日本経済新聞 2003/12/27

今年の企業再編 主役は・・・
 「強者連合」「ファンド主導」 国際競争に対応

 大型の企業再編が目立った2003年。再編の性格別に分類してみると、「勝ち組連合」や「投資ファンド主導の買収」といった共通する特徴が浮かび上がる。景気が底入れから回復に向かった今年、産業界ではグローバル競争を見据えた連携が進んだといえる。
 企業の合併・買収(M&A)のコンサルティング会社レコフによると、日本企業が関係した今年のM&A件数(1−11月、発表べ−ス、グループ内を除く)は1560件(前年同期比3.1%減)。昨年までの10年連続増加の勢いは止まるが、水準そのものは過去最多だった昨年に並ぶ。

アジアに視線
 この中で、今年目立つ特徴の一つは「強者連合」を目指す動き。事業の選択と集中を終えた企業が、アジア市場など今後の国際競争での勝ち残りを見据えての決断だ。
 YUASAと日本電池は経営統合により鉛蓄電池の世界シェアを2位に引き上げる。日本酸素と大陽東洋酸素は合併で工業ガスの国内首位を固め、アジアで欧米の大手メーカーに対抗する。松下電器産業が松下電工を子会社化するように、グループの力を結集することでより強い経営を目指す例もある。
 強者同士が手を組むこうした動きとは対照的に、経営不振企業の再生の主役に投資会社が浮上したのは今年のもう一つの特徴だ。
 主な事例だけで、米リップルウッド・ホールディングスによる日本テレコム買収、米サーベラスによるあおぞら銀行買収、米コロニー・キャピタルによるダイエーの「福岡事業」買収など、外資系投資ファンドの存在感が一気に高まった。

後退する銀行
 レコフによると、投資会社によるM&Aは127件(1−12月途中、発表べース)と2002年通年の3.5倍に達した。
 投資会社の躍進の背景には、これまで企業再編のカギを握っていた主取引銀行の存在感が相対的に低下したという事情もある。
 一方で破談も多かった。三井化学と住友化学工業は、2年以上にわたって交渉を進めてきた経営統合を撤回し、帝人と杏林製薬も医薬品事業の統合を見送った。サミーはセガとの合併が破談となり、結局、セガの筆頭株主のCSKから発行済み株式の22.4%を買い取り傘下におさめた。



2003年に発表・実施された主な企業再編・経営統合

▼投資会社による買収
・米リップルウッド・ホールディングスが日本テレコムを買収(11月)
・米サーベラスがあおぞら銀行を買収(8月)
・米コロニー・キャピタルがダイエーの福岡事業(球場とホテル)を買収(04年2月末まで)
・野村プリンシパル・ファイナンスがハウステンボスに出資(04年6月)

 

▼事業会社による合併・買収:                                   :*
・コニカとミノルタが経営統合(8月)
・ニチメンと日商岩井が経営統合(4月)
・熊谷組と飛島建設が合併(05年4月)
・山之内製薬と藤沢薬品工業が経営統合を検討中(04年3月末までの最終合意目指す)
・レナウンとダーバンが経営統合(04年3月)
・博報堂、大広、読売広告社が経営統合(10月)
・日本酸素と大陽東洋酸素が合併(04年10月)
・YUASAと日本電池が経営統合(04年4月)
・スクウェアとエニックスが合併(4月)
・NTTがIIJに31.6%出資し、傘下に(9月)

 

▼グループ内の資本関係強化・統合                                 
・松下電器産業が松下電工を子会社化(04年3月)
・UFJ銀行が日本信販を子会社化(05年3月)
・川鉄商事とNKKトレーディングが経営統合(04年10月)

 

▼事業統合                                                
・カネボウと花王が化粧品事業を統合(04年3月、07年3月の二段階で)
・松下電器産業と東芝がブラウン管事業を統合(4月)
・日立製作所と三菱電機が半導体事業を統合(4月)
・新日本製鉄と住友金属工業がステンレス事業を統合(10月)
・日鉱金属と三井金属が銅精錬事業を統合(4月)

 

▼破談になった合併・統合                                       
・三井化学と住友化学工業が経営統合を白紙撤回(3月発表)
・帝人と杏林製薬が医薬医療事業の統合を白紙撤回(4月発表)
・ナムコ、セガヘの合併提案撤回(5月発表)

(注)時期はメドを含む