エーザイ 米国バイオファーマMGIファーマを買収
神経・消化器・オンコロジー・クリティカルケアを重点領域とする研究開発型のヒューマン・ヘルスケア(hhc)企業であるエーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫、以下、エーザイ)は、がん・救急治療に強みを持つ米国バイオファーマ企業であるMGIファーマ・インク(MGI
PHARMA, INC./本社:ミネソタ州、President & CEO:Lonnie
Moulder、以下、MGIファーマ)と、12 月10日、エーザイがMGIファーマを総額約39億米ドルの現金にて買収する最終契約を締結しました。本契約に基づき、エーザイは、MGIファーマの発行済み株式の全てについて、1株あたり41米ドルの現金にて取得する公開買付けを行います。
本買収にかかる契約は、MGIファーマの取締役会の全会一致の決議により承認されています。本買収は、公開買付けおよびそれに続く現金を対価とする合併の方法で行われる予定であり、同種の取引に通常規定される各種条件を満たすことを前提として、2008年第1四半期(1〜3月)中に終了する見通しです。
本買収により、エーザイは自社の既存のがん領域製品、グローバルに展開するインフラおよび研究開発機能に加えて、MGIファーマのがん・救急治療関連製品・開発品とコマーシャルおよび研究開発機能を得ることになり、売上の継続的拡大やパイプラインの充実を果すとともにシナジーの機会を獲得することになります。また、エーザイは、本買収により米国事業において一層の成長を果し、最重点領域として取り組んでいるがん領域ビジネスの基盤が強化されることを期待しています。なお、エーザイのCash
EPS(のれん償却前1株当たり当期純利益)は2008年度より、またGAAP
EPS(のれん償却後1株当たり当期純利益)は2009年度より、本買収を行わない場合に比べそれぞれ増大する見通しです。
エーザイ社長・内藤晴夫は「MGIファーマの経営陣と従業員ならびに製品とパイプラインを非常に高く評価しており、世界の患者様のアンメット・メディカル・ニーズを満たすために、高い能力を持ったプロフェッショナルと働くことを楽しみにしています。戦略的には、この買収によって、最重点領域として取り組んでいるがん領域ビジネスの基盤を強化し、第X期中期戦略計画「ドラマティック
リープ プラン」(以下、DLP)達成の確度向上、さらには2012年度以降の成長を確保していくことを期待しています。」と述べています。
MGIファーマのLonnie Moulder社長は「MGIファーマの取締役会は、数ヶ月にわたり当社の法務アドバイザー、財務アドバイザーとともに戦略的選択肢の検討を行ってきました。この期間、当社の背景やビジョンについて多くの製薬業界、バイオテク業界のリリーディング企業へ説明してきました。今回の契約は、このような過程の成果となったものです。当社の取締役会、経営陣は今回の契約を非常に歓迎しており、患者様に重要な治療薬を今後も提供し続けることができる機会となると期待しています。」とコメントしています。
エーザイは、2011年度を最終年度としたDLPを2006年度よりスタートしています。DLPのもと、エーザイは日本、米国、欧州、アジアの全ての地域で着実な事業成長を果たし、特に医療ニーズの高いがん領域を最重点領域として育成することを目指しビジネス展開を進めています。2006年10月にはライガンド社(米国)の抗がん剤4品目の製品買収および同社がん領域スペシャリストのノウハウを獲得し、さらに2007年4月には独自のヒト抗体技術を有するバイオベンチャー企業モルフォテック社(米国)を買収するなど、がん領域の研究開発力や事業展開の強化を進めてきました。また、ノースカロライナ工場に抗がん剤の生産・製剤化研究のための施設を建設中です。
MGIファーマは、がん化学療法による悪心・嘔吐を適応とするAloxi®や骨髄異形成症候群治療剤Dacogen®、悪性神経膠腫を適応とするGliadel®
Wafer(インプラント型polifeprosan 20 carmustine)などを保有しています。後期開発品には、鎮静剤Aquavan®(申請中)などがあります。また、現製品のAloxi®およびDacogen®の製品価値をさらに高めるために新効能や新規剤形などの開発も進めています。
本買収の概要
本買収は、MGIファーマの発行済み普通株式の全てを現金で買い付ける公開買付け、およびそれに続く合併によって行われ、当該合併に際しては、MGIファーマ株式の残数に係る株主は、株式買取請求権を行使した反対株主を除き、公開買付けにおいて支払われるのと同額の41米ドルを受領することになります。本公開買付けは、MGIファーマの発行済株式(完全希釈化ベース)の過半数が応募されること、米国独占禁止法による待機期間の終了または早期の解消、その他の行政上の認可の取得などを含む、同種の取引に通常規定される各種条件を満たすことを前提に行われることになります。本公開買付けは、米国証券法および適用される米国州法に従って実施されます。
本買収のため、エーザイは、エーザイ・コーポレーション・オブ・ノースアメリカ(本社:ニュージャージー州、社長:清水初、以下、ECA)の完全子会社として買収子会社ジャガー・アクイジション・コープ(以下、JAC)を設立します。本公開買付け終了後、JACはMGIファーマに吸収合併され、合併後の会社はECAの完全子会社となります。
買収資金は手元流動性資金および銀行借り入れにより調達する予定であり、エーザイは、本買収を実施するために必要な借入れのためのコミットメントを取得しています。
本買収における買収価格である41米ドルは、MGIファーマが戦略的選択肢の検討を行なっている旨を公表した直前の営業日である2007年11月28日のMGIファーマ株式終値(29.55米ドル)に対して約38.7%のプレミアムを加えた金額になります。
本買収は、買収契約に基づいて実行されるものです。本買収契約は、MGIファーマとエーザイの両社に一定の解除権を規定しており、また、特定の理由により本買収契約が解除された場合には、MGIファーマはエーザイに対して解除手数料(ターミネーション・フィー)として129百万米ドルの支払いを義務付けられる場合があります。
エーザイの財務アドバイザーはJPモルガン証券株式会社、法務アドバイザーはSullivan
& Cromwell LLP、MGIファーマの戦略的選択肢の検討における財務アドバイザーはLehman
Brothers Inc.、法務アドバイザーはHogan & Hartson
LLPです。
MGIファーマについて
MGIファーマは、バイオファーマ企業であり、アンメット・メディカル・ニーズを充足する薬剤の獲得、研究開発、生産、販売機能を持っており、がん・救急治療分野に多くの製品やパイプラインを保有しています。MGIファーマは米国で独自で販売活動を行っています。グローバル市場に関しては、パートナーとコラボレーションを行っています。
より詳しい情報はウェブサイト(http://www.mgipharma.com/)をご参照ください。
MGIファーマの主力製品の概要
(1)Aloxi®(injection)
一般名:palonosetron hydrochloride
作用機序:セロトニンサブタイプ3(5-HT3)受容体拮抗
効能・効果:がん化学療法による悪心・嘔吐
特徴:遅発性の悪心・嘔吐にも適応を保有する唯一の5-HT3受容体拮抗型の制吐剤
米国発売年:2003年
2006年売上高:251百万米ドル
効能追加:術後の悪心・嘔吐(申請中)
剤形追加:経口剤(がん化学療法による悪心・嘔吐)(申請中)
(2)Dacogen®(injection)
一般名:decitabine
作用機序:DNAメチル化阻害による細胞分化誘導作用
効能・効果:骨髄異形成症候群(MDS/myelodysplastic
syndrome)
特徴:広い適応範囲(前治療の有無にかかわらず、初発および二次性MDSの全サブタイプに効果を発揮する)
米国発売年:2006年
2006年売上高:36百万米ドル
効能追加:急性骨髄性白血病(AML/acute
myeloid leukemia)(フェーズV)
(3)Gliadel® Wafer
一般名:carmustine wafer
作用機序:DNA・RNAアルキル化剤(抗がん剤)carmustineの脳内インプラント徐放製剤
効能・効果:初発の悪性神経膠腫における手術および放射線療法との併用
再発型の多型性神経膠芽腫における手術との併用
特徴:FDAにより承認された唯一のインプラント型脳腫瘍治療剤
米国発売年:1996年
2006年売上高:36百万米ドル
2007/12/12 日本経済新聞
エ一ザイ のれん代が利益圧迫 米製薬買収 最大、年200億円に
米製薬MGIファーマ(ミネソタ州)の買収を決めたエーザイに、2009年3月期からのれん代の償却負担が利益圧迫要因として重くのしかかりそうだ。買収総額が39億ドル(4300億円超)に膨らんだため年間ののれん償却額は最大200億円程度にまで膨らむ公算が大きい。ただ11年までに日本の会計基準が国際会計基準と共通になるため、のれんの費用計上が短期間で終わる可能性もある。
エーザイはTOB(株式公開買い付け)などを経て、今期中に米ナスダックに上場するMGIファーマの買収を完了する予定。現時点でMGIファーマの価値を数百億円と見積もっているもようで、償却総額は3500億−4000億円程度になりそう。償却期間は20年間が有力で、単純計算すると年間175億ー200億円程度がのれん代として販管費に上乗せされることになる。
MGIファーマは06年12月期の売上高が380億円にすぎず、最終損益は45億円程度の赤字。4300億円の買収価格は「高すぎる」(大手投信)との声も漏れる。ただ世界の製薬業界では新薬不足が共通の課題で、大手各社は魅力的な新薬候補を抱える企業を買収しようと躍起。そのため買収価格がつり上がり、のれん代も増加傾向にある。
ただのれん代の定期償却は2−3年の短期で終わる可能性もある。11年までに日本の会計基準は国際会計基準と共通化される予定。のれん代について日本の会計基準は現在、毎年一定額の費用計上を義務付けているが、国際会計基準はのれんの価値が目減りした場合にのみ減損損失を計上する方式だからだ。減損方式に変わった場合は定期償却をやめる方針だ。
米国・バイオベンチャー、モルフォテック社を買収
エーザイの抗体医薬参入に向けたドラマティック
リープ
エーザイ株式会社と米州統括会社エーザイ・コーポレーション・オブ・ノースアメリカ(ECA)および米国モルフォテック社(Morphotek®
Inc.、本社:ペンシルバニア州、社長:ニコラス・ニコライデス、以下、モルフォテック社)はこのたび、ECAがモルフォテック社を買収する最終契約の締結を発表しました。本契約における買収価額は325百万ドル(純現預金差し引き後)となります。
モルフォテック社は、抗体医薬の研究開発を専門とするバイオベンチャー企業で、独自のヒト抗体技術「Human
MORPHODOMA®(ヒューマン・モルフォドーマ)」および「Libradoma(ライブラドーマ)」を使用し、各種がん、関節リウマチ、感染症などの疾患に対する抗体治療薬の開発に取り組んでいます。現在、同社のパイプライン中の2品目がそれぞれ卵巣がんと膵臓がんを対象とした臨床試験に入っているほか、前臨床段階にある候補品目を複数保有しています。
エーザイは、がん領域を第V期中期戦略計画「ドラマティック
リープ
プラン」において最重点領域と位置づけており、現在、低分子化合物の抗がん剤開発に向けてグローバルな研究開発に取り組んでいます。今回の契約により、エーザイはバイオロジクス分野への本格的な参入を果たすこととなり、モルフォテック社の持つユニークな抗体技術を活用し、当社のがんに対する抗体治療薬創出の充実をはかることとなります。これにより、低分子抗がん剤の開発と合わせて、がん患者様の多面的なニーズに対応することが可能となります。
エーザイ社長内藤晴夫は、「当社は、抗体治療薬研究におけるニコライデス氏の革新的で大胆なアプローチを高く評価しています。同氏のこの領域における貢献は極めて大きいものがあります。当社は、モルフォテック社の有する独自の技術および有望な抗体群と、当社の研究開発体制、インフラストラクチャーとの融合により、世界のがん患者様のニーズの充足に、より一層貢献してまいります。また、モルフォテック社の充実したパイプライン、抗体創出基盤、優秀な人材は、当社のバイオロジクスの研究開発活動において中核的存在となります」と述べています。
モルフォテック社社長ニコラス・ニコライデスは、「エーザイの豊富な知的、経営的資源は当社の抗体治療薬開発を加速させ、また、当社の共同研究ネットワークやエーザイが探索したターゲットに対応する臨床化合物の開発を進展させることができます」と述べています。また、モルフォテック社の会長でフォワード・ベンチャーの経営パートナーでもあるアイバー・ロイストンは、「エーザイ・グループに加わることによって、難病治療および世界の人々の健康のため、革新的な免疫治療薬開発におけるグローバル・リーダーを目指す、というモルフォテック社の創業精神に向かって前進できることは、当社にとってもすばらしいことです」と述べています。
エーザイは、画期的新薬の創出を目指し、日米欧の3極体制からなるグローバルな探索・研究開発活動を推進しています。エーザイの探索研究施設であるボストン研究所(マサチューセッツ州アンドーバー)や臨床研究会社のエーザイ・メディカル・リサーチ・インク(ニュージャージー州リッジフィールドパーク)、および製剤研究所(ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク)にモルフォテック社が加わることにより、エーザイの米国における研究開発機能はさらに強化されます。
本契約の締結について、エーザイ社長内藤晴夫は、「当社はモルフォテック社をエーザイ・ネットワークの一員として歓迎します。また今後も同社の独自性を尊重し、当社の既存の研究機能とのコラボレーションを推進していきます」と述べています。
エーザイは、2006年10月に米国・ライガンド社との抗がん剤4品目の製品買収および同社がん領域スペシャリストの移籍を実施するなど、自社開発や製品買収およびライセンス契約などによる抗がん剤上市に向けた研究開発および販売体制整備を進めてまいりました。モルフォテック社の買収は、エーザイのがん領域の研究開発や事業展開をさらに強化するものです。
本契約はすでにECAの取締役会で承認されており、米国独占禁止法上の審査の終了および他の移管条件が整い次第、発効します。現在、契約発効は2007年度第1四半期を予測しています。
なお、本案件に関するエーザイのアドバイザーは、三菱UFJ証券株式会社ならびにMontgomery
& Co. LLC(財務面)、Sullivan & Cromwell LLP(法務面)が担当しています。モルフォテック社のアドバイザーはLehman
Brothers Inc.(財務面)およびCozen O’Conner LLP(法務面)が担当しています。
モルフォテック社の主な技術基盤について
完全ヒトモノクローナル抗体産生と最適化技術(Human
MORPHODOMAR,
LibradomaTM)
○Human MORPHODOMA(ヒューマン・モルフォドーマ)
Human MORPHODOMA技術は、完全ヒトモノクローナル抗体を産生することができる抗体創出基盤です。さらに、モルフォテック社の独占技術およびノウハウにより、細胞による抗体力価の最大化、抗体のクラススイッチ、抗体の抗原への親和性の向上が可能となります。
○Libradoma(ライブラドーマ)
Libradoma技術は、Human MORPHODOMA技術およびモルフォテック社独自の技術を用いて、数千種のハイブリドーマ細胞のライブラリを構築します。その後、ハイブリドーマ細胞から、ハイスループット・ロボットを用いて、望ましい親和性プロファイルをもった抗体を産生する細胞株を速やかに選択します。