JOGMEC 2024/8/13
10か月間を超えるガス産出試験により、長期のガス生産に伴う課題の抽出や、長期の生産挙動データを取得することができました。また、生産したガスは、試験設備の発電機や蒸発器等の燃料として自家消費し、メタンハイドレート層から生産したガスを世界で初めてエネルギー源として使用しました。
今後、ガス産出試験に伴うメタンハイドレート層の変化を捉えるデータの取得を継続し、今般の試験を通じて得られた知見・経験をもとに、取得されたデータの解析を行い、我が国周辺海域での次回海洋産出試験や将来の商業化に向けて、更なる研究開発を進めてまいります。
JOGMECは、米国エネルギー省傘下の国立エネルギー技術研究所(National Energy Technology Laboratory : NETL)と協働で、アラスカ州ノーススロープのPrudhoe Bay Oil Field(PBU)においてメタンハイドレートの長期陸上産出試験を実施しています。2023年9月19日(現地時間)に減圧の開始により始まったガス産出試験は、同年10月24日(現地時間)にガス生産を確認し、2024年7月30日(現地時間)に減圧を停止して終了しました。
Prudhoe Bay Oil Field |
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ガス産出試験中のノーススロープの試験現場(2024年7月撮影) |
1坑井あたりのガス産出試験期間としては、2017年に実施した第2回海洋産出試験での29日間(ガス生産期間は24日間)が最長でしたが、今回10か月間を超えるガス産出試験を実現し、長期のガス生産に伴う課題を抽出し、長期の生産挙動データを取得することができました。また、生産したガスは、試験設備の発電機や蒸発器等の燃料として自家消費しており、世界で初めてメタンハイドレートからのガスをエネルギー源として活用し、将来の商業化(注)に向けて生産ガスの利用実績を作ることができました。
今後は、ガス産出試験に伴うメタンハイドレート層の変化を捉えるデータの取得を継続し、今般の試験を通じて得られた知見・経験をもとに、取得されたデータの解析を行い、長期的なガスの生産挙動把握・技術的課題の解決策検証・長期生産に伴う課題への対応等につなげ、我が国周辺海域で行う次回海洋産出試験など今後の商業化に向けた取り組みに活かしていく予定です。
また、本産出試験では、現場作業開始から整地作業・掘削作業・設備設置作業・試運転を経てガス産出試験まで、オペレータにより安全に産出試験及び関連作業が実施されており、休業災害ゼロを達成しています。プロジェクト完了時まで安全作業を継続しプロジェクト全体での休業災害ゼロ達成を目指しています。
背景
メタンハイドレートは、メタンガスと水が低温・高圧の特定の条件下で氷状の固体として形成される物質で、主に極地(永久凍土地帯)の地層中や大水深エリアの海底面下の比較的浅い層などに存在しています。我が国周辺海域にも深海の海底面下に広くメタンハイドレートの存在が確認されており、過去2回、渥美半島から志摩半島の沖合(第二渥美海丘)において海洋産出試験を実施していますが、数週間程度の連続生産を実現したものの、メタンハイドレートの分解範囲は坑井周辺に限られ、ガス生産挙動の長期的な傾向は確認できておりません。
2013/1/31 メタンハイドレート海洋産出試験の実施
将来の商業化に向けては、長期の生産挙動を見極めることが不可欠であるため、海洋に比べて相対的に試験の制御が容易でインフラの整っているアラスカ州陸上での長期産出試験を計画しました。同試験では、長期生産挙動データの取得に加えて、技術的課題の解決策の検証、長期生産に伴う課題の抽出等を目的としています。
なお、本プロジェクトは経済産業省資源エネルギー庁からの委託事業として実施されています。