス規制が施行されますが、尿素SCRシステムを導入することで、この新たな規制をクリアするだけでなく、他の低公害技術を導入する車両に比べ燃費が10%超改善するメリットが得られます。こうした利点から、同システムは、今後ディーゼルトラックへの搭載が事実上の標準規格になると考えられており、まもなく商品化される見込みです。

 三菱化学では、平成14年から独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が提唱してきた「高効率クリーンエネルギー自動車の研究開発」事業において尿素SCRシステムの研究に参画してきました。また、長年尿素関連事業で培ってきたノウハウを活かして、時間経過や温度変化による尿素水内の不純物の生成を抑制する技術を確立し、よりSCRシステムに適した高品位尿素水の開発に成功しました。一方、日本化成は、小名浜工場(能力 2.3万kl/年)及び黒崎工場(能力 1万kl/年)の東西2箇所に国内最大の高品位尿素水製造能力を有することになることから、ユーザーのニーズに合わせた最適な製品の供給が可能となります。今後、自動車燃料の分野において販売・物流面で知見と実績のある伊藤忠エネクス株式会社等と提携し拡販を図るなど、同事業を積極的に推進してまいります。

注) SCR:Selective Catalytic Reduction(選択還元型)の略

 


日本経済新聞 2005/8/18

高品位尿素水に日産化学が参入 ディーゼル車向け

 日産化学工業はディーゼル車向けの高品位尿素水事業に参入した。尿素水は排ガス中に噴霧し、窒素酸化物(NOx)を大幅に減らす。日産ディーゼル工業が対応トラックを販売しており、三菱ふそうトラック・バスにも技術供与する。同尿素水の需要は2010年に20万トン以上と50倍に増えるとの見方もあり、三井化学や三菱化学も生産能力を増強する。
 日産化学は富山工場(富山市)と名古屋工場(名古屋市)でディーゼル車向け高品位尿素水の量産を始めた。生産能力は合計で
年4万トン。設備は既存の尿素関連プラントを転用し、タンクや品質を見る分析装置などを導入した。100%子会社の日星産業(東京・中央)を通じて販売する。増産も検討し、10年度に20億円の売り上げを目指す。

 
三井化学は大阪工場(大阪府高石市)で生産している。年産能力は2万トン。横浜市のアンモニア関連製品メーカーに生産委託する形で拠点を拡充した。年産能力は5千トンで、主に関東地域に供給する。10年までに北海道や東北、九州などにも生産拠点を設け、供給体制を整備する。

 
三菱化学は子会社の日本化成を通じて事業を展開している。黒崎工場(北九州市)と小名浜工場(福島県いわき市)で合計3万6千トンの生産能力を持つ。06年中にはフル稼働になる見込みで、07年以降に生産能力を増強する考えだ。

 ディーゼル車の排ガス規制は09年にも一段と強化され、世界で最も厳しくなる見込み。尿素水を使うと現状のNOx削減技術に比べて燃費を改善する効果もある。