米国における家庭用・防疫用殺虫剤の開発・普及体制                     


 1981/12/21

(本社からMGKを切って自社体制をつくるべきだとの提案があった。これに対し、以下の説明を行い、反対した。)

1. 結論
  MGKとの提携を深め、実質的にMGKを住化のsales armとする。

2.USAでのmarketingの特殊性
 (1) Distributor

米国での家庭用・防疫用殺虫剤のmarketingにおけるdistributorの役割は他国におけるそれと根本的に異なっている。
Distributorは単に登録ラベル付きでmixtureを売るだけではなく、最終メーカーの開発部門の機能を引き受けている。S.C.Johnsonを唯一の例外として、他の全ての会社はこの機能をdistributorに委託し、生産・販売だけに徹している。
かかるサービス付きでmixtureを販売する為、一般的に価格は他の地域のそれより、はるかに高くなっており、メーカーもこれを許容している。

 (2)Distributorの機能

最終メーカーの開発部門の機能を受託し、次の機能を果たしている。

・ メーカーのdemandに合わせた新製品の開発  

Distributorの各地域のsalesmanはメーカーとの永年のつき合いからメーカーに入り込んでおり、需要動向の変化、新規需要、特定メーカーの特別の要望等を常に把握し、このdemandにあわせた新製品を次々に開発する。

・ Toxicity, Efficacy dataの取得及び登録の取得

EPA及びlocal authorityの法律、regulation、新動向を的確に把握し、必要なデータを早く、かつ最低のコストで取得し、迅速に登録を取得する。
MGKの Multicide、D-trans処方の一覧表は既送の通りだが、S.C.Johnson等と比較し、優秀さは明らか。

・ メーカーの sub-registration(John Doe label)取得の協力

〔注〕
米国では法律上の書類等で本名を出せない場合や本名が不明の場合、仮名でJohn Doeを使う。(女性の場合は Jane Doe、赤ん坊の場合 Baby Doeなど使う)
殺虫剤の登録の場合、Formulatorが処方を登録した場合、全く同じ処方であればメーカーがこの処方を自社ブランドで販売できる。これを John Doe labelという。

・ Mixtureの製剤、供給  

・ 製品化技術の供与

夫々の処方を製品化する為の技術を合わせて供与する。
即ち、夫々の処方に適した can, nozzle, solvent, emulsifier, 錆止め剤、gas等をrecommendし、また、夫々の市場変化(cost-up、需給逼迫等)、使用規制等に迅速に対応して代替品をrecommendする。
更に、mixing 方法、保管方法、廃棄物処理等の製剤技術面の指導、分析方法の指導等を行う。

・アフターサービス

メーカーの販売に関するクレーム処理、需要家からの質問等に対応。

・ その他

一般のsalesに共通のことだが、製品の宣伝(業界紙,CSMA,NPCA等)、代金回収(多数の需要家に担保なしで販売するため、回収リスクを常時チェックする必要がある)が必要。また、常にproduct liabilityのriskを考慮する必要がある。

3.MGKの評価
 (1) 引き取り実績
    1978/6月に最初の登録を取得したが、その後の引き取り実績は次の通り。(kg)
        NPY  SUM  PYN−F   合計
  〜1978/9   2,415   1,420    ―      3,835
  〜1979/9  12,000  23,140    ―     35,140
  〜1980/9  17,000  25,000    ―     42,000
  〜1981/9  15,000  11,000    1,000   27,000


原契約でのminimumは3剤合計 15トン/年、1980/12月改正で 25トン/年だが、これを満足している。 
現在の各メーカーのsub-registrationからみて、今後の伸長が期待される。 


 (2)MGKの地位

以前はMGKはPenickと肩を並べていたが、当社品を扱いだして以来(その後の天然ピレスロイド不足によるコストアップ等も一部影響するが)一段と力をつけ、今ではPenick, Fairfield, Prentissをはるかに抜いた最大のdistributorになっている。

 (3)コメント

当社としてはこれだけ力があり、当社品の販売を伸ばしてきたMGKの力を今後とも利用せぬ手はない。

逆にMGKを切った場合、現在の機能を代替するには長い時間と多額の費用が必要であり、おそらくコストもMGKのmarginより高くなると思われる。また、この場合、MGKを敵に回すことになるが、仮にMGKが、親会社がやる気をなくしているPenickと組んだ場合,BAL/104の組み合わせは非常に強敵で、更に特許切れ後のNPYを入れると当社としては現状の売り上げ維持も難しいと思われる。

4.現体制の問題点

現在の体制は非常に中途半端なものとなっている。即ちMGKにとってSCAIは原体供給者であると同時に潜在的なcompetitorである。実際にこれまでSCAI自体この種の発言をMGKに対して行ってきた。この為、MGKとしてはknow-howやmarket情報、需要家の声をSCAIに流さず、独自で戦略をたて、開発、販売を行ってきた。
SCAIとしてもMGKにはNPY,PYN−F,SUMの原契約3原体を渡すだけで、新製品についてはMGKの要望(1980年秋訪日時)を実質的に断っている。
これまでの拡販はMGKの独自の努力によるものであり、両社の協力はほとんどないと言ってよい。(勿論原体については住化のdataに頼っている。)
今後更に販売を伸ばし、また、近い将来にくるNPY特許切れによる他社進出に備える為には、住化とMGKが協力していくことが必要である。

5.MGKとの業務提携案

上記を勘案し,MGKを取り込んで実質的に住化のsales armとするのが最もよいと思われる。勿論理想的なのはMGKの買収であるが、これには多額の資金が必要で現在の当社の財政状況からみて実際的でない。このためMGKとの業務提携を深めていくことを考えたい。
この為にはMGKが持つ「住化/SCAIは潜在的なcompetitorである」という不安(know-how, 情報を吸収して自分でやるのではないかという不安)を先ず消してやる必要がある。勿論S.C.Johnsonは将来もSCAI独自でやるし、今後どんな新分野でどこと組んでやるか分からない為(例えば現実にSMTはSTFが独自の方針で他社にも供給)、今後無条件でMGK独占という訳にはいかないことは当然で、また、それをMGKに理解させる必要はあるが、少なくともMGKを切ることはないという紳士協定は必要である。
これは当社にとって有利であるだけでなく、MGKにとっても有利である。即ち、最大のピレスロイドメーカーで最多種の製品を持つ住化との結びつきを深め、今後ともほぼ独占的にそれを販売出来るとともに、今後の新製品も期待でき、また、住化の全世界での知見も利用できる。両社は共存共栄の出来る相手である。

協力の態様としては次のものが考えられる。

・新製品開発
 米国の市場は需要動向、法規制、慣習その他により他国と多少異なる。従って他国での知見がそのまま当てはまらないことが多い。
この為、米国での知見があり、常時需要動向が把握できるMGKで新製品を評価させ、開発の方向を共同で決めるのが望ましい。これまでと異なり当社もこれの検討に加わり、日本及び他国での知見を十分折り込んでいく。

・登録取得
 登録取得についても米国でのdataの収集、申請等の技術に関してはMGKは非常に優れており、これを活用せぬ手はない。勿論原体については従来通り住化(SCAI)で押さえるが、製剤に関してはMGKをドンドン利用していく。また成果については住化が利用できるようなアレンジが考えられる。 

・製剤技術等での技術交流
 場合により技術者の派遣も考える。

・marketingでの協力
 原体メーカーとしての地位および世界各国での知見を基にMGKのmarketingに参加し協力する。またこれを通じ新製品の開発、旧製品の改良が考えられる。

・米国での生産拠点
 Minneapolis工場のほか、今後South Carolinaに工場を持とうとしており、今後新製品や原料の委託加工等が考えられる。

・株式の一部保有
 提携の象徴として株式を一部保有することも考えられる。

6.その他
  MGKに関し若干本社と意見を異にする点があると思われ、SCAIの意見を述べたい。

・Commission
 上記のdistributorの機能を考えれば現在のcommission(NPY 25%,PYN−F,SUM 各20%)は決して高いとは思われない。(BALは推定 20%)
新しくこの機能を揃えれば恐らくこれよりかなり高くなる。また、これら機能を勘案し、メーカー向け価格は欧州、その他より高くなっており(BALも同様)、手取りベースでみればMGK向けcommissionで損をしていることにはならない。

・他社品の取り扱い
 SCAIとしては今後提携を深めた場合、当社品の比率を高めることは当然であるが他社品をやめさせることには反対である。米国では日本のように統一処方一本やりで進めることは不可能であり、個々の注文に応え、何でも供給できるというのがdistributorの強みとなる。またCaliforniaのごとく、ある製品の登録がなかなか取れない場合には他の製品で補う必要がある。
 S.C.Johnsonの場合には、いつ、ある製品が使用できなくなるか分からないので必ず代替処方を用意するという例もある。(例えばカナダのSUMは実際に本年度に売れなくなった。)
 全体として当社品の売上げを増やすというのが最大の目的であり、この為には当社品しか扱わさないというのは、むしろ害になると思われる。
 またMGKがBALを切れば Uclafは当然 Penickに独占権を与え、Penickを強くすることになる。

                                                      以上 


その後の動き
 1989年に住商と共同でMGK株式20%を購入し、社員を派遣
 その後、買い増し、1999年に住化持ち株比率32.9%(住商込みで38.9%)とした。 
 

  2012年12月18日 米国の殺虫剤事業会社の連結子会社化について