日本再構築の方法 具体論 2


 官僚制度の改革

 政官財のための政治経済を国民のための政治経済に変えるには、官僚を現在のような国民の支配者の立場から、本来の国民のためのサーバントに変えることが必要である。

 これは非常に大変なように見える。
 橋本首相の行政改革も、族議員を動員しての官僚の抵抗で骨抜きになった。それどころか特定の省庁ではむしろ権限が増え、焼け太りとまで言われている。

 しかし官僚は法律を勝手に左右することにより今の権力を握っているのであり、法律によってこの権力を奪い返すことが出来るはずであり、それをやらねばならない。

 橋本内閣の行おうとした行政改革のように、官僚制度を官僚に変えさせるというのは無理な話である。

 まず、官僚制度は大きくなりすぎ、国民生活のあらゆる面をカバーしており、すべてが政官財のための制度となっている。これを手直ししようとしても無理である。

 終戦後、国民主権となりながら、敗戦からの復興が主であったこと、国民側に国民主権の意識が無く、お上頼りの永年の慣習をそのまま持っていたことから、行政組織、行政制度の作成を官僚に任せるしかなかった。

 憲法が制定され50年が経った今、改めてこれを作りなおすべきである。

 現在の国の行政機関は国家行政組織法に基づいて存在している。
 この第3条では
 「国の行政機関の組織は、この法律でこれを定めるものとする」となっている。

 まずこれを議員立法で改正し、本当に国民のためになる組織に作り替える。

 作りなおすに当たり、国民主権の立場から、まず憲法15条を確認することが必要である。
 「憲法15条
   公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
  Aすべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」

 官僚はすべて国民全体の奉仕者である。
 しかし、現在の官僚はむしろ国民の支配者としての意識で働いている。
 そして思うままに法律、規則、行政指導を駆使し、所管業界の保護 既存企業の権益の保護、自己の利益のために働いており、国民のためという発想は見られない。
 省庁も国民を規制するためのものと、関連業界のためのものである。

 議員立法によりまず国家行政組織法を改正し、(例えば)5年後には現在の省庁をすべて廃止するとし、その間にその後の政府のあり方を議論し、新しい組織を考える。

 考えるポイントは、
@国民の規制のためでなく、自己責任体制を維持するためのもの、
A業界のために働く省庁でなく、国民のために業界を(最低限必要な範囲で)規制するもの、
B地方分権の小さな政府などである。 

 また、現在のように官僚が裁量を与えられた法令や、法律に基づかない通達、行政指導はなくし、法律の施行者の立場に限定すべきである。

 更に公務員倫理法により、直接の職務権限の有無にかかわらず、公務員としての立場にある限り、あらゆる接待を禁止する。

 以上の処理により、官僚は国民のための真の公僕となる。

 この場合、これまでのように国の方向を決めるのを官僚に頼ってはいけない。
業界の規制も最低限のものであり、国民は政府に自分の判断の誤りのつけを持ち込んでもいけない。
 あくまで規制をなくし、企業と国民全体が自己責任の原則で判断するシステムを維持するだけである。

 しかし日本国民の創意と工夫により、官僚の指導などなくても十分やっていけると思われる。

 

 企業制度の改革

 政官財体制を国民のための体制に変えるには企業制度の改革も必要である。

 ここでも自己責任のルールの確立とチェック・アンド・バランスの復活がポイントとなる。

 このためには、まず株主総会の機能を生かす必要がある。
 現状は経営者が需要家や銀行、同系企業に安定株主になってもらい、一般株主の意向を無視する体制をつくっている。
 経営者同士が互いに助け合って株主を無視する体制である。

 これらの持ち株は簿価(株価が低い場合は株価)で評価され、株価が上がっても税金は払わず、もしもの場合はこれを売って経営者の失敗の穴埋めとしている。

 このため商法と税法を改正し一時保有株式は流動資産にし、時価評価で課税し、子会社等への投資は固定資産(投資等)として取得価額評価を認める代わりに、その売却は株主総会の決議事項とする。
 一時保有株式は資金運用のためであり、無配や低配当の企業の株の保有は正当な理由がないこととなる。これにより経営者同士が協定しての安定株主は減少しよう。

 株主代表訴訟も一つの手である。

 本来株主のために働くべき取締役が経営トップのために働くシステムは代表訴訟をドンドン行うことで改正される。単にトップの意向に合うように働いて取締役になるような人にとって、トップの決断に従って損害賠償の責任をもたされるのが一般的になれば、取締役での発言や議決にも、もう少しまじめになるであろう。

 なによりも有効なのは、株主への貢献のない会社の株をドンドン売ることである。
 バブルが消えた今、株の値上がりで儲けることは先ずないと考えるべきである。その場合配当の利回りが投資の基準となる。

 経営者の報酬を上げ、組合を抑えるための賃金アップや年金制度の拡充を行いながら配当を抑える企業の株はドンドン売却し株価を下げる。
 こうすると増資や転換社債の発行も出来ず、経営者の責任が問われることとなる。

 企業は革新により成長する。これに役立たない経営者は株主総会で否認する。こういう仕組みにより企業の成長が確保される。

   


 2001/10/17追加  同日付 日本経済新聞記事 

米年金カルパース、日本の株主総会60社で反対票
 株主利益訴え意思表明 国内の年金も議決権行使へ

 米公的年金最大手のカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)が、今年4−6月に株主総会を開いた日本企業60社に対し反対票を投じたことが明らかになった。監査役選任や役員退職慰労金への反対が多く、株主の視点から企業統治が機能するよう求めている。こうした海外年金の動きを参考に、国内の年金も「物言う株主」として議決権行使に動き始めた。
 カルパースが議決権を行使した日本の上場企業は127社。うち半数に当たる60社の議案に反対票を投じた。とくに退職慰労金と監査役選任に集中、それぞれ41社、28社に反対表明した。
 監査役選任でカルパースが注目するのは監査役の独立性。米国では社外取締役を中心に構成する監査委員会が株主の代表として外部からの監視役を担う。同様の役割を日本企業の社外監査役に期待しており、「グループ会社や取引金融機関の出身者では機能しない」とみている。
 反対票を受けた良品計画の場合、筆頭株主の西友出身2人を商法で定める社
外監査役に迎えた。良品計画は「当社への西友の出資比率は低く経営は独立している」とするが、より厳密な線引きを求めた格好だ。
 役員退職慰労金ではNTTドコモや日産自動車に反対。過去に従業員でなかった役員への支払いには原則反対するのは、
社外の取締役が任期終了後の慰労金を期待していては、独立した立場からの経営チェックが働かないとの考えだ。
 このほか配当について武富士に「低い配当性向に正当な理由がない」、ストックオプションでは信越化学工業など4社に「情報不足」として反対。住友化学工業には
「三井化学とのポリオレフィン事業統合に関し外部の評価がない」と、事業戦略に踏み込んで意思表明した。カルパースのウィリアム・クリスト理事長は「株主価値の拡大に向けた足取りは鈍く、引き続き要請していく」としている。

 日本の年金も変わりつつある。今月5日に厚生年金基金連合会は「議決権行使に関する実務ガイドライン」を公表。受託者責任の観点から運用受託機関に積極的な議決権行使を求め、報告の義務などを明記した。「企業は株主を常に意識した緊張感ある経営をいっそう迫られる」(松山英明・日本投資環境研究所取締役)ことになりそうだ。

カルパースが株主総会で反対票を投じた企業
▽監査役選任……
 大東建、ナショ住、藤沢薬、万有製、ヤフー、Fsas、日電硝、住友大阪、フジクラ、富士通、シャープ、アンリツ、キーエンス、ローム、新光電工、京セラ、東海理化、NOK、良品計画、東京精、シチズン、三井物、住友海、菱地所、東急、日梱包、KDDI、NTTドコモ
▽役員退職慰労金……
 ナショ住、帝人、宇部興、山之内、ヤフー、Fsas、資生堂、住友大阪、住友電、フジクラ、コマツ、日立、東芝、三菱電、NEC、冨士通、シャープ、ソニー、キーエンス、ローム、新光電工、太陽電、村田製、東海理化、三菱重、日産自、良品計画、リコー、伊藤忠、東エレク、オリックス、野村、住友海、三井不、菱地所、JR東日本、日梱包、KDDI、NTTドコモ、カプコン、ソフトバンク
▽ストックオプション……  信越化、三洋信販、日立ソフト、TIS
▽配当……
 ローム、武富士
▽その他……
 住友化、住友電、オリコ、JR東日本、トミー


                                                       それで 結論 へ