米国でASPEXによる初の組換えタンパク質商業生産開始
旭硝子(株)(本社:東京、社長:石津進也)は、2001年12月に米国ダイバーサ社との間でASPEXを技術供与するライセンス契約を締結し、同社とともに量産のための開発を進めてきましたが、このたびダイバーサ社が米国FDAの認可を受け、ASPEX技術による初の組換えタンパク質の商業生産を開始しました。
今回ダイバーサ社が商業生産を開始した組換えタンパク質は「フィターゼ」という動物飼料添加用の酵素で、飼料中の有機リンの吸収を増やし、環境へのリン分放出を低減されるために動物飼料工業で広く使われています。
米国では水質汚濁の原因となるリン排出への法規制強化が予想されていることから、「フィターゼ」の市場は、過去2年間で約2倍に急成長し、2002年には約160億円となっています。
ダイバーサ社のフィターゼは、ダイバーサ社と世界的独占販売契約を結んでいるダニスコ・アニマル・ニュートリション社UKが"PhyzymeTM
XP"の商標で販売し、旭硝子は販売額に応じたロイヤリティを受けることになります。
今回のフィターゼ商業生産に至る経緯で、ASPEXはダイバーサ社から組換えタンパク質生産能力の高さ、量産コストの安さ、商業生産スケールへの移行の容易さで高い評価を得ました。これにより昨年秋、旭硝子とダイバーサ社は、新たにダイバーサ社の新規商業化候補アイテムに対し、ASPEXを使用して継続的に発現・開発を行う包括的枠組みに合意しました。
また、今回のフィターゼ商業生産開始は対外的にも、ASPEXが
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コストの厳しい産業用酵素に使用できる高い生産性を持つこと
・ バイオ先進国である米国FDA認可が得られたこと
を示す実績であり、今後の事業拡大により一層弾みがつくことを期待しています。
旭硝子は、既に発表済みのDSMバイオロジクス社との提携による医薬品原体受託製造分野での事業展開と合わせ、2005年には約2千億円に拡大すると予想されている蛋白質受託製造の市場での日本ナンバーワン企業を目指します。
ご参考
1) ASPEX(アスペックス:Asahi Glass Schizosaccharomyces pombe Expression System) | ||||||||||||||||
ファインケミカルズ分野における次世代技術として当社が開発した、酵母を利用した蛋白質の生産技術。 2000年4月に「ASPEX事業推進部」を設置し、国内外の医薬・化学・食品メーカーを対象にマーケティングを進め、多くの開発を行っている。 *これまでのASPEX事業の主な動き 2001年 7月 DSMバイオロジクスの日本の総代理店となる長期契約を締結 2001年12月 ダイバーサ社とのライセンス契約締結 |
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2) ダイバーサ社 | ||||||||||||||||
: | バイオインダストリーの中でも注目される企業のひとつ。1992年に設立されたベンチャー企業で、遺伝子高速スクリーニングと最適化に関する独自技術を持ち、様々な自然環境中から特異的な遺伝子を探索・ライブラリー化する世界的なリーディングカンパニーとして、医薬・農業・化学など幅広い分野で事業展開している。
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3) ダニスコ・アニマル・ニュートリション社UK | ||||||||||||||||
デンマークに本社を置くダニスコ社(2001/2002年の売上約3062億円)の飼料添加物の事業子会社で1980年代の初めから動物飼料添加用の酵素及びベタインの用途開発のパイオニアとして事業展開している。環境を重視し、消費者の安全や高品質へのニーズを動物栄養ソリューションで解決することを理念として養豚、養鶏、養殖魚飼料用の各種酵素、ベタイン、香料の供給・販売を手がけている。
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4) フィターゼ | ||||||||||||||||
フィチン酸(イノシトール六リン酸)を分解、無機リン酸を遊離する酵素群の総称。 豚、鶏などの単胃動物では植物飼料中のフィチン様物質を分解し、リン分を吸収することができずそのまま排泄される。リン分は窒素分とともに海水、湖水の富養化の原因物質であり、水質汚濁防止法により排水中の基準が設けられている。 飼料にフィターゼを添加することにより飼料中のリン分の吸収をよくし、排泄物中のリン分を減少させ環境への負荷を低減できる。 | ||||||||||||||||
5) 米国FDA(Food and Drug Administration) | ||||||||||||||||
米国の医薬・食品加工・添加物等の安全審査を行う機関 |