日本経済新聞 2007/5/18

印刷技術使い血管再生 東京医科歯科大と大日本印刷 動物実験に成功

 東京医科歯科大学の森田育男教授らと大日本印刷は、印刷技術を応用して血管を再生する動物実験に成功した。様々な形状の血管を作ることが可能。後ろ足の血管を取り除いたマウスに移植したところ、血液がきちんと流れ、失われた足の運動機能も短期間でほぼ回復した。心筋梗塞などの治療を目指し、2009年ごろの臨床試験を目指す。

様々な形状可能に 運動機能も回復
 血管再生はまず、特殊な材料の表面に印刷技術の一種「リソグラフィー(露光)」で血管パターンを描く。次いで、末梢血を培養して得た「血管内皮細胞」をばらまく。すると、材料の親水性の違いから血管パターン部分にのみ細胞が集まる。これが血管の壁面部になる仕組み。出産時に子供を包む役目の羊膜に血管パターンを転写すると管状になり、最後に羊膜ごと患部にはって治療する。
 後ろ足の血管を取り除いたマウスを約10匹使い、移植実験をした。材料の表面に幅約2百数十マイクロメートルの溝を十数本作製して血管を再生し、羊膜に転写して患部に張った。移植してから9日後には、血流がほぼもとに戻った。失われた運動機能も回復した。
 血管の再生医療は様々な研究があり、一部は臨床試験段階まで進んでいるが、通常は血管内皮細胞を患部に注射して回復するのを待つ。ただ狙った形に血管を再生することは難しい。回復も1カ月以上の時間がかかっている。
 外部で血管を再生してから移植する手法で、血流まで回復した例は珍しい。実用化できれば、患者の回復を早められると期待される。
 今後は動物実験を重ねて治療効果を詳しく確認するとともに、モデル動物を作り、さまざまな部位の血管について再生治療ができるかどうか調べる。人間への臨床応用に向けて、羊膜を何枚もつないで血管を再生する手法なども開発する。09年ごろに同大学の倫理委員会に申請して臨床試験に着手したい考えだ。


2007/6/29 ライオン

商標権の取得および合弁契約の解消に関するお知らせ

 ライオン株式会社(社長・藤重 貞慶)は、本日開催の取締役会において、解熱鎮痛薬『バファリン(BUFFERIN)』ブランドなどの日本およびアジア・オセアニア地域における商標権を、米国製薬大手メーカー ブリストル・マイヤーズ スクイブ社から取得すること並びに同社の日本法人ブリストル・マイヤーズ株式会社との合弁契約を解消することを決議しましたのでお知らせいたします。

 当社は、1962年にブリストル・マイヤーズ社(現ブリストル・マイヤーズ スクイブ社 以下BMS社)と技術・商標契約を締結し、同社の保有する解熱鎮痛薬『バファリン』を日本で発売いたしました。その後、BMS社の日本法人(現ブリストル・マイヤーズ株式会社 以下BM社)と合弁にて
ブリストルマイヤーズ・ライオン株式会社(以下BML社)を設立し、『バファリン』ブランドを中心とした事業の拡大につとめてまいりました。今日『バファリン』はお客様の高い評価をいただき、日本の一般用医薬品(OTC)市場における解熱鎮痛薬のトップブランド*1として定着しております。
*1 2006年 (株)インテージSDI調べ

【商標権取得を行う理由】
 当社は、現在の中期経営計画「VIPII09計画(Value Innovation Plan Part II09)」において、日用品・一般用医薬品・機能性食品を融合させた「新快適生活産業分野」でのNo.1企業となることを目指し、一般用医薬品分野の強化およびアジア地域での積極的な事業拡大を進めております。
 一方、BMS社は、現在、抗血小板用薬や高血圧治療、がん治療などの医療用医薬品事業の強化を進めております。
 こうした両社の戦略を背景として、この度当社とBMS社は、『バファリン』ブランド等の日本およびアジア・オセアニア地域(中国等の一部国・地域を除く)における商標権を、当社が取得することで合意いたしました。

当社は、これにより、

(1) 国内市場において『バファリン』等既存の製品を活用した当社独自の事業戦略の展開によって、さらなる成長とブランド価値向上が可能となる
(2) 合弁会社の事業領域であった製品分野に、当社として参入が可能となる
(3) アジア・オセアニア市場に対し、『バファリン』ブランド等による新たな事業拡大が可能となる
(4) 合弁事業を内部化することにより今後収益力が改善される

と考えております。

なお、BM社との合弁契約解消に伴いBML社は解散し、清算手続きを行う予定です。

【取得資産の内容】
 解熱鎮痛薬『バファリン(BUFFERIN)』等の、日本およびアジア・オセアニア地域
*2における商標権

*2『バファリン』商標の対象国・地域…
   日本、韓国、タイ、マレーシア、インドネシア、香港、マカオ、シンガポール、ブルネイ、カンボジア、ベトナム、インド、バングラデシュ、
   パキスタン、スリランカ、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー


【取得価額】
 304億円


【スケジュール】

2007年6月29日 当社およびBMS社取締役会にて契約締結を決議(同日契約締結)
2007年7月31日 商標権移転の実行、BML社解散
2007年8月1日 当社単独による事業運営開始
2007年末 BML社清算結了(予定)

当社は、今後とも、お客様が快適に過ごすことのできる製品開発を通じて『バファリン』ブランド等の価値を高めるとともに、セルフメディケーション時代の顧客ニーズの充実に貢献してまいります。


<参考資料>

ライオン株式会社概要
設 立   1918年
所在地   東京都墨田区
代表者   藤重貞慶
資本金   344億円
売上高   連結(3,303億円)、個別(2,574億円)(2006年12月期)
従業員   連結(5,771名)、個別(2,494名)(2006年12月末現在)
     
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社概要
設 立   1887年
所在地   米国ニューヨーク市
代表者   ジェームス・M・コーネリアス
資本金   17,914百万ドル
従業員   43,000名
     
ブリストルマイヤーズ・ライオン株式会社概要
設 立   1980年
所在地   東京都新宿区
代表者   マーク・W・ライト
資本金   2億円(当社の所有割合49%)
売上高   129億円(2006年12月期)
従業員   9名(2007年5月末現在)

毎日新聞 2007/8/1

薬害C型肝炎の救済拡大 名古屋地裁判決
 製剤承認時から責任 国・企業に賠償命令

 出産時などの止血のために投与された血液製剤でC型肝炎ウイルス(HCV)に感染したとして、患者が国と製薬会社3社を相手取り、総額約6億円の損害賠償を求めた薬害C型肝炎訴訟の判決が31日、名古屋地裁であった。松並重雄裁判長は「感染の危険性などを明確に表示する義務を怠った」として、国と会社に対し、原告9人のうち8人に総額1億3200万円の賠償を命じた。全国の同様訴訟で初めて、国と製薬会社に責任が生じる時期を製剤が承認された時点(76年)とし、投与時期で救済に差を設けなかった。
 判決は初めて第9因子製剤についても国の責任も認めた。救済範囲がこれまでで最も広い原告全面勝訴と言え、国は約200万人とされるC型肝炎患者の救済に厳しい対応を迫られそうだ。
 原告は愛知、岐阜、静岡の20〜70代の男女計9人。
 ▽三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)と子会社のベネシスが製造した「フィブリノゲン」を86〜87年に投与された6人
 ▽両社が製造した第9因子製剤の「クリスマシン」を81,85年に投与された2人
 ▽日本製薬が製造した第9因子製剤の「PPSBーニチヤク」を82年に投与された1人。
 判決は3製剤について国、会社両方の責任を認めた。そのうえで、原告9人のうち、投与前の輸血により感染と製剤の因果関係が立証されない1人を除く8人について賠償を命じた。
 判決ではフィブリノゲンの責任発生時期は製剤の名称変更に伴い新たな承認がなされた76年4月と認定したが、最初に製造承認された64年からの責任も事実上認めた。
 松並裁判長は、感染の危険性を考慮しても本来的な治療に対する有用性が製剤にあったとする一方、止血目的の安易な使用を防ぐため、製剤の添付文書に「適応のある患者に限り治療上不可欠の場合に便用すべきだ」などと記す義務があったとして会社の過失を認定。国も製造承認時点で警告を記させる措置を怠ったとして違法を認めた。
 全国5地裁と3高裁で計172人が係争中の同様訴訟では、昨年6月の大阪地裁判決がフィブリノゲンについて、85年8月以降の製薬会社の責任と青森県での集団感染が明らかになった87年4月以降の国の責任を認定。昨年8月の福岡地裁判決は、米食品医薬品局(FDA)がフィブリノゲンの承認取り消しを78年1月に公示したことを受け、遅くとも80年11月には国と会社に責任が生じたと判断した。
 今年3月の東京地裁判決は責任発生の起点を大阪同様としたが、国が緊急安全性情報の配布を終えた88年6月までに期間を限定。第9因子製剤については初めて84年1月以降の会社の責任のみを認めた。

4地裁が認定した国と企業の責任

 

判決要旨

 薬害肝炎名古屋訴訟で、国と製薬会社に賠償を命じた31日の名古屋地工裁判決の要旨は次の通り。

1 国及び三菱ウェルファーマ(WF)らのフィブリノゲン製剤に関する責任
(1) 適応限定義務違反
 薬の「適応」を先天性低フィブリノゲン血症に限定せず後天性低フィブリノゲン血症も含めた点は、同製剤は後者にも有用性が認められるから、三菱WF、国などに過失や違法は認められない。
   
(2) 指示・警告義務違反
三菱WFらの責任
   同製剤は血清肝炎や非A非B型肝炎を発症する重大な副作用があり、慢性肝炎から肝硬変に移行し死に至る可能性もある。このため、同製剤の製造販売に当たっては、適応外の患者に広く使用されるのを防止し、安全を確保するために「血清肝炎ないし非A非B型肝炎ウイルス感染の危険を排除できないものであることを前提として、適応のある患者に限り治療上不可欠の場合に使用すべきである」(以下、注意内容と表記)旨を添付文書に明確な表現、表示方法をもって記載していなけれぱならなかった。
 フィブリノゲンーミドリが76年に承認されて以降の添付文書には注意内容の記載が明確にされていると認めることができないから、三菱WFらは、低フィブリノゲン血症治療以外の目的で同製剤を投与された者に対して過失がある。
   
国の責任
 厚生相(当時)は、同製剤の製造承認に当たり(三菱WFの前身である)ミドリ十字に、適応外の患者に対し広く使用されるのを防止し、安全を確保するために注意内容を添付文書に明確な表現、表示方法をもって記載させる措置を取らなければならなかった。しかし、厚生相は76年4月のフィブリノゲンーミドリ、87年4月のフィブリノゲンHTーミドリの製造承認に当たりこの措置を怠り、いずれの添付文書にも注意内容について、明確な記載がされなかったため賠償責任を負う。
   
2 血液凝固第9因子複合体製剤(クリスマシンなど)に関する責任
(1) 適応限定義務違反
 クリスマシンなどは後天性血液凝固第9因子欠乏症に対する有用性が認められるから過失を認めることはできない。
(2) 指示・警告義務違反
三菱WFらの責任
 クリスマシンにも同様の副作用がある。このため、製造販売の際適応外の患者に止血目的で便用されるのを防止し、また、後天性血液凝固第9因子欠乏症のうちビタミンK製剤などで治療することが可能な患者への投与を防止し、その投与を受ける患者の安全を確保するため、注意内容を添付文書に明確な表現、表示方法をもって記載しなけれぱならなかった。しかし、添付文書に記載が明確にされているとは認められず過失がある。
   
日本製薬の責任
 PPSBーニチヤクにも同様の副作用があるため、76年末ころ以降、PPSB-ニチヤクを製造販売する際、注意内容を添付文書に明確な表現、表示方法で記載する義務があったが、添付文書には記載が明確にされていないから過失がある。
   
国の責任
 厚生相は76年12月、クリスマシンの製造承認に当たり、ミドリ十字に注意内容を添付文書に明確な表現、表示方法をもって記載させる措置を取らなければならなかったが、その義務を怠ったから、国家賠債法上の違法がある。PPSBーニチヤクについても同様の義務があったのに、添付文書に記載が明確にされなかった。さらにこれに代わる何らかの措置を取ったとは認められないから、権限の不行使は許容される限度を逸脱し著しく合理性を欠き、賠償責任を負う。
   
3 付言
   ミドリ十字は85年8月の時点で、処理方法をウイルス不活化に十分な根拠のない手法に変え、感染の危険を増大させたのだから、危険が高まったことを記載すべき義務があったと言うべきである。ところが記載をしておらず、医薬品を便用する患者の安全を確保するという製薬会社の基本的義務に反したものであって、厳しい非難に値する。
 ミドリ十字が安全確保をおろそかにする行動に出た背景には、厚生省の不適切な対応があったとみるべきで、医薬品を使用する患者の安全確保を図るという厚生行政の基本的責務に反したものとして、非難を免れることはできない。

 


日本経済新聞 2007/9/21

閉鎖予定のファイザー研究所 従業員が買収し新会社
 愛知の中央研 国内外ファンドも出資

 製薬世界最大手、米ファイザーの中央研究所(愛知県武豊町)が来年4月にも研究者らの出資による新薬開発のベンチャー企業として独立する。米本社が閉鎖を決めたことから、約80人の研究者が中心となって新会社を設立し、研究施設や新薬候補物質などの資産を譲り受ける。国内外の投資ファンドからも資金調達する考え。日本では例が少ない従業員による企業買収(EBO)によって再出発する。
 新会社には研究者らが経営の主導権を握れる比率を出資する意向で、社長は現在研究所長の長久厚氏で調整中。ファンドから運転資金3年分にあたる100億円前後を調達する計画で、交渉を進めている。事業が軌道に乗った数年後の株式上場を視野に入れる。
 年内にも米本社が保有する新薬候補物質のなかから新会社が譲り受ける品目や条件を決める予定で、米本社が資本参加する可能性もある。中央研究所は1985年に設立され、消化器分野や鎮痛薬の基礎研究を担当してきた。米本社は業績不振を受けて今年1月に同研究所を含む世界5カ所の研究拠点閉鎖を決めた。これを受けて一部研究者らがEBOを提案。米本社も閉鎖に伴う混乱や雇用不安を避けるためにも同研究所の独立を認める方向だ。
 同研究所には約380人の研究者が在籍しており、2割にあたる約80人が新会社設立に参画する。消化器分野な有望な新薬候補物質して国内外の製薬会ライセンス供与するで収入を得る。
 国内のEBOの事例としては、2000年に旭電化工業(現ADEKA)が4工場を従業員に売却。最近では明光商会やポッカコーポレーションなど、経営陣と従業員による企業買収(MEDO)が増えている。


2007/9/25 伊藤忠

伊藤忠商事とMPM Capitalの共同設立 医薬品開発・販売ベンチャー「JapanBridge, Inc」が協和発酵工業(株)と資本・業務提携

 伊藤忠商事株式会社と世界最大のバイオベンチャーキャピタルグループである米国MPM Capital(以下MPM)が2006年11月に共同で設立した医薬品開発・販売ベンチャー「JapanBridge, Inc.」(以下JapanBridge)は、協和発酵工業株式会社(以下 協和発酵)と資本・業務提携致しました。

 JapanBridgeは注力疾患領域として癌分野を選択し、協和発酵から臨床開発及び許認可取得の為のサポートを得ながら、協和発酵と共同開発・共同販売ができる抗癌剤および癌支持療法剤の製品のインライセンスを狙います。
 抗癌剤以外の領域については、社会的意義を持つオーファンドラッグや厚生労働省が推奨する、国際共同治験(グローバルスタディ)が可能な開発品も視野に入れて、導入候補品を選定してまいります。

 この度、既存株主であるMPM、伊藤忠に加え、協和発酵も資本参加致しました。
 今回のJapanBridgeの第三者割当増資(シリーズA−2)に対し、伊藤忠、協和発酵共に各々1百万ドルの出資を致しました。今回の資金調達(シリーズA−2)によりJapanBridgeは新たに6.5百万ドル調達し、この資金調達によりJapanBridgeはインライセンスする開発品目の選定、日米のがん分野の専門家から成るアドバイザリーボードの構築をし、会社の拠点も米国デラウェア州から日本へ登記変更いたします。

 また、この度JapanBridgeは、大手製薬会社ムンディファーマ株式会社(以下 ムンディファーマ)の社長を務めていた、スティーブ・エンゲン氏を社長(CEO)として採用致しました。エンゲン社長は、ムンディファーマの日本進出に伴い、日本法人をゼロから立上げた立役者でもあります。エンゲン社長のリーダーシップのもと、インライセンスする開発品目を選定していき、日本及びアジア諸国での臨床開発を積極的に推進致します。また、臨床開発資金として、そのタイミングで新たに日欧米の機関投資家から大型資金調達(シリーズB)をする予定です。

 伊藤忠は今回の増資に伴い、JapanBridgeへ出向者を派遣し、事業開発部長として、会社立上げのみならず、協和発酵との連携、経営陣選定、CRO・CMOとの連携、国内投資家招致などに関する協力を実施いたします。

 伊藤忠はJapanBridgeへ継続して参画することにより、将来のIPO・M&Aによるキャピタルゲインのみならず、医薬品用中間体ビジネス、MR(医薬情報担当者)派遣ビジネス、治験ビジネス、開発ツール・ソフトウェアビジネス、物流ビジネス等を狙います。先端技術分野においてバイオ医薬ビジネスを重視している伊藤忠は、2002年にMPM3号ファンド、2006年にはMPM4号ファンドへ合計35百万ドルの出資を行なっております。MPMと共同でJapanBridgeを継続サポートし育成させていくことで、バイオ医薬業界における伊藤忠のプレゼンスアップをはかります。JapanBridgeをバイオ医薬ビジネスの中核とし、今後JapanBridgeに続く同類のバイオベンチャー立上げも狙ってまいります。

◆参考 
<JapanBridge,Inc.> 
所在地:   1209 Orange Street, Wilmington,Delaware,USA
         日本事務所 東京都港区港南2−15−1 品川インターシティA棟28階 
設 立:    2006年11月 
資本金:    7.8百万ドル 
代表者:    Steve Engen,CEO 
出資者:    MPM Capital,伊藤忠,協和発酵 
取締役構成: Ansbert Gadicke,M.D.(MPM Capital,Founding General Partner) 
         Jim Scopa,J.D.(MPM Capital,General Partner) 
         松見芳男 (伊藤忠商事 顧問) 
         Steve Engen(JapanBridge,Inc.,CEO) 

<MPM Capital> 
本社所在地:   John Hancock Tower,54th Floor 200 Clarendon Street Boston,MA,USA 
設 立:      1992年 
創設者:      Dr.Ansbert Gadicke 
GP数:       8名 
運用資産:    24億ドル 
投資先企業数: 70社 

概 要:     
 1992年に米国ボストンに創立され、総額24億ドル超を運営し、約70社の創薬系バイオベンチャーに投資している世界最大のバイオベンチャーキャピタルグループ。合計8名のジェネラルパートナーは全米トップバイオベンチャーキャピタリストを始め、大手製薬企業やバイオ企業の元幹部からなり、合計12名のアドバイザリーボードにはノーベル医学生理学賞受賞者や、前FDA(米国食品医薬品局)長官、ハーバード大学医学部教授など実力者が名前を連ねる。 


日本経済新聞 2007/9/27

メディセオ・パルタック コバショウを合併へ
 ドラッグストア膨張・規制緩和・・・ 大衆薬・日用品でも巨大卸
  物流効率向上 取引先を拡大

 ドラッグストアの急成長や医薬品販売での規制緩和が、大衆薬や日用品の流通再編を加速させ始めた。医薬品卸最大手のメディセオ・パルタックホールディングスは26日、小林製薬子会社の一般用医薬品(大衆薬)卸最大手、コバショウを完全子会社にし来年4月に傘下の日用品卸大手、パルタックと合併させると発表した。コバショウを傘下に収めることでメディ・パルは医療用医薬品に加え大衆薬、日用品の分野でも首位となる巨大卸となり、取引先拡大を推進する。


 大衆薬は2009年施行の改正薬事法でコンビニエンスストアやスーパーでも販売が可能になる。メディ・パルは医薬品全般に日用品を加えた分野で規模を拡大し、大型化する小売りとの価格交渉力の強化を図る。メディ・パルは来年1月1日付でコバショウの株主に、コバショウの普通株式1株に対してメディ・パルの普通株式507.45株を割り当てる。コバショウに74.2%出資する小林製薬はメディ・パルの株式約2%を保有する株主になる。
 来年4月にコバショウを吸収合併するバルタックは大衆薬や化粧品、洗剤などドラッグストア向け商品の大半をそろえる。売り上げは7千億円に迫り、日用品卸最大手のあらた(5,221億円)を抜く。
 合併後は仕入れを一本化し、全国規模で大衆薬を配送する体制も構築する。両社で合計23カ所ある物流センターも統廃合し、効率を高めて利益率向上を目指す。
 ドラッグストアは大衆薬や日用品の低価格販売をテコにこの10年間で急速に規模を拡大。納入価格引き下げで卸に対する価格交渉力を高めている。このため卸側は収益を圧迫され、「大衆薬卸単独では事業継続が難しい状況」(小林豊・小林製薬社長)だった。
 メディ・パルは薬事法改正を視野にコバショウを取り込むことで「大衆薬・日用品卸の規模拡大が実現」(熊倉貞武メディ・パル社長)、競合他社に対し小売りとの取引拡大を優位に進める。

医薬品・大衆薬・日用品卸の業界順位
  社名
(主な取扱い商品)
売上高
メディセオ・パルタックHD
(医薬品・日用品)
2兆1667億円
アルフレッサHD
(医薬品)
1兆5898億円
スズケン(医薬品) 1兆4548億円
東邦薬品(医薬品)   7734億円
あらた(日用品)   5221億円
アステム(医薬品)   3295億円
バイタルネット(医薬品)   2623億円
10 ほくやく・竹山HD(医薬品)   1689億円
11 コバショウ(医薬品)   1658億円
12 丹平中田(医薬品)   1270億円
13 モロオ(医薬品)   1020億円
              
(注)ランキングは2006年度日経MJ「日本の卸売業調査」を基に作成

大衆薬の競争再編圧力
 医薬品業界では川上(メーカー)、川中(卸)、川下(小売店)のそれぞれで再編が進行している。中でも店頭で販売する大衆薬の分野は、食品や日用品など商品の垣根を越えた競争が活発で、これが卸などのM&A(合併・買収)を促す圧力となっている。
 大衆薬は特定保健用食品など機能性が高い食品・飲料に押されて売り上げが伸び悩む半面、化粧品に対抗して「美白」を強調する商品も登場している。薬、食品、化粧品の壁は崩れ始め、急成長するドラッグストアでは日用品など薬以外の販売比率を高めている。
 消費者の嗜好や店頭の商品が多様化し、価格交渉を含めた小売店の発言力は増す一方。2009年施行予定の改正薬事法で大衆薬の販売チャネルが拡大すれば、医薬品卸はもう一段の組み替えを迫られる可能性もある。
 医薬品業界全体を見渡すと、ここ数年、製薬で世界競争を生き抜くための大型統合が進んだ。10月1日には国内製薬6位の田辺三菱製薬(田辺製薬と三菱ウエルファーマが合併)が発足する。新会社の06年度の売上高は約4千億円(単純合算)だが、同社関係煮は「千億円の研究開発費を工面するには売上高5千億円以上が必要」と分析、さらなる規模拡大を模索している。一方、第一三共がアステラス製薬から大衆薬事業を買収したように、得意分野に経営資源を集中きせて生き残りを図る動きも続きそうだ。
 医薬用医薬品ではメーカーのM&Aが取引相手である卸の再編に直結した。大衆薬では、ドラッグストアやコンビニエンスストアなど力を増した小売業が震源地となり卸やメーカーの新たな再編を誘発する可能性が高い。

ーーーーー

改正薬事法

2006年6月14日に公布された「薬事法の一部を改正する法律」(以下、薬事法改正)によって、一般用医薬品の販売制度が改正される。
中でも一番の目玉は、一般用医薬品が初めて副作用などの危険性(リスク)で分類され、リスクに応じて販売方法が変わる点。

薬事法改正ではまず、一般用医薬品が含有する成分を「副作用」「ほかの薬との相互作用」「効能・効果」などの項目で評価し、リスクの高さに応じて
(1)特にリスクが高いもの
(2)リスクが比較的高いもの
(3)リスクが比較的低いもの
の3つにランク付けする。

第1種 特にリスクが高いもの(11成分)
 一般用医薬品としての使用経験が少ないなど安全性上特に注意を要する成分を含むもの
   例:現時点では、H2ブロッカー含有剤、一部の毛髪用剤など

第2種 リスクが比較的高いもの(200成分)
 まれに入院相当の健康被害が生じる可能性がある成分を含むもの
   例:主なかぜ薬、解熱鎮静剤、胃腸鎮痛鎮症剤など

第3種 リスクが比較的低いもの(274成分)
 日常生活に支障を来す程度ではないが、身体の変調・不調が起こる恐れがある成分を含むもの
   例:ビタミンB・C含有保健薬、主な整腸剤、消化剤など

リスクの程度に応じた情報提供をするため、(1)を買う際には薬剤師が、(2)、(3)は薬剤師もしくは登録販売者が対応するようになる。

また、情報提供の必要性にも差が設けられている。(1)の場合は買う側が求めなくても薬剤師は情報提供することが義務となり、(2)、(3)の場合は情報提供をするように努めるかもしくは、しなくてもよいとされている。

 


日本経済新聞 2007/11/8

混合診療 保険適用除外は違法 東京地裁判決 患者請求認める 国の法解釈に誤り

 保険対象の治療と対象外の治療を併用する「混合診療」に保険を適用せず、患者に全額負担を求める国の制度の是非が争われた訴訟の判決で、東京地裁(定塚誠裁判長)は7日、「国の健康保険法の解釈は誤り」と指摘し、混合診療の原則禁止を違法とする初の判断を示した。
 混合診療をめぐっては、患者の負担軽減のため全面解禁を求める意見の一方、医療の安全性確保などの側面から弊害を指摘する声も根強い。厚生労働省は控訴するとみられるが、判決はこうした議論や医療現場に大きな影響を与えそうだ。
 訴えたのは神奈川県に住む団体職員、清郷伸人さん(60)。腎臓がんの治療のため主治医の勧めで2001年9月から保険適用となる「インターフェロン療法」と適用されない「活性化自己リンパ球移入療法」を併用する混合診療を受けた。
 現行制度では、保険適用外の医療行為を一緒に受けると、保険が使われるはずの治療費までも適用されなくなり、全額自己負担となる。このため清郷さんは昨年3月、保険給付を受ける権利の確認を求めて提訴した。
 厚労省は規制緩和として混合診療の解禁を求める声に対し、「複数の医療行為は不可分一体」と位置付け、例外的にしか認めていなかった。
 しかし、判決理由で定塚裁判長は、健康保険法は個別の診療ごとに保険対象かどうかを判断する仕組みと指摘。「混合診療が保険対象から排除されることを示す規定はなく、法の明文に反する解釈」として、国の対応は誤りと判断した。
 原告によると、インターフェロン療法の自己負担額は保険が適用されると、月額6万ー7万円だが、適用外の場合は約25万円かかるという。

厚労省保険局長の話 混合診療の取り扱いの合理性や制度の妥当性を主張してきたが認められず、厳しい判決と受け止めている。速やかに対応を決めたい。

認めぬ国に転換迫る 「全面解禁」の議論再燃か

 混合診療に関する国の法解釈は誤りとした7日の東京地裁判決は、「原則保険適用を認めない」としてきた国の姿勢を根底から覆す内容になった。規制緩和の流れに沿って、3年前から例外的に保険適用を認める混合診療の範囲を拡大しているが、国の対応に転換を迫る今回の判決で、全面解禁に向けた議論が再燃しそうだ。

 混合診療が認められないと、保険が使えない治療や投薬などを希望する患者の経済的な負担が重くなる。海外で承認を受けていても、「安全性が確認できない」などの理由で日本では未承認の抗がん剤を使う場合、患者にとっては、抗がん剤の費用だけではなく、本来は、3割負担で済むはずの検査や診察費用までも全額自己負担になる。
 このため規制改革・民間開放推進会議(当時)は2004年11月、「重点検討事項」のトップに「混合診療の解禁」を掲げた。「患者ニーズに対応し、医療技術の向上などを図る必要がある」として厚生労働省に解禁を迫った経緯がある。
 同省は「保険適用外の診療でも安全性の確保が必要」としたうえで、「国内で安全性が確認されていない保険適用外の治療が、保険対象の医療行為と併用されるようになると、公的保険の信頼が損なわれる」と反発。このため全面解禁には至らず、差額ベッド代や金属床の入れ歯代など例外として認めてきた混合診療の範囲を一部拡大することで同年末決着した。
 同省は「複数の医療行為は不可分一体として保険適用するかどうかを判断する」との立場を貫き、その例外として「保険外併用療養費制度」の対象を告示していた。
 だが今回の判決は、告示の根拠となる健康保険法に基づき、「個別の診療行為ごとに保険給付かどうかを判断すべきだ」と判示。同省の主張を退け、混合診療を一括して認めるよう明示した。
 同会議の元委員、八代尚宏・国際基督教大学教授は「画期的な判決」と評価。「公的な保険診療は財政的制約もあって急拡大できないが、個人負担で受ける自由診療が増えれば技術の進歩にもつながる」と主張する。
 日本医師会は全面解禁について「(患者側の)お金の有無で生命が左右される」と反対の立場を崩していない。幹部は「財政の論理にとらわれず、保険診療の範囲を広げるべきだ」との見解を示した。

患者側、期待と戸惑い
 「治療の選択肢増える」「医療の格差生む」
 
 混合診療を認めた東京地裁判決に、保険の使えない高額医療などに踏み切れずにいた患者からは「治療の選択肢が増える」との評価の一方、「金のあるなしで受けられる医療に差が生まれ、平等性に影響が出る」と懸念する声があがった。
 原告の清郷伸人さんは2000年に腎臓がんが見つかり、神奈川県の病院で治療中。判決後、「費用負担に耐えられず、自分が受けたい治療に踏み切れない患者もいる。日本の医療が大きく変わってほしい」と訴えた。
 「がん患者支援プロジェクト」(横浜市)の三浦秀昭代表も「承認されていない薬の使用を患者本人の判断で選びやすくなり、治療の選択肢が広がる。症例も積み重なるので、薬の早期承認につながる」と期待した。
 一方、「ささえあい医療人権センターCOML」(大阪市)の山口育子事務局長は「国民皆保険制度の根幹にかかわる問題なのに、是非を巡る議論が尽くされていない。一足飛びの判断で、医療の平等性に影響が及ぶ懸念もある」と話す。


2007/12/05 バイエル薬品(株)

バイエル薬品への動物用薬品事業部統合のお知らせ 

 バイエル薬品株式会社(本社:大阪市、社長:ジャン−リュック・ロビンスキー、以下バイエル薬品)は、2008年1月1日付で、バイエル メディカル株式会社「動物用薬品事業部」を同社の事業組織に統合します。これにより、バイエル ヘルスケア社(本社:ドイツ・レバクーゼン、社長:アーサー・ヒギンズ)が営む4事業(医療用医薬品、一般用医薬品、ダイアベティスケア、動物用薬品)全てをバイエル薬品が国内で担当することとなります。尚、動物用薬品事業部の本拠は、統合後も引き続き、現所在地である東京都千代田区丸の内に置かれます。また、本統合により、バイエル メディカル株式会社は消滅いたします。

 バイエルの動物用医薬品分野は、80年以上の歴史を持ち、現在世界120カ国で事業を展開しています。「動物を守り、人に貢献する(Protect Animals,Benefit People)」を理念に、コンパニオンアニマル分野、および畜産用の医薬品の提供により、人と動物の「健康で快適な暮らし」をサポートしています。犬・猫用寄生虫駆除薬「アドバンテージ(R)」製品群、動物用に初めて開発された画期的な抗菌剤「バイトリル(R)」、その他動物の飼養環境を衛生的に保つ製品やプログラムの提供など、治療だけではなく、病気にならない健康な体や環境づくりにも貢献しています。

 本統合に際し、動物用薬品事業部長のエバーハート ベアーは、「バイエル薬品株式会社の一員となることを嬉しく思います。バイエル ヘルスケア社の各事業部がひとつの組織に集結することの大きなメリットは、既に世界各国で認識されています。日本においても、今回の統合により、動物用薬品事業部がより一層 顧客重視の視点に立ち、お客様のニーズに応えた製品・サービスの提供を行っていけるものと確信しております」と述べています。 


<バイエル薬品株式会社について>
 バイエル薬品株式会社は本社を大阪に置き、バイエル・シエーリング・ファーマ(医療用医薬品)、コンシューマーケア(一般用医薬品)、ダイアベティスケア(糖尿病ケア製品)の3事業からなるヘルスケア企業です。2007年7月1日にバイエル薬品内に設立されたバイエル・シエーリング・ファーマ事業本部は、診断薬、血栓止血領域、オンコロジー、プライマリーケア、専門治療薬、ウイメンズ ヘルスケアの6領域に注力しています。バイエル薬品株式会社は、その革新的な製品で、日本のスペシャリティ医薬品市場におけるリーディングポジションを目指しています。そして、新しい発想と高い専門性を持つ人材を活かして医療の進歩に貢献し、人々のクオリティ・オブ・ライフの向上に努めます。 


日本経済新聞 2008/7/17 

大衆薬販売 ヤマダ電機参入 規制緩和にらむ 価格競争激化の公算

 家電量販最大手のヤマダ電機は風邪薬など一般用医薬品(大衆薬)の販売に本格参入する。異業種の参入を促す来年4月の規制緩和をにらみ、群馬県高崎市の新店を手始めに全国の大型店で扱う見通し。消費者は家電購入でためた割引ポイントを使えるため、他店より割安になる可能性がある。他の家電量販大手も追随する可能性があり、既存のドラッグストアを巻き込んだ医薬品の販売競争が激化し、価格低下が進みそうだ。
 6月末の株主総会で定款を変え、医薬品販売を事業分野に加えた。11日にJR高崎駅前に開業した家電量販店に200平方メートルの売り場を設け、胃腸薬、漢方薬などの大衆薬やドリンク剤など3千品目をそろえた。家電と同様に割引ポイントを与え、ヤマダ全店で使える。順次、10カ所近くある都心の大型店などで扱うとみられる。家電量販大手が医薬品販売に本格参入するのは初めて。
 薬事法で医薬品販売は、安全確保のため薬剤師の店舗への常駐が義務付けられている。改正法が全面施行する来年4月以降は、新資格の「登録販売者」を置けば、薬剤師でなくても大半の大衆薬を扱うことが可能となり、スーパー、ホームセンター大手などの参入が見込まれている。ヤマダは傘下のディスカウントストア、キムラヤセレクトなどで医薬品を扱っており、まずグループで抱える薬剤師を家電量販店に配置するなどして本格参入する見通し。