2006-5-1

日経 2015/2/24

旭化成、米電池素材会社 2600億円で買収 

  リチウムイオン用、EVにも供給  世界シェア5割確保

旭化成は23日、」リチウムイオン電池の主要素材であるセパレーター(絶縁材)を製造する米ポリポアを22億ドルで買収すると発表した。
セパレーター世界首位の旭化成は現状で35%のシェアを約50%に引き上げ、2位の東レを引き離す。供給先も従来のスマートフオン(スマホ)向けなどに加え、今後の市場拡大を見
込む電気自動車(EV)に広げて事業基盤を固める。

2014年4月に就任した浅野敏雄社長は「15年度までにM&Aに約2500億円を投じる」と宣言していた。今回の買収額はこの枠を上回り、旭化成では過去最大のM&Aとなる。セパレーターで世界3位のポリポアを取り込み、世界的に強みを持つ素材の競争カをさらに高める。

ポリポアのセパレーター事業の売上高は約4億4000万ドル。セパレーターのほかに手掛けている医療・工業用膜事業を米スリーエム(3M)に売却した後、旭化成がポリポアの全株式を取得する。各国の規制当局の認可取得後に買収を完了する。

旭化成のセパレーターはスマホやパソコンなどデジタル機器向けが中心だった。一方、ポリポアは「今後の市場拡大が期待される自動車向けの技術で強みを持つ」(浅野社長)。ポリポアと新製品を共同開発し、これまで手薄だった自動車向け市場を開拓する。

自動車用リチウムイオン電池はここ数年、EVの普及が自動車各社の想定よりも進まず需要が伸び悩んでいた。米テスラ・モーターズが新車を相次いで発売するほか、欧.州や中国では燃費規制が厳しくなることもあり、今後は世界的にEVの普及が期待されている。旭化成によると、世界の自動車向けセパレーターの需要は20年に現在の4〜5倍まで拡大する見通し
という。

リチウムイオン電池の市場拡大を見据え、セパレーターを手掛ける日系の素材メーカーは積極投資に乗り出している。住友化学はセパレーターの生産能力を20年に15年の3倍に高め、テスラのEVに搭載するパナソニックのリチウムイオン電池に供給する。帝人も14年12月、韓国にある工場のセパレーターの生産能力を2倍に高めた。

旭化成は主カとしてきた石油化学品や繊維に加え、「今後は環境エネルギー分野の事業を伸ばしていく」(浅野社長)考え。価格競争に巻き込まれやすい大量生産が主体の事業構造かり脱し、セパレーターなど高付加価値品に注力する。旭化成だけでなく、素材各社は豊富な手元資金を有しており、事業構造の転換に向けたM&Aの動きが相次ぎそうだ。

 

2015/02/23  旭化成

米国Polypore International, Inc.の買収について
〜「環境・エネルギー」分野におけるバッテリーセパレータ事業の拡大〜

旭化成 は、米国のバッテリーセパレータ及び医療・工業用膜関連の高分子ポリマー膜メーカーであるPolypore International, Inc.と、当社の米国子会社による現金を対価とする合併によりPolypore社を買収することについて合意しましたので、お知らせします。

また本買収に関連して、Polypore社は同社の医療・工業用膜事業を、本合併の完了前に米国の 3M Companyに対して譲渡することについて当社及び3M社と本日合意しており、3M社は Polypore社の同事業を約10億米ドルで本合併の完了前にPolypore社より取得します。

したがって、当社は、本譲渡後にバッテリーセパレータ事業を行う会社としてのPolypore社を買収することとなる予定であり、その対価は約22億米ドルとなります。

本買収及び本譲渡は友好的なものであり、当社、3M社及びPolypore社の各取締役会で承認されております。なお、本買収及び本譲渡完了のためには、関連する各国競争法に基づく条件の充足その他一般的な前提条件を満たすことが必要となります。

本買収のスキーム図

1.Polypore社買収の目的

1)本買収の背景

当社は創業以来、時代の変化や、社会的なニーズに応え、ポートフォリオを転換させることで持続的な成長を遂げてきました。2011年度よりスタートさせた中期経営計画「For Tomorrow 2015」では、グローバルにおいて競争力のある事業を積極的に展開することに加えて、「健康で快適な生活」「環境との共生」の視点で事業を推進し、「環境・エネルギー」「住・くらし」「ヘルスケア」の3つの分野において、既存事業のさらなる拡大と新しい社会価値の創出に取り組んでいます。

2)本買収に至った経緯

当社の「環境・エネルギー分野」の一翼を担うエレクトロニクス事業領域は、電子部品系事業と電子材料系事業で「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献する」高度な技術による製品を提供しています。とりわけ電子材料系事業では、リチウムイオン二次電池用セパレータ「ハイポア™」を戦略的製品と位置付け、バッテリーセパレータ事業の拡大を図っています。

「ハイポア™」は、微小な孔を多数持つ高性能なポリオレフィン膜で、 スマートフォンやタブレット端末、ノートパソコンなどのリチウムイオン二次電池に使用されています。今後は成長が期待されるハイブリッド車・プラグインハイブリッド車・電気自動車といった環境対応車用途や、電力エネルギーの効率的活用で需要の拡大が見込まれる電力貯蔵、蓄電システム用途での事業拡大を目指しています。

そのため、製品力をさらに高めるべく、顧客ニーズに適合した高機能膜の開発強化や海外加工体制の構築等に積極的に取り組んでいます。

Polypore社は高分子ポリマー膜における技術力を持ち、リチウムイオン二次電池及び鉛蓄電池のバッテリーセパレータ事業においてグローバルな供給体制と高度な製品開発力を有する企業です。今回の買収対象であるPolypore社のバッテリーセパレータ事業は、今後成長が期待されるリチウムイオン二次電池用のセパレータ「Celgard™(セルガード)」に加えて、自動車や産業向け用途等で広く普及している鉛蓄電池用のセパレータ「Daramic™(ダラミック)」の両ブランドを展開しており、独自の製品群を有するとともにグローバルな供給体制を構築しています。当社のエレクトロニクス事業領域における電子材料系事業は、Polypore社のバッテリーセパレータ事業と協業を図ることで、「環境・エネルギー」分野での中長期的な技術力の向上及び事業の拡大が可能となるため、本買収の合意に至りました。

3)当社と3M社で買収を提案するに至った経緯

上述の通り、本買収に関連して、Polypore社は同社の医療・工業用膜事業を本合併の完了前に米国の3M 社に対して譲渡することについて当社及び3M社と合意し、Polypore社と3M社の間で本譲渡に関する契約を締結しています。Polypore社は医療・工業用膜事業で使用される分離膜を主に「Membrana™」ブランドの下で製造・販売していますが、当社では、中長期的な成長戦略との適合性等に鑑み、本買収の対象から除外することとし、3M社は医療・工業用膜事業分野における拡大を目指していることから、本譲渡の合意に至りました。

4)本買収の意義

本買収により、当社は以下のことが実現できると考えています。

  • 当社は、これまでバッテリーセパレータ事業において、「ハイポア™」の技術開発・製品開発力の強化を図りながら、市場での高い評価を築き供給責任を果たしてきました。他方で、車載用途を中心に強みをもつPolypore社との共同研究開発、相互技術提供等を通じて、今後のさらなる成長が期待できるバッテリーセパレータ事業で、多様な分野で用いられるより革新的な製品開発を実現することが可能と考えています。
  • Polypore社の有するグローバルな製品供給体制及び販売網等の活用によって、「ハイポア™」のグローバル展開の一層の加速が可能と考えています。
  • Polypore社のバッテリーセパレータ事業を買収し、「Daramic™」ブランドの製品を供給することで、中長期にわたって安定的な収益貢献が期待できる鉛蓄電池用セパレータ市場への参入を果たします。また、「Celgard™」ブランドの製品供給により、車載用途を含め、今後成長が期待されるリチウムイオン二次電池用セパレータ事業で、より幅広い製品・技術の提供が可能になると考えています。

なお、当社は本買収以降も、バッテリーセパレータ事業における成長戦略の実現及び加速のために必要な資源投入を図り、同事業での革新的な技術開発に取り組むことで、持続的な成長を目指してまいります。

2.本買収及び本譲渡のスキーム及び対価と今後の流れ

本買収は、本買収のために設立された当社の米国における買収目的子会社とPolypore社を合併させる方法により行います。本合併は、Polypore社の株主総会において承認が得られること及びPolypore社と3M社の間の本譲渡完了等を条件に成立し、合併後の存続会社はPolypore社となります。この手続きを通じて当社は、現金を対価としてPolypore社のすべての既存株主から同社株式を取得し、合併後のPolypore社はNYSEの上場を廃止するとともに、当社の完全子会社となります。

本買収価格は、1株当り60.50ドル、Polypore社の2015年2月20日までの過去1ヶ月の平均株価に対し28.4%のプレミアムを加えた金額になります。

尚、本譲渡は、本譲渡のために設立された3M社の買収目的子会社とPolypore社の間で締結された資産譲渡契約に従って、医療・工業用膜事業を譲渡する方法により行います。この手続きを通じて3M社は、Polypore社に現金対価を支払うことにより、Polypore社の医療・工業用膜事業を取得します。

本譲渡において3M社がPolypore社に支払う譲渡金額は約10億米ドルとなります。

したがって、当社は、本譲渡後にバッテリーセパレータ事業を行う会社としてのPolypore社を買収することとなる予定であり、その対価は約22億米ドルとなります。

今後速やかに手続きを進める予定であり、詳細が確定次第お知らせします。

3. Polypore社の概要

(1)名称 Polypore International, Inc.
(2)所在地 米国ノースカロライナ州シャーロット市
(11430 North Community House Road Suite 350, Charlotte, North Carolina)
(3)代表者の役職・氏名 CEO:Robert B. Toth
(4)事業内容 高分子ポリマー膜の開発、製造及び販売
(5)資本金 588百万米ドル(連結:2014年9月27日現在)
(6)格付け
(7)設立 1966年
(8)生産拠点 米国、ドイツ、フランス、インド、タイ、中国、韓国
(9)従業員数 約2,400名(2013年12月28日現在)
(10)大株主及び持株比率
(2014年12月31日現在)
PRIMECAP Management Company 13.8%
Capital Research Global Investors 11.4%
Fairpointe Capital LLC 10.2%
Waddell & Reed Investment Management Company 7.0%
The Vanguard Group, Inc. 6.1%
Wasatch Advisors, Inc. 5.8%
(11)当社との関係 資本関係、人的関係、取引関係はありません