日本経済新聞 2005/9/23     ソニー発表    ストリンガー会長が不満

ソニー、1万人削減 製造拠点 世界で11減 経費2000億円圧縮

 ソニーは22日、2005-07年度の中期経営方針を発表した。世界で1万人の人員削減や11製造拠点の削減などによりコストを2千億円減らすほか、不動産や株式など「非戦略的」1200億円相当の資産も売却する。リストラ費用の積み増しで06年3月期は11年ぶりに連結最終赤字となる見通し。不振が続く本業のエレクトロニクス部門に経営資源を集中投下し、06年度中に同部門の黒字化を目指す。

 今期、最終赤字100億円
 新経営方針は6月に就任したハワード・ストリンガー会長兼最高経営責任者(CEO)、中鉢良治社長らが都内ホテルで記者会見し、発表した。
 エレクトロニクス、ゲーム、娯楽の3つを中核事業と位置づけ、07年度に連結ベースで売上高8兆円以上、営業利益率5%(エレクトロニクス事業は同4%)の達成を目指す。ストリンガー会長は「非戦略事業の見直しを急ぐ」と語り、出井伸之・前会長兼CEOによる多角化路線を修正し、再建を進める方針。
 同社は03年にも2万人削減を柱とする経営方針を発表したが、デジタル化への対応の遅れなどで、売上高の7割を占めるエレクトロニクス部門が不振に陥っている。今回、不採算の15分野で撤退や縮小、提携を検討する。高級AV(音響・映像)家電ブランド「クオリア」は新規開発をやめ、既存商品の販売のみ続ける。ロボット事業も研究開発を縮小する方針。現在65ある製造拠点も54に減らす計画。
 グループ人員削減の内訳は、国内(従業員約6万人)が4千人、海外(同約9万人)が6千人。現在のカンパニー制を廃止し、経営判断の権限をエレクトロニクスCEOを兼務する中鉢社長に集めて意思決定を速める。
 同日、業績下方修正も発表した。06年3月期の連結営業損益は200億円の赤字(前期は1139億円の黒字)になる見通し。最終損益も100億円の黒字予想から100億円の赤字(同1638億円の黒字)に下げた。連結最終赤字は、映画事業の営業権の一括償却をした1995年3月期以来、11年ぶり。構造改革費用を従来計画より520億円積み増し、年間で1400億円とする。
 金融事業については、「現時点では売却しない」(ストリンガー会長)とし、株式上場の時期を07年度以降に1年延期することを決めた。

ソニー 「電機」回帰鮮明に
 資産1200億円売却ヘ カンパニー制を廃止

 ソニーが22日発表した2007年度末までの中期経営方針では、非戦略事業の資産圧縮を打ち出すなど、従来の多角化経営を修正して本業のエレクトロニクス事業に重点投資する姿勢を鮮明にした。同事業の営業利益率は4%を目指すなど、経営目標の設定も実現可能性を最優先した。ただ、成長戦略の具体策は乏しく、堅実路線で不振を打開できるかは不透明だ。

 「ヒツト商品に経営資源を集中する」。6月の就任後、新経営方針策定を指揮してきたハワード・ストリンガー会長兼最高経営責任者(CEO)は会見でこう語った。エレクトロニクスとゲーム、映画、音楽のエンターテインメント(娯楽)をグループの戦略部門として強化する姿勢を改めて強調した。

ソニーの中期経営方針の骨子(2005年度から07年度)
機構改革
エレクトロニクス部門でカンパニー制を廃止、事業本部制に
構造改革
07年度末までにコストを2000億円削減
不採算15事業の撤退や縮小など
製造拠点11カ所の削減(05年3月末の65拠点を54拠点に)
製品モデル数を20%削減
世界で1万人のグループ人員削減(国内4千人、海外6千人)
不動産く株式など1200億円の資産売却
05年度、06年度に計2100億円の構造改革費用を計上
成長戦略
次世代半導体「セル」の家電製品への採用
06年度、07年度に半導体に計3400億円を投資
米国、中国にソフト開発拠点を開設
グループ戦略
金融事業の株式公開時期を06年から07年度以降に延期
SCNは05年度中に株式公開
07年度の収益目標
連結売上高8兆円以上、営業利益率5%
エレクトロニクス事業で営業利益率4%
数値目標の進ちょく状況を四半期ごとに公表

ソニーが中期経営方針を発表するのは03年10月以来。前回は03年4月に市場予想を大幅に下回る決算内容で株式市場に「ソニーショック」が走ったのを受けて策定した。2万人の人員削減や年間3300億円の固定費削減が柱だったが、その後のデジタル家電の価格急落にリストラ効果が追いつかず、06年に連結営業利益率10%としていた目標達成は頓挫した。 
 新経営方針は、高い目標が達成できずに市場の失望を買った旧経営陣時代の悪循環を断ち切る現経営陣の姿勢を反映している。1万人のグループ人員削減を打ち出すとともに、経営資源の分散を招いた事業構造の見直しに踏み込む。
 これまでの多角化に伴う保有株式や不動産売却などの資産圧縮は1200億円を計画。コスト削減に向けて縮小する不採算事業・非戦略事業の対象には、超高級ブランド「クオリア」やロボット事業など旧経営陣を象徴する事業も含まれる。ただ、削減する計11カ所の製造拠点や売却する資産、縮小する事業などの全容は具体的に示されなかった。
 インターネット事業の「So-net」を手掛けるソニーコミュニケーションネットワーク(SCN)やスカイパーフェクト・コミュニケーションズ株の売却については「現時点で計画はない」(大根田伸行最高財務責任者)と述べるにとどめた。金融事業を手掛けるソニーフィナンシャルホールディングスについては株式公開の延期を表明した。
 重点分野であるエレクトロニクス部門の強化に向け、思い切った組織改革も進める。産業界の先頭を切って導入したカンパニー制は廃止し、家電はテレビやビデオなど4つの事業本部などに再編成する。家庭据え置き型、携帯型、車載機器の3部門に分かれたオーディオ事業も集約し、資材調達の無駄や重複機能の排除を目指す。
 もっともエレクトロニクス事業の成長戦略そのものについては迫力不足の面もある。高精細映像分野を収益の柱に据え、これに対応するシステムLSI(大規模集積回路)の開発を強化するなどの方針を掲げたが、03年に発表した韓国サムスン電子との液晶パネル合弁事業に匹敵する具体策は盛り込まれずに終わった。市場関係者の間にも「成長戦略の説明が不十分」(JPモルガン証券の高田裕史アナリスト)との声が聞かれる。
 エレクトロニクス部門CEOの中鉢良治社長は「次世代ディスプレーとして有機ELを中心に開発していく」と新しい研究所の設立を表明。デジタル家電の高機能を実現するためのソフト開発でも研究所を発足させる。製品面ではハイビジョン対応の液晶テレビやビデオカメラなどの商品力を強化する。ただ一連の研究開発などに伴う具体的な投資額などは明らかにしなかった。

ストリンガー会長 「金融子会社売却せず」 縦割り是正 部門連携強化

 ソニーのハワード・ストリンガー会長兼最高経営責任者(CEO)は22日の経営方針説明会の後、金融子会社のソニーフィナンシャルホールディングスについて「グループに収益面で貢献しており、現時点では売る考えはない」などと述べた。
 ストリンガー会長はソニーグループの戦略事業分野について「あくまでもエレクトロニクスとゲーム、映画などエンターテインメント」と話した。そのうえで、「(金融事業の取り扱いについて)売却すべきだなど色々な意見があるのは理解している」と語った。
 ただ「金融はキャッシュフローを生む重要な存在で、今は価値がある」とも指摘。当面はエレクトロニクスなど中核事業の立て直しを優先する考えを示し、「金融事業はいまは私の優先事項ではなく、将来の位置づけなどは時間をかけて考えていく」と話した。
 将来、エレクトロニクス事業が収益性を取り戻した後の金融事業の扱いについては「分からない。その時々の環境に応じて柔軟に対応する」と述べるにとどめた。ソニーフィナンシャルホールディングスに2007年度以降の株式公開を認める理由については「経営陣が自立を望んでいるから」と語った。
 新経営方針の内容については「ソニーの復活に向けた良いスタートが切れた」と自信を示した。カンパニー制廃止による縦割り組織の是正で、エレクトロニクス部門とゲーム部門などが連携し商品力を高める基盤が整ったと見ている。
 ストリンガー会長は米国で大掛かりな人員削減に踏み切った。リストラがインパクト不足との見方ついては「日本の組織は米国より大きく、リストラには日本の幹部の協力を取り付けることが必要だった」などと語り、妥協を強いられた面があることを示唆した。今後の課題としては、デジタル機器の相互連携などに欠かせないソフト開発力の強化を挙げた。さらに、「デジタルの将来と向き合うために、良いパートナーも探している」と発言。デジタル家電分野での生き残りをかけ、戦略的な提携も積極的に進める考えだ。

ソニーの最近の動き
▽2003年…
 4月 業績悪化で株価急落
 5月 構造改革方針を発表
10月 2万人の人員削減、韓国サムスン電子との液晶パネル合弁など構造改革の施策発表
▽2004年…
 4月 金融持ち株会社ソニーフィナンシャルホールディングスを設立
 8月 独ベルテルスマンとの音楽事業統合会社「ソニーBMG」設立
 9月 米映画会社メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)の買収で合意
12月 携帯ゲーム機「プレイステーション・ポータブル」を発売
▽2005年…
 1月 2004年度連結業績予想を大幅下方修正
 3月 出井伸之会長、安藤国威社長ら首脳陣の退任と
    ハワード・ストリンガー副会長の会長兼CEO、中鉢良治副社長の社長への昇格を発表
 7月 2005年度連結業績予想を大幅下方修正

テレビ再建 戦略見えず 改革の柱 選択先送り

 今回のソニー「再生」計画はコスト削減と組織改革が中心となった。本業のエレクトロニクス事業のなかで何を中核として選択し、何を捨てるのか。中核事業ではどんなビジネスモデルで利益を稼ぐのか、といった改革の柱になるべき戦略提示は先送りされた格好だ。売却・整理する非戦略事業も具体名の列挙は避けた。これだけではソニーの根本的な競争力が復活に向かうのかどうかを判断するのは難しい。
 ソニーのエレクトロニクス部門の中でも最大の赤字事業は、今期赤字幅が1千億円を超えるとみられているテレビ。ところが提示されたテレビ事業再建策の中身はブラウン管事業の拠点集約と、既存の液晶、リアプロジェクション(背面投射型)の薄型機器2種を強化するとの決意表明。新ブランド「BRAVIA(ブラビア)」の滑り出しが世界的に好調な点を強調するにとどまった。
 液晶などの中核デバイスの単独開発を捨てた同社は、テレビ市場ではいわばブランド力に頼る「組み立てメーカー」の色が濃い。しかもここはデジタル化によって価格破壊が永続するパソコンや半導体のような市場だ。「テレビ」を昔ながらの一つのハードウエアとして売るビジネスモデルそのものを変えないでよいのか、という疑問に対する答えは示されなかった。
 松下電器産業の中村邦夫社長が社長就任から半年後の2000年末に出した最初の経営改革案も合理化策に終始。市場の評価が上がったのは15の研究開発重点テーマを列挙したり、上場グループ企業を完全子会社化したりするなど、その後の具体策が出てからだ。ハワード・ストリンガー会長はまだ就任から3カ月。「化粧品から金融まで」扱うソニーという巨大な複合企業の針路を定めるには時間が足りなかったのかもしれない。
 「今回は当然の課題に総花的に手をつけただけ。市場は二の矢、三の矢を期待している」(大手投資銀行幹部)。ストリンガー改革はまだ始まったばかりだ。


2005年09月22日 ソニー

ソニーグループ 中期経営方針(2005年度〜2007年度)
〜 エレクトロニクス事業復活を軸に経営体質強化 〜
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200509/05-050/index.html

 ソニーはエレクトロニクス、ゲーム、エンタテインメントの三つをコア事業と位置づけ、競争力向上と経営体質強化に向け以下の施策を実行します。特にエレクトロニクス事業の復活を最優先課題として、機構改革を実施し、構造改革と成長戦略を推進します。これにより、2007年度に連結営業利益率5%(エレクトロニクス4%)、連結売上高8兆円以上のグループ企業になることを目標とします。(*1)
 
 今回の改革の重点項目としてエレクトロニクス事業の組織を大幅に改組し、
重要分野の意思決定権限をエレクトロニクスCEOに集中する体制とします。これに伴い、現行のカンパニー制を廃止し、各事業本部が相互に連携しながら、それぞれの事業領域に集中できる体制を確立します。また、商品戦略、技術、資材調達、生産、販売・マーケティングの重要領域において、横断的な連携の仕組みを強化し、製品分野を超えた意思決定の迅速化、全体最適化を図ります。また共通ソフトウェアの開発、設計や商品開発での重複の排除、研究開発投資の効率化を実現します。

 これらに加え、構造改革により2007年度末までに2,000億円のコスト削減を実現します。この構造改革は不採算事業・非戦略事業の収束、モデル数の削減、製造拠点の統廃合などを軸に推進し、全世界で
1万人のグループ人員を削減します。また、保有する不動産や株式、非戦略資産等を見直し、2007年度末までに1,200億円相当を売却します。
 これら構造改革の進捗については四半期ごとに開示します。

 成長戦略においては、エレクトロニクス事業のリソースをHD関連商品群、モバイル商品群、およびこれらの商品の差異化につながる先端半導体、デバイスの開発・製品化に集中的に投入し、競争力強化と収益性向上を目指します。加えて、Cellプロセッサを活かした新しい技術、商品、アプリケーション開発を行うための組織をCEO直轄組織として新設します。

 当社は、これらの施策実施によりエレクトロニクス事業を強化し、ゲーム事業、映画事業、音楽事業、そして高いブランド認知度など、グループ内の強力なリソースを最大限に活かし、世界をリードするエレクトロニクス・エンタテインメント企業として、より魅力的な商品・サービスを提供してまいります。

*1構造改革費用計上前


各施策の具体的内容は以下の通りです。

機構改革
 
エレクトロニクス事業組織の再編
  前述の通り、現行のカンパニー制を廃止し、特定製品分野へ直結した事業本部を中心とした組織とします。
  担当執行役が明確な責任範囲のもと、商品戦略、技術、資材調達、生産、販売・マーケティング等、部門を越えた横断領域を監督し、エレクトロニクスCEOを直接補佐します。
  これにより、リソースの集中配分を阻害する縦割り組織の弊害を除去し、連携のとれた効率的かつスピードある意思決定を促進します。
  さらに、R&Dの優先順位を明確化し、成長領域へリソースを投入するとともに開発における重複を省きます。研究体制の再編もあわせて実施します。
     
収益構造の改革(構造改革)
     
  1. 構造改革によるコスト削減
2007年度末までに2,000億円のコスト削減を実施します。これは事業の絞り込み、モデル数の削減、製造拠点の見直し、ならびに組織・ビジネスプロセス重複排除による間接部門の効率化等の施策により実現します。具体的には以下の通りです。
  15の特定ビジネスカテゴリーを抽出し、収束、縮小、他社とのアライアンス、事業売却などを実行します。
  製品モデル数を2005年度比で20%削減します。
  製造拠点数を65から54へ11拠点削減します。
     
    これらの施策により、2007年度末までに全世界で10,000人(本社・間接:5,000人、直接:5,000人/国内:4,000人、海外:6,000人)のグループ人員削減を行い、オペレーションの効率化を図ります。

構造改革費用として2,100億円を計上します。その回収は2008年度末までに完了の予定です。
     
  2. 不動産・株式・非戦略資産の売却
保有する不動産や株式、非戦略資産等を見直し、2007年度末までに1,200億円相当を売却します。
     
現行エレクトロニクス事業の強化
  テレビ、デジタルイメージング(ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ)、ビデオレコーダー、携帯型オーディオを重点カテゴリーと位置づけ、各市場におけるリーディングポジション確立に向け注力します。これと並行して、商品差異化の核となる半導体やデバイスの強化も行います。
  特にテレビ事業に関しては製造拠点の見直し、内製化率向上、設計体制の集中等の推進により収益性改善に注力し、2006年度下期黒字化を目指します。
     
エレクトロニクス事業の成長戦略
  エレクトロニクス事業のリソースをHD関連商品群、モバイル商品群、及びこれら商品の差異化につながる先端半導体/デバイスの開発・商品化に集中的に投入することにより、競争力強化を実現します。
     
  1. 「HDワールド」を収益の柱へ
    ソニーは既にHD分野で世界をリードしており、コンスーマー領域でのHDシフトが加速化するのに伴い、その強みを十分に発揮できるポジションにあります。放送業務用から民生用に至る幅広いHD機器、ならびに業界ナンバーワンのHDデジタルコンテンツを、共に提供できる世界唯一の企業として、HD関連ビジネスを収益の柱とします。業界における広範な支持に支えられた次世代大容量ディスクフォーマットであるブルーレイディスクを今後のHDビジネス拡大のドライバーと位置付け、来春発売予定の「プレイステーション3」に搭載することを手始めに、2006年度より商品化とHDコンテンツの普及を加速していきます。
    (米国では「HD(High Definition) World」、日本では「ハイビジョンワールド」)
  2. インテリジェントにつながる製品群への集中
デジタルAV機器が通信・ネットワーク環境下で活用される中、新しいアプリケーションの提案が可能となります。具体的には、個人のコンテンツを個人で楽しむだけでなく、ネットワークを介してコンテンツを共有し、感動を共有すること、自動的に個人の嗜好に基づきコンテンツをアレンジすることなど、様々な楽しみ方の用途が今後拡大していきます。これを新たな成長領域と捉え、ネットワークとの親和性を高め、「共感」=「感動を共有する」商品・アプリケーションを強化していきます。
     
  3. 成長戦略を支える技術開発の強化
製品の差異化と付加価値の核となる半導体/デバイスの開発にエンジニアリングリソースを集中します。特に半導体事業についてはゲーム/イメージャー関連の製品開発に集中します。また、ブルーレイディスク関連デバイスに加えシステムLSI、次世代ディスプレイ等、強力なコアテクノロジーを開発し、商品力強化と収益性向上につなげます。具体的な重点施策は以下の通りです。
  ホーム/モバイルプラットフォームの構築
今後ますます拡大するHDコンテンツに対応する高性能なハードウェアを実現するために、汎用性のあるホームCE機器用システムLSIの開発を積極的に展開します。
また、モバイル機器における高性能化・低消費電力化を実現するため、汎用性を持ったモバイルCE機器用システムLSIを開発します。
これらシステムLSIの開発により、商品開発スピードの加速や設計効率化を併せて実現します。
  半導体・デバイスへの集中投資
    A) ブルーレイディスク関連デバイス/イメージャー/Cell
HDワールド実現のコアとなる青紫レーザーダイオードをはじめとしたブルーレイディスク関連デバイスや、既に高い競争力を誇るCCD/CMOS等を引き続き強化します。
また、Cellに関してもCE機器への搭載の開発を加速します。
    B) 「有機EL」を次世代ディスプレイの中心と位置づけ、開発を加速します。エレクトロニクスCEO直轄のディスプレイデバイス開発本部を新設します。                                                                    
  ソフトウェア開発体制の強化
エレクトロニクス製品において相互運用性と優れたユーザーインターフェース等を実現するためにミドルウェア、アプリケーション、codec(圧縮・伸張)、DRM(デジタル著作権管理技術)等のソフトウェア開発を強化します。そのために技術開発本部を新設、世界的なリソースを効果的に活かせる体制を確立し、米国や中国などでのソフトウェア開発を強化します。
     
グループ融合戦略
  「モバイルエンタテインメント」の追求
    携帯型オーディオ領域でのリーディングポジションを確立するとともに、今後音楽のみならず映像、ゲーム、書籍などのコンテンツがネットワーク上に展開していく中で、ウォークマン、携帯電話、プレイステーション・ポータブルなど操作性の高いモバイル機器とアプリケーションソフト、豊富なコンテンツを備えたサービスを開発し、ソニーグループの総合力を活かしたビジネスの立ち上げを目指していきます。
     
  Cellデベロップメントセンターの新設
    急速なブロードバンドネットワークインフラの普及を背景とし、Cellプロセッサの先進性及び汎用性を活かした新しい技術・商品・アプリケーション開発を行う組織を、CEO直轄組織として新設します。
     
各グループ事業戦略
  ゲーム
    ソニーグループ全体を一層強化し、コンピュータエンタテインメント市場をさらに発展させる「プレイステーション3」の来春の市場導入を最優先事項として推進します。また、「プレイステーション・ポータブル」の市場での地位をさらに確固たるものとします。自社ソフト開発を拡充し、エレクトロニクス、エンタテインメントとの連携も強化します。
     
  エンタテインメント
  映画:劇場公開に加えテレビのライセンスビジネスやDVD等、収益源が多様化する中で、業界ナンバーワンのデジタル映画ライブラリを活用し、映画ビジネスの更なる成長と安定化を図ります。UMDやブルーレイディスク等、新メディアの普及に伴い、今後デジタルライブラリの価値がさらに高まることが予想され、新たな収益源となることが期待されます。また、MGMのライブラリのデジタル化を加速させ、MGMコンテンツの独占配給権を持つSPEの収益力をさらに高めていきます。
  音楽:ソニーBMGの合弁効果を発揮しさらなる経営体質強化につとめるとともに、携帯やインターネットによるデジタル音楽配信事業を積極的に拡大します。またブルーレイディスクやUMD等、新たなフォーマットによるパッケージメディア販売にも注力します。
       
  携帯電話
    グループ内のエンタテインメント資産を有効活用しながら、ユニークで魅力的な端末開発に注力します。
       
  金融
    金融サービス部門はソニーグループ内で最も高い利益率を維持し、グループ全体の業績に貢献しています。なお、以前ご案内した2006年度中の株式公開の計画については2007年度以降に延期します。
       
  ネットワークサービス事業、その他リテール事業
  ソニーコミュニケーションネットワーク(株)(SCN)については、今年4月にご案内の通り、当年度中の株式公開で独立性を高め、独自の運営形態、成長戦略で企業価値を向上させます。
  リテール事業群については、その資産価値の最大化に向け、他社とのアライアンスを含めたオプションを検討します。
       

 


日本経済新聞 2005/9/25

不採算事業整理 「ソニーに熱意ない」 ストリンガー会長が不満

 ソニーのストリンガー会長は24日付英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、「(ソニーには)利益を生まない事業を整理しようという熱意が全くない」と強い不満を表明。22日に発表した経営再生策について、以前のリストラの後遺症がある「職場の士気の低さ」と「人員削減に対する文化的な反発」のため、思い切ったリストラができなかったと述べた。
 会長は「今後も改革を進める上で共に働かなければならない人々との関係を保ちつつ、できるだけのことはやった」と述べた。
 しかし、ソニーの一部役員はいかなる人員削減にも徹底的に抵抗したと指摘し、「日本社会は米国社会よりも人道的だ」と皮肉った。
 その上で、閉鎖や売却の対象となる分野を検討中だと述べ、リストラを拡大する方針を示した。


Financial Times 2005/9/24

Sony chief had to curb cutbacks
  By Michiyo Nakamoto and David Pilling in Tokyo

* 'I went as far as I could', says Stringer
* Low morale and cultural sensitivity held back restructuring
* Hint of further disposals

Sir Howard Stringer, Sony's chief executive, said yesterday that low workplace morale and Japanese cultural sensitivities about big redundancies had forced him to tone down his long-awaited restructuring plan for the ailing electronics company.

"You're all worried I didn't go far enough," Sir Howard said in an interview with the Financial Times, referring to the muted market response that sent Sony shares tumbling 5 per cent after Thursday's announcement.

"I would have
liked to have gone after a lot of unprofitable businesses, particularly, and that would have involved a lot more headcount. But there is no enthusiasm for getting rid of any unprofitable businesses. Everyone is connected to something."

Sir Howard said low morale at Sony after previous job cuts that were not seen to have borne fruit, as well as cultural resistance to redundancies, had made it hard to go further.

"I think I went as far as I could go and still preserve the relationship with people that I have to work with and who have to drive the change in this company," he said. Some executives had fought against any redundancies, he said, adding: "Japanese society is more humanitarian than American society."

Many analysts criticised him for missing what they described as a golden opportunity to take the tough decisions needed to revitalise Sony's lossmaking electronics business, which makes up more than 60 per cent of revenue.

But Sir Howard indicated that the closure or disposal of unprofitable businesses might yet go further than he was able to announce publicly.

In addition to the 15 unprofitable product categories that are being disposed of, downsized or placed in joint ventures, several other businesses had been put on probation, he said.

"There are other [units] that we decided to reprieve on the assumption that they would become profitable," he added.

These units, which he refused to name, had been given a strict time limit to turn themselves round, or face a similar fate to the 15 businesses due for immediate action, he said.

Two non-core businesses kept in-house were Sony Chemicals, which makes printed circuit boards, and Sony Life. "I could sell the life insurance business," Sir Howard said, implying that its fate was still to be decided.

Sony tried to sell it in 2002 when it got a $4.5bn (
£2.5bn) offer from GE, but talks broke down after employees opposed the sale.

One reason for not spinning off Sony Life or Sony Chemicals right away was their contribution to group operating profits, Sir Howard said.

These relatively high-margin businesses may be critical to meeting the 5 per cent operating profit margins pledged for 2007.