日本の石化の将来予想

                             1993/1

  今後実質的な restructuring、業界再編成が行われる。ポリオレフィン、塩ビともに、5−6の大メーカーに集約され、残りは特定のニッチで生き残るか、どこかに従属するか、順次消減していくと思われる。

 以下において大胆な予測を試みた。

 

一つの可能性として、石化業界の疲弊、混乱に乗じて新日鉄や川崎製鉄などの鉄鋼会社が既存樹脂メーカーを買収する形でこの業界に進出することが考えられる。

 

 鉄鋼メーカーは自動車の部品が樹脂(特にPP)に変わりつつあることに注目し、今後、鉄(及びアルミ)と樹脂の二大素材を手掛けようとしている。既に新日鉄は新日鉄化学で石化に進出、サーモフィルを買収して欧米でコンパウンドに乗り出しており、川鉄も1億$でLNPを買収し欧米でエンプラのコンパウンドを始めた。韓国の現代石化を新日鉄が買収するという噂もあった。(経営を考えると同社が韓国の会社を買収することは考えられない。)

 鉄鋼メーカーは各社とも多角化で異業種に進出したが順次引上げつつあり、その資金をもってすればコンビナート買収も容易である。

 *川鉄から石化コンビナート建設にいくらかかるかと聞かれたことがあるが、3千億円程度と答えたところ、そんなに安いのかと。高炉の場合1基で1兆円以上しそれと比べると極めて安く、状況が熟せば十分可能性はある。

 

ポリオレフィンでの再編成では以下の可能性がある。

・三菱油化と三菱化成(石化部門)の統合

油化は経営的には極めて脆弱である。これまでSMの利益と経理操作(費用をできるだけ繰延べて表面利益を拡大:定額償却、総平均法評価、年金過去勤務分の30年定額償却など)によってイクイティファイナンスを実施し低利の資金を集め、事業拡大をしてきた。現在SMが赤字になっているに加え、今後は逆に償却費など費用負担が増えるし金融収支は資金取り崩しにより悪化し、損益は急速に悪化するが、所有株式は少なく含み益はほとんどゼロで株式売却によるしのぎはできず、自転車操業的に拡大を図るしかない。

他方三菱化成は油化との関係で石化進出に遅れをとったこと、情報産業に資金を使いすぎたことで石化は中途半端であり、最近のPP増強に際してはなりふり構わぬ値下げでなんとか売ろうとしている状態である。三菱グループとしては油化と化成が競合したのでは共倒れになる恐れがあり、これを避けるため両社合併または油化と化成石化部門の統合が十分考えられる。化成はPS,ABS、塩ビという油化のもっていない(逆に油化が原科をもっている)製品で強く補完的である。

この場合の問題は塩ビにおける化成と信越化学(油化が鹿島でエチレンを供給)の競合で、化成ビニルの関東進出の二一ズからも油化と信越の関係が疎遠になると思われる。

*信越は油化と組みつつもダウからのEDC輸入や他社からのVCM購入で独立性を保っている。

 

三井石化と三井東圧の合併

これは以前から想定されていたことであり、新聞に出たことでおそらく社内人事間題で凍結となったが、状況が悪化すれば合併するしかない。

 

昭和電工と旭化成の提携

昭和電工は下流の実力がないのにエチレンで突っ走り、エチレン輸出の停止で混乱を生じているが、加えてトリプトファンによる影響で会社の存亡が問題になる事態になっている。

他方旭化成は水島が拡張の余地がなく新立地を探していたが、同じエースポリマーということもあり、昭電との提携を決定した。両社は次のエチレンを大分で共同でやること、他の誘導品もできるだけ共同でやることを決めている。旭はSMを共同でやることを希望したが、これは昭電が既に新日鉄化学(及び東ソー)と一緒に日本スチレンモノマーをやっているため断り、PPについても旭は出資による参加を要望したが、ハイモントの契約上の障害で出来なかった。しかしPPは一定数量を売買ベ一スで引き取ることになっており、逆に昭電は提携の実績作りのため日本ポリスチレンのサスペンジョン設備を止め、旭化成にPSを委託することを決めた。今後提携の形がどうなるにせよ、昭電は旭との提携のもとで存続することとなろう。

(旭との提携がうまくいかない場合は、大分でSMを中心として一緒に事業を行っており、コンパウンドから始めて将来PP、エチレンヘの進出を計画している新日鉄化学が提携相手となろう。)

 

出光石化

油化と同様、自転車操業で行けるところまで行くことになろう。

 

興銀系石化(東ソー、丸善石化)の将来

東ソーのコンビナートはエチレンはPEのほかは塩ビと協和のアルデハイド、ブロピレンは三井東圧のフェノール原料のキュメン用が中心という非常に脆弱な体制てある。東ソーは拡大路線に失敗、石化を別会社にし、立て直そうとしている模様。

他方丸善は日産丸善から引き継いだHDPE以外は誘導品を持たず、単なるエチレン供給会社であり、他社の誘導品がついてこない場合、今回の京葉エチレンは完全に足を引っ張ることになる。

東ソーの次期エチレン計画自体が合理性のないものであることから、両社の合併はほとんど意味がない。

興銀としても両社を合併して誘導品を大規模に拡大するほどの理由も資金もない以上、生き残りを図る考えられる一つの案は新日鉄による吸収である。

(興銀は八幡・富士合併の仲介役であり、新日鉄の二一ズ、興銀自体が推進した東ソーの石化事業の後始末、更には日本の石化の再編成という大儀名分という観点から、興銀がこの方向での展開を図る可能性は十分にあると思われる。)

 

・ユニオングループ

チッソは政府菅理下に独自路線を進むと思われる。

徳曹(PPのみ)は昭和60年に当社に対し「PPフィルム事業に徹するので、PP事業を買収して欲しい」との要請があったが、原料プロピレンを出光からのパイプでの供給に頼り、10万tの能力では存続は無理である。既にPPフィルム事業では大倉工業とのJV設立するなど、この分野での強化をおこなっており、近い将釆同様の要請を行うことになると思われる。

宇部・東ソーについてはいづれも住化との提携の継続を要望すると思われるが、相手の立地(当社にとって関西の基地となる)で相手のオレフィンを利用して誘導品をつくれるような提携が可能であれば検討する。

丸善については同地区でのエチレン供給メーカーであり、当社にとり利用価値はない。

 

塩ビ業界においては米国で100万t体制を完成した信越化学に加え、三菱化成ビニル、鐘化、東ソーが塩ビでの生き残りを狙い全力投球している。(別紙参照)

塩ビはほとんどがローリー輸送であり、信越は関東、化成と東ソーは関西にしか製造拠点をもたないという欠点をもっている。化成は既に当社に対し提携の打診をしてきており、東ソーはチッソ(千葉工場)との共同生産の交渉をおこなっている。これら4社を中心に再編成がおこなわれることになろう。

これに加えて旭硝子が塩素系溶剤禁止に対応し、呉羽、チッソ、電化、丸善石化(エチレン)と共同でVCMを拡大し更にPVCに進出しようとしている。しかし各社のPVCでの既存の関係を打ち切らすほどのメリットが同社のVCMにはなく、まとまらないと思われる。

第一塩ビが一体化した場合、東西に各2工場ずつ持つ理想的な配置の、日本では最大能力のメーカーとなり、うまく運営できれば強力な存在となりうる。この場合原料のVCMの供給体制の検討が必要。(千葉塩ビモノマーの専用化、徳山での40万t級設備の新設など)

 

当社の条件

1)            1)            合併候補なし

当社には三菱、三井グループのような合併候補をもたない。歴史、風士の異なる企業の合併はいろいろの問題をはらんでおり、なんらかのつながりのない限り難しく、安易な合併は考えるべきでない。

 

2)立地

千葉には既検討分(7CR,PS2期、EP−3など)以外は拡大余地がない。

用地としては袖U・新エチレン用地があるが、将来のエチレンS&Bを考えると、これを誘導品に使用するかどうか問題。また仮にここで誘尋品を拡大するとした場合、関東の1カ所に集中することの問題、原料受人れ・製品払出しでのネックがある。

西地区での立地なし。

愛媛その他でのエチレンからの単独ワンセット進出は考えられない。

 

3)            3)            シンガポール計画の位置付け

シンガポ一ル計画は今後飛躍的に市場が拡大する東南アジア、中国を対象とするものであり、日本への輸出基地としてのものではない。

将来日本の石化製品の輸入関税は引き下げられ障害とはならないと思われるが、高度化、スペシャルティ化する需要に対しては需要の近くで、研究と密接なコンタクトのもとで生産するのが必須であり、一部の汎用品をのぞき、海外からの供給は考えられない。

高度化した需要をもつ日本において研究と一体化して製造販売を行い、その成果をもとに他の地域(アジアではシンガポールで日本のコピーを、欧米でPP)で現地の需要に合わせファインチューニングをした上で供給するという形がよい。

 

当社の方針案

 

共販対策(ポリオレフィン、塩ビ)

・可及的速やかに解散する。

今後公取の圧力は更に高まり、実質的な統一(販売権、製造指示権、人事権の保有)か解散かの二者択一を要求されると思われる。

共販は価格維持には役に立たない。むしろ共販とは無関係に共販内でも相互に闘いながら独自の方針で動いているところ(典型的なのは塩ビにおける信越、三菱化成ビニルなど)がどんどんシェアを伸ばし、まじめに共販重視でやっているところ(ユニオンポリマー、第一塩ビ販売)はシェアを失いつつある。

        逆に言えば、弱い立場のものが集まった共販だから、共販としてはうまくいっているのだと言える。共販重視路線を続ければ更に地位の低下を招く。

        共販対象品については当然のことながら共犯出向者が需要家に対する直接の窓口となり、共販出向者は実質的には当社そのものといっても需要家にとっては当社との関係が疎遠になるような印象を与えているのではないか。また本社担当者と共販出向者との二本立て体制となり、方針が混乱する可能性もある。

 

・高機能化、スペシャルティ化の競争が更に進むポリオレフィンでの一体化は意味なく、ユニオンポリマーは解散した上で、当面共同生産(千葉、宇部ポリプロ・千葉ポリエチレンなど)を通じての提携を続ける。

・第一塩ビについては共同研究、共同生産の実績、東西各2拠点をもつという利点を利用し、一気にNo.1メーカーになることを目指し、製販一体化を図る。(別紙)

 

・当面、千葉の体制の整備強化を図る。

*ガス法LL技術の高度化、将来千葉ポリエチレンの当社100%化。既存工場再編成。

*宇部ポリプロとの引取枠交換による千葉ポリプロの100%化と7CR起業によりガス法でのインジェクション、フィルムの二本立て化。既存PPブラントの再整備。住化カラー千葉工場との一体化によるコンパウンド合理化。

   *PS2期計画による15万トン体制。日本ポリスチレンは解散。

*PTCを充実させ、技術的優位を確立する。

 

  ・合わせてシンガポール2期、米国PP計画、欧米PPコンパウンド計画を進める。

・将来的には業界再編成の推移を見ながら、提携先の選別を行い、そのエチレンに参加 capacity right)する形で誘導品の生産を行い、関西の拠点とする。

     候補としては東ソー四日市、宇部興産宇部など。

脱落するところ(例えば徳曹PP)については吸収を考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第一塩ビグループ ー体化構想                   

1993/1

塩ビ業界の状況

当社、日本ゼオン、呉羽化学、サンアロー化学(徳山曹達100%子会社)の4社は10年前に第一塩ビ販売を設立して以降、共同研究を続け、それをもとに第一塩ビ製造を設立、最新鋭の8万トン設備を完成させた。

各社の状況は別紙のとおり。

しかし全体としても個別企業としても弱く、シェアは順次低下しており、このままではジリ貧となる。(下記の各社と対比すると、弱い企業同志だから共販がうまくいくという典型である。)

 

現状では自社の方針のもとに塩ビ業界での生き残りを図っている4社が主導権を争っており、その中では米国で100万トン体制を完成させた信越化学が産構法終了直後の品不足時に休止設備を稼働させ一挙にシェアを拡大させ、1社で第一塩ビ4社合計のシェアに迫ろうとしている。

 

1)       1)       信越化学(中央塩ビ:三菱化成ビニル、旭硝子)

能力:鹿島389千トン、関西には立地なく他社に委託

      大型重合缶での効率的生産

      トッブダウンによるアグレッシブな販売方針(共販軽視)

・米国では100万トン体制を完成。原料EDCはダウから購入。

・鹿島塩ビモノマーに参加しエチレンは三菱油化から購入、EDCは自製のほか米国での提携先のダウその他から購入、更に国内外からVCMを購入。原科の有利購買を図っている。

 

2)  2)  鐘淵化学(日本塩ビ:電化、三井東圧、東亜合成)

・能力:鹿島90千トン、高砂175千トン、大阪25千トン(合計290千トン)4社の中では東西に拠点をもつ唯一のメーカー

・生産体制近代化のためのrenewal計画を実施、大型高効率設備にS&B。

・高砂のVCMは増強により430千トン体制に。電解も拡大、合理化。

鹿島では鹿島塩ビモノマーに参加。自社VCMも計画(土地確保ずみ)

・塩ビ強化剤MBSを高砂と欧米で生産。

 

3)  3)  東ソー(共同塩ビ:チッソ、徳山積水、セントラル)

・能力:四日市250千トン、南陽20千トン、合計270千トン

・関東拠点を求め、同一共販のチッソ千葉の増強に乗るべく交渉中

・日本最大の電解メーカー(南陽、四日市、酒田合計550千トン、シェア14%)    日本最大のVCMメーカー(南陽、四日市合計500千トン)

・エチレン消費量は1990年で218千トン、第2エチレン計画ではこれを更に増強しエチレン消費で292千トンにしようとしており、エチレン計画の柱。

 

4)  4)  三菱化成ビニル(中央塩ビ)[三菱化成100%]

・能力:四日市115千トン、水島135千トン、合計250千トン

・名古屋、筑波に塩ビフィルム工場を、名古屋、川崎に塩ビ可塑剤工場をもつ。

塩ビ需要家の三菱樹脂の株を51.6%保有

・塩ビは水島エチレンの消費の1/4を占め、可塑剤を加えると塩ビは化成にとり大きな柱であり、今後も注力する考え。

・関東に拠点のないのが問題。自社フィルムエ場が筑波にあるほか、三菱樹脂が郡山に塩ビ管工場(1000t/m)建設を決定したため、関東進出を模索中。場合によってはいわき市の日本化成内での新設も。

 

第一塩ビ 一体化構想 

・構想

4社の塩ビ・ポリマー事業(当社、ゼオンのぺ一ストを含む、下流をどこまで含めるかは未定)を一体化し、トップシェアの企業(シェア25%目標)とし、収益事業とする。

・各社の塩ビ事業、ポリマー工場、研究を現物出資し、製造販売会社を設立する。

・モノマー(当社:千葉塩ビモノマー、ゼオン:山陽モノマー、サンアロー:自社)は各社に帰属、新会社に供給する。

・将来新会社で国際競争力あるVCM工場の新設も検討する。

*徳曹構想:徳山のサンアローVCMをスクラッブし、40万トン設備を新設。電解は徳曹の安い電力を使用し増設

・ポリマーの操業は各社に委託

・伊藤忠の取り込み(シーアイ化成、タキロンで月間 8.5一11千トンを消費、現在呉羽、ゼオンが主に供給)

 

・ねらい

・トップシェアメーカー(能力ではぺ一ストを含め50万トンを超え、一位)として需要家の信頼を得て、更に拡大へ。

・東西に各2工場をもつという理想的な体制をもとに、合理的生産、合理的輸送を行いコストダウンを図る。

・販売、研究、管理面の続一による合理化

・不足VCMの有利購買、将来は国際競争力あるVCMの自製も。

・各社の態度

ゼオン:一本化推進。要請あれば経宮責任を引き受ける。

呉羽:単独での生き残りは無理で第一塩ビグループからの分離は考えられないとしつつも、大きな柱の塩ビ事業切り離しに踏み切れない状況。呉羽のみVCMソースをもたない弱みをまず解消したいとしている。

徳曹:塩ビは既に分離しており一体化には賛成。自社塩素事業の強化を狙っており、一体化による大型VCM起業化に関心。

当社:当社にメリットあれば乗るという姿勢。

 

・問題点

      性格の異なる4社の一体化がうまくいくか。(方針、人事など)

      親会社の協力の確保(口は出さず、金と人を出すことが必要)

      各社事業の評価

      ぺ一ストの扱い(当社とゼオンのみが販売)

      JVの事業範囲(モノマー、コンパウンド、川下、子会社、海外子会社)