宇部日東化成 「ハイドラップ」

  「ハイドラップ」は光触媒効果を応用した透明なセルフクリーニングフィルムです。光(太陽光)で汚れを分解し、水(雨)で汚れ洗い流すので、看板や標識などの屋外表示物をいつもきれいに保てます。
 また東京大学先端科学技術研究センターと共同開発した成分傾斜膜を中間層に用いていることにより、これまでにない耐久性を実現しています。

特徴
 1.酸化チタン光触媒効果により、表面をいつもきれいに保つことができます
 2. 中間層に成分傾斜膜を採用しているため、これまでにない耐久性を実現します
 3.粘着加工が施してあるので、看板や標識へのラミネートが容易です
 4.透明でありながら紫外線をほとんど通さないので、基材の色あせ等を防止できます
 5.セルフクリーニング機能により、メンテナンス費用が大幅に削減できます

構成

 ハイドラップは、高耐候性PETフィルムの表面に成分傾斜膜(中間層)と光触媒酸化チタンがコーティングされており、裏面は粘着剤コーティング層とセパレータで構成されています。 なお貼り付け作業時における光触媒面の傷つきを防止するため、表面にはあらかじめ保護フィルムを貼り付けてあります。


用途例



日本パーカライジング 光触媒コーティング剤(パルチタンシリーズ)
          
 http://e-trade.kitakyu-techno-ctr.co.jp/ja/seeds/kitakyu/093.html

技術分野    抗菌 防曇性 防汚性 利用分野 建築材料

技術概要
   パルチタンは二酸化チタン光触媒を応用した新しい機能コーティング剤である。
 パルチタンの主成分である二酸化チタン粒子は超微粒子で表面積が大きく、表面に多くのOH基を持ち、これに水分が結合する事により優れた親水性を発揮する。
 この二酸化チタンは、太陽光などに含まれる紫外線にあたると触媒作用を発揮し、吸着した水や酸素分子を活性化して汚れや環境汚染物質を酸化分解する力を持っている。
 高純度の二酸化チタン光触媒による高い光触媒活性と優れた親水性との相乗効果により、清浄な表面を長期にわたって維持することが出来る。
   
特徴
  パルチタンは中性で安定な水系光触媒コーティング剤である。
腐食性の有害イオンを含まないため、機材や塗装機器をサビさせず作業環境が改善される。
パルチタンは各種機材への対応が可能である。
  コーティング前処理技術、プライマーコート技術により金属、セラミックス、プラスチック、塗装材等各種機材への対応が可能である。
  パルチタンはシリーズの中から防汚、抗菌、NOx除去、脱臭、等を目的とする用途に最適のコーティング剤を用意している。

効果
 パルチタン5600シリーズ
   1)抗菌性    2)親水性/防曇性  3)防汚性

 パルチタン6000シリーズ
   1)NOx浄化性  2)脱臭性

<パルチタン5600シリーズ>
パルチタンをコーティングすると次のような効果が得られて、幅広い用途に使用できる。
1) 抗菌性:コーティングした表面は、紫外線があたると酸化力を生じ殺菌作用を示す。 例えばブラックライト下では、2〜3時間程度でMRSAや大腸菌などの高い減菌率が得られる。
2) 親水性/防曇製:コーティングした表面は良好な親水性となり、紫外線の照射によりこの親水性は長時間にわたって維持することが出来る。 十分な紫外線のある屋外では結露しても曇らない効果も発揮される。
3) 防汚性:コーティングした表面は二酸化チタンの酸化分解効果により汚れを光分解するので、 油汚れ、煤、ヤニ、シーリング剤などの汚れがついても簡単な水洗いで表面はきれいになる。
   
<パルチタン6000シリーズ>
パルチタンを屋外や室内の壁や建材に塗布してNOxや汚染物質の除去を行う。また脱臭、空気浄化フィルター用としても効果を発揮する。
1) NOx 浄化性:二酸化チタンの酸化力が大気中の窒素酸化物や硫黄酸化物を酸化し、吸着除去する。除去されたこれらの酸化物は雨水で洗い流され、繰り返し効果を発揮する。
2) 脱臭性:パルチタン皮膜に紫外線を当てると、アルデヒド、アンモニア、アミン、メルカプタン等の悪臭、有害成分を吸着、分解する。活性炭などの吸着剤と異なり、脱臭能力を持続する。

2002/5/8 旭硝子/富山大学工学部/日本カーリット/東芝ライテック

光触媒セルフクリーニングガラスの共同開発に成功

 旭硝子(株)(本社:東京、社長:石津進也)は、このたび、富山大学工学部蓮覚寺(れんがくじ)教授、日本カーリット(株)(本社:東京、社長:小関英雄)及び東芝ライテック(株)(本社:東京、社長:塚原淳一)と共同で、非常に高い光触媒効果を与える新型の酸化チタン光触媒膜を形成することにより高い汚染分解性能と高耐久性が特長である「セルフクリーニングガラス」の開発に成功し、トンネル用照明カバーガラスを始め多用途展開が可能となりました。

 酸化チタンに代表される光触媒は、防汚、防曇、脱臭、有害物質の除去など様々な機能を発揮するものがありますが、今回開発した光触媒膜は、高配向・高結晶の薄膜を緻密に形成することにより、汚染物質の分解性能を飛躍的に高めたものであり、かつ耐久性にも優れています。

 従来の光触媒溶液は、いわゆる「ゾル-ゲル法」により作られていますが、蓮覚寺教授の発案した「アドバンストゾルゲル法」に基づいて
日本カーリットが新たな酸化チタンのコーティング溶液を開発しました。この溶液は、酸化チタンの微粒子を含まない完全な溶液で、ガラス等の基材表面との結合力が強く、密着性に優れた0.1マイクロb程度の厚みの緻密で堅牢かつ平滑な薄膜を形成することができ、優先配向度が非常に高い結晶性が得られるため、極めて高い光触媒効果を発揮します。

 旭硝子は、この光触媒溶液をガラスに応用するにあたり、予めガラス表面に酸化ケイ素(シリカ)の薄膜を、ガラス製造技術で培った成膜技術を用いて形成し、その上に、このコーティング溶液を独自に開発した特殊な方法で塗工する二重膜構造としました。

 トンネル用照明カバーガラスは、多量の排気ガスに常時曝されるという極めて過酷な汚染環境下で使用されるため、従来から交通量の多い東名高速道路等では光触媒ガラスが使用されていました。このたび開発した光触媒セルフクリーニングガラスを、トンネル用照明カバーガラスとして東芝ライテックで性能評価したところ、ディーゼル車の排気ガスに含まれるカーボン微粒子も効果的に分解し、光触媒効果は従来品よりも5倍以上高く、かつ耐久性も高いことが判明しました。

 旭硝子では、今後、トンネル用照明カバーガラスを始めとする道路産業用途のほかにも、セルフクリーニングガラスの用途開発を図ってまいる所存です。

<ご参考>

○蓮覚寺(れんがくじ)聖一教授
  富山大学工学部 物質生命システム工学科 教授
  東京大学 先端科学技術研究センター 客員研究員
  住所 富山市五福3190

○日本カーリット(株)会社概要
  設立   昭和9年
  本社   東京都千代田区神田和泉町1番地
  資本金   10億円
  従業員数   400名
  事業内容   火薬、工業薬品、コンデンサ等電子材料の製造販売
  売上高   345.5億円(平成13年3月期、連結)
  ホームページアドレス http://www.carlit.co.jp/
       
○東芝ライテック(株)会社概要
  設立   昭和49年
  本社   東京都品川区東品川4丁目3番1号
  資本金   100億円
  従業員数   3,000名
  事業内容   各種照明器具の製造販売
  売上高   1,700億円(平成13年3月期、連結)
  ホームページアドレス http://www.tlt.co.jp/tlt/info/info.htm

 


日本経済新聞夕刊 2003/1/23

建物冷やす新建材 YKK・川鉄など 光触媒を活用 技術共同開発

 YKKや川崎製鉄、TOTOなど7社は、表面に水を蓄える特殊な建材を使うことによって住宅や事務所ビルの冷房効果を高める新技術の実用化に共同で取り組む。週末にもコンソーシアム(企業連合)を発足、3年以内の事業化を目指す。
 コンソーシアムには日本板硝子や松下電工、テント材大手の太陽工業(大阪市)なども参加。東京大学先端科学技術研究センターの橋本和仁教授が考案した光触媒の応用技術を使う。

 


日本経済新聞 2003/2/21

光触媒、新用途開発進む 土壌浄化・冷却効果ある建材 市場、1兆円に拡大も

 光を当てると汚れを分解する光触媒技術の新たな応用を目指した研究が活発になっている。土中有害物質の浄化や冷却効果を持つ建材の開発が始まった。現在の光触媒関連市場は自浄作用を持つ建材など300億ー400億円。新用途の実用化が成功すれば1兆円に飛躍するとの試算もある。

 


毎日新聞 2003/8/9

研究者たちの素顔
光触媒を発見し、実用化に結び付けた神奈川科学技術アカデミー理事長、藤嶋昭さん(61)

 半導体の一種の酸化チタンという物質に光を当てると、水や有機物を分解する「光触媒」という現象が起きる。酸化チタンには水となじみやすい超親水性もある。光触媒の特徴を利用し、汚れがつかないタイルや湯気で曇らない鏡などの製品が相次いで生まれている。将来は1兆円産業になるとの予測もある。その光触媒の発見者が藤嶋昭・神奈川科学技術アカデミー理事長(61)だ。

ふじしま・あきら
1942年、東京都世田谷区生まれ。66年横浜国大工学部電気化学科卒。71年東京大学大学院博士課程修了、神奈川大工学部講師。75年東京大工学部講師、78年助教授、86年教授。03年神奈川科学技術アカデミー理事長、東京大名誉教授。00年日本化学会賞、03年ゲリシャー賞を受賞。

◆半導体に光を当て、その性質を探る研究を進めていた大学院時代の67年、偶然出合ったのが酸化チタンだつた。

 酸化亜鉛などを電極にした電気回路を作り、電極を水溶液に入れて光を当てる実験をしていました。
 そんな時、隣の研究室で酸化チタンの話を聞いたのです。酸化亜鉛と同様に半導体の性質を持つということでした。面白そうと思い、酸化チタンと白金を電極にして、光を当てる実験をしたのです。そしたら、電極から泡が出てきた。回路に電圧はかけていません。酸化チタン側は酸素、白金側は水素が発生していました。酸化亜鉛を電極にし、光を当てても酸素は出ますが、電極は溶けてしまいます。でも、酸化チタンは無傷でした。酸化チタンが触媒となり、光を当てるだけで水が分解されたのです。予想外の結果でした。

◆酸化チタンが光を浴びると、表面の電子の状態が変化し、強力な酸化作用が起きる。水は、この酸化作用で分解されていた。1年後、指導教官の本多健一助教授(現東京工芸大学長)と学会誌に論文を発表した。だが反響はなかった。

 学会で発表しても「電気化学の基礎をもっと学びなさい」などと言われました。従来の常識では理解できない結果だったのです。しかし、「面白い現象だ」と応援してくれる先生方もいて、研究を継続することができた。72年に論文が英科学誌「ネイチャー」に掲載され、光触媒がようやく世界に認められたと思いました。石油危機(73年)の影響で、新しいエネルギー源として期待される水素を作る方法としても注目されました。ところが水素の発生効率が悪く、実用化には至りませんでした。

◆光触媒による水の分解はホンダ・フジシマ効果と呼ばれるようになった。だが、光触媒に実用化の道が開けたのは、発見から20年以上たった89年。きっかけは、研究室近くのトイレのにおいだった。
 
 酸化チタンの酸化作用を生かせば、トイレのにおいや黄ばみなどの原因物質を分解できるのではないか。研究室に加わった橋本和仁講師(現東大教授)らの発想をもとに、新たな応用研究を始めました。東陶機器(TOTO)研究所の渡部俊也さん(同)も研究チームに加わりました。
 共同研究の結果、酸化チタンをコーティングしたタイルの開発に成功しました。狙い通り、黄ばみやにおい成分を分解してくれました。タイルには、表面についた細菌が酸化チタンの酸化作用で死滅する抗菌効果があることも分かりました。94年に発売された製品は大ヒットしました。

◆95年、酸化チタンの超親水性が確認された。酸化チタンをコーティングしたガラスは曇らず、汚れない。光触媒の応用範囲はどんどん広がっている。

 光触媒は、技術面で日本が世界をリードしており、国内だけで約2000社が研究開発に取り組んでいます。でも、殺菌などの効果は製品を見ただけでは分からない。政府は昨年、光触媒の標準規格を制定する「光触媒標準化委員会」を設置しました。私が委員長ですが、光触媒の性能や安全性をきちんと評価する制度の確立はとても大切です。日本の規格が世界標準になれば、製品や技術の輸出もしやすくなります。

◆人々が天寿をまっとうできる世の中にするために科学はある、と考えてきた。「物華天宝」が座右の銘だ。

 歴史に残る大発見の機会はだれにでもあるんです。私の前にも酸化チタンの反応を見た人はいたでしょう。でも、気付かなかった。研究者は、偶然の出合いを逃さない、観察カや洞察カを磨くことが重要です。「物華天宝」とは、科学(物)は、自然界(天)から宝を見つけ出し、その成果(華)を人々のために役立てるという意味です。私は、光触媒という宝を自然界から見つけて実用化することができた。光触媒を利用して、人々が快適に生活できるようになれば、これほどうれしいことはありません。

 


日本経済新聞 2003/12/12

光触媒 応用広がる
 JR東海 喫煙車輌を脱臭
 宇部興産 循環風呂で殺菌

 脱臭、殺菌効果などの機能を持つ光触媒を業務用に使う動きが一段と広がってきた。東海旅客鉄道(JR東海)は新型新幹線車両の導入に備え、光触媒を使った脱臭装置を開発する。宇部興産は循環式の風呂の浄化装置を実用化した。畜産業でも悪臭対策向けに光触媒を応用する研究が本格化してきた。話題先行で注目された光触媒の市場が一気に膨らむ可能性が出てきた。


 光触媒は紫外線が当たると、表面でにおいのもとになる有機化学物質を分解する。JR東海は2007年度から導入する新幹線の喫煙車両の空気清浄機に光触媒付きフィルターを組み込む。20分間程度の整備時間内で、たばこのにおいがほとんど消えるようにする。
 すでにフィルターを改良中で、今後2年間かけて装置を試作する。活性炭を使う現在のフィルターは煙を取り除くことができるが、脱臭効果は弱い。
 畜産業でも、におい防止に光触媒を活用する研究も本格化している。化学素材メーカーの泉(大阪市)と東京大学先端科学技術研究センターの橋本和仁教授は共同で、酸化チタンの光触媒を表面に塗布したシートを試作した。畜舎を覆うようにして使う。においが外部ではほとんど感じられなくなったという。
 東大などは、光触媒が水となじみやすい性質にも着目。シートに少量の水を流して表面全体を水の薄膜で覆い、アンモニアなどにおいの原因物質を吸収し、拡散を抑えた。養豚場での実証実験を始めており、1−2年後に発売する計画だ。
 殺菌効果の利用では、宇部興産が細菌の発生などが指摘されている循環式の風呂向けに水浄化システムを実用化した。光触媒のフィルターに一度利用した温水を通すシステムで、細菌などをほとんど分解した。1年間はフィルター交換しなくても効果が持続する。殺菌に使う塩素の使用量を最小限に抑えられるという。宇部興産は、大手ホテルなどに約40システムを納入したと説明している。

環境分野で拡大の兆し
 光触媒は化粧品も使う酸化チタンを活性化した素材。有機物を分解するほか、光発電、親水性などの作用もあるが、市場の注目に比べ、実用化は汚れにくいタイルや窓ガラス、雨の日でも曇らない自動車のサイドミラーなどにほぼ限定されている。
 光触媒の国内市場は2005年に1兆円を超えるという予測もあったが、現在は年間400億円程度。平面上でしか光触媒をうまく機能する技術がなかったからだ。
 今回フィルターなど様々な形状の光触媒を使った用途の実用化の動きが広がり、市場が急拡大する兆しがみえてきた。1兆円という市場予測には、水や空気などを浄化する環境ビジネスが多くを占める。
 市場の成長には品質の維持も課題だ。光触媒の能力を超えた効果を宣伝する商品も市場に出回っている。光触媒の品質維持を狙って、日本主導で国際規格を作る動きも始まっている。


日本経済新聞 2004/2/6

光触媒研究、海外でも 日本発の技術、国際競争激しく
 中国、量産で安価に 米は毒ガステロ対策

 窓ガラスの浄化や有害物質の分解に効果を発揮する光触媒の実用化研究が、海外でも盛んになってきた。このほど開催された光触媒の国際会議で、中国は低コストの生産技術の開発成果を説明、量産計画も公表した。欧米の研究者は毒ガスによるテロ対策や環境対策に役立てる光触媒の用途開発計画を明らかにした。光触媒は日本発の技術で、市場も国内に限られていたが、今後は国際競争も激しくなりそうだ。

 光触媒は、光が当たると油分や細菌などの有機物を分解する。ビルなどの外壁や窓ガラスに塗ると汚れが付きにくくなる。神奈川県葉山町で1−3日まで開かれた国際会議(物質・材料研究機構主催)で、各国の研究者らが産業化への取り組みを明らかにした。

 中国科学院化学研究所の江雷教授らは、ビルの外壁などに用いる光触媒のコーティング剤を安価に生産する手法を開発したと発表した。会議では詳しい工程は公表しなかったが、数百度に加熱する現在の製造温度を百度で済ませることができる。江雷教授は「製造コストは従来の5分の1。応用開発に強い日本企業と組み、製品開発を進めたい」と話す。
 江雷教授によると、中国政府とガラスメーカーの洛陽玻璃(河南省)、建築用タイルの欧吉達(吉林省)などが計5千万元(約6億円)を投じ、北京市郊外に新手法を用いた年産2500トンの工場を建設した。今年中にも量産を始める。
 中国では、上海の新名所、浦東世紀公園のビルに光触媒ガラスが使われるなど、光触媒の市場が広がりつつある。

 一方、米国は光触媒をテロ対策に活用する研究が進んでいる。会議に参加したカリフォルニア工科大のマイケル・ホフマン教授は、米防衛大手ノースロップ・グラマンとヘルメツト最大手ベルスポーツと共同で、ガスマスクの開発に乗り出したことを明らかにした。マスクに付けるフィルターに光触媒を塗布。ガスを分解し、長時間連続して使用でぎるようにする。
 毒ガスを効率よく分解する光触媒を開発。3年以内の実現を目指す。「軍だけでなく、消防や警察などの需要も期待できる」とカ大のマイケル・ホフマン教授は話す。

 欧州ではフランス、イタリア、ギリシャなど5カ国の産官学が共同で、光触媒をコンクリートなどの建築資材に応用する研究に取り組んでいる。フランス国立科学研究所のピエール・ピシャ研究部長によると、自動車が排出する窒素酸化物などを分解し、環境改善につなげるという。
 フランス・GTMコンストラクション、イタリア・イタルチェメンティなど建築関連会社が参加しており、実用規模の評価試験を進める予定。

技術供与で海外開拓 日本企業、戦略転換迫られる

 実用的な光触媒は本多健一・東京工芸大学学長、藤嶋昭・神奈川科学技術アカデミー理事長が発見した。日本企業は光触媒で汚れにくいタイルなどを産業化するとともに、原料輸出や建材メーカーなどへの技術供与を通じ海外市場も開拓してきた。
 海外勢が応用製品の独自開発に動いていることに対しては「参入する企業や研究機関が増え、市場が活性化する」(藤嶋理事長)と歓迎する声がある一方で、「技術のただ乗り」(日本企業の研究者)と警戒する声もある。国際競争を見据えた戦略の練り直しが必要になりそうだ。
 光触媒の事業化で先べんをつけたTOTOは、光触媒のコーティング技術の基本特許を持つ。今回の会議で発表した中国の研究について、TOT○材料技術研究部の佐伯義光部長は「特許を侵害している可能性が高い。対応を検討する」と危機感をあらわにする。
 中国の年間2500トンという生産計画についても、日本企業は実際の生産量に注目している。現在のコーティング剤の生産量は、国内全体で年間200トンに過ぎない。トップメーカーの石原産業の二又秀雄グループリーダ−は「需要があるのか」と指摘する。
 しかし、世界規模で光触媒市揚が広がる兆しを見せていることも確かだ。日照時間が少ない欧州は光触媒への関心が比較的薄かったが、実用的な製品が出てきて風向きが変わり始めた。汚れにくい機能を持たせたタイルは日本からの技術供与で普及した。