日経夕刊 2002/7/12  

米欧使用の添加物承認 30種、職権で指定へ 厚労省が方針を転換

 食品衛生法で使用が認められていない食品添加物を含む商品が相次いで見つかった問題で、厚生労働省は12日、国際的に安全性が認められ、欧米で広く使われている物質について、企業からの申請を待たずに食品添加物として指定することを決めた。約30品目が対象になる見通し。「食品添加物はできるだけ使用しない」という従来の方針を大幅に転換する。
 
 食品添加物を巡っては、国内の認可基準と国際基準とのズレが指摘されており、厚生労働相が食品衛生法に基づく職権で指定することを決めた。
 
 30品目については、@国連の関連機関、専門家会議(JECFA)が安全性を確認しているA米国と欧州連合(EU)で使われているーーが基準となる。
 
 まず、米欧などで食塩に固結防止として使われている添加物「フェロシアン化物」(フェロシアン化ナトリウム)の指定を検討。スナック菓子をはじめ幅広い食品で使われている同添加物について、26日に開かれる薬事・食品衛生審議会の審議を経て、厚生労働相が指定する。
 
 フェロシアン化物を使っている食塩は多くの輸入加工食品に使われている。指定までの約2週間は混乱を防ぐために輸入、販売の規制はしないという特例措置を取る。ただフェロシアン化物を含む食塩そのものの輸入、販売は指定まで自粛を要請する。
 
 現在、食品衛生法に基づき、国内で認められている食品添加物は828品目。新たに追加する場合、使用を希望するメーカーが安全性をチェックした上で、厚生労働相に認可を申請する仕組みになっている。認可されれば厚労省のリストに加えられ、他の業者も使用できるようになる。
 
 ただ、安全性試験には多くの費用がかかるため積極的に申請するメーカーは少なく、新たに承認される添加物は年間1、2種類にとどまり、国際的な使用慣行と国内のリストの違いが指摘されていた。
 添加物行政を大きく転換する決定について、厚労省は「各国の使用実態から指定の必要性の高いものは指定することにした」としている。

厚労省が指定を検討中の主な食品添加物

品目   主な用途
アルギン酸アンモニウム   増粘剤、安定剤
酢酸カルシウム   保存剤、安定剤
アルギン酸カルシウム    増粘剤、安定剤
ケイ酸カルシウムアルミニウム   固結防止剤
酸化カルシウム   アルカリ、イーストフード
ケイ酸カルシウム   固結防止剤
ソルビン酸カルシウム   保存剤
カンタキサンチン   着色料
カルミン   着色料
水酸化マグネシウム   アルカリ
ケイ酸マグネシウム   固結防止剤
L一グルタミン酸アンモニウム   風味増強剤
ナイシン   保存剤
亜酸化窒素   充てんガス
ナタマイシン   保存剤
ポリソルベート80    乳化剤
ポリソルベート60   乳化剤
ポリソルベート65    乳化剤
ポリビニルピロリドン   清澄剤
アルギン酸カリウム   増粘剤、安定剤
乳酸カリウム   酸化防止補助剤
硫酸カリウム    食塩代替品
アルミノケイ酸ナトリウム   固結防止剤
フェロシアン化ナトリウム   固結防止剤
ステアロイル乳酸ナトリウム   乳化剤、安定剤
クエン酸三エチル   溶剤

 回収多発で追認 「安全」説明との溝埋める
 食品添加物についての厚生労働省の方針転換は、日本では認可は受けていないものの、外国では安全性が確認された物質がすでに大量に流通しているという事情があるためで、現場の混乱を回避するために現状を追認した措置だといえる。  
 きっかけとなったのは協和香料化学(東京都)事件だ。同社は食品衛生法で認められていない食品添加物を30年も使用。大手メーカーが相次いで自主回収して業界が大混乱に陥った。この際、厚労省は「国際的には安全性が確認されている」と説明。国民の間に「安全なのになぜ回収するのか」と疑問の声が広がっていた。  
 日本で認められている添加物は828品目。一方、海外では国内で認められていない約600品目について安全性が認められている。「使用する添加物は文化の差」として、厚労省は企業からの申請を受けて随時指定するという方針を貫いてきた。ところが輸入食品が大量に流通、同じような自主回収が後を絶たない中、同省は「今後も市場の混乱を招く」と判断、特に汎用性の高い物質を行政判断で指定することにした。  
 食品添加物については1972年の食品衛生法改正の際、当時の添加物の安全性に対する国民の不安を前に、国会が「使用は極力制限する」という付帯決議をしている。今回の厚労省の措置は同決議を覆す一大方針転換で、「安全だが、法律違反」という変則事態の解消を目指す。  
 同省は「安全性を第一に判断する。過去の方針やしがらみにとらわれることなしに、国民に不安を与えないようにしたい」と説明。例えば、国際的に安全性が確認されており、米国で使用されていても、欧州連合(EU)で使用されていなければ、認めない方針という。

 
業界からは安どの声 自主回収リスク減
 無認可添加物が混入する製品の自主回収による負担増を懸念していた食品業界は「国内認可基準と国際基準の矛盾が少なくなる」と安どする一方、問題発生まで手を打たない行政の腰の重さにいら立ちの声が目立った。指定が検討されている亜酸化窒素は米欧ではレトルト食品の製造工程で一般的に用いられている。フェロシアン化物を含む食塩は、岩塩を多く使う米欧で広く使われている。スナック菓子で食塩を使うカルビーは「厚労省の方針転換で負担増のリスクは減る」(広報室)と歓迎する。  
 食品メーカーなどが加入する食品産業センターは厚労省に対して健康に影響がない無認可添加物について、欧米などの基準に合わせて認可数を拡大するよう求めていた。従来は企業が使いたい食品添加物について、安全性などのデータを添えて個別申請する必要があり、「1億円を超える負担がかかっていた」(食品産業センター)。中小企業が多い添加物メーカーが申請する道は事実上閉ざされていた。

年1品目が妥当
谷村顕雄・元国立衛生試験所(現・国立医薬品食品衛生研究所)所長の話  

 一度に約30もの添加物を承認したのには驚いた。欧米との認可基準の格差については以前から議論があったが、安全性を念入りにチェックする意味では、年に1品目程度の割合で承認していくのが妥当だと思う。  
 安易な指定ダメ 日和佐信子・元全国消費者団体連絡会事務局長の話  海外で安全性が確認された食品添加物をそのまま国内で認めるのではなく、どのように安全性を確認したのかまで詳細なデータに基づいて調べた上で指定する必要がある。国会決議の「添加物は極力使用しない」という精神は守るべきで、今後も安易に行政が指定しないよう注意していきたい。


日本経済新聞 2003/6/19

相次ぐ違法香料問題 原料の「秘密主義」背景に
 飲食料メーカー側知らされぬまま使用

 スイスの大手香料メーカー、フィルメニッヒ
Firmenichの日本法人である日本フィルメニツヒが販売していた香料(食品添加物)に食品衛生法で認められていない物質が入っていた問題で、該当香料をガム2品種に使用していた江崎グリコは製品を自主回収すると18日発表した。相次ぐ違法香料問題の背景には原料の情報を出荷先にも教えない業界の“秘密主義”がある。
 問題の物質は「Nーエチルー4−メンタンー3−カルボキサミド」。欧米では食品添加物として使用が許可されており「健康に影響はない」(江崎グリコ)というが、日本の食品衛生法では認可されていない。
 この香料は米フィルメニッヒ社から輸入し、昨年12月から江崎グリコに出荷。5月13日以降の製造分は問題物質の使用を中止したという。
 江崎グリコは全原料メーカーに「原料規格書」と「違法原料は使用していない」との証明書を提出させている。しかし「物質名までは把握していない」(江崎グリコ)といい、ブラックボックスとなっているのが現実だ。
 3月発売の「ウォータリングキスミントガム」のクリアミント味など2種類については、出荷済みの約400万個の自主回収を開始。回収額は約3億円に上る見込みで、日本フィルメニッヒヘ損害賠償請求も検討中だ。
 違法香料問題では昨年、協和香料化学が食品衛生法違反の香料を約260社に出荷し、大規模な回収騒ぎの末に同社は自己破産。先月にもクエスト・インターナショナル・ジャパン(横浜市)が出荷していた香料に今回と同成分が含まれていたため、日本コカ・コーラなど3社が一部商品の自主回収に踏み切った。
 香料原料は「企業秘密」として飲料メーカーなどにも知らされないケースが多い。日本コカは自主回収対象の「ボコ」などを16日から香料を変更して発売を再開し、同社で初めて香料メーカーに成分を開示させた。
 食品衛生法では現在、829品目(香料は約100品目)の食品添加物の使用を認めており、指定外品の国内製造・販売では厚生労働省の認可が必要。だが香料は「申請費用が1品目で1億円程度なのに対し、売上高は数百万円程度」といわれ中小メーカーの負担は少なくない。 厚労省は国際的な専門機関で既に安全性が評価され、広く流通している一部の添加物については、メーカー申請を待たず行政側の判断で認可することも検討中だ。 


Firmenich   http://www.firmenich.com/ 

Firmenich is not just the name of a Fragrance and Flavor company.
It is the name of a Family personally committed to its clients for nearly 110 years. Combining experience with innovation, Firmenich is today the largest private company in its industry.

We are dedicated to create high quality fragrances and flavors used by our customers in their consumer brands. Quite often, the products we perfume or flavor become bestsellers in world markets.

High quality people produce high quality results. Firmenich was founded in 1895 in Geneva, by Philippe Chuit, a talented Swiss chemist, in association with Martin Naef, a shrewed businessman. They were joined shortly after by Fred Firmenich, who soon became the majority partner.

Since then, Firmenich has remained a family-owned business, building on a solid foundation of pioneering and entrepreneurial vigor.
Today, we are the world's largest private company in the fragrance and flavor industry worldwide.