平成11年1月29日
小渕内閣 閣議決定
生活空間倍増戦略プラン
生活空間倍増戦略プランの概要
[基本理念]
○ 国民がゆとりとうるおいのある活動ができるよう、生活空間の倍増を目指して、向こう5年間を視野においた明日への投資を推進する。
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[空間倍増の内容]
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基本的考え方 |
具体的施策の例 |
住空間 |
一人当たり床面積を5年間でヨーロッパ並みの水準(一人当たり40u弱)に引上げ(平成5年31u)、広く快適な住宅を整備するとともに、平成12年度までに住宅投資を本格的回復軌道に乗せる(平成11年度新規住宅着工戸数130万戸台へ回復)。 |
○住宅投資の大幅拡大とゆとりある住宅ストック形成促進
・住宅ローン減税等住宅税制大幅拡充
・住宅金融公庫融資の大幅改善
○快適な都市居住環境の形成
・5年間で住宅供給目標の半数に相当する50万戸供給
など |
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買い物空間 |
人々のライフスタイルの変化に対応した街の魅力づくりにより、楽しく買い物ができる環境の整備を推進 |
○中心市街地の活性化
・都市中心部の商業集積における消費者利便性の向上のための集中的事業推進
・都市中心部の再開発の推進
○買い物空間を支える基盤整備
・都市計画道路の整備(平成14年度末までに整備率約60%に引き上げ(平成9年度末約55%))
・新しい計画に基づく電線類地中化の推進
など |
遊空間・田園空間・健康空間 |
心の安らぎにより、人々が心身共にリフレッシュできるような地域の創出とその利活用のための条件整備を推進 |
○魅力ある観光地・拠点づくりと国内観光の振興
・日本人の旅行平均宿泊日数を2.0泊(現在1.6泊)を目指す
○訪日外国人の増大による国際観光交流の促進
・訪日外国人旅行者を概ね5年後に700万人(平成9年420万人)を目指す
○豊かな自然等にあふれた田園地域の環境整備
○在宅医療・療養環境の充実
など |
教育・文化空間 |
次世代を担う豊かな人材育成等に向け、最新の教育・研究などに対応できる知的活動の場や文化・スポーツの振興を推進 |
○学校教育における多様化の推進
・平成14年度からの完全学校週5日制の実施
・平成13年度までにすべての公立学校をインターネット接続
○生涯学習・スポーツ・文化振興のための環境整備
○将来に夢と希望を与える科学技術空間の創造
など |
高齢者にやさしい空間 |
活力ある高齢社会の実現に向け、高齢者等が知識と経験を活かして社会を支え、心身とも健康に、楽しく生活できる場の提供を推進 |
○高齢者の継続雇用の推進及び多様な形態による雇用・就業の促進
○公共施設、公共交通機関等におけるバリアフリーの推進
・平成14年度末までに市街地歩行空間のバリアフリー化(約3200地区)
・段差5m以上かつ日乗降客5千人以上の駅で原則2010年までに所要のエレベーター・エスカレーター整備を目標にバリアフリー化を推進
○介護サービス供給体制の整備等
など |
女性が活躍できる空間の拡大 |
男女の対等なパートナーとしての社会参画に向け、男女の家族としての役割と仕事の両立を図るとともに、女性の能力発揮を確保するための施策を推進 |
○男女共同参画社会を実現するための基本法の制定
○労働者の職業生活と家庭生活との両立支援対策
○働く女性への支援
○女性の生涯にわたる健康づくり
など |
安全な空間 |
国民が安心して諸活動を営めるよう、防災施設の整備や老朽化した建築物の建替えなど災害に対する備えを推進し、生活全般の安全性を向上 |
○安全・安心な暮らしを支える防災のための基盤整備
・平成15年度末までに大河川の氾濫区域の約6割(平成8年度末約52%)で、時間50ミリ相当の大雨にも安全性確保
○安全で安心できる生活の場の確保
・5年間で防災上危険な密集市街地の約半分について、消火活動等が行い得る基礎的安全性確保
○緊急時に備えた体制の整備
など |
環境にやさしい空間 |
国民生活の基礎的条件である環境の質的向上に向け、環境汚染に対する保全対策の充実強化により、環境にやさしい持続可能な経済社会の構築を推進 |
○地球温暖化を始めとする地球環境問題への対応
○ダイオキシン・環境ホルモン等による環境汚染の防止
○廃棄物処理・リサイクル一体となった物質循環の輪の構築
○健全な水循環の確保
・汚水処理整備率64%の向上
など |
交通・交流空間 |
各生活空間を有機的につなぐ交流・アクセス拡大に向け、円滑な人流と効率的な物流を確保するための交通ネットワークを整備するとともに、先端電子立国への転換を目指した情報化施策を推進 |
○都市圏の交通円滑化の推進
・平成14年度末までに主要渋滞ポイント約3200箇所の約3割解消
○交通・運輸分野における需給調整規制の原則廃止等
○交通ネットワークの高度情報化推進
・平成14年度末までに全国の高速道路の主要料金所(730箇所)でノンストップ自動料金収受システム整備と世界初のスマートウェイの実用化
○トータルデジタルネットワーク社会の構築
など |
職空間とゆとり時間の拡大 |
国民一人一人が意欲を持って働き、ゆとりある生活を実現するため、オフィススペースの拡大・職場環境の快適化を図るとともに、労働時間の短縮対策、行政サービスの効率化を推進 |
○既成市街地の再開発による近代的オフィスの整備促進
○労働時間の短縮と快適な職場環境づくり
・年間総労働時間1800時間の達成・定着に向けた完全週休2日制の普及促進等
○職住近接化の推進、テレワークの普及
○ワンストップサービスの推進
など |
[推進方法]
1 全国的施策の推進
・現下の経済情勢を踏まえ、当面は民間投資誘発、投資拡大等の経済効果の高いものに重点化
・平成10年度補正予算及び平成11年度予算において、事業規模で概ね30.2兆円(国費概ね14.3兆円)を措置。
・今後5年間を通じて予算の重点的な配分を行うとともに、規制緩和等に係る施策をさらに積極的に推進し、それらの実施状況を適切にフォローアップ。
2 地域戦略プランの推進
・都市と地方の各地域が、広域的な連携等の下、自らテーマを選び、活力にあふれ、ゆとり・うるおいのある生活空間の創造のための地域戦略プランを主体的に策定し、国が最大限の支援。
・地域の数としては、400ヶ所程度、事業規模は1地域平均約100億円、総額は5年間で4兆円程度と想定。
・国土庁を総合的窓口として、関係省庁による「地域戦略プラン推進連絡会議」を設置し、地区一括採択方式等を積極的に導入。
・平成11年度予算で、地域戦略プラン推進のため、総額2050億円の国費(調整費)を別途措置。
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生活空間倍増戦略プラン
T.生活空間倍増戦略プランの基本的考え方
現下の我が国経済は、長期化する景気の停滞と金融システムに対する信頼の低下により、極めて厳しい状況にあるが、それを乗り越えるため、緊急経済対策や金融再生関連施策を始めとして経済再生のための諸施策の推進に果断に取り組んでいるところである。
その一方で、我が国経済は、情報化、国際化などの進展により、現在大きな変革期に直面しており、それに対応して、中期的には高コスト構造の是正や新規産業の育成等の経済構造改革にも一層力を注ぐ必要がある。
こうした取組に加え、長引く景気停滞や経済再生のための構造変化に伴って生じている国民の将来に対する不安感を払拭し、国民が将来にわたり夢と希望を持てるように、さらに新たな施策を展開することが必要である。
具体的には、国民が多様化した価値観をそれぞれに活かして、ゆとりとうるおいのある活動ができるよう、生活の質の向上を図り、将来への夢の実現を目指していくことが重要である。このような考え方に基づき、例えば都市を中心とした住空間の拡大、ゆとりとうるおいの感じられる遊空間・田園空間・健康空間、安全で環境にやさしい空間の拡大など、国民の様々な活動の場としての生活空間の倍増に向けた戦略的プラン(「生活空間倍増戦略プラン」)を策定して、向う5年間を視野において、官民が協調しつつ、生活の向上に真に必要な明日への投資を積極的に推進することとする。
U.生活空間倍増戦略プランの意義
生活空間倍増に向けた取組が今求められている背景には、次のような要請に対して、政府として適切に応えていくことが必要となっていることがあり、生活空間倍増戦略プランはこうした要請に適切に応えるためのものである。
1 国民一人一人の多様な価値観に基づく個性的な生活・活動を実現させたいという国民のニーズに的確に応え、潜在的な需要を現実化していくためには、生活の様々な領域において質の高い生活空間を拡大、倍増していくことが必要であること。
2 また、戦後の経済発展の過程を通じて生じた都市と地方の間の過密・過疎に加え、バブルの後遺症として大都市内部でも低未利用地が散在し、また、地方都市等で中心商店街が空洞化するなどの新たな問題が生じており、生活空間の再生による質の高い、有効な生活空間の倍増が求められていること。
3 さらに、住宅建設等、生活空間倍増のための施策に基づく直接的な需要喚起だけでなく、国民の夢の実現、すなわち、ゆとりとうるおいのある活動の展開が、新規の需要を拡大し、また、それに応えていく創意と工夫に満ちた企業活動を活性化させる等、我が国の経済再生を一層確実なものとすることが重要であること。
4 21世紀初頭に人口のピークを迎え、土地や社会資本への人口負荷の低下が見通される今こそ、民間の活力も活用しつつ、効率的な社会資本整備等を推進することにより、質の高い生活空間を拡大する絶好の機会であること。
V.生活空間倍増戦略プランのポイント
生活空間倍増戦略プランの具体的施策は、第Wの主要施策において、その詳細を明らかにするが、各空間毎の主要施策のポイントは、次のとおりである。
- 住空間については、21世紀にふさわしい広くて良質な住宅の整備を図り、一人当たり床面積を今後5年間でヨーロッパ並みの水準(一人当たり40u弱)への引上げ、居住環境の快適性の抜本的改善等を進めるとともに、平成12年度までに住宅投資を本格的回復軌道に乗せることを目指す。
- 買い物空間については、商業の空洞化の激しい都市中心部における買い物空間の再構築に重点を置き、都市中心部の商業集積における消費者利便の向上のための事業を集中的に実施するとともに、都市部の再開発、今年度中に策定する新たな計画に基づく電線類の地中化等を推進する。
- 遊空間・田園空間・健康空間については、日本人の旅行の平均宿泊日数を2.0泊にすることを目指すとともに、訪日外国人旅行者について、概ね5年後の時点で700万人を目指し、外国人観光客にとっても魅力のある観光拠点の整備を進めるなど、遊空間・田園空間・健康空間の環境整備とその利活用のための条件整備をさらに進める。
- 教育・文化空間については、ゆとりある学校生活の実現のために、平成14年度から完全学校週5日制と新教育課程を実施するとともに、すべての公立学校をインターネットに接続するなど情報化への対応等を進め、21世紀にふさわしい学校空間の構築を図る。
- 高齢者にやさしい空間については、高齢者の継続雇用の推進及び多様な形態による雇用・就業等の促進を図るとともに、公共施設、公共交通機関等におけるバリアフリー化の推進等を進める。
- 女性が活躍できる空間については、男女共同参画社会を実現するための基本法の制定、労働者の職業生活と家庭生活との両立支援対策、働く女性への支援等を行う。
- 安全な空間については、老朽木造建築物の建替えの促進等により、5年間で防災上危険な密集市街地の約半分について、円滑な避難、消火活動が行いうる等の基礎的安全性の確保を目指すとともに、安全で安心できる生活空間の拡大、安全で安心な暮らしを支える基盤整備等を進める。
- 環境にやさしい空間については、地球温暖化を始めとする地球環境問題への対応、ダイオキシン類・環境ホルモン等による環境の汚染防止を推進するとともに、汚水処理施設整備率64%の一層の向上等を推進する。
- 交通・交流空間については、交通ネットワークの整備による地域相互間の到達時間の短縮と広域連携の確保、都市における交通インフラ整備による通勤混雑の緩和、交通渋滞の解消、高度情報通信社会を支える情報ハイウェイ、光ファイバー網等の整備等を進めるほか、交通空間の高度情報化に向け、例えば全国の高速道路等の主要な料金所でETC(ノンストップ自動料金収受システム)を整備するとともに、高度道路交通システム(ITS)技術を統合して組み込んだスマートウェイの世界初の実用化等を進める。
- 職空間・ゆとり時間の拡大については、都市構造の再編に向けた計画的な再開発の推進等によるオフィススペースの拡大、年間総労働時間1800時間の達成・定着、職住近接の生活を可能とする都心居住の推進、テレワークの普及等を進める。
今後、こうしたポイントに特に配慮しつつ、各生活空間の倍増に向けた具体的施策に積極的に取り組むこととする。
W.生活空間の倍増に向けた主要施策
1.住空間の拡大
- (1)住空間の拡大の基本的考え方
- 住空間は豊かな国民生活のみならず、消費、労働等国民のあらゆる経済活動を通じた活力ある我が国経済を支える最も基本的な要素であるが、現在の我が国の水準は、欧米諸国と比して未だに見劣りする状況にある。しかも、極めて厳しい我が国の経済状況を背景に、住宅投資は大きく停滞しており、それらを通じた住空間の拡大、質的改善も大きな課題を抱えている状況にある。
このような状況下、本格的少子高齢社会、人口減少社会の到来を前にして、今我が国に求められているのは、この5年間に財政、税制等あらゆる政策資源を居住分野に投入して、豊かな国民生活と活力ある我が国経済を支える、良質な生活環境基盤及び住宅ストックの形成と住宅市場の活性化を目指した施策を展開することである。
これにより、21世紀にふさわしい広くて良質な住宅の整備を図り、一人当たり床面積(平成5年時点で31u)を今後5年間でヨーロッパ並みの水準(英・独・仏一人当たり40u弱)に引き上げるほか、豊かな住生活を支える基盤である、居住環境の快適性の抜本的改善を図ることとする。また、平成12年度までに住宅投資を本格的回復軌道に乗せることを目指すこととする。
- (2)住空間の拡大に向けた具体的施策
(住宅投資の大幅な拡大とゆとりある住宅ストックの形成の促進)
- ○低水準が続いている住宅投資の現状にかんがみ、経済波及効果の大きい住宅建設の促進に資するとともに、広くて良質な住宅の供給の拡大を図るため、住宅ローン減税(住宅ローン控除)の実施等の住宅税制の大幅な拡充、ゆとりある住宅に力点を置いた基準金利適用融資限度額の大幅な拡充等の住宅金融公庫融資の思い切った改善等を図ったところである。これらの施策の着実な実施により、ゆとりある住宅ストックの形成を促進し、平成11年度に新規住宅着工戸数130万戸台へ回復を目指す。
- ○住宅金融公庫のリフォーム・中古住宅融資の拡充により、既存ストックを活用した住空間の拡大を実現する。
- ○ゆとりある公営住宅ストックの形成を図るため、建替えを中心に建設を推進することにより(平成5年度〜平成9年度の公営住宅建設戸数の約6割が建替え)、狭小な公営住宅ストックの解消と住戸面積の大幅な拡大を図る。
- ○定期借家権の導入促進により、ゆとりある賃貸住宅が供給される環境を整備するとともに、住宅・都市整備公団の宅地を利用した定期借地権付住宅の供給を大幅に拡大すること等により、定期借地権を活用したゆとりある住宅供給の一層の促進を図る。
- (良質な住宅供給の促進)
- ○住宅の性能表示の確立、住宅の瑕疵保証の充実、建築基準の性能規定化、採光規制・居室の地階への設置規制の見直し等の国民のニーズに対応した良質な住宅が供給される市場環境の整備を通じて、質の高い住空間の拡大を図る。また、耐久性の特に優れた、低コストな住宅、国民のライフステージや就業・生活様式の変化に対応できる住宅、次世代の情報化住宅等、次世代型住宅の研究・開発、供給を加速する。
- (快適な都市居住環境の形成)
- ○大都市圏の都心部において、5年間で住宅供給目標の半数に相当する約50万戸の供給を目指し、職住近接の生活を可能とする都心居住を推進する。
- ○これらの地域において、21世紀にふさわしい環境、高齢者等にも配慮した良質な生活空間を創造するため、民間事業者、住宅・都市整備公団等を活用した住宅市街地整備を強力に推進する。
- ○都市における居住機能の適正な配置を図るため、高層住宅の建設を誘導すべき地区を都市計画に位置付け、容積率の引上げ、斜線制限の緩和、日影規制の適用除外等を行う高層住居誘導地区の指定について、地方公共団体の積極的な取組を推進する。
- (高齢者、障害者の生活空間整備)
- ○障害者プランについて、平成14年度の目標整備量の達成に向け、身体障害者療護施設等の整備の推進を図る。
- ○新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)の目標量を上回る水準の特別養護老人ホーム等の整備を行うなど、介護保険制度の導入を含め介護サービスの供給体制の整備を推進する。その際、特別養護老人ホームの大部屋解消を図るなど、介護サービスの質の向上を図る。
- ○優良な高齢者向け賃貸住宅の本格的整備を推進するなど、高齢者居住の快適性・安全性の確保を図る。
- (農山漁村地域等における生活空間整備)
- ○生活環境整備の著しく立ち遅れている農山漁村地域、過疎地域等において、生活環境基盤整備を推進する。また、優良な田園住宅の建設の促進及びそのための用地の創出を図る。
2.買い物空間の拡大
- (1)買い物空間拡大の基本的考え方
- 国民の日常生活に欠かせない身近な買い物空間については、中心市街地の衰退など既成の買い物空間を中心に、人々のライフスタイルの変化に必ずしも適応できなくなってきている状況にある。
買い物空間の拡大は、街の魅力を大いに高め、豊かな地域づくりを進めるとともに、消費の拡大を図るためにも必要であり、中心市街地の活性化など、街なかの再生や、安全性・快適性の向上を図るためのソフト・ハード両面からの取組を、地域のイニシアティブによる創意工夫・特性を活かしつつ、「やる気と能力」ある地域を中心に進め、流通機能の強化と併せて買い物空間の再構築を図る必要がある。
これらの取組によって、国民のライフスタイルに柔軟に対応でき、地域の街の中核となる品格を持った活力ある空間として再構築し、買い物空間の大幅な拡大を図る。
- (2)買い物空間の拡大に向けた具体的施策
- (中心市街地の活性化)
- ○商店街等商業集積における消費者の利便性向上のためのハード・ソフト両面からの取組を推進するため、当面、商業の空洞化の激しい都市中心部における買い物空間の再構築に重点を置き、都市中心部の商業集積における消費者利便の向上のための事業を集中的に推進する。
- ○中心市街地において、都市再生を推進する土地区画整理事業の重点的な実施を促進する。
- ○地域の経済活動の主要な場となる駅前等において、市街地再開発事業の推進により、地区内の従前の約5倍(平均実績値)の床面積の都市生活空間を創出し、商業空間を始めとする空間の拡大を図る。
- (買い物空間を支える基盤整備)
- ○都市計画道路の整備率(整備延長ベース)を平成14年度末までに約60%まで引上げ(平成9年度末約55%)、民間投資の誘発、土地の高度利用を進める。
- ○電線類の地中化により歩行空間を確保し、安全で快適な都市空間の創造等を図るため、新たな計画を今年度中に策定し、これまで中心的に行われてきた比較的大規模な商業地域に加え、中規模程度の商業系地域や住宅系地域の主要な生活道路なども含め、電線共同溝等の整備を推進する。
- ○食品小売店の加工・包装等のバックヤード業務の共同化を支援するとともに、中央・地方卸売市場の整備等を推進する。
3.遊空間・田園空間・健康空間の拡大
- (1)遊空間・田園空間・健康空間の拡大の基本的考え方
- 遊空間・田園空間・健康空間の拡大は、心の安らぎの場等の充実を通じて、我が国の経済社会の活性化に寄与するものであるが、こうした空間の整備は、未だに国民のニーズに十分に対応できるに至っていない。
このため、魅力ある観光地づくり、国内観光の振興及び国際観光交流の促進、景観の維持・向上、ゆとりとうるおいのある空間の創出等を行うことにより、国民の余暇活動の充実、地域振興や国際交流等を可能とする遊空間の形成を図り、快適で魅力ある生活の実現を目指す。
また、田園空間は、国民生活に欠くことができない食料を供給するだけでなく、生命に不可欠な土・水・緑といった自然環境を構成する資源にあふれ、豊穣な国土を形成・保全するとともに、肉体的・精神的なリフレッシュなど国民にゆとりとうるおいのある生活をもたらすものであり、豊かな自然や文化等にあふれた田園空間の環境整備とその利活用のための条件整備を進める。
さらに、国民のあらゆる諸活動を支える基礎は健康であり、少子高齢社会を健康で活力あるものとし、人々の生活の質を高めていくためにも、健康を増進し発病を予防するとともに、病気にかかった後も適切に治療、機能回復・維持を行うことが重要である。このため、国民の健康増進、疾病予防の具体的目標と目標達成のための施策を明確にするとともに、地域の公園等健康を維持するための場が確保され、また、いざという時に在宅医療や充実した療養環境が保障される健康空間を充実する。
- (2)遊空間・田園空間・健康空間の拡大に向けた具体的施策
(魅力ある観光地・拠点づくりと国内観光の振興)
- ○地域の観光資源を活用した観光地づくりのマスタープラン作成、休暇制度の改善、料金面での工夫、広域的なサインシステムの整備、鉄道、バス等公共交通機関の整備・利便性向上等を通じて、日本人の旅行の平均宿泊日数を2.0泊(現在、1.6泊)にすることを目指す。
- ○地域と観光産業の連携による国内観光の振興を図るため、広域連携観光振興会議(WAC21)、地域伝統芸能等の活用、旅の総合見本市である「旅フェア」の開催の促進等を行う。
- ○マリーナ・ボートパークの整備を含む放置艇対策、人工海浜等の親水性に富む港湾・海岸の整備等を推進し、ウォーターフロントを活用したレクリエーションスペースの拡大を図る。
- ○歴史的風土特別保存地区、重要伝統的建造物群保存地区における電線類の地中化の取組に対する支援策を講じ、景観の維持・向上による地域の活性化を図る。
- (訪日外国人の増大による国際観光交流の促進)
- ○訪日外国人旅行者数について、概ね5年後の時点で700万人(平成9年420万人)を目指す。このため、外客誘致法に基づく外客来訪促進地域の拡大に努めるとともに、訪日促進のための海外宣伝の実施、国内外からの高速アクセスを可能とする次世代観光情報基盤の整備及び外国人旅行者の国内旅行費用の低廉化等を通じて、海外からの長期旅行者が滞在できる魅力のある観光拠点の整備を図り、地域の振興、国際交流等を促進する。
- (豊かな自然等に満ちあふれた田園空間の環境整備)
- ○農村地域の特徴を活かした魅力ある田園づくりによる都市との共生をモデル的、緊急に推進する「田園整備構想」の策定を促進し、これに基づき「田園空間博物館」等の整備を推進する。
- ○農業用用排水路等を活用した親水空間の整備、豊かな生物が生息するため池の環境保全及び利用され親しまれる海辺空間の整備を推進する。
- ○都市部との情報格差の是正等のため、情報通信施設の整備を推進する。
- ○田園空間を構成する重要な資源である農地、森林、海洋等について、平成18年度末までに農地整備率を75%(平成8年度末60%)へ、平成15年度末までに森林整備率を33%(平成8年度末28%)へ引き上げるとともに漁場・漁港整備等を推進する。
- (田園空間を国民が幅広く利活用するための条件整備)
- ○都市住民の田園空間に対する理解等を深めるため、農林水産業・農山漁村体験拠点交流施設等について、田園空間の整備とも連携しつつ、一層の整備を推進する。
- ○次代を担う青少年の田園空間に対する理解を深めるため、農業体験の指導を行うインストラクター等を活用したグリーンツーリズムを推進する。
- ○農道の整備を推進するとともに平成23年度末までに林道を約5万km整備するなどにより、田園空間へのアクセス等の改善に資する。
- ○田園空間において優良な田園住宅の建設を促進し、多様な生活様式に対応したうるおいのある豊かな住生活を営むことができる空間の整備を図るとともに、公共公益施設の整備により農山漁村地域の内的発展のための基盤づくりを推進する。
- (ゆとりとうるおいのある空間の創出)
- ○福祉施設との一体化や体の不自由な方々も自由に利用できるバリアフリー化を図ったみんなにやさしい都市公園の5年間での倍増を目指す。
- ○都市部を中心とした河川、海岸等における市民の遊び場や交流の場、青少年の環境教育や野外活動の拠点、水辺の自然環境の保全・創出等のゆとりとうるおいを実感できる良好な水辺空間の整備を推進する。
- (在宅医療の促進)
- ○患者宅における適切な医療提供を通じて、患者とその家族の生活の質の向上を図るべく、在宅医療に携わる医療従事者の資質の向上、訪問看護ステーションの整備等を推進するとともに、地域の医療機関や在宅サービスの連携を深め、居宅における機能的かつ快適な療養空間を創出する。
- (療養環境の充実)
- ○健康を守る医療機関については、医療資源の効率的な再編及び地域医療の確保に配慮しつつ、療養型病床群への転換整備を進める(医療計画における整備目標22万床)とともに、病院における患者の療養環境、医療従事者の職場環境、衛生環境等の改善を促進する。
また、国立病院・療養所等については、政策医療機能の充実・強化及び患者の療養環境の向上を図るため、老朽化、狭隘化等に対応した施設・設備整備を進める。
4.教育・文化空間の拡大
- (1)教育・文化空間の拡大の基本的考え方
- 教育・文化空間は、我が国が活力ある国家として発展していくための基盤となるものであり、次代を担う豊かな人材を育て、世界的水準にふさわしい最新の教育・研究などに対応できる知的活動の場として、また、独創的・先端的な学術研究の推進・展開や科学技術の振興を図るために必要不可欠なものである。
さらに、国民の生涯にわたる文化やスポーツなどに対する指向が確実に高まる中で、豊かな生き方を求める国民のニーズに的確に対応するため、高度かつ最先端の機能を備え、安全性にも十分配慮された良質の教育・文化空間の拡大を図る。
- (2)教育・文化空間拡大に向けた具体的施策
(学校教育の多様化に対応した21世紀型学校空間の構築)
- ○生きる力の育成とゆとりある学校生活の実現のために、平成14年度から完全学校週5日制と新教育課程を実施する。将来の教育内容・方法等の変化に対応し、ゆとりとうるおいと共に安全な学校空間づくりを目指し、学校施設の改築や補強等の推進、屋外教育環境の整備、学校施設の複合化、産業教育施設・設備の整備、学校図書館の整備等を進める。
- ○情報化の進展への対応として、学校向けの特別通信料金を導入し、平成13年度までにすべての公立学校をインターネットに接続する。
- ○地球環境にやさしい公立学校施設づくりを進めるため、環境への負荷低減方策に対応したエコスクールの整備を推進する。
- ○多様な生徒の実態に即し、個性的な学校づくりを行うため、当面、中高一貫教育校や総合学科を設置する公立高等学校が通学範囲(500程度)に少なくとも1校整備されることを目標にする。
- ○子どもをめぐる様々な問題の増大に対応し、生徒が心のゆとりを持てるような環境を提供する「心の教室」を平成12年度までに約5200校(全国の公立中学校の約半数)を目標に整備を推進する。
- ○私立学校等においても同様に、上記に掲げた21世紀型学校空間を構築するための具体的施策を推進していく。
- (未来を拓く高等教育空間の整備)
- ○科学技術基本計画に基づく国立学校施設の老朽化・狭隘化への対応として見込まれている約1200万uの老朽・狭隘施設について、一層計画的に整備するとともに、私立大学における研究基盤及び研究機能の強化、高度情報化に対応した教育研究環境の整備を図る。
- ○産業構造の変化に柔軟に対応した社会人のリフレッシュ教育を推進し、特別な入学者選抜や夜間大学院、サテライト教室、科目等履修生制度、編入学等の拡充を推進する。
- (ゆとりある生活の実現のための生涯学習・スポーツ・文化空間の構築)
- ○子どもの地域における様々な体験活動をサポートするため、平成11年度より「全国子どもプラン(緊急3ヶ年戦略)」を推進する。また、農山漁村における家族で自然体験を行える活動拠点や総合的な環境学習ゾーンの整備など環境学習を行うための基盤の整備を推進する。さらに生涯学習の機会の増大を図るため、生涯学習関連施設の整備を推進する。
- ○余裕教室を社会教育施設やスポーツ・文化施設に転用し、地域住民の学習活動のために活用を推進する。
- ○21世紀の早い時期に国民のスポーツ実施率(週に1回以上スポーツを実施)を50%程度にまで引き上げることを目標に、総合型地域スポーツクラブの育成等を図るスポーツライフ21プロジェクトを始め、国民のスポーツ環境の整備を計画的に推進する。
- ○国民が文化財や美術作品と接する機会の増大を図るため、「九州国立博物館(仮称)」、「新しい国立美術展示施設(ナショナル・ギャラリー)(仮称)」を始めとする国立美術館・博物館の計画的整備を図る。また、文化財の保存及び活用のため、史跡等の公有化や整備活用等を計画的に推進する。
- ○国立組踊劇場(仮称)の設立を進めるなど伝統芸能や現代舞台芸術の一層の振興・普及を図る。
- (将来に夢と希望を与える科学技術空間の創造)
- ○多様化した価値観を生かした研究交流の場や知的好奇心を満たし知識を獲得するための場の拡充等を図るため、東京都臨海副都心の「国際研究交流大学村(略称:国際大学村)」に、最先端の科学技術に関する総合拠点である「さいえんすワールド(仮称)」及びオープンスペースラボを整備するとともに、脳・ゲノム科学研究など生命科学の研究施設の整備等を図る。
- ○科学技術に対する国民の理解の増進に向け、先端科学技術体験センター等の科学技術の多様な学習機会を提供する場を整備する。
- (相互理解を進める国際交流教育・文化空間の整備)
- ○教育・文化等様々な分野での国際交流・国際協力を一層推進する。また、21世紀の初頭における10万人の留学生受入れを目指して国際大学村等の留学生・研究者宿舎の整備等関連の施策を体系的かつ総合的に推進する。
5.高齢者にやさしい空間の拡大
- (1)高齢者にやさしい空間の拡大の基本的考え方
- 活力ある高齢社会を実現し、高齢者が長年培ってきた知識や経験を活かし社会を支え、楽しく生活できる場が提供され、健康の保持と介護が保障されることは、我が国経済・社会の活力維持のために必要である。
このため、高齢者を含むあらゆる人々にとって暮らしやすい生活空間を創出することとし、具体的には、65歳までの継続雇用の推進、多様な形態による雇用・就業機会等の確保による高齢者の活躍できる社会的な空間の拡大、新たに供給される公共賃貸住宅や駅、商店街、郵便局舎、病院等の公共施設のバリアフリー化、介護サービス関連施設の整備等を進めるとともに、高度な福祉・医療サービスを誰もが享受できるよう広域的な連携を強化すること及びこれら施策を農村地域などにおいても強力に推進することにより、高齢者にやさしい空間の大幅な拡大を図る。
- (2)高齢者にやさしい空間の拡大に向けた具体的施策
(高齢者の継続雇用の推進及び多様な形態による雇用・就業等の促進)
- ○企業内において、高年齢労働者の知識・技能を活用した新たな事業分野の開拓を試みる企業に対して支援を行うなど、高齢者の継続雇用を推進する。
- ○シルバー人材センターにおいて、技能講習、合同面接会を行うなど、高齢者の再就職を促進する。
- ○地域の経済団体との連携の下、高齢者と事業主双方に働きかけを行い、両者間のミスマッチを解消し、高齢者の雇用・就業に結びつけていく。
- ○自営開業を希望する高齢者に対して、必要な基礎知識等を学ぶ実践的な講座及び実際に自営開業した高齢者との交流会を実施し、高齢者の自営開業を促進する。
- ○シルバー人材センターの作業・研修施設であるシルバー・ワークプラザの整備を推進することにより、60歳台前半層を中心とした高齢者に生きがいを持ち安心して働くことができる就業機会を提供する。
- ○高齢者が長年培った知識や経験を活かし、様々な形で社会に参加していくことができるよう、高齢者、特に企業退職者のボランティア活動を促進するための施策を実施する。
- ○高齢農業者の生きがい発揮活動の支援を図るため、地域住民による世代を越えた新たな助け合い精神に基づくボランティア組織の育成及び施設のバリアフリー化等を推進する。
- ○農村地域の高齢化に対応した担い手の負担軽減や農地の出し手対策として、高齢農業者の健康管理及び生きがい発揮等の促進に資する施設の整備を推進する。
- ○農村地域の高齢者福祉等における農協等の役割を適切に発揮するため、ホームヘルパーの能力の向上等を図る。
- ○農山漁村地域において、高齢者が快適に就労し、生活できる場を拡大するため、公共空間のバリアフリー化、農村公園等の整備を推進するとともに、福祉施設の用地や近接化した漁場の整備を推進する。
- (公共施設、公共交通機関等におけるバリアフリー化の推進)
- ○平成14年度末までに、幅の広い歩道等による市街地における歩行空間のバリアフリー化を約3200地区において推進する。また、同年度末までに交差点改良などによる事故多発地点対策を約3200箇所、市街地の住居・商業系地区での交通安全を確保するコミュニティ・ゾーンの整備を約450地区において推進する。
- ○段差が5m以上あり、かつ、一日の乗降客数5千人以上の鉄道駅について、原則として2010年までに所要のエレベーター・エスカレーターを整備することを目標にバリアフリー化を推進するとともに、ノンステップバス、超低床LRT(新しいタイプの路面電車システム)の導入等を促進する。
- ○優良な高齢者向け賃貸住宅の本格的整備を推進するとともに、中層公営住宅へのエレベーター設置を推進し、高齢者居住の快適性・安全性の確保を図る。
- ○福祉施設との一体化や体の不自由な方々も自由に利用できるバリアフリー化を図ったみんなにやさしい都市公園の5年間での倍増を目指す。
- ○視聴覚障害者向け放送の充実を図り、放送を通じた情報を平等に享受できるようにするため、字幕放送等の普及を促進する。
- (介護サービスの供給体制の整備等)
- ○新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)の目標量を上回る水準の特別養護老人ホーム等の整備を行うとともに、老朽化した養護老人ホームや特別養護老人ホームの改築、痴呆性老人グループホームや高齢者生活福祉センターの整備、介護関連サービスの基盤整備などを進め、介護保険制度の導入を含め介護サービスの供給体制の整備を推進する。
6.女性が活躍できる空間の拡大
- (1)女性が活躍できる空間の拡大の基本的考え方
- 男女が共に、自らの選択により、性別にかかわらず各々の個性を生かしつつ、社会の様々な分野で対等なパートナーとして参画することを通じて、未来に向けて、新しい社会を築かなければならない。
このため、男女が育児や介護など家族としての役割と仕事を両立させることや、女性が能力を発揮し活躍することができるよう、労働者の職業生活と家庭生活との両立支援対策、保育サービスの充実、働く女性への支援、男女雇用機会均等確保対策、パートタイム労働対策を推進するとともに、農村地域における女性の積極的な社会参画を推進する。
- (2)女性が活躍できる空間の拡大に向けた具体的施策
(男女共同参画社会を実現するための基本法の制定)
- ○社会の対等な構成員としてあらゆる分野に参画する機会を確保するなど、男女の人権が尊重され、豊かで活力ある社会を築くための基盤となる男女共同参画社会を実現するための基本となる法律案を平成11年通常国会に提出する。
- (労働者の職業生活と家庭生活との両立支援対策)
- ○労働者が育児や家族の介護を行いながら充実した職業生活を送ることができるよう、育児・介護休業法に基づき、平成11年4月より施行される介護休業制度等の導入及び育児休業制度等の定着を促進するとともに、育児や介護をしながら働き続けることのできる環境整備や、育児や介護等のために退職した者に対する再就職支援などを実施する。
- ○家族・地域社会における啓発等を推進することにより、農村地域における女性の積極的な社会参画を促進する。
- ○急速な少子化の進展、女性の社会進出に対応し、公共賃借住宅への子育て支援施設の併設など子育てのしやすい居住環境の整備を推進する。
- (保育サービスの充実)
- ○都市部を中心に問題となっている保育所の待機児童の完全解消を図るため、低年齢児の受入れ枠の大幅な拡大を行うとともに、多様化する保育需要に的確に対応できるよう延長保育等の拡充を図るなど、「緊急保育対策等5か年事業」を着実に推進する。
- (働く女性への支援)
- ○平成11年度に開館予定の「女性の歴史と未来館」(仮称)において、女性が働くことを積極的に支援するため、働く女性・働きたい女性に対するセミナー、研修等の実施による能力発揮支援、働く女性の歩みを振り返り、未来を展望する展示、女性が働くこと等に関する問題に対する相談、働く女性に関する各種情報の提供、働く女性の交流等の諸事業を実施する。
- ○地域のリーダーとなる女性農業経営者の農業技術・経営管理能力の向上を図ることにより、地域の女性農業者の起業活動等農業経営への積極的な参画を促進する。
- (男女雇用機会均等確保対策)
- ○働く女性が性により差別されることなく、その能力を十分に発揮できるようにするため、募集・採用を始めとする雇用の分野における男女雇用機会均等確保対策、女性の能力発揮促進のための企業の積極的取組(ポジティブ・アクション)の促進、職場におけるセクシュアルハラスメント防止対策、母性健康管理対策を推進する。
- (パートタイム労働対策)
- ○パートタイム労働を魅力ある良好な就業形態の一つとして確立するため、パートタイム労働法及び指針の周知徹底、中小企業事業主等に対する助成金の支給、パートタイム労働に関する情報提供、相談援助の実施等パートタイム労働者の雇用管理の改善等のための総合的な支援事業を実施する。
- (女性の生涯にわたる健康づくり)
- ○女性の生涯にわたる健康づくりを推進していくため、女性特有の健康状態に応じた健康教育、健康相談を行うとともに、思春期、妊娠・出産期など女性の年齢や女性特有の疾病に対応した各種健康施策の充実やその体制整備を図る。
7.安全な空間の拡大
- (1)安全な空間の拡大の基本的考え方
- 我が国は、国際的にみても極めて脆弱な国土条件を有しており、様々な生 活空間の倍増を図る大前提として、すべての空間について、国民が安心して 諸活動を営めるよう、その安全性を向上させることが求められている。
このため、防災施設・設備の整備等の安全・安心なくらしを支える基盤整備、老朽化した建築物の建替え、緊急時に備えた体制の整備等生活空間の安全性の向上を図るための取組を進めることによって、今後5年間で安全な生活空間の大幅な拡大を図る。
- (2)安全な空間の拡大に向けた具体的施策
- (安全・安心なくらしを支える基盤整備)
- ○床上浸水頻発地区の浸水被害対策及び都市の内水被害対策を重点的に行いつつ、平成15年度末までに大河川の洪水氾濫区域の約6割(平成8年度末約52%)について時間雨量50mm相当の大雨による洪水に対する安全性を確保する。
- ○海岸保全については、全国の波浪・侵食災害危険箇所の整備など、国民の生命・財産を守り、国土保全に資する質の高い安全な海岸の創造を図り、平成14年度までに、沿岸域に居住する約1100万人を対象にする防護人口を約8割(現状約7割)に、防護面積を約26万ha(現状約21万ha)に向上させる。
また、港湾、漁港についても、耐震強化岸壁等の整備を行う。
さらに、メガフロート(超大型浮体式海洋構造物)について、浮体式
防災拠点等への実用化を目指す。
- ○土砂災害の危険性が高く早急に対策が必要な無施設危険箇所及びその他の土砂災害危険箇所のうち災害時に自力で避難することが困難な災害弱者関連施設に係る無施設危険箇所の土砂災害対策を重点的に行いつつ、土石流対策・地すべり対策については平成15年度末までに防御人口約270万人(平成8年度末210万人)まで、がけ崩れ対策については平成14年度末までに防御人口約230万人(平成9年度末180万人)まで向上させる。
- ○道路防災総点検で緊急的に対策が必要となった約56700箇所について平成14年度末までに落石防止、土石流対策等の道路防災対策を概成する。
- ○橋梁等の耐震補強対策を約38500箇所において推進することにより、緊急輸送道路上の橋梁の耐震補強を平成14年度末までに概成する。
- ○渇水が頻発している地域、水量・水質の安定した水源に乏しい山間、離島等の地域、下水道等の整備に比べダムの整備が遅れている地域への対策を重点的に行いつつ、平成15年度末までに安定給水人口を約5割(平成8年度末約4割)に引き上げる。
- ○いつでもどこでも安心して利用でき、地震・渇水に強く、より安全な水道水を供給できる質の高い水道づくりを推進する。また、異臭味被害を軽減するため、特に汚濁の著しい河川、湖沼の浄化対策を推進する。
- ○耐震性貯水槽、備蓄倉庫等の高次の災害応急対策施設を備えた防災拠点のモデルとなる防災公園の全国的な整備を促進する。
- ○耕作放棄の発生又はその危険性の高い中山間地域の農地整備を推進するとともに、これら地域の生活環境の総合的な整備を併せ行う。
- ○治山事業の計画的推進により、平成15年度末までに治山整備率を46%(平成8年度末40%)に引き上げ、山地災害を防止し、良質な水資源の安定的な供給等に資する森林の整備等を推進する。また、農地防災保全対策及び避難路・避難広場等の整備による農村の安全性確保対策を推進する。
- (安全で安心できる生活空間の拡大)
- ○密集住宅市街地整備促進事業による老朽木造建築物の建替えの促進等により、5年間で防災上危険な密集市街地の約半分について、円滑な避難、消火活動が行い得る等の基礎的安全性の確保を目指す。
- ○現行耐震基準施行以前に建設された公営住宅のうち耐震性の低いものを対象に今後5年間で概ね半数について耐震建替及び耐震改修の実施を図る。
- (安全な生活空間確保に向けた体制の整備)
- ○高感度、広帯域地震観測施設等の地震観測施設の整備、消防防災施設等の整備、気象業務体制の強化、地震調査研究・地震防災研究等の推進を図る。
- ○大規模災害等に備えた情報システムの整備を進める(警察署と都道府県警察本部を相互に結ぶ広域基幹デジタル通信ネットワークシステムについては、順次整備を図る。)。
- ○各交通モードにおける安全性確保、航空危機管理体制・海上保安体制等の充実強化を図るとともに、自衛隊の災害派遣態勢の整備を図る。
8.環境にやさしい空間の拡大
- (1)環境にやさしい空間の拡大の基本的考え方
- 現代生活は、様々な環境問題に直面している。地球温暖化は異常気象などを引き起こし国民の生活基盤を根底から脅かすとともに、ダイオキシン、環境ホルモンなどによる環境汚染は、地域住民の健康や生態系を脅かす。国民生活を真に豊かなものとするためには、生活の基本条件である環境を質的に向上させることが不可欠である。このため、環境保全対策の充実強化を図り、環境にやさしい持続可能な経済社会を築き上げる。
- (2)環境にやさしい空間の拡大に向けた具体的施策
- (地球温暖化を始めとする地球環境問題への対応)
- ○地球温暖化に対処するため、京都議定書の目標の達成を目指し、地球温暖化対策の推進に関する法律、地球温暖化対策推進大綱に基づき、対策を総合的に推進する。
- ○税制上の特例措置等により、低公害車・低燃費車の導入促進を図るとともに、自動車の燃費の向上を目指す。特に、政府公用車については、平成12年度末までに概ね10%を低公害車にすることを目指す。
また、クリーンエネルギー自動車については、市場の自立化のための導入費用の助成や燃料供給施設の整備に対する支援を行う。
- ○国際協力の下、アジア太平洋地域を中心に、酸性雨等の地球環境問題への取組を進める。
- ○住宅・建築物の高効率エネルギーシステムの普及促進を図るとともに、太陽エネルギーの有効活用等の環境負荷低減型住宅を導入する者等に対し支援を行い、その住宅の建設を促進する。
- (ダイオキシン・環境ホルモン等による環境汚染の防止)
- ○ダイオキシン対策については、ごみ焼却施設整備に対する財政支援を充実すること等により、ダイオキシン排出量の早期かつ着実な削減を図る。
また、全国の汚染実態の把握などを通じ、5年以内に知見の充実を図る。
- ○内分泌かく乱化学物質(いわゆる「環境ホルモン」)については、汚染状況等を把握し、作用の有無を判別する手法を開発する。また、人や野生生物へのばく露状況調査、健康影響等を把握するための疫学的調査等を行う。
- 有害性がある化学物質について、環境中への排出量等を把握する仕組み(PRTR)を制度化するとともに、環境リスクの評価に関する調査等を充実する。
- (廃棄物処理・リサイクル一体となった物質循環の輪の構築)
- ○廃棄物処理・リサイクル一体となった望ましい物質循環を促進するシステムの構築を目指し、再利用可能物の需給情報データベースなど基盤整備を確立する。
また、フロンの回収・破壊についても、システムの確立を図る。
- ○資源循環型経済社会の構築及びそれを担う産業の発展のため、ペットボトルや家電製品等のリサイクル関係施設等を整備する地方自治体等を支援する。
- ○リサイクルを始めとする廃棄物処理に関する技術開発を推進する。
- ○産業廃棄物に対する排出事業者の処理責任を徹底させることにより、産業廃棄物の減量化、再利用に努めさせるとともに、産業廃棄物管理票(マニフェスト)等による不法投棄等の不適正処理対策等の充実を図る。
- ○農山漁村地域で発生する諸資源のリサイクル等を推進するため、有機廃棄物の循環利用、農畜産廃棄物等の有効利用等を推進する。
- (都市の大気環境の改善)
- ○大気環境基準を達成するため、低公害車の大量普及、局地的高濃度大気汚染対策、浮遊粒子状物質対策等を推進する。
- (健全な水循環の確保)
- ○良好な水環境等を保全するため、健全な水循環の確保のための総合的な対策を図る。また、湖沼や閉鎖性海域の保全、硝酸性窒素及び揮発性有機化合物による土壌や地下水の汚染対策を推進する。
- ○汚水処理施設整備率64%(平成9年度末)の一層の向上等により、生活環境の改善、清らかな水環境の創出等を図り、ゆとりとうるおいのある暮らしにつながる環境にやさしい空間を拡大するため、下水道、農業集落排水施設、合併処理浄化槽等の汚水処理施設について、それぞれの特色を活かして連携を図りつつ、以下の整備を実施する。
- 平成14年度末までに下水道処理人口普及率を66%に引き上げ、特に整備の後れた人口5万人未満の中小市町村の普及率を約1.5倍(20%→31%)にする。また、清らかな水環境の創出、重要な水域における水質保全を図るため、平成14年度末までに下水道の高度処理人口を1500万人(平成9年度末現在674万人)に引き上げる。
- 農業集落排水施設について、平成18年度までに整備された集落を約35000集落(平成10年度現在約13000集落)とし、漁業集落排水施設について着実に整備する。
- 人口が散在している地域等での生活排水処理に有効で、家庭から出る生活排水をその場で処理し、自然の河川に戻すことができる合併処理浄化槽等の整備を行い、これによる処理率を平成14年度までに14%とし、水循環の確保に資する。
- (自然と人間との共生の確保)
- ○自然公園や里山等の自然の中で自然に親しみ、学べる場を整備する。さらに、生物多様性国家戦略に基づく施策の具体化を進め、里地自然の保全方策や野生鳥獣の保護管理等を推進する。
- (安全・安心な暮らしに向けた生活環境の向上)
- ○都市環境を改善し、うるおいのある都市空間を創出する都市公園について、平成14年度末までに一人当たり都市公園等面積を約9.5u(平成9年度末現在約7.5u)にするとともに、歩いて行ける範囲の公園の整備率を約65%(平成9年度末現在約58%)に引き上げる。
- ○地域における水質保全を促進するため、農業用水の汚濁対策等を実施するとともに、藻場・干潟の造成等を実施する。
- ○良好な港湾、海岸環境を形成するため、緑地、廃棄物海面処分場等の整備を行う。
- (新エネルギーの導入促進、環境関連技術の開発・支援)
- ○新エネルギーの導入促進のため、太陽光発電等の推進を図る地方自治体及び民間事業者を支援する。
- ○地球温暖化防止技術、リサイクル・廃棄物処理技術などで早期に実用化が期待される先端技術シーズの創出を促進する。
9.交通・交流空間の拡大
- (1)交通・交流空間の拡大の基本的考え方
様々な生活空間の拡大には、それぞれの空間をつなぐ交流・アクセスを拡大することが不可欠であり、それが確保されてはじめて空間相互の有機的連携が可能となる。
このため、国内外の地域相互を結び付け、交通・交流が円滑かつ効率的にできるよう、高速鉄道網、高規格幹線道路、大都市圏拠点空港、中枢・中核国際港湾等の交通ネットワークの整備による到達時間の短縮と広域連携の確保、都市における交通インフラ整備による通勤混雑の緩和、交通渋滞の解消、交通バリアフリー化の推進、次世代インターネット構想の推進、高度情報通信社会を支える情報ハイウェイ、光ファイバー網等の整備促進による通信コストの引下げ、通信容量の大幅な拡大、情報内容の充実等の施策を重点的に推進し、シームレスな人流の確保と物流の効率化、先端電子立国への転換を実現し、快適な交通・交流空間を大幅に拡大する。
-
- (2)交通・交流空間の拡大に向けた具体的施策
- (円滑な人流の確保)
- ○幹線鉄道について、当面、新幹線を含む全国主要幹線鉄道の表定速度の平均を向上させ、鉄道特性のある分野について、東求A大阪、名古屋、福岡又は札幌から地方中核都市まで概ね3時間台での移動を整備目標とし、整備新幹線の整備、幹線鉄道の高速化等を推進する。
- ○大都市圏拠点空港について、関西国際空港2期事業、中部国際空港の整備、新東京国際空港の平行滑走路等の整備及び東京国際空港沖合展開事業を推進するほか、首都圏における新たな拠点空港の整備について、総合的な調査検討を進める。
また、一般空港等について、既存空港の高質化等所要の整備を図る。
- ○航空需給調整規制の撤廃に際し、航空ネットワークの維持・拡充等のため、平成11年度において空港使用料等公的負担の見直しを行う。
- (効率的な物流システムの構築)
- ○平成14年度末までに、高規格幹線道路等から空港、港湾への10分以内での連絡率をそれぞれ58%(平成9年度末40%)、38%(同25%)に高めるなど、道路ネットワークの拡充等により、物流の効率化を推進する。
- ○中枢国際港湾における大水深コンテナターミナル(水深15m)について、2002年度までにアジア主要港並みの施設水準を確保するとともに、中核国際港湾における国際海上コンテナターミナルを拠点的に整備し、21世紀初頭における輸出入コンテナの陸上輸送コストを約3割削減することを目指す。
- ○複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの整備により、「陸上輸送半日往復圏」の人口カバー率を21世紀初頭に、約9割(平成10年度約7割)に向上させることを目指す。
- ○旅客専用線の貨物列車走行対応化、鉄道貨物拠点の整備等を推進する。
- (都市圏の交通空間の拡大)
- ○大都市圏の都市鉄道について、通勤・通学時の混雑緩和、都市機能の維持・向上を図るため、新線建設、大規模改良、鉄道駅の総合改善等を推進する。これにより、ラッシュ時の混雑率については、当面、概ね150%程度、特に混雑の激しい東京圏については当面180%程度(平成9年度186%)への緩和を目指す。
- ○都市圏の交通円滑化を図るため、バイパス・環状道路の整備、連続立体交差化等を推進することにより、平成14年度末までに主要渋滞ポイント約3200箇所の約3割を解消する。
- ○パークアンドライド、相互直通乗入れ、交通ターミナルにおける乗換利便性の向上等により、交通機関相互の連携の強化を促進する。
- ○オムニバスタウン構想の推進、ノンステップバスの導入、バス路線に係る道路の整備、バス停の整備等によりバス利用の促進を図る。
- (交通運輸分野における需給調整規制の原則廃止等)
- ○市場原理と自己責任原則の下で低廉で利便性の高い交通運輸サービスの提供を確保するため、法律改正等の所要の措置を講じた上、平成11年度から13年度までの間に、旅客鉄道、貸切バス、乗合バス、タクシー、国内旅客船、国内航空運送の分野における需給調整規制について、地域の生活交通サービス維持に配慮しつつ、原則廃止等を行う。
- (交通空間の高度情報化)
- ○平成14年度末までに全国の高速道路等の主要な料金所(730箇所)でETC(ノンストップ自動料金収受システム)を整備することとし、ETC車載器の普及状況を踏まえてその前倒しを図る。また、2003年を目途に、高度道路交通システム(ITS)技術を統合して組み込んだ世界初のスマートウェイの実用化を図る。
- ○ITSのうち、既に実用化されている道路交通情報通信システム(VICS)について、平成12年度末を目途に光ビーコンを全国47都道府県の主要都市に整備するなど、情報提供サービスエリアの全国展開やシステムの高度化を推進する。また、バス優先のPTPS(公共車両優先システム)、環境に配慮したEPMS(交通公害低減システム)等の新交通管理システム(UTMS)のサブシステムについて、順次整備を図る。
- ○無線ICカード、車載機等の情報通信関連技術の研究開発、バス、トラック事業等の情報化対応のための実証実験、システム開発、国際標準化等を進め、ITSの各種利用者サービスの開始を目指す。
- ○先進安全自動車(ASV)について、21世紀初頭における統合システムを塔載したASVの実用化を目指し、研究開発を推進する。
- ○ICカードを活用した汎用電子乗車券システムについて、平成12年度からの実用化を目指し、導入促進を図る。また、バス停への情報提供装置等の整備、乗継情報案内システムの整備等交通ターミナルの情報化を図る。
- ○最適なトラック配送ルートの策定等に必要な各物流データベースのインターフェースの標準化、電子タグ等の輸送ラベルの標準化等により、高効率な物流体制を構築するためのシステム開発を推進する。
- (トータルデジタルネットワーク社会の構築)
- ○交流空間の拡大を可能とするトータルデジタルネットワーク社会の構築のため、次世代インターネットに係る技術開発を進めるとともに、不正アクセスについての技術開発等を進める。また、次世代携帯電話(IMT−2000)を平成13年中に実用化する。
- ○高品質で多様なマルチメディア放送の実現を目指して、衛星放送、地上放送、CATV等の計画的なデジタル化を進める。特に地上放送については、平成12年にデジタル放送を開始できるように研究開発、制度整備等を行う。
- ○光ファイバー網及び衛星を活用したギガビットネットワーク技術並びに成層圏プラットフォームによる通信・放送技術の研究開発を進めるとともに、超高速マルチメディア移動体通信技術について平成14年から一部実用化する。
- ○学校におけるインターネット利用を促進するため、光ファイバー、DSL(デジタル加入者線)、衛星通信等の様々な高速アクセス回線を複合的に活用する技術の研究開発を推進する。
- (光ファイバー網等の整備)
- ○加入者系光ファイバー網の全国整備について、民間事業者の活力を活かし、平成17年への前倒しに向けて努力する。
- ○道路、河川、下水道等の公共施設管理用光ファイバー網について、道路に整備する光ファイバーの収容空間(情報BOX等)の整備延長を平成14年度末までに約24000km(平成9年度末約7000km)とするなど、整備を推進するとともに、それらの収容空間に低コストで民間通信事業者の光ファイバーの敷設を可能とするなど高度情報通信社会の構築を支援する。
- (公共分野等における情報化の促進)
- ○情報通信を通じた交流の拡大を図るため、教育、保健・福氏E医療、行政サービス等の情報化を進めることとし、先進的なアプリケーションシステムの開発・導入を行う。
- ○生活・雇用・高齢化対策等の地域課題の解決を目指した情報化の促進を図るため、先進的な地方公共団体等の情報通信基盤整備を支援するとともに、情報拠点としての郵便局のマルチメディア化を段階的に進める。
- ○地理情報システム(GIS)構築を進め、GIS利用上の基盤となる国土空間データ基盤の整備・相互利用等を促進するとともに、GIS官民推進協議会等において、官民一体となった取組を推進する。
- (電子商取引の本格的普及)
- ○電子商取引の本格的な普及に向けて、特に電子認証、プライバシー保護等の制度的課題については、平成13年(2001年)までに必要な措置を可能な限り前倒しして実施する。
10.職空間とゆとり時間の拡大
- (1)職空間とゆとり時間の拡大の基本的考え方
職空間とゆとり時間の拡大は、働く場の環境改善等を通じて国民一人一人が豊かでゆとりある生活を実現することに寄与するものであり、また、経済活動の効率化をもたらすなど、我が国経済社会の活力を維持、向上する上で不可欠なものである。
このため、オフィス・スペースの拡大、快適化や競争力の高い企業立地等に向けて、都市における既成市街地の再開発の推進、地域における快適で効率的な職空間の拡大、職場環境の快適化、テレワークの普及等を行うことにより、質の高い職空間の大幅な拡大を図る。
また、労働時間の短縮対策を着実に推進するとともに、ゆとりある都市生活の実現等による通勤時間の短縮、各種の行政サービスを受ける時間を節約する「ワンストップサービス」の推進等を進め、ゆとり時間の拡大を強力に推進することとする。
-
- (2)職空間とゆとり時間の拡大に向けた具体的施策
- (都市における既成市街地の再開発の推進)
- ○都市の再構築に向けて土地の有効・高度利用を促進し、民間の活力が十分に発揮されるよう、都市構造の将来像を示し、基盤整備、高度利用等の具体的な目標を明らかにする「都市構造再編プログラム」の策定を、大阪市を始めとする政令市等において推進する(東京23区において平成10年4月に策定済)。
- ○地域の経済活動の主要な場となる駅前等において、従前の約5倍の床面積の都市生活空間を創出する市街地再開発事業を推進する。
- ○民間都市開発推進機構による都市開発事業に係る事業化等の支援を推進し、都市における職空間の拡大を図る。
- (地域における快適で効率的な職空間の拡大)
- ○三大都市圏からそれ以外の地域へ工場を移転しようとする者に対する融資、税制等により、企業誘致、工場の再配置を進めるとともに、地域における新事業展開のための事業用施設の整備等を推進する。
- (労働時間等の短縮と快適な職場環境づくり)
- ○年間総実労働時間1800時間の達成、定着に向け、年次有給休暇の取得促進、完全週休2日制の普及促進、所定外労働の削減等の労働時間短縮対策を推進する。
- ○労働者が疲労・ストレスを感じることの少ない快適な職場環境づくりを促進するため、事業主による快適職場推進計画の策定、事業者への普及啓発等を推進する。
- ○職空間とゆとり時間の拡大を可能とするテレワーク、在宅就労について、地方公共団体等によるテレワークセンターの整備に対する支援、体験・相談センターの開設等を通じ相談援助を行うこと等により円滑な普及を促進する。
- (ゆとりある都市生活の実現による通勤時間の短縮)
- ○通勤時間を短縮するため、大都市圏の都心部において5年間で約50万戸の住宅供給を目指すこと等により、職住近接の生活を可能とする都心居住を推進する。
- ○大都市圏の都市鉄道については、新線建設、地下鉄の整備、ニュータウン鉄道等の整備、貨物線の旅客線化を推進することにより、混雑率の緩和に併せて通勤時間の短縮化を図る。
- (ワンストップサービスの推進)
- ○パソコン又は身近な場所で各種の行政サービスを受けることができる「ワンストップサービス」について、今年度中に策定する整備方針に基づき総合的に推進する。特に、郵便局で2005年頃までの本格的サービス実施を目標に積極的に実験を進めるとともに、輸出入については平成11年度を目途に実現を目指す。
X.戦略プランの推進方法
- 1 全国的施策の推進
- 質の高い生活空間を拡大、倍増していくためには、土地を資産と考え、かつ、右肩上がりの地価を前提につくられてきた経済・社会の諸制度を抜本的に見直し、規制緩和等の制度改革が、施設整備等とともに進められなければならない。さらに、戦略プランは、我が国経済社会の構造を改革していくという中長期の視野に立って施策が推進されなければならないが、現下の経済情勢をも踏まえ、当面は民間投資の誘発や投資の拡大などの経済効果の高いものに重点化することとする。その場合、国・地方公共団体等が事業主体となって進めるべきものについては、平成10年度第3次補正予算に盛り込まれた景気対策臨時緊急特別枠の活用はもとより、平成11年度予算も活用して重点的な予算配分を行うと共に、個人や民間事業者が中心となって取り組まれる事業については、規制緩和や公的な支援措置の充実に努める。いわゆるPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)については、早期の法整備を期待するとともに、その積極的活用のため、所要の措置を講ずる。
- 2 地域戦略プランの推進
- イ 地域戦略プランの考え方
生活空間倍増戦略プランは、各地域が直面する生活空間の課題の解決を通じて、個性的で誇りの持てる地域づくりの契機となるべきものであり、従って、生活空間倍増戦略プランの推進に当たっては、その一環として、特に、都市と地方のそれぞれの地域が、生活空間の倍増に向けての夢の実現を目指し、独自の戦略的なプランを展開していくことが効率的かつ効果的と考えられる。そのため、都市と地方の各地域が、自らテーマを選び、活力にあふれ、ゆとり・うるおいのある空間の創造のための総合的な地域戦略プランを主体的に策定し、これに対し、国が最大限の支援を行うためのシステムを構築し、生活の夢の実現と地域の再生を図ることとする。
現在、同プランのテーマ、具体的な施策などについては、各地域において積極的に検討を行っているところであり、本年1月中には各地域からプランの骨子が国に提出される予定になっている。各地域がそれぞれのプランのテーマに沿って積極的に取り組むことが、全国的施策で取り上げた、各生活空間倍増に向けた取組を加速させることとなる。
- ロ 地域戦略プランの策定方法
地域戦略プランのテーマ・施策内容は、都市と地方の各地域自らが選定し、既存の広域的な行政圏域単位等も活用して広域的な連携等の下、住民等の意見を適切に反映しつつ主体的に策定することとする。その際、地域の数としては、400箇所程度、1地域当たりの事業規模は平均して約100億円、総額は5年間で4兆円程度と想定するものとする。また、同プランに盛り込むべき内容としては、関係施策間の連携を十分図り、トータルプロジェクトとして広域的な生活・経済圏の形成の観点から事業効果が高いものとする。
同プランに基づく事業については、毎年度の予算等を活用して、重点的な予算配分を行う。このため国においては、国土庁を総合的窓口として位置づけるとともに、関係省庁が一体となった推進体制として関係省庁の局長相当職で構成される「地域戦略プラン推進連絡会議」を設置し、同プランに対して、国としても最大限の支援を行うものとする。
さらに、同プランに係る事業の円滑な推進を図るため、平成11年度予算で、総額2050億円の推進費(調整費)を確保するとともに、プランの策定経費、地方単独事業費について地方財政措置を講ずる等による支援を行うものとする。
なお、事業の性質に応じて、地区一括採択方式等を積極的に導入し、地域の実情に応じた柔軟な実施を可能とするものとする。
Y.生活空間倍増戦略プランの今後の進め方
今回取りまとめた生活空間倍増戦略プランに盛り込まれた全国的施策に関連する事業としては、平成10年度第3次補正予算及び平成11年度予算において、事業規模で概ね30.2兆円(国費概ね14.3兆円)が措置されたところである。
平成12年度以降についても、引き続きプランに盛り込まれた目標の実現の観点から、生活空間倍増戦略プランに関連する施策については予算の重点的な配分を行うとともに、規制緩和等に係る施策について、新たな施策を含め、積極的に推進していくこととする。なお、その際、今後の社会・経済の動向、財政事情等を勘案しつつ、弾力的な実施に努めるものとする。こうした政府の取組については、今後、その実施状況を適切にフォローアップし、プランの着実な推進を図っていくこととする。