米国でのシアノボンド(田岡品)事業
1985年以降に販売権を返還するまでは、田岡化学のシアノボンドは住友化学の化成品事業部が販売を行っていた。
駐在員事務所から独立会社のSCAIとなり、農薬以外の住化のいろいろな製品をSCAIで販売しようということになったが、シアノボンドもその一つである。
Pacerは前任の中本氏が選んだもの。
中本氏は当初、カナダの会社をDistributorとして起用したが、同社は倒産した。
その後、飛行機の中で知り合ったのが、当時のPacerの経営者の Stockと Nightingale (2001年時の社長の父親)であった。(同社の株主は医者を中心とする投資家グループ)
当時の商売は複雑な経路であった。
田岡―住化―住商(大阪)―SCAI―住商アメリカ(サンフランシスコ)―Pacer
Pacerはカリフォルニア州のSan Jose 近くの Campbellに工場をもち(現在はロスに移転)、田岡品を多くのメキシコ人従業員*を使って小分け包装して販売したが、Pacerの容器(特許あり)の良さもあり、同社への供給量は順調に増加していった。
*朝礼で社長が指示する時に女性がスペイン語で通訳していた。
筆者は1980年春に赴任した。
同社訪問の際に上記の長いルートが問題となり、PacerからはSCAIを切りたいとの提案があった。当方からは住化(田岡)とPacerではCultureが異なるとし、「Cultureの通訳」としてSCAIが不可欠であると説明し、了承を得た。
同年5月に岡野化成品事業部長が同社を訪問し、意気投合してStockとNightingaleを日本に招待した。同年夏に2人は日本を訪問したが、その際、事業部長はシアノボンドの米国での現地生産を約束した。日本からは年間60tは購入を継続するという条件で、米国での需要が120tになれば100t規模の生産を行うというもの。
同年12月、Nightingaleと Stockが引退し、Dave Longが社長に就任した。Longは元GEの原子力発電所関係の事業部長で日立にも滞在したとのこと。
Longは将来の工場立地として Las Vegas 郊外のHenderson
を推薦、12月に現地見学した。 Hendersonは砂漠の真中にある工業団地で、住化が技術輸出したStaufferの塩ビ工場もあった。
(当時の長谷川社長が本件を耳にし、「Las Vegasなどやめたまえ」と述べた。)
1981年、家庭用のシアノボンドの需要家のBordenが接着剤事業に進出したいとして住化とのJVを希望、同年12月に岡野事業部長がBordenを訪問した。
Bordenの考え方は、工業用分野での接着剤で、日本から進出した自動車会社がロボットを使って自動組み立てしているのを知り、これからは接着剤が重要になるとし、シアノボンド以外に、住化がもつウレタンやエポキシ等を含め総合的な接着剤事業をやりたいというもの。
1年ほど交渉したが、結局先方が事業化をやらないことにした。
筆者はこれこそ日本で住化としてやるべきでないかと考え、いろんな人を説得た。多くの人が賛成し、大阪製造所内にプロジェクトチームをつくるというところまで行ったが、誰かトップの意向でつぶれた。その後シアノボンド=田岡事業として住化から切り離した。
1982年夏、Pacerの販売が伸び悩み、資金繰りが悪化した。8月に住化・田岡チームが訪問し、 以下の対策をたてた。
(日本では当初は企画の中村日出彦氏、後には米倉氏がMPCC処理と同時に本件を担当。)
・ Pacer 増資 100万$
・ 支払い繰り延べ
・ 使用高払いによる資金援助 兼 債権保全
住商アメリカが倉庫を借り在庫保有、使用高払いとする。
住商アメリカ口銭3%+経費分1.8%、住商口銭3%を田岡負担
・ 値下げ、リベート 約20万$
・ 田岡チーム派遣し合理化提案を行う。
実際には増資が難航したり、住商アメリカが債権残を払わないと納入しないと通告するというトラブルがあった。これはNew
Yorkの審査担当が厳しく、せめて一部でも支払いがないとやりにくいので伝えたとのことで、入金分から一部支払って切り抜けた。
本問題で住商大阪(トップは橋本氏〔後、副社長、逝去〕)は住商アメリカはリスクのある本件から降りるべきだと主張、住化も住商が降りるなら降りるとした。住化アメリカでは住商アメリカに、降りるなら降りろ、SCAI単独でやるとした。
なお、この時点で住化では@Pacerを買い取る案、AHenkel
/ Pacer JV案が考えられた。これに対しては別紙のとおり反対意見を連絡している。
12月に田岡・芝常務ほかチームが訪問、合理化案を提案した。この機会にPacerの販売担当
Milo
によるsales のdemonstration
をしてもらった。これをやってもらった趣旨は三井部長への私信にあるように、田岡のやり方がCommodityの売り方であり、PacerのSpecialtyの売り方を勉強させることにあった。田岡とのやり取りを通じて、田岡のやり方がいかにもまずいと考えたためである。
なお文末にあるように、田岡のやり方は現在も変わらないとのこと。
1983年に入っても売上は回復せず、上記の支援で損益トントンを期待したが、値下がり、経費増で大幅赤字となった。増資資金も大半を費消してしまった。
しかし、日本であれば当然に資金繰りがつかず倒産という状態であったが、なんとか切り抜けた。
日本では手形制度のため2度不渡りを出すと倒産する。しかし米国では通常30日後現金支払いである。実際は小切手を郵送するが、到着が1週間程度遅れるのは普通であり、また他行小切手の場合は換金に更に日数がかかる。このため支払側が実際に預金口座から落ちるのはかなり先になる。また小切手が到着しなくても自動的に不渡りになるのではない。債権者が法的手続を取って初めて倒産となる。このため、取立てがうるさくないところは支払いを遅らせ、厳しいところから先に返済していけば、切り抜けられることとなる。同社はこのやり方で危機を切り抜けた。
1984年2月、住化―田岡チームが渡米、SCAIと事前に価格改定案を打ち合わせた。
3月1日交渉のため Pacerを訪問した。席には大株主の
Dr. Hockin(P社会長)、Mr. Brock(P社非常勤取締役)その他が参加した。席上
Long社長が挨拶し、同日付で辞任刷る旨伝え、退席した。
説明によると、大株主の Dr. Hockinと Mr. Brockが中心となり、友人であるMr. McGuffinに分析を依頼、その結果 Mr. McGuffinの知人の Mr. WoodsをCOOとして起用することとし、 Mr. Woodsは部下の Mr. MacDonnellをVP-Salesとして起用することとした。この結果 Mr. Longは自主的に辞任、部下の Mr. Milo、Mr. Duksys等も首になった。Tom Nightingaleは新首脳に評判よく、残留した。
席上、当方から以下のとおり presentationをした。
住友/Pacerの関係は1977年末に遡る。その後共同で new grades、new productsを開発してきた。TLCはその一つ。
1980年に草山氏を派遣、昨年生野氏に交替したが、Quality check担当とともに共同開発の窓口になってきた。
1982年の資金危機では Mr. Longの要請に応じ、以下の協力を行った。
1) 値下げとリベート
2) Consignmentによる資金援助
3) チーム派遣による合理化支援
これにより黒字転換、財政健全化を期待したが、1983年は期待に反し大幅赤字となった。
Mr. Longからは更に援助要請があり、Partnerとしてその用意はあるが、経営が代わったのを機に、まず今後の方針を聞きたい。
これに対し、新首脳陣の発言要旨は以下のとおり。
Mr. Woods起用は Mr. Longの責任範囲が広すぎ、うまく機能しなかったためで、Mr. LongにはSalesと New business planに専念してもらおうと考えた。
経営分析の結果、overheadをカット、従業員も減らし効率を上げる。
"Pacer means CA" というnew sloganを採用、cyanoに注力する。
採算のよいindustrial fields中心に販売拡大を図る。品種を整理。
Consumer fieldは採算割れのため値上げを図る。
数ヶ月で黒字化の自信あり。
このあと議論に入り、当方から以下伝えた。
価格:昨年の価格援助は一年限りの約束だったが、とりあえず1年延長する。
(事前に検討した値下げ案は出さず)
Local production:
1980年の協議でJVでの100t/yのlocal productionを計画した。但し生産開始後も60t/yは田岡品を購入する条件なので需要が120t/y程度になればと考えた。
現状は 60t/yだし、その後のコストアップ、価格ダウンでFSもやり直す必要がある。
Mr. WoodsはHarvard
出身と自称、非常にやり手との感じで、その後ドンドン手を打っていった。しかしその後(筆者帰国後)、学歴詐称その他が分かり、首になったと聞いた。
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その後、住化は販売権を田岡に返還し、田岡自体の事業となった。
Pacerの販売はその後順調に伸び、田岡のシアノボンド事業の大きな柱となっている。工場はロス近郊に移転した。
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2000年10月、 新第一塩ビに田岡化学の浜氏より電話があった。Pacerとの取引で住商を切ることとしたが、住商より「昔のことを忘れたのか」とのクレームがあった由で、田岡には当時のことを知る人がおらず、伊達社長が筆者のことを思い出し、連絡をとるよう指示があったとのこと。
当方で添付の報告を行った。「当時は住化アメリカが中心となって案をまとめ、田岡の負担で処理したものであり、住商の負担は少ない。いずれにせよ、20年も前の話で、現時点での住商の必要性をみて考えられたらよい」というもの。
別途、伊達社長に参考として、当時の三井部長宛私信コピー(田岡のやり方への懸念)とPacerのmarketingのまとめを送付した。
その後の会食の席で、伊達社長から、当時の懸念は今もそのまま当てはまるとのコメントがあった。
Pacer が倒産の危機にあり、net worthが1株47セントしかないという理由で、株主からPacer株式を安く買おうというのは、まず実現しないと思われる。
既Reportに記載のとおり、Venture businessの株主は元々 net worth valueで株を買っているのではない。
Silicon Valleyにある多くの会社がそうであるように、特別な技術をもとに、garageで始めた事業が成功して数年で大企業になり投資が何十倍、何百倍になって戻ってくるのを期待しているのであり、投資がゼロになるリスクは覚悟の上の一種のgambleである。
初期の投資の時点で赤字になるのは当然であり、net worthが減ったから見限るということはない。
Pacer自体、1982/4の株主総会におけるMr. Longのspeechにあるように、一時的に赤字になったものの、方向としては前向きに進んでおり、住友との製造JVの話も続いている。(speechでは1983稼動目標で協議中としている)
このような状況の中で、住化がコンタクトした場合、成長性があるので住化が買いたがっていると受け取られるのが普通で、かなりの高値を要求されよう。通常のTOBの場合、時価よりかなり高い価格となる。
Pacerが駄目ということなら、住化が株を買う筈がないというのが普通の考え方。
Pacerの株主の約30%は、これまでこのような venture businessに投資をして儲けてきたグループで、その中心には自分自身 250千株を持つMr. Vanceという専門家がついている。
彼らにとって住化がPacerを見限らない限り、ついていって損はなく、わざわざ損をしてまで(かりに1$で売っても金利分だけ損になる)株を売ることはないと思われる。
かりにPacerにとって不利な情報を流し安く株を買った場合、株価操作等により訴えられる可能性がある。米国では訴訟は一般的で、企業対個人、特に日本企業対個人(米国人)の場合、企業にとり著しく不利である。
(今回のRescission問題ではMr. VanceのAmerican Western Securityが元凶であるのに、逆にMr. VanceがPacerを訴え、勝訴している)
以上により、Pacer株を安く買おうというのは、まず無理と思われる。
2. HenkelとのJV
Henkelを含めたJVは次の理由から成功の可能性が非常に少なく、やるべきでないと思われる。
(1)両社の関係と業界の実態
HenkelはConsumer用途ではPacerの需要家であり、Industrial用途では田岡/PacerのCompetitorである。
Consumer用途では製品そのものについては各メーカーでそれ程差はない。一般消費者は品質についてあまりうるさくなく、各社の製品を比較して決めるということもない。
決定的なのはSales Promotionであり、TVの宣伝及びどれだけ多くのスーパー、小売店に製品を置けるか等のMarketerの力、方針であり、どこが作るかではない。
従ってConsumer fieldではPacer自身にはmarketerとしてやっていく力はなく、ほとんどmarketerの下請けに徹している。また、このような市場の状況からPacerがBorden, Henkelというcompetitor同士にそれぞれ販売しても何ら問題はない。
以上により、かりにHenkelがConsumer用途のみのmarketerに止まるのであれば Pacer/Henkelを含めたJVはありうるし、また、Borden等にもあまり悪影響は与えない。
しかし、Industrial fieldでは全く異なっている。
PacerとHenkel(Hugson)とはこの分野では全くのcompetitorである。かつ、Henkelは西独本社では主にIndustrial用にシアノを製造しており、ヨーロッパにおける田岡/住友の最大のcompetitorである。
接着剤のようなspecialty chemicalの場合、marketingの面でcommodityとは全く異なる。
Commodityの場合、製品は一般的にスペックが決まっており、需要家もこれを十分認識している。このため、これらの場合、marketingということは必要でなく、安定的に製造し、供給することが重要である。
この場合、どこがつくってもモノは同じということから、過当競争を避ける為、及び大量生産によるコストダウンを図る為、共同生産という考えが十分成立する。
Specialtyの場合は全く異なる。Commodityがモノを売るのに対し、specialtyの場合は機能を売る。Pacerの場合もシアノというモノではなく "接着"機能を売っている。*
従い、何と何を接着させるにはどんな条件が必要かを考え、それに最も合った製品を供給する。また接着機能を売るのであるから、他のいろいろの接着剤(ノリからSGA、アナロビック等)とも競合する。ネジ止め用としてTLCを開発しアナロビックに代替しようとしているのもこの一環である。
(* 後にPlastic Technical Center 起業でも「機能の販売」という概念を使った)このようなspecialty chemicalの場合、物理的に製品を製造するだけではあまり意味がない。需要家がどのような接着機能を要望しているかを見つけ、それに合った製品を開発し、それを製造することが必要であり、marketingとmanufacturingが一体になることが必要である。(これが広義のMarketingである)
現在、このmarketingをPacerが担当し、田岡がmanufacturingを担当しているのであるが、PacerとHenkelはmarketingで互いに競合しており、互いに競合する相手と一体になって仕事をするというのはありえない。
Henkelはadvanced technologyに欠けるため、PacerのATS Seriesに関心をもっている。これはPacerの需要発掘を通じ田岡が開発したもの。同様のことがTLCについても言える。分野は異なるがRevlonのnail glueや、Pacerが狙っているmedical useも同様である。
これらを自動的にHenkelに流す訳にはいかず、逆にこれらを全くHenkelにやらせないのではJVとしてやっていけない。
以上によりPacer/Henkelを含めたJVは現実的でない。
田岡化学株式会社
社長 伊達 梅吉 様 2000/10/18
(前略)
今回貴社の浜氏から連絡を頂き、久しぶりに昔のことを思い出しました。お送りしたメモにも書きましたが、かなり時間をかけた問題で、懐かしく思っています。
当時のことをご存じの方がおられないとのことですので、お役に立つかどうか分かりませんが、ご参考までに当時の資料を復元したものをお送りします。お読み捨てください。
SCAIとしてPacerをバックアップしようとしたのは、同社のマーケティングのやり方に感心したためです。たまたまの資金繰り悪化で、Pacer
のやり方さえも否定されてしまうのを恐れました。
同封しましたのは、田岡チーム派遣時にPacerにやってもらった
demonstrationの内容です。やってもらった理由は三井部長宛の私信に書いたとおりです。
もう一つの思い出はBordenとのJV計画です。Bordenは自動車等で自動組立が進んでいるのをみて、これから接着剤が重要になると考えました。住化に話がきたのは田岡のシアノボンドのためだけではなく、ウレタンやエポキシ等を持つ住化と総合的な接着剤事業をやりたいとしたためです。1年ほど交渉しましたが、結局先方が事業化をやらないことにしたため終わりました。小生としてはこの話に関心をもち、日本で住化としてやるべきでないかと考え、いろんな人を説得しました。多くの人が同意し、大阪製造所内にプロジェクトチームをつくるというところまで行きましたが、誰かトップの意向でつぶれました。その後中本くんの方針でシアノ=田岡事業として住化から切り離しましたが、連結経営の観点からも小生としてはいまだに残念に思っています。
昨日米倉社長と会う機会があり、昔話の中でPacerの話も出ました。当時スミチオンのMount
Pleasant Chemical から撤退する交渉を米倉部長が担当し、一緒にやっておりましたが、本件も合わせてやってもらったものです。
三井部長宛私信 1982/12/22
(略)
正直言いまして、田岡自体を含めシアノボンドそのものについての理解が(応用面について)あまりなされていない気がします。実は今回
Mr.Miloに demonstrationをやってもらったのは、非常に驚くべきことを知ったからです。
別紙の通り RX(W Series)で oily materialが接着できることは何度もreportしており、田岡・竹中氏は2回もdemonstrationを見ておられます。しかるにこの話を芝常務及び赤木氏にしたところ、二人ともシアノでそんなことが出来る筈がないと強調されました。シアノは油面では接着しないのは常識であるという訳です。実演を見てはじめて納得されましたが、いわゆる「常識」と
W Series は木工用とのきめつけでテストさえしたことがないとのことでした。
また concrete panelの話を芝常務が持ち帰ったところ
wood と PE filmがくっつく筈がないと袋叩きになったとのことです。
接着強度が弱いことは当然ですが、目的に適いさえすればよいわけです。ところが「常識」をもとに話自体を無視してしまうようなところがあるようです。
TLCの使い方を日本に紹介したところ、customerを訪問したら
Anaerobicを使っているから駄目であるとの返事がきました。Anaerobicを使っている所にこそ(そこだけ)売り込める訳ですが、下記記載のことがおそらく分かっておられなかったと思います。(現在は力を入れておられるようですが)。
またPacerのpipe sealantは田岡でテストしたところ「強度全くなく、分離しており、商品ではない」との結論が出ました。聞いてみると金属と金属を接着させ、強度を調べたとのことですが、pipe
sealantは pipeを密閉するために使うもので、一般の接着剤とは当然使い方が異なります。芝常務も
Mr.Miloから詳細聞かれ、非常に優れた商品であると初めて認識されました。
以上、表面にあらわれた事態を若干挙げましたが、日本ではシアノというモノ(commodity)を売っているという感じがします。この意味からもPacerのやり方をうまく導入すれば日本での拡販も期待できると思います。
以前からPacerでどうして売れているのかとの質問がいろんな人から出ていますが、容器特許などではなくmarketingのやり方であると考えています。
また逆にTLCの弱点の解決など、日本側から積極的に改良品をどんどん提供していくようになればPacerの立場をもっと強く出来ると思います。
Pacerの経営そのものはかなりでたらめですが(最近はどんどん改善されてきています)、学ぶべきところは多々あり、良い点はどんどん導入していくべきだと思います。(略)
Mr.Milo (Pacer)によるdemonstration
1982/12/21
12/12に芝常務ほか田岡チームと一緒にMr.Miloのdemonstrationを見ました。日本でも参考になると思いますので概要ご報告します。
Pacerの各salesman、distributorはdemonstrationの方法のtrainingを受けており,customer訪問時にはそのための7つ道具を持参しています。
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1. (brochureにより)
接着剤には Industrial Standard Series(ISS)とAdvanced
Technology Series(ATS)がある。
2. ISSにはE5〜E2500, M5〜M1500がある。
どの接着剤を使うかは次の通り決める。
まず temperatureとloading(Static or dynamic)によりシアノが使用できるかどうか考える。
Maximum temperatureは:
Static 時 Dynamic時
ISS 360゜F 180゜F
ATS 401゜F 300゜F
次に materialによりE or Mのどちらかを決める。
M=methyl Metal / Metalの場合
E=ethyl Everything Elseの場合
〔語呂合わせで覚えさせ、2−3の例でテストする。
例えば 車のボディに Molding stripをつける時は?
ボディ表面は樹脂塗料なので、Metal / Metal以外 (M/Mではない)ので E 〕
misuseの場合は (M / MでEを使用など) strengthは15〜25%落ちる。
次に、所要fixture timeと接着力とから、どんなviscosityのものを使うかを決める。
Viscosityとcure time gap fill capacityは比例する。
Product name に viscosityを使っている。
E5 = E2500
High viscosity品でかつ、早く接着させたい場合はどうするか?
→ Acceleratorを使う。
この場合、接着力を弱めないためには、まず接着剤を塗り、この後でAccelerator をつける。〔この説明の為、紙のうえにacceleratorをまず塗り、その後でシアノを塗った場合と、逆の場合とのそれぞれの表面の違いを実演で見せる。更に high viscosity品をまず金属片に塗り、短時間では接着しないことを示した上で、次にacceleratorをつけるとすぐ接着することを実演で見せる。〕
3.
〔今回は特に田岡チームのためにスピーカーの例により、どの部分にどんなシアノを使うか、
図と現物で説明〕
これだけで米国で次の需要がある。
Delco 15,000 lbs/y Pacer attack中
Jensen 12,000 attack中
JBL 8,000 交渉中
CTS 6,000 交渉中
合計 41,000 =18.6t/y
4. 次にAdvanced Technology Series (ATS)につき説明。
これは他社の製品ではまねの出来ないことが出来る。
1) RX(W Series)は Non-surface sensitiveで次のようなmaterialでも接着できる。
@ Oil material---- cleaning不要
A Silicon grease------mold release agent 不要
B Wood(porous、 acidity)」
〔ここで金属片両片にoilを吹き付けたもの、greaseを塗り付けたものを用意、
他社のcyanoacrylateでは全く接着しないが、RXでは10秒で完全に接着。
また2枚のベニヤで同様のテストを行った。〕
Industrial use では oily material、 greaseを塗ったmaterialの接着がよくあり、これをcleanにしてから使えというのは実用的でない。W-series PatentによりPacerだけがこれをうたえるというのは非常に大きな強み。
ISSでもE5、E40だけはこれと同様の使い方ができる。
2)〔brochureでMR(Moisture Resistant)、HI(High Impact)、
HT(High Temperature)、HC(High Clarity)を説明。〕
3) 新製品 HL(High Loading)
これは HI(500NX) 60%と TLC77 40% のmixture。
〔*田岡・草山氏によると Mr.Miloはいつも一人で混ぜ合わせてテストしている。〕
4)新製品 PCB (Printed circuit Bonding) Kit
〔これは cyano、accelerator, debonderのセットで、サンプルで使い方説明。
Brochureにより Loctiteの TAK PAK と比較し、優秀さを説明。〕
5)新製品(未上市)の "Perfect Poly"
一般にPE,PPはcyano では接着できない。このPerfect Poly は次の手順で接着させる。
(実際にPE片でテスト)
@ sandpaper で表面をこする。
A TX(or HI) とあるAnchor Fluid (マル秘)を1:1で混ぜる。
B これをPE片両面に塗り、3〜6hours そのままにしておく。
C 更にTXを塗り、接着させる。
なおBで乾いてすぐにCに進めば、接着はするが peal strength が弱い。
これにより次の結果が得られる。
tensile 900 psi
TSS 600psi
peel 60 − 90 lbs
このシステムは使用分野が非常に大きく、有望。6)ATS特徴まとめ
一般に、また、他社cyano は、利用面でいろいろ制約がある。
まず material 面では次のものに向かない。
@ PE, PP, Teflon、Asilicon rubber、Bporous、Cacidic、Doily
また、environmental use 面では
@ water immersion、Apeel、Bimpact、Chigh temperatureに向かない。
PacerのATSは water immersion を除き、全てこれを克服。
water immersionもある程度までは MR150が使える。
material
@PE、PP、Teflon Perfect Poly
Asilicon rubber RX,TX
Bporous RX
Cacidic RX
Doily RX
environmental use
@water immersion (MR150)
Apeel HI (他には SGA)
Bimpact HI
Chigh temperature TX
5. 次に Debonderを説明
これは water base でニオイもなく、簡単に cyano を debond する。
〔指に cyano を付け、Debonder でこれを外して見せる〕
一般のアセトン系のものは、例えば nail glue の debond に使うと、爪を傷付けるが、これは大丈夫。
更にこれは magic-pen での汚れ、壁の汚れ、衣服についたインキなど、元を傷めずに取ることができる。dry cleaning でこれを使える。
〔机にmagic-pen で落書きし、これを消して見せる〕
模型飛行機等で、cyano がこびりついた場合、sand-paper でこすると、cyano は取れずに下の木地が削れてしまう。〔実演〕
sand-paper に Debonderをつけてこすると、きれいに取れる。〔実演〕
このように、Debonderにはいろいろの使い方がある。これはある社のpatent でPacerはexclusive rightを持つ。
6.TLC
TLCは3つの違った使用方法が可能。
@ bolt/nut を締めた後で、すき間に流し込む。
A 締める段階でbolt に塗る
B boltに予め塗っておく。
〔実演し、それぞれstrength を測ってみせる〕
〔brochure でLoctiteのAnaeronbicとの比較を説明〕
圧倒的強さを持つLoctiteのLoctite Anaerobic の品番とTLCの品番を対応させてあり、選択に便利。Loctite222 → TLC22, Loctite 242→TLC 42
Loctite Anaerobic との対比
TLC Anaerobic
CA(OH-) metal reactive (H+)
Cure time 5-15 min 16-24 hours
Strength ----- equal -----
price 15% less
need for primer none SS, Zinc, Gold 等必要
compatibility
with plastics yes no (浸食)
以上の通り、cure time が非常に短いこと、plasticsでもOKなこと、価格が安いことで、Anaerobicと比べ非常に有利。
但し、TLCには2つのlimitation がある。
@ temperature 190゜Fまで (Anaerobic 300゜F)
A not water-proof (Anaerobic water-proof)
従い、高温のところ、水のあるところでは使えない。
米国では SuzukiがTLC採用を決定、代理店等に置く。この場合、エンジン近く等、高温部分を避けるよう、notice しておく必要がある。
以上ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
別途 Long社長から以下を聴取
新分野開発のノウハウ
1. Salesmanに自社の製品について徹底的に理解させる。(Pacerではdistributorを含め、trainingしている。)
2. Salesmanがcustomer訪問をする場合、Purchasing ではなく、工場の技術者か、経営者のいずれかと話をさせる。Purchasingは指示された製品の購入だけを担当しており、話をしても得るところはない。技術者か経営者に会えば、どんな needsを持っているかが分かる。
customerのneedsと自社製品の知識を組み合わせればnew idea が出る。
具体例
1) 中国向けスタンプ
これのpatentを持ち製造しているPolypore とは、これまで同社品の購入という形で付き合いがあった。同社ではインク含浸ゴムの接着にrubber cementを使っているが、set time が30分かかるということ、また、インキがrubber cementを劣化させ、耐久性が短いという欠陥があることを知った。
このため W-700をテストしたところ、set time がcyanoが全面に広がるに丁度よい40秒で、また耐久性もよいことが分かった。
2) Concrete panel用
PortlandのGlobal Manufacturingでは、concrete panel 用にplywood にpoly-filmを貼っている。これによりconcrete表面仕上げが不要で、30回以上使える。
現在同社はwater-base adhesiveを使っているが、この場合接着完了まで押さえておく工程が必要。
同社社長はPacer大株主と友人で、何かideaはないかと持ち込まれた。
cyanoを使うには高すぎるし、接着力も問題であるが、water-base adhesiveを使った上で、側面にcyano (W-1500)を塗り、water-base adhesiveが接着するまでの仮止めとして使うことを考えついた。これにより押さえておく工程がなくなり、cost-upを十分吸収できる。