<ユート・ブレーン>  2003年世界の大手メーカー医薬品売上ランキング      
 
http://www.utobrain.co.jp/news-release/2004/060800/

2004/06/08

今2003年は100億ドル以上が13社

 ユート・ブレーンのまとめた大手メーカーの医薬品売上ランキングは、欧米大手各社及び日本の大手メーカーの決算発表に基づき、医療用医薬品売上を抽出してまとめたもの。(注:弊社でまとめている医療用医薬品売上は、ヒト用の医療用医薬品、ワクチン、造影剤などの売上であるが、サノフィ・サンテラボや*を付けたメーカーは大衆薬を含む。)表の伸び率は、各社の決算発表数字に基づくものであり、米ドル換算の比較ではないため、計算しても合わない。米ドル換算は、毎年12月末の為替レートを用いているが、2003年12月末は、例えばユーロは2002年12月末に比べ、20%近く上昇したため、ヨーロッパのユーロ決算のメーカーは、売上がマイナスであっても、多くのメーカーの米ドル換算値は増えた。日本円は1年で10.7%上昇したため、売上が10%減であっても米ドル換算値は多少増えた計算になる。

 表にあるように、2003年の医療用医薬品売上ランキングでは、100億ドル以上が13社、80億ドル以上が15社(2002年はそれぞれ12社、13社)となった。アボット・ラボラトリーズは、医薬品部門以外にも医薬品売上があり、その詳細が発表されていなかったが、病院部門のスピンオフに伴い、詳細を公表したため、表の数字は、2002年分も合わせてその数字に変更したものである。その結果、アボットも2003年には100億ドルを超えた。

 2003年のランキングでは、昨年4月にファイザーの買収したファルマシア(2002年10位)が消えたため、11位以下のメーカーであれば、ランキング順位が1つ上昇して昨年と同じということになる。なお、シェリング・プラウはアメリカにおけるクラリチンのパテント切れやペグイントロンのライバル品のシェア拡大の結果、▲24.1%の大幅減となり、2002年の13位から2003年は17位へ下落した。

 トップのファイザー(396億3100万ドル)は、昨年ファルマシアを買収したが、買収完了が4月16日付けであり、旧ファルマシアの売上はそれ以降の数字のみ計上されているため、2002年のファイザー+ファルマシアの合計(403億2500万ドル)より少なくなっている。ファイザーの研究開発費(表でR&D費)は71億ドルを超え、2位のグラクソ・スミスクラインを22億ドル上回った。このR&D費については、医薬品またはヘルスケア部門のR&D費を公表しているメーカーはその金額、そうでない場合は全社の金額を示している。

 2003年の特徴としては、先述の通り、ドル安ユーロ高の影響を受け、米売上の多いヨーロッパのメーカーは決算数字の伸び率が抑えられた一方、米メーカーで好調なところはヨーロッパ売上が為替分上乗せされて2桁の伸びとなったことが挙げられる。米大手で伸び率が1桁のメーカーは、実際にはパテント切れに伴う大型品の売上減少など厳しい状況にある。特に、超大型品のパテント切れが近づくメーカーも増えており、それに代わる新製品を出せるかどうかが今後の大きなカギを握っている。

2003 年世界大手の医薬品売上 

順位 メーカー名 国名 売上高 百万ドル 2003
R&D費
億ドル

03

02

01

00

  2003

2002

2001

2000

1

2

1

2

ファイザー

アメリカ

39,631

28,288

25,518

22,567

71.3

-

10

9

9

ファルマシア(ファイザーが合併)

アメリカ

-

12,037

11,970

10,824

-

2

1

2

1

グラクソ・スミスクライン*

イギリス

32,335

28,871

24,973

23,043

49.3

3

3

3

3

メルク

アメリカ

22,486

21,446

21,351

20,225

31.8

4

4

5

5

アベンティス

フランス

21,084

18,441

15,659

15,159

36.0

5

7

7

7

ジョンソン&ジョンソン

アメリカ

19,517

17,151

14,851

12,661

32.0

6

6

8

8

ノバルティス

スイス

18,926

17,175

13,519

12,138

37.6

7

5

4

4

アストラゼネカ

イギリス

18,318

17,343

16,057

15,408

34.5

8

8

12

12

ロシュ

スイス

15,932

12,806

10,200

9,929

31.8

9

9

6

6

ブリストル・マイヤーズスクイブ

アメリカ

14,869

12,805

15,300

14,400

22.8

10

11

10

11

ワイス(旧アメリカン・ホーム・プロダクツ)

アメリカ

12,623

11,733

10,940

9,980

20.9

11

12

11

10

イーライ・リリー

アメリカ

11,855

10,383

10,856

10,180

23.5

12

13

14

19

アボット・ラボラトリーズ

アメリカ

10,310

8,892

6,277

4,062

11.0

13

15

16

16

サノフィ・サンテラボ*

フランス

10,106

7,808

5,616

5,212

16.5

14

18

20

20

アムジェン

アメリカ

8,356

5,523

4,016

3,629

16.6

15

16

15

15

武田薬品工業 4〜3月

日本

8,193

6,837

5,850

5,735

10.9

16

17

18

17

ベーリンガー・インゲルハイム

ドイツ

6,948

5,944

4,665

4,491

14.8

17

14

13

13

シェリング・プラウ

アメリカ

6,672

8,788

8,369

8,346

14.7

18

20

17

14

バイエル

ドイツ

5,958

4,997

5,076

5,784

12.1

19

19

19

18

シエーリング

ドイツ

5,894

5,108

4,149

4,091

11.6

20

24

25

27

ノボ・ノルディスク

デンマーク

4,475

3,556

2,820

2,627

7.1

21

23

23

25

エーザイ*4〜3月

日本

4,453

3,727

3,092

2,922

6.4

22

22

22

22

三共* 4〜3月

日本

4,369

3,743

3,220

3,606

8.1

23

27

27

29

メルクKGaA

ドイツ

4,148

3,058

2,666

2,468

6.4

24

21

21

21

TAP (武田+アボットのJV )

アメリカ

3,980

4,034

3,787

3,539

-

25

25

24

23

山之内製薬* 4〜3月

日本

3,938

3,471

2,911

3,083

6.5

26

26

28

26

アクゾ・ノーベル

オランダ

3,456

3,273

2,651

2,481

7.1

27

28

30

31

藤沢薬品工業 4〜3月

日本

3,379

2,882

2,270

2,171

6.9

28

29

31

34

ジェネンテック

アメリカ

3,300

2,584

2,072

1,646

7.2

29

31

33

-

テバ製薬工業

イスラエル

3,256

2,499

 

 

2.4

31

30

29

28

第一製薬

日本

 

2,448

2,306

2,482

 

 

32

36

 

フォレスト・ラボラトリーズ

アメリカ

 

2,207

 

 

 

 

33

34

 

セルビエ( 概数 )

フランス

 

2,201

 

 

 

 

34

32

 

三菱ウェルファーマ

日本

 

2,133

 

 

 

 

35

26

24

塩野義製薬

日本

 

2,133

2,807

3,082

 

 

36

37

 

ソルベイ

ベルギー

 

1,953

 

 

 

33

37

40

 

中外製薬(日本ロシュと合併)

日本

 

1,835

 

 

 

米ドルへの換算は各年の年末の為替レートによる。
*のメーカーはOTC売上を含む。他はヒト用医療用医薬品、ワクチン、造影剤の売上。
一部のメーカーは2002年売上を変更している。

参考:サノフィ・サンテラボ+アベンティス、アステラス製薬を考慮した場合

 
サノフィ・サンテラボとアベンティスを合計すると、300億ドルを超えて世界3位となる。
 また、日本の
山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して誕生するアステラス製薬は、世界15位となる。14位となる武田薬品工業には8.8億ドル程度及ばないが、研究開発費(R&D費)では2.5億ドル上回り、13.4億ドルとなっている。

2003年ランキングの特徴

100億ドル以上は、2002年12社⇒2003年13社、30億ドル以上は、27社⇒29社へ増加した。これはドル安ユーロ高も影響している。
下位には、バイオ2位のジェネンテックや、ジェネリック最大手のイスラエルのテバ製薬工業がランクインしている。ジェネリック最大手の売上が30億ドルを突破しており、今後もジェネリック市場の拡大は確実である。(ただし、テバ製薬にはブランド品である多発性硬化症治療薬コパキソンの売上7.2億ドルが含まれる。)
2002年の100億ドル以上のメーカーのR&D費はいずれも20億ドルを超えていたが、2003年においては20億ドルに満たないメーカーが2社(アボット及びサノフィ・サンテラボ)ある。
日本のメーカーで、全社ベースの売上では武田、三共、山之内、エーザイ、藤沢と続くが、世界の医薬品売上においては、武田、エーザイ、三共、山之内、藤沢となっており、エーザイが抗潰瘍剤アシフェックス(日本名パリエット)とアルツハイマー病薬アリセプトを世界的に伸ばして日本2位となった。なお、これらの後ろには、(表にはないが)第一製薬が31位、日本ロシュと一緒になった中外製薬が33位で続いている。
ファイザーやアムジェンのように買収で売上を大きく伸ばしたところは別として、2桁の伸びとなったのは、100億ドル以上の米とスイスのメーカー、及び、表の下位2メーカー(ジェネンテックとテバ製薬)だけである。アメリカでの売上を伸ばし、ヨーロッパ分がユーロ高で売上増につながったメーカーが好調な結果となっている。
上位29社の売上合計は、約3288億ドルとなる。世界市場が約5000億ドルとすれば、29社でほぼ3分の2(65.8%)を占めている。ただし、三共のメバロチンとブリストル・マイヤーズスクイブのプラバコールなど重複しているものもあるため、実際の29社のシェアはもう少し少なくなる。

 


<ユート・ブレーンニュースリリース> 2003/06                  

        http://www.utobrain.co.jp/news-release/2003/060500/

2003/06/05

世界の大手メーカー医薬品売上ランキング 2002

医療・医薬品業界のコンサルティング・調査会社ユート・ブレーン(東京03-3270-8741、大阪06-4964-0550)では、毎年恒例の「世界大手医薬品メーカーの医薬品売上ランキング」をまとめた。

■2002年は100億ドル以上が12社

 ユート・ブレーンのまとめた大手メーカーの医薬品売上ランキングは、各社の決算発表(アニュアル・レポート、連結決算短信等)に基づき、医療用医薬品売上を抽出してまとめたもの。欧米のメーカーは2002年1〜12月期決算(ただし、32位のフォレスト・ラボラトリーズは2003年3月期決算)、日本のメーカーは2003年3月期決算(いずれも連結決算)の数字を使っており、為替レートはすべて2002年12月末のレートを使って米ドルに換算している。

 ここでの医療用医薬品売上は、ヒト用の医療用医薬品、ワクチン、造影剤などの売上であるが、一部のメーカーは医薬品売上として大衆薬を含めて公表しているため、それらのメーカーには*を付けた。基本的には公表数字だが、一部のメーカーは直接確認した数字を使っている。なお、表の伸び率は、各社の公表数字に基づくものであり、昨年の米ドル換算数字との比較ではない。

 2002年のトップはグラクソ・スミスクラインとなっているが、これは年末の為替レートを使っているからで、年平均レートを使えば、ファイザーが1位になる。(注:2002年はファイザーが1位としている調査会社もあるが、医療用医薬品と販路の異なるワクチンなど含まれていないものがあることや、為替レートが異なるためである。当調査ではグラクソの医療用医薬品としての公表数字17,995百万英ポンドに為替レート1.6044を掛けて計算している。グラクソ・スミスクラインからワクチンを除くと、間違いなくファイザーが1位となる。)

 なお、アボット・ラボラトリーズの数字は公表されている医薬品部門(米及び海外)の数字だが、同社は他の部門でも医療用医薬品を販売しており、これらを含めると、100億ドル程度になると考えられる(この数字は非公表のため、掲載していない)。

 34位の三菱ウェルファーマと35位の塩野義製薬は数字が同じであるが(公表された医療用医薬品売上が億円までで、全く同じだったため)、塩野義製薬には医薬品卸子会社の売上が含まれているため、三菱ウェルファーマを上にしている。(注:塩野義は今期に医薬品卸子会社を切り離すため、2003年ランキングでは20億ドル以下になる見込み。)

 R&D費(研究開発費)については、医薬品またはヘルスケア部門のR&D費を公表しているメーカーについては、その金額、そうでない場合は全社の金額を入れたが、多くは医薬品またはヘルスケア部門のR&D費である。

 

<2002年ランキングのポイント>

100億ドル以上(いわゆる100億ドルクラブ)は、1999年8社⇒2000年10社⇒2001年12社⇒2002年12社 で同じ。(アボットの推定数字を入れると、13社になる)
20億ドル以上の35社を合計すると、3067億ドルとなった。このうち、100億ドル以上の12社の合計は、2104億ドルであり、12社が上位35社の7割を占めている。世界市場を4000億ドルとすれば、上位35社が4分の3を占めている。(ただし、他社へライセンスして販売しているものがあり、それらは一部重複するため、実際にはそれより少なくなる。)
20億ドル以上の35社のうち、10%以上の伸びを示したのは10社だけ。2001年のランキングでは16社あったことからすれば、大幅に減少した。大手では大型品のパテント切れにより、マイナスになったり、伸び率が鈍化したところが多い。医薬品メーカーは大型品のパテント切れ対策、つまり、それに代わる大型品がタイミング良く投入できるかどうかで伸びが左右される。しかし、最近は新薬の承認申請数が減少しており、世界的に新薬不足と言われている。
その流れを示す一端が、ジェネリックメーカーで世界最大のテバ製薬工業(イスラエルの最大手メーカー)が31位にランクインしたこと。同社はコパキソン(多発性硬化症の薬)というブランド医薬品もあるが、4分の3がジェネリックである。
20億ドル以上の35位までを国別にみると、アメリカ13社、日本8社、ドイツ4社、フランス3社、イギリス2社、スイス2社、となっている(ベルギーやデンマーク、オランダ、イスラエルは1社)。
ブランド医薬品メーカーにとって最も重要なR&D費(研究開発費)を見ると、50億ドル規模以上のメーカーは、10億ドルを超えている(シエーリングは9.9億ドルだが)。100億ドル以上のメーカーは、最低でも20.8億ドルとなっている。一方、21位のTAPは、武田とアボット・ラボラトリーズのジョイントベンチャーであり、非常に少なく、ジェネリック主体メーカーのテバ製薬に近い数字である。
参考:20億ドル以下10億ドル以上の日本のメーカーでは、表の中外製薬のほかに、大塚製薬、万有製薬(次回はメルクに統合されるため、今回が最後)、田辺製薬、協和発酵工業、住友製薬、小野薬品工業、大日本製薬、がランクインしている。