2002/10/03 伊藤忠商事
伊藤忠、米国バイオテクベンチャーと提携
〜細胞治療事業に参入〜
伊藤忠商事は、米国の細胞治療研究開発ベンチャー企業 セレクシス(CellExSys,Inc.本社シアトル)と提携し、国内における細胞治療合弁事業設立を目指す。今後両社は、セレクシスのREM技術を応用し、疾患治療用細胞医薬を開発、製造、販売する日本法人の設立に向けて国内で活動していく。
セレクシスは、2000年に遺伝子治療研究開発企業Targeted Genetics(Nasdaq上場)の子会社として創立された。同社は、抗原特異的なTリンパ球を短期間に大量に増殖させる特許技術、REM(Rapid Expansion Method:急速拡大法)の研究及び臨床応用を目的とするバイオテクベンチャー企業である。REM技術で調製された抗原特異的なTリンパ球は、これまでに全世界で150人以上の様々な感染症患者やガン患者に投与され、その臨床における安全性と有効性が科学論文などで発表されている。
セレクシスは、2003年から米国でB型慢性肝炎患者を対象とする臨床第I相試験を実施する予定である。同社は、患者の血液中に存在するウイルス感染細胞やガン細胞を認識して攻撃する抗原特異的なTリンパ球を、REM技術を用いて体外で大量に増殖させてから患者へ戻すことにより、ウイルス感染症やガンの治療を実施することを目指している。
伊藤忠とCellExSys
Inc.は、薬事法、医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準(GMP)や、ヒト由来細胞の品質や安全性に関する指針に準拠してREM技術で治療用細胞を製造する施設設備の確保を進めていく予定である。両社は出来る限り早期に日本法人を設立し、臨床試験を実施する方向で検討している。
伊藤忠は世界最大のバイオテクベンチャーキャピタルグループMPM Capitalが運営するMPM BioVentures III Parallel Fundへ2,000万ドル出資したが、同ファンドの投資先である細胞治療・再生医療バイオテク企業との国内での協業可能性も視野に入れ、2010年の市場規模が3,000億円と見込まれる再生医療市場において、将来的には種々の疾患に対する細胞治療・再生医療を提供する生物医薬品開発ビジネス展開を目指す。
<参考資料>
セレクシス社について
2002年7月に世界最大のバイオテク企業アムジェン(Amgen)に買収されたバイオテク企業イミュネックス(Immunex)から、1992年にスピンアウトした遺伝子治療開発バイオテクベンチャー企業ターゲティッドジェネティクス(Targeted Genetics)の子会社として2000年に創立された(本拠地:米国シアトル)。ターゲティッドジェネティクス社は1994年にNASDAQ市場に上場し、現在複数の製薬企業やバイオテク企業と提携してガンや遺伝性疾患の遺伝子治療の臨床開発を進めている。
セレクシス社は、ターゲティッドジェネティクス社がシアトルにあるフレッドハッチンソンガン研究センターと開発した特許技術REM(Rapid Expansion Method:急速拡大法)の独占的使用権を有しており、またREM技術の他にTリンパ球の遺伝子操作に関する特許も保有している。同社はREM技術を用いてウイルス感染細胞やガン細胞を特異的に認識して攻撃する抗原特異的Tリンパ球を患者の血液中から分離して大量に増やした後に患者へ投与する、活性化自己リンパ球による養子免疫療法の研究開発を進めている。
セレクシス社は、フレッドハッチンソンガン研究センターとワシントン大学医学部(シアトル)において、B型肝炎ウイルスによる慢性肝炎患者を対象に、REM技術で調製した患者由来のTリンパ球を用いる臨床第I相試験を2003年に開始する。さらにC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎患者やガン患者を対象とする臨床試験も計画している。
セレクシス社のREM技術
Tリンパ球を試験管内で約2週間かけて1,000倍前後に増殖させる技術である。この技術はプラットフォーム技術であり、1個の抗原特異的なTリンパ球の培養からスタートして最終的に10億個以上の均一なTリンパ球集団を得ることを可能としている。これまでにB型肝炎ウイルスを始めとする種々のウイルスを認識して攻撃する抗原特異的なTリンパ球集団を増殖できることが実証されている。また骨髄移植患者のウイルス感染に対する、同社の技術で培養されたウイルス特異的Tリンパ球の臨床における有効性と安全性が研究論文などで多数報告されている。
CellExSys http://www.targetedgenetics.com/cellexsys/index.php
In November 2000,
Targeted Genetics announced plans to establish CellExSys, a
wholly owned subsidiary focused on the research and development
of the Company's broad portfolio of intellectual property in the
area of cell therapy and the generation of antigen-specific
T-lymphocytes.
The human immune
system is designed to recognize foreign antigens and eliminate
diseased or virally infected cells from the body. The inherent
properties of cytotoxic T-lymphocytes (CTLs), a key effector of
the cellular immune response, give these cells enormous potential
for treating a wide variety of diseases and broad application in
the identification of novel targets for drug discovery and
development initiatives. The utility of CTLs in therapeutic and
research and development programs has been limited to date by an
inability to produce large numbers of antigen-specific CTLs in a
timely and cost-effective manner. CellExSys has broad
intellectual property related to a no vel approach for generating
large numbers of antigen-specific T-cells rapidly while retaining
the antigen specificity of these cells. This Rapid Expansion
Method (REM) technology can be used to generate antigen-specific
T-cells for use in adoptive immunotherapy to treat a variety of
diseases, including cancer and infectious diseases, or for use in
drug development initiatives.
The establishment of
CellExSys creates an environment in which to move this technology
forward independent of Targeted Genetics' core gene delivery
business. The applications of the REM technology, an ex vivo
therapeutic approach, are quite distinct from the in vivo gene
delivery technologies that have become the primary focus for
Targeted Genetics. As a wholly owned subsidiary focused on
patient-specific cell therapy and other applications of the REM
technology, CellExSys is well-positioned to identify and take
advantage of appropriate product, partnership and financial
opportunities that fall outside the field of in vivo gene
delivery.