千葉ポリエチレンの設立                                         

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住友化学最近20年史より

直鎖状低密度ポリエチレンの生産拡充

千葉ポリエチレンの設立

当社のポリエチレン事業は、産構法施行前は能力シェアで16%と業界トップの地位にあったが、昭和63年3月の産構法の業種指定解除後、同業他社の休止設備再開や新増設によってそのシェアは漸減傾向にあった。 一方、需要は数年来堅調な伸びを示し、なかでも直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)の需要増加は著しく、同業他社はL−LDPEを中心に着々と生産体制の整備拡充を図りつつあった。
このような状況下、同年9月、千葉工場のL−LDPEプラントを年産能力1万9000tから3万3000tに増強したが、当社のLL化率は平成元年時点で11%と全国平均の24%に対して相当低く、また、増強にもかかわらず、3年には再び大幅な供給能力不足になることが予想された。
折しも主要需要家からの供給要請は日増しに強まっており、このような事態を放置しておくことは信頼関係を損ない、合成樹脂事業の販売戦略の一つである加工メーカーとの連携強化に支障を来たす恐れがあった。また、業界における地位の低下と相まって、ポリエチレン全体の事業基盤に影響を及ぼすことも懸念された。製造技術についてはポリプロピレンでは気相法技術がすでに確立していたが、L−LDPEでもその触媒を開発し昭和63年以来パイロット研究を行い、気相法プロセス確立の見込みはついていた。
そこでユニオンポリマーのメンバーである東曹と協議を重ねた結果、両社が共同して当社袖ヶ浦地区内に気相法によるL−LDPE工場(年産能力8万t)を新設、当社はそのうち6万tを引き取ることにした。この共同投資実施のため平成2年2月、「千葉ポリエチレン有限会社」(資本金5億円、出資比率当社75%、東曹25%)を設立した。この工場は原料エチレンを数量的には確保できる見込みがついたことから、両社ポリエチレン事業の維持強化のために、2年夏に着工し、3年11月に完成した。



住友化学は1983年にポリオレフィンの共販会社ユニオンポリマーに参加したが、ポリエチレンについては当社のほか、東曹と宇部興産がメーカーであった。各社の能力は以下の通り。

       

ユニオンポリマーではポスト産構法について、「グル−プとして増設時期を調整し、融通を行ない、効率的投資を実施する」としていた。

しかし、1988年に宇部興産から、BP法でLLを増設するとの通知があった。1989年10月完成で 50千tというものであった。

樹脂事業部、石化業務室としては、技術的には完成した当社のガス法による増設を検討、規模の拡大のため、ユニオンポリマーの他のメンバーの東曹(現・東ソー)を引き込むことを計画した。

88/7 東曹の久楽事業部長*ほかと会談、住化のLL増設計画(50千t,90年末完成、住化ガス法)を説明した。東曹からはHDPEもやりたいとの希望が出た。

* 久楽氏は山口"タイガー"社長に心髄し、「趣味は山口タイガー」としていた。

88/11 森社長に以下の案を説明した。

 住化ガス法による増設
 能力5万トン、建設費 BL内49億円(他にBL外、ブテン−1に8億円)        
 90年末完成
 東曹とJV又は生産受委託
 条件として、次期増設を四日市で(HDPE生産も)

 11/25に森社長と東曹・山口社長の会談があった。

東曹より一緒にやりたいとの申し入れがあったが、森社長はエチレン入手が問題とした。
  
*当社は産構法で愛媛工場のエチレン設備、千葉工場の第1エチレン設備の処理を行い、1983/8の能力 569.4千tを345千tに落とした。石化製品の需要回復に伴い、エチレンが不足し、PE増設用のエチレンはなかった。当時、のちに京葉エチレンとなるエチレン共同生産計画を検討していたが、その完成時期は未定であった。外部からの購入も難しく、仮に購入が出来てもバ−スの完成は91年末(91年3月の港湾審議会に通った場合)になり、それまでは大量輸送は不可能であった。

同年の年末の打ち上げで森社長が石化のゾーンに来られたが、その席でポリオレフィン部の篠原嬢が森社長に、「品不足で担当者同士で玉の取り合いをしているのはみておれない。なんとか増設を認めて欲しい」と直訴した。社長は「エチレンがない」としたが、石油化学品の柳沢部長が「なんとかします」と答えた。

89/2 東曹との打ち合せ

東曹提案:
JV精神を活かして輪番でやりたい。
汎用品主体、各75千t
先番は千葉で可、3年後四日市(同社触媒でHDスイングでやりたい)

89/4 LLDPE起業社内打ち合せでの議論は以下のとおり。

・原料エチレン不足

LLDPE起業の完成予定は91年秋で年内はテストなどでエチレン使用量も   少ないため予定通り進める。

・建設費 大幅アップ

ブテン−1の増設が当初の4億円が9億円にアップしているが、韓国のラッキーとのJVからもちかえることも考える。

89/5 東曹とLLDPE起業で打ち合せ

これまでの輪番投資案が実現困難(東曹引取面)として、千葉でのJV案の提示があった。ただし単なる購入に近いものはメンツの上で困るとして共同研究の要請あり。

89/6 東曹を訪問、以下のとおり回答したが、東曹は全て了解した。

・ 能力は75千T(LDブレンドベ−スで95千T)、将来四日市でもやりたい。   
・ 東曹へのライセンスは時期尚早、当面JVには実費ベ−スで求償
・共研はやるが、ガス法稼働までは当方で独自にやりたい。将来HD、LLなどの研究は一緒にやりたい。
・完成時期は91年夏だが共同エチレン完成は早くて92年末でその間エチレンが入手できるか(輸送も含め)どうかが問題

89/7/31 経営会議でL−LDPE起業を付議した。

起業そのものについては需給、技術、エチレンなど問題あるが、やるしかないとしたが、東曹とのJVについては反対が多かった。小松原常務から「ゆるいJVでいく」として了承を得た。
経営会議議事録 参照

 8月に東曹を訪問、JV精神を生かすが、運営としては受委託でやりたいとした。

東曹意見:
住化と一緒にLLをやること、社長同意
将来は輪番投資でHDは是非やりたい。千葉は住化にまかす(信頼関係)

JVが大変なのはPPの例でよく分かるが、単なる輪番では対内、対外にカッコがつかないのでJVにして欲しい。ただし運営は全て住化に任す。
引き取り比率は実力を考え、25%としたい。出資比率も同じ(比率を低くし口を出さないという意味も含む)

少グレ−ド、大量生産は分かるが、新グレ−ドの開発が出来ないのは困る。これをやるとともに応分の費用、資金を出すので東曹もそれが売れるようにして欲しい。  
これに限らずLD,EVA,(CdF法)LLの全般にわたり協力関係を深めたい。(PPでの提携が出来ず、今だに残念と)
*PPは東曹の新規参入希望に対し、当方から最初は千葉計画(宇部、東曹とのJV)に乗れとしたのに対し、どうしても四日市でやりたいとして、チッソとのJVを設立した。

その後、社内で相談し、経営会議における東曹とのJVへの懸念を勘案し、当初はJVとするが、四日市工場の建設に際しては、千葉工場の合弁の解消も含め、両工場の在り方について再検討するとの文言を基本契約書に入れることとした。

11月末に東曹常務会でLLのJV計画が承認された。

12月初めにMITIに説明、続いてPE委員長会社の三菱油化と、共販メンバーの威宇部興産に説明。

12月25日 LLDPE増設のデクレア。

同時に公取調整課に説明したところ「このようなことをいちいち報告にくる必要なし」とのこと。なおデクレア制度について公取としては3月で打ち切りにしたいとした。

90/2月 千葉ポリエチレン設立

当社側役員 村本工場長(社長)、香西常務、堤事業部長
運営組織:役員会、運営委員会、各部会
技術料:2億円(基本設計と一部の詳細設計の実費と説明)
受託料:5億円(試運転費を含む)
  

 この頃、東曹・久楽取締役からは以下のコメントがあった。

・LLを早急に四日市でやりたい(千葉と同規模)。住化との提携をLD,EVA、高圧法LLを含めPE全体に広げたい。
・四日市でエチレン40万tをやるが、住化に15万t入ってもらい55万tにしたい。

90/9/5 千葉ポリエチレン地鎮祭
   東曹・久楽取締役が鍬入れで力が余り、鍬が折れるハプニングがあった。

 9月 千葉ポリエチレン運営委員会で以下説明した。

建設状況は予定通りで、12月触媒チャ−ジ。但し需要も勘案し、試運転計画は慎重にやる。商業生産開始は来年4月頃か。 

 11/6 社内だけで千葉ポリエチレンの始動式を実施、触媒投入は12月。

92/6/4 千葉ポリエチレン 竣工式


「住友化学 最近20年史」より

千葉ポリエチレンの稼働

当社と東曹の合弁会社、千葉ポリエチレンは、3年11月に当社千葉工場袖ケ浦地区に直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)年産能カ8万tの設備を完成した。
引取枠は出資割りとし、当社6万t、東曹2万tであった。これにより当社の実質年産能カは自社設備とあわせ26万5000tとなった。しかし、設備完成時に折からの景気後退に見舞われたため、営業運転は4年4月に延期された。なお、宇部興産が製造設備を一時休止したのに伴い、同社から千葉ポリエチレンで生産する製品の供給依頼を受け、5年10月、当社は同社向けに年間2万tの供給を開始した。
6年の直鎖状を含む低密度ポリエチレンの全国年産能カは225万8000tであり、ユニオンポリマーグループは合計66万3000t、シェアは29.4%となった。


ユニオンポリマーの低密度ボリエチレン生産能力(平成6年8月末現在、千t/年)
 


93/1 千葉ポリエチレン 役員会での報告。

・92/9に低密度グレ−ド、92/12 に高密度グレ−ドの高負荷稼働を行い、100%稼働を実現し能力を確認した。
・最近原料&用役の原単位の大幅向上に成功、原価低減に貢献。
・ 販売不振により現行グレ−ドではフル操業が無理なため対象グレ−ドを増加したい。(東曹も HIPグレ−ドを LL に転換し早期にフルにもっていきたいとした)

 


添付 経営会議議事録(1989/7/31) 

気相法LLDPE増強計画

武内専務:当社のガス法LLDPEは他社品と比べて品質及びコストの面でどういう位置づけにあるのか?

宇田専務:東ソーの評価では品質差は無い。コストも新聞の情報をみる限り差はないと思われる。

森本副社長:ガス法LLと今までのLLとで品質に差はあるのか?

宇田専務:コモノマーとしてブテン-1を使った場合、余り差は出ない。ただガス法ではブテン-1を使った汎用的なものをメインとし、HIPではハイヤーオレフィンをコモノマーに用いた高級グレードを狙っていく。

西沢専務:海外からの流入はないのか?

塚専務:サウジから今でも年間2万t程度入っている。

水野専務:145円/kgの価格がどうなるか気にかかるが、多少の変動は覚悟して、うちの石化事業をどうするかで判断した方がいいだろう。今、決心をすることは難しいと思うが、短期のROIにとらわれず、品質・コストに自信をもってやっていくべきだろう。技術は出来たばかりではあるが。
宇田専務:技術面でいえば、今 pilot を動かしているが、今後も改良していく。心配な点は pilot から100倍に scale-up することである。

水野専務:長期的な決心なので、今決心するか、1年待つか。

小松原常務:待つ意味は無いと思う。早く実施し、問題が出ればその都度解決していけばいい。品質面では今のところ心配はない。

岡野専務:うちのガス法は improvement でなく、技術的に他社に比し優位性は無い。100倍への scale-up の risk が残るが導入するよりは得である。

香西常務:うちに玉が無い状態は避けねばならない。早く準備しておかないと悪い時期になると更に大変なことになる。

社長・副社長:能力にはサブ品も入っているのか?

宇田専務: 75,000 t/年は正規品で、定修実施ベースでの能力である。計算としては
         10.3 t/hr x 7800hr x 0.934(正規品)の式で表わされる。
       定修なしだと 8160hr で78,700t (正規品)となる。

社長  :PPの時も順調になるまで時間がかかった。またユニポールでも油化はスタートの時、かなり苦労したと聞いている。本当に早すぎることはないか?

宇田専務:今回は5CRの経験が効いてくる。PPは何から何まで初めてだったので大変だった。

副社長 :PPとPEを比べるとどちらが難しいか?

宇田専務:PEはブロックがないし、キック性がないのでいいが、反応が早いので、その辺りを注意してやっていくつもりである。

社長  :大系列でやらず、コストが高くなっても小さいプラントをつくって機動性をもたすという考えはどうか。また5CRでPEをやってはどうか?

宇田専務:小回りをきかすのは高圧法で行い、ガス法では大きくやるのがいいと考えている。5CRでのPE生産は工場サイドとしてはやりたいのだが、事業部は5CRは商業生産用に使いたいと言っている。

水野専務:将来の需給バランスはどうなるか? タイミングが大切。

副社長 :必ず余ってくると思うが。

小松原常務:PEには自信がある。

社長  :売れるかも知れないが損が出よう。

広岡取締役:東ソーとの間で将来についてどういう約束があるのか? はっきりしておいた方がいいと思う。

社長  :本件、3つの問題がある。1つは技術、1つは需給バランス、更に1つは事業の仕組みである。

香西常務:東ソーは輪番でなく、共同投資でやって欲しいと言ってきた。

社長  :規模の利益とJVの煩わしさとどちらが大きいか。ポリマーでのJVは望ましくないのではないか?

堤事業部長:東ソーは少々欲しいといっており、うちが断ると技術を導入し他社と組むかも知れない。

小松原常務:今回のJVは2社だから運営はやりやすい。

宇田専務;11月にゼネコン発注したい。

社長  :エチレンをどうするか? 70円/kgで買っていたらやっていけない。エチレンプラントが出来ないとやれないのではないか?
不確定ファクターが多く、かなりの決心がいることになる。

宇田専務:住化の石化をどこまでもっていくかを考えればおのずと答えが出るのではないか。

社長  :エチレンもLLもやるべきとは思っているが、少し待てば cost-downの可能性が出てくることはないか?

岡野専務:品質、コストで優位なら販売力はあるのだから無理してやってもいいのではないか。

塚専務 :今まで増設を前提に販売してきた。客を逃がすようなことがあってはならない。

副社長 :拡大基調でいくより仕方がないか。結局競争力は量を大きくするよりしようがないということを認識せねばならない。ただ東ソーは本当にいい相手か?

堤事業部長:いい相手かどうかはわからないが本件は当社に主導権がある。

社長  :技術料2億円は安いと思う。

小松原常務:せめて5億円程度にはしたいと思っている。

副社長 :増強より手がないので、決心せねばならないが、エチレンの手当て、JVの煩わしさ、特にポリマーのJVの厄介さといった問題があるという経営会議の共通の認識を頭に入れておいて、問題が起こればすぐ手を打っていくこととしよう。