日本経済新聞 2005/5/27
電子ペーパー実用化メド
富士ゼロックス 画質、従来の2倍に
大日本印刷 低コスト生産確立
富士ゼロックスと大日本印刷は、紙のように薄い「電子ペーパー」で、画質を高める技術や低コストの生産方法をそれぞれ開発し、来年中にも事業化するメドをつけた。プリンター用紙やポスター、診察券など、身の回りの紙製品の中には電子ペーパーに置き換わるものが出てきそうだ。研究成果は米ボストンで開催中の情報ディスプレー国際学会(SID)で発表する。
富士ゼロックスの電子ペーパーは、2枚のフィルムの間に、液晶分子の入った微小なカプセルと感光体をはさんだ構造。厚さは数百マイクロ(マイクロは百万分の1)メートル。パソコンや専用機の画面に載せて電圧をかけると、文字や絵を写し取れる。プリンターで紙に出力しなくてよくなる。診察券などカードに添付すれば、次回の予約日や検査室への道順などを必要に応じて書き換えられる。モノクロ表示で1万回程度の書き換えが可能。カプセルの構造を工夫して白と黒のコントラストを従来の約2倍に高め、実用化にメドをつけた。価格はカードサイズで数百円、A4サイズで数千円を目標にしている。
大日本印刷の電子ぺーパーは、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)素子をフィルム基板に載せた構造。厚さは約0.2ミリメートルで柔らか。あらかじめ設定した文字や画像をカラー表示する。グラビア印刷に使う凹版に有機材料を付着させてフィルムに転写する低コスト生産法を確立、量産にメドをつけた。来年以降、ポストカードやポスターなどの分野で実用化する。寿命は1万時間程度で、実用レベルに達した。価格は量産段階で1枚千円以下を目指す。
英国のプラスチック・ロジック(ケンブリッジ)は、35センチメートル角でディスプレーのように自由に文字や絵を表示できる電子ペーパーを開発、試作ラインを稼働させた。オランダのフィリップスも、丸めると直径が0.75センチメートルになる電子ぺ-パーの2007年ごろの実用化を目指す。
電子ぺ-パーは薄くてかさばらず、持ち運びが容易。米ベンチャーと凸版印刷が昨年、電子書籍向けに電子ペーパーの供給を始めたが、様々なタイプが相次いで実用化されることで、普及が一気に進む可能性がある。