2003/03/17
京大、NTT、パイオニア、日立、三菱化学、ローム
「包括的産学融合アライアンス第1回成果発表
−有機系エレクトロニクス・デバイスによる新産業創出に向けた融合連携−
京都大学(総長:長尾 真)と、日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、取締役社長:和田 紀夫/以下NTT)、パイオニア株式会社(本社:東京都目黒区、取締役社長:伊藤 周男/以下、パイオニア)、株式会社日立製作所(本社:東京都千代田区、取締役社長:庄山 悦彦/以下、日立)、三菱化学株式会社(本社:東京都千代田区、取締役社長:冨澤 龍一/以下、三菱化学)及びローム株式会社(本社:京都市右京区、取締役社長:佐藤 研一郎/以下、ローム)の5社は、次世代の有機系エレクトロニクス・デバイス革新技術に基づく新産業の創出を目的とした包括的産学融合アライアンス(以下、本アライアンス)の成果について発表します。
京都大学、NTT、パイオニア、日立、三菱化学、ロームは、2002年8月1日より、国際融合創造センター(京大IIC)を核として、将来の新産業の創出に繋がる知的創造や社会に対する新科学技術の先導・提言に貢献することを目標とする本アライアンスを開始し、「有機系エレクトロニクス・デバイス」を包括的テーマとして16の研究テーマ(参考資料1)を設定し、研究開発を推進しています。
1.趣旨
本アライアンスでは、適宜成果の内容を発表することとします。今回、第1回目として正式発足から8ヶ月間に得られた成果を発表します。
本アライアンスは産学官連携の新しい事例として関係各所から注目されておりますので、運営に関して得られた知見も発表します。本アライアンスが、日本における産学官連携のモデルケースのひとつとなることを期待しています。
2.成果
本アライアンスでは、有機系エレクトロニクス・デバイスの要素技術である、分子設計、有機合成、高分子合成・複合化、特性評価とプロセス開発、機能デバイス化それぞれについて、参加企業の経験を生かす産学融合連携とテーマ間の相乗効果が発揮される運営体制としました。テーマ毎に5社のすべてから選任された研究者が京都大学の研究者に協力して研究が推進されています。(補足説明参照)
本年4月上旬までに開催される学会で発表を予定している成果のうち、4件の内容を示します。
1.「新規フラーレン誘導体の合成」 | |
: | (代表者:京大化学研究所助手 村田靖次郎) 3月18日から開催される日本化学会で発表予定。 |
2.「チタニアナノチューブを用いる色素増感太陽電池の高効率化」 | |
(代表者:京都大学エネルギー理工学研究所教授 足立基齋) 4月1日から開催される電気化学会で発表予定。 京都大学では、本アラインス発足前からチタニア(二酸化チタン)のナノチューブを用いた色素増感太陽電池の研究を推進。(特許出願実施済み。) 本アライアンスにより光電変換効率 8.2 % を達成。 引き続きナノチューブの合成法を改良し、さらに変換効率向上を目指す。 |
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3.「ナノギャップ電極を用いた有機FET」 | |
(代表者:京都大学大学院工学研究科講師 石田 謙司) 3月27日から開催される応用物理学会で発表予定。 有機半導体材料分子固有の特性発現を可能にする有機薄膜電界効果トランジスタ構造を提案。 高濃度にドープされたシリコンをゲート電極として、電子ビーム露光により20nmのナノギャップを持つソース、ドレイン電極を形成しトランジスタ動作を確認。 本技術は、ひろく有機半導体材料の評価手法として活用が可能。 |
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4.「電子材料接合界面の量子電磁相互作用の解析」 | |
(代表者:京都大学大学院工学研究科教授 立花明知) 3月18日から開催される日本化学会で発表予定。 |
補足説明:「包括的産学融合アライアンスの特長ある取り組みについて」
京都大学と5社は、京都大学が有する世界トップレベルの基礎研究力(シーズ)と、企業が有する市場(ニーズ)指向の技術経営力の強みを融合することにより、新たな科学技術の創造と、新産業の創出を目指して、2002年8月1日、京都大学国際融合創造センター(以下「京大IIC」。センター長:松重和美)を中核とする新しい包括的な産学融合研究アライアンスを開始しました。
本アライアンスは、「有機系エレクトロニクス・デバイス」の分野で、ナノテクノロジー,有機系および有機・無機複合新材料,次世代デバイス、新規プロセス等をキーワードとして以下の5分野の技術開発を行うことを目指しています。
−高機能フレキシブルディスプレイの基盤技術及び開発研究
−有機太陽電池及び高効率有機光電変換材料の開発研究
−有機系超大容量メモリデバイスの基盤技術と高機能光学材料の開発
−機能性ナノ複合体材料の開発とデバイス応用
−上記以外の有機系エレクトロニクスデバイス開発分野一般
現在、16の研究テーマが採択され、多岐にわたる専門分野の研究代表者が参加しており、各研究テーマ間の相乗効果の発現にも配慮しております。(参考資料1)参画人員は京大側要員90名、企業側要員80名となっています。
本アライアンスの特長は京都大学と技術の垂直統合を可能とする業種の異なる企業5社が複数の研究テーマを同時に推進する「異なる知の融合による創造」、「新しい形の融合連携」にあります。(参考資料2)
本アライアンスに参加する企業5社は、それぞれが有機系エレクトロニクス・デバイスの事業化に必要な、分子設計、有機合成、高分子合成・複合化、特性評価とプロセス開発、機能デバイス化などの要素技術についての豊富な経験を持っています。 16の研究テーマは、推進にあたって参加企業がその持ち味をじゅうぶん発揮できるように配置されています(Technology Push)。また、参加企業それぞれの事業分野の特長と視点を活かし(Market Pull)、製品化の目標を共有しながら併行して各要素技術の研究開発を行うこと(Concurrent Engineering)で、研究開発期間の短縮をはかります。(参考資料2および参考資料3)
このモデルを推進する過程では、研究分野の特定のために議論を重ねました。京都大学の研究者とのブレインストームを開催することを含めて、産・学双方のお互いの考え方に対する理解を深めた上で、2002年の4月に研究分野のキーワードを特定して、研究テーマの公募を全学に対して行いました。応募された提案を元に各企業と提案者のミーティングが活発に行われ、テーマ選定の段階から産学の融合化が進行し、テーマ間の相乗効果に配慮しながらテーマ選定が行われたことが特長です。2002年8月1日の正式発足後に、博士研究員を中心に研究者の活発な採用が開始され研究チームが組織され、一部企業からの研究者の派遣も開始されました。2002年10月までに融合連携を推進する体制が整い、他の研究テーマとの連携との相乗効果を持たせた研究開発が推進されています。(参考資料4)
研究テーマを推進するチームは、京都大学側の研究代表者と研究協力者に加えて、企業側から、京都大学の研究代表者とともに研究を推進し知的財産権の確立についても共同責任をもつ「コーディネーター」、実際に共同研究を行う専門家の「インダストリー・リサーチ・パートナー」、事業化を実施する5社の関連会社から参画する「情報共有者」からなる構成としました。テーマ間の相乗効果発現をはかるために、異なる専門分野から複数のインダストリー・リサーチ・パートナーを選任するように心がけました。各研究テーマは目的とする製品群ごとに設置したワーキンググループ毎に進捗管理を行っています。これら一連の運営の任は(京都大学教授8名と各企業の部長・グループリーダークラス10名からなる)推進委員会が当たっています。さらに、知財推進ワーキンググループを推進委員会に併設し、特許出願を加速できる体制としております。(参考資料5)
本アライアンス設立にあたって学んだことを参考資料6にまとめました。
包括的産学融合アライアンス発足
京都大学は、次世代の有機系エレクトロニクス・デバイス革新技術の研究開発による新産業創出を目的とした包括的産学融合アライアンスを、同大学国際融合創造センターを中核として、民間5社(NTT、パイオニア、日立製作所、三菱化学、ローム)と設立に合意し、正式に契約を締結した。
日本経済新聞 2003/3/19
阪大 東レの研究所に拠点 ナノテクなど共同研究
東レは5月に開設する「先端研究所」(神奈川県鎌倉市)内に大阪大学の拠点を設置する。ナノテクノロジー(超微細技術)分野などで共同研究に取り組み、大学の研究成果を早期に実用化する狙い。第一弾は医薬品開発などに使うチップの研究になる見込み。大学の研究拠点に企業が参加する例は多いが、企業の研究所に大学が拠点を置くのは珍しい。
東レの先端研究所のオープンラボ(共同研究拠点)に、阪大の産業科学研究所が拠点を設置する。共同研究テーマは年3件程度で、いずれも3年内の実用化を目指す。
まず阪大の川合知二教授と共同でナノテクとバイオ技術を組み合わせ、医薬品開発に使う「たんぱく質合成・解析チップ」の研究を始める予定。知的財産権は研究への貢献度見合いで配分する。
東レは阪大の拠点を誘致し、自社だけでは難しい基礎研究成果の活用につなげる。阪大は初期段階から製品化を目指した基礎研究に取り組む。