Jパワー上場 電力自由化へ対応、課題
成否握る新規事業の育成
東証1部に6日上場した電力卸売りのJパワー(電源開発)は、終値が2780円と売り出し価格(2700円)を上回り、ひとまず順調なスタートを切った。全株を売却して完全民営化したことで、国内最大の民間電カ卸会社として、エネルギーの安定供給とコスト引き下げを両立しながら、電力自由化に伴う競争時代への対応を迫られる。中垣喜彦社長はこの日「経営の自由度を生かし、新規事業を育成したい」と意気込みを示したが、直面する課題も多い。
■完全民営化
同社の株式(計1億3880万株)は、政府出資の民営化ファンドが83%、沖縄電カを除く電カ9社が17%を保有していた。上場に伴い国内外から3750億円を資金調達、ファンドは借入金などを返済した後約1200億円が国庫に入る。
9電力の保有株売却は、電カ自由化をにらみ、電力会社と資本関係を断ち切るのが目的。上場前は東京が5.07%、関西と中部も3%台を保有していたが、今後は顧客であると同時にライバル関係にもなる。
■財務基盤
連結の業績は、05年3月期が売上高5340億円(前期比6.3%減)、経常利益440億円(同1.0%減)を予想。売上高の9割以上を電カ10社との長期契約による卸売りに頼っている。
風力発電や海外での発電などにも業務を拡大しているが、風力発電は計画中を含め全国9カ所(出カ計21万キロワット)、海外発電は15件(出資額約200億円)で、売上高に占める割合はまだ少ない。
一方、二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭火カの比重が大きく、地球温暖化対策も急務。新規事業拡大と環境対策が成長の成否を握る。
■価格競争の波
電カは00年3月、総需要の3割を占める大口向け売電事業が部分自由化。05年4月にはさらに対象が拡大され、07年4月から完全自由化に向け検討が進められる。このため独立系の発電事業者(PPS)の攻勢で価格競争が激化し、同社は電カ会社の値下げ要求に応じる形で01年と03年、料金値下げに踏み切った。今後も一段の値下げを求められる可能性が強い。
一方で、民間会社として安定供給と採算性のバランスも問われる。青森県では総工事費4690億円をかけて、初の原発となる大間原発(出カ138万キロワット)の建設計画を進めているが、市場関係者の間では採算性などを疑問視する声もある。
同社初のプロパー社長である中垣社長は同日、「電カ会社への卸売りは基盤なのでサービス向上に努めるが、市場全体の活性化も重要。バランスの取れた経営を展開したい」と語った。
Jパワー
正式名は電源開発。戦後の電力不足を補うため政府が1952年、電源開発促進法に基づく国策会社(特殊法人)として設立した。発電設備は石炭火力や水力を中心に67カ所あり、能力は東北電力に並ぶ1637万キロワット。電力は東京電カなど電力10社に卸供給している。民営化は、橋本内閣の特殊法人改革で97年に決まり、03年に法律上は民間会社になっていた。