2004/10/12 富士経済
研究支援分野、医療分野のバイオビジネス市場調査を実施
― 分子標的治療薬は2010年に1,000億円(2003年の2.3倍)市場へ ―
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=83546
総合マーケティングビジネスの(株)富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 原 務)はこのほど、多くのビジネスチャンスを有し将来有望視されるバイオビジネス市場のなかから研究支援分野、医療分野を調査し、その結果を報告書「2004 バイオビジネス市場」にまとめた。
研究支援分野は、RNAi試薬、シグナル伝達関連試薬などの新しい技術により活気づき、医療分野は、抗体医薬、分子標的治療薬の登場によりバイオ医薬が拡大している。
<注目市場>
抗体医薬 81億円(2003年) 350億円(2010年予測)
2003年比4.3倍
癌細胞など標的細胞だけに結合するという抗体の性質を利用して患部をピンポイントで攻撃する。低分子の化合物を利用する従来の医薬品では難しい難病の治療や副作用の低減が期待できる。
2002年の4月に「シムレクト(ノバルティスファーマ)」、5月に「レミケード(田辺製薬)」、9月に「シナジス(ダイナボット/大日本製薬)」が発売され本格的に市場が形成された。抗リウマチ、キャッスルマン病、ベーチェット病、クローン病など、既存の治療薬で十分な効果が得られない分野で新薬が上市され、今後も市場が拡大していくとみられる。
DNAチップ 56億円(2003年) 150億円(2010年予測)
2003年比2.7倍
参入各社が製品価格を相次いで大幅に引き下げたことにより、ユーザー(研究機関)が拡大し、需要を喚起した。ユーザー層は創薬中心であるが、食品・環境分野でも利用されはじめ、ユーザーの裾野が広がっている。金額ベースの伸びは鈍化したが、枚数ベースの伸びは顕著であり、2004年には10万枚を超えると見込まれる。
新製品の導入や価格の引き下げがユーザーの広がりに結び付いたが、遺伝子の発現量を解析するだけでは市場の成長には限度がある。遺伝子の多型解析や薬物代謝にかかわるトキシコジェノミクスなどでの利用が期待される。将来的には、診断用途でDNAチップが活用されれば市場は更に拡大されるであろう。
分子標的治療薬 427億円(2003年) 1,000億円(2010年予測)
2003年比2.3倍
分子標的治療薬とは、病気に関係がある細胞だけに働きかける機能を持った治療薬である。従来の治療薬に比べて副作用が少ないとされ、がん治療などで注目されている。がん治療を例に挙げれば、従来の抗がん剤はがん細胞を直接攻撃する一方、増殖している正常な細胞まで攻撃してしまう恐れがあったが、分子標的治療薬はがん細胞を正常な細胞と見分けて狙い撃ちし、その働きを弱めて増殖を阻止する。
2002年は「イレッサ(アストラゼネカ)」の発売および、「グリベック(ノバルティスファーマ)」の本格的な販売で市場が拡大した。「イレッサ」の副作用問題があったが、市場としては確実に成長している。
分子標的治療薬は今後多くの製品が、開発・上市されることが予想される。ただし、各薬剤とも標的が決まっており、対象となる患者も限られる。製薬会社としては、領域を絞り込んで開発を推進したいが、絞り込みすぎると市場が小さくなるというジレンマも抱えている。
<調査結果の概要>
2003年の対象市場トータルの規模は、4,960億円であった。2003年で全体の約6割、3,000億円近い規模をもつ遺伝子組換え・組織培養医薬品は、新たな技術によるものと入れ替わるかたちで、微増で推移するものとみられる。しかし、抗体医薬、分子標的治療薬、DNAチップなどの伸び、RNAi試薬などの新分野の立ち上がりにより、2010年には6,280億円(2003年比127%)に達するとみられる。遺伝子組換え・組織培養医薬品を除けば、2010年には2003年比173%の伸びと予測される。
1.研究支援分野
: | 解析試薬・機器 | : | 2003年 | : | 771億円 | : | 2010年 | : | 977億円(03年比 127%) |
受託サービス | 2003年 | 252億円 | 2010年 | 318億円(03年比 126%) | |||||
バイオインフォマティクス | 2003年 | 377億円 | 2010年 | 467億円(03年比 124%) |
解析試薬・機器のなかでは、DNAチップ、ラブオンチップ、プロテインチップ、二次元電気泳動システム、シグナル伝達関連試薬が年率2桁成長が予測される。一方、DNAシークエンサー、制限酵素、修飾酵素などは減少推移する。
受託サービスでは、タンパク質への関心の高まりから遺伝子多型解析、プロテオーム解析が年率二桁成長すると予測されるが、オリゴ合成は価格引き下げ圧力が強く微減で推移する。メインとなる遺伝子診断は感染症診断を中心に白血病、癌などの診断で安定推移していくと見られる。
バイオインフォマティクス分野では、サーバなどのハードウェアは微増推移と見られる。データベース、教育用などでパッケージソフトの需要は根強く、順調な伸びを示すと見られる。
2.医療分野
: | バイオ医薬 | : | 2003年 | : | 3,482億円 | : | 2010年 | : | 4,450億円(03年比 128%) |
遺伝子診断薬 | 2003年 | 79億円 | 2010年 | 67億円(03年比 86%) |
2003年時点でバイオ医薬市場の85%を占める遺伝子組換え・組織培養医薬品は薬価の引き下げもあり微増で推移すると見られる。バイオ医薬のなかでは、抗体医薬、分子標的治療薬は開発中の製品も多く、的確に標的細胞に作用し、副作用の低減も期待されることからも、高成長を続けると予測される。遺伝子診断薬では、新しい分野として癌関連診断薬が立ち上がりつつあるが、遺伝子診断薬のほとんどを占める感染症診断薬がHCV、結核菌検査の減少から縮小していく。
2007/4/12 日本経済新聞
富士フイルム ナノ技術でがん治療剤
ゼラチンで塗り薬 抗がん剤の効果持続 5年内メド実用化
富士フイルムはフィルム製造で培ったナノテクノロジー(超微細技術)を活用し、抗がん剤の効き目を長くする塗り薬技術を開発した。動物実験で安全性を確認したうえで2年後に米国で臨床試験を始め、5年以内の実用化をめざす。同社の医薬品参入の第一弾となる見通しで、医療検査用の画像システムや内視鏡などを中心にした医療事業分野を中核的な事業の柱の一つに育てていく方針だ。
塗り薬にはフィルムの主材料であるゼラチンを使う。遺伝子組み換えを使った微生物を活用して体になじみやすいゼラチンを作ることに成功、これをがん治療用に活用する。牛由来の一般的なゼラチンと異なり、牛海綿状脳症(BSE)など感染症の恐れがない。
ゼラチンを直径約100ナノメートルの微粒子にして抗がん剤を染み込ませる。肌に塗ると薬の成分が徐々にしみ出て効果が持続する。点滴や注射を繰り返す必要がなく、体の表面に近い部位にできたがんの場合は患部に直接抗がん剤が届く。全身に抗がん剤が行き渡る注射治療に比べて副作用が軽くなる可能性があるという。
米バイオベンチャーのキャンジェン・バイオテクノロジーズ(メリーランド州)と共同で塗り薬の開発を進める。動物実験で安全性を確認したうえで、首などにがん病変が露出した末期患者向けに臨床試験を米国で実施する。
ゼラチンの安全性や有効性を確認しつつ、このゼラチン技術を注射剤などにも活用していく考え。体の内部のがんに対しても病変の周辺に抗がん剤を集めやすくする効果が期待できるという。
同社は写真フィルム市場が縮小するなかで、医療・ライフサイエンスを今後の重点育成分野に掲げている。医療検査機器などを中心に2005年度で約2300億円の同分野の売上高を08年度に3千億円、将来は5千億円規模に拡大する目標を掲げている。
今後の目玉の一つとなるのが医薬品分野で、06年1月には国内の創薬ベンチャーに出資し、人間の免疫機能を応用した副作用の少ない「抗体医薬」の共同研究にも乗り出している。
2007/4/12 日本経済新聞
カプセル内視鏡 イスラエル社と世界で販売提携 富士フイルム子会社
富士フイルム子会社の光学機器メーカー、フジノン(さいたま市)は11日、米ナスダック上場のカプセル内視鏡メーカー、ギブン・イメージング(イスラエル)と業務提携したと発表した。ギブンのカプセル内視鏡を世界で販売するほか、フジノンの光学技術とギブンの画像解析技術などを組み合わせ、消化器分野で次世代内視鏡システムを共同開発する。
販売地域を両社で協議したうえで6月にもフジノンが販売を開始。2008年3月期に3億円の売り上げをめざす。
内視鏡製品の国内販売子会社「フジノン東芝ESシステム」を完全子会社化
開発・製造・販売・アフターサービスまでの一貫体制を構築し、内視鏡事業の競争力を強化!
富士フイルム株式会社(社長:古森 重驕jは、東芝メディカルシステムズ株式会社(社長:小松 研一、以下東芝メディカル)との間で、内視鏡製品の国内販売子会社であるフジノン東芝ESシステム株式会社(社長:宇田川 哲夫、以下FTS)の東芝メディカルの全保有株式(40%)を富士フイルムが譲受することで合意しました。株式譲受日は3月31日を予定しています。
富士フイルムは、平成20年10月に、成長事業であるメディカル・ライフサイエ ンス事業の中でも重点分野として位置付けている内視鏡事業を子会社のフジノン株式会社より移管し、開発・製造・マーケティング機能を強化しています。今回 さらに、FTSを富士フイルムの完全子会社にすることで、開発・製造から販売・アフターサービスまで含めた一貫体制を構築。医療現場の多様化するニーズに 対応した製品をスピーディーに提供し、競争力向上を図っていきます。
また、完全子会社化にあわせて、4月1日付けでFTSを医療機材国内販売子会社である富士フイルムメディカル株式会社(社長:加藤 久豊、以下FMS) に統合し、FMSのもとでメディカル製品の国内販売の一元化を図ります。今後、医療用デジタルX線画像診断システムの分野で世界トップシェアである 「FCR(*1)」や直接変換方式FPD(フラットパネルディテクタ)(*2)搭載の「BENEO」などのモダリティ、放射線科PACS(*3)で国内 トップシェアを誇る「SYNAPSE」や内視鏡・超音波・病理の各部門システム「nexus」などの医療用ネットワークシステムに内視鏡製品を加えた幅広 いラインアップで、医療機関の診断から治療の領域にわたるトータルソリューションの提供力を強化していきます。
なお、東芝メディカルとは、今後も内視鏡製品の販売における協力関係を継続していくとともに、診療所を対象とした富士フイルムの医療用デジタルX線画像診断システム「FCR」と東芝メディカルのX線発生装置などの相互供給もさらに強化していく予定です。
*1 Fuji Computed Radiographyの略。イメージングプレート(IP)に記録したX線画像情報を読み取り、診断目的に合わせて最適なデジタル画像処理を行うことで、高精度の診断画像を生成する、医療用デジタルX線画像診断システム。
*2 被写体を通過して照射されるX線エネルギーを、X線透過画像として再構成するための電気信号に変換する機能を有し、画像診断のために必要な人体の部分を十 分に覆う面積の平面をもつ、平板状のX線画像平面検出器のこと。X線をいったん光信号に変換した後に電気信号に変える間接変換型とX線を直接、電気信号に 変える直接変換型がある。
*3 Picture Archiving and Communications System(医用画像情報システム)。
【FTSの概要(平成21年1月31日現在)】
代表者 |
宇田川 哲夫 |
---|---|
本店所在地 |
東京都文京区本郷1-28-10 本郷TKビル1F |
創立年月 |
平成14年3月 |
資本金 |
200百万円 |
株主構成 |
富士フイルム 60%、東芝メディカルシステムズ 40% |
事業の内容 |
内視鏡およびその関連商品の日本国内における販売・サービス |
決算期 |
3月 |
【FMSの概要(平成21年1月31日現在)】
代表者 |
加藤 久豊 |
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本店所在地 |
東京都港区西麻布2-26-30 富士フイルム西麻布ビル |
創立年月 |
昭和40年1月 |
資本金 |
1,200百万円 |
株主構成 |
富士フイルム 100% |
事業の内容 |
医療用ネットワークシステム・機材の設計開発・販売 |
決算期 |
3月 |