2019/12/24 

ソフトバンクG出資のカナダのリチウム鉱山会社が破綻 

ソフトバンクグループが出資するカナダのリチウム鉱山会社、Nemaska Lithium Inc.は23日、ケベック州高等裁判所に日本の会社更生法に相当する企業債権者調整法(Companies' Creditors Arrangement Act :CCAA)の適用を申請すると発表した。ソフトバンクGにとって、ネマスカは最初の鉱山投資案件だった。傘下で手掛ける太陽光発電事業の蓄電池への利用を想定していたが、戦略の練り直しを迫られることになりそうだ。 

 CCAA presents an opportunity for the company to avoid bankruptcy and allows the creditors to receive some form of payment for amounts owing to them by the company.

ネマスカは2次電池の主要な材料であるリチウムの採掘や精錬を手掛ける。リチウムは電気自動車(EV)市場の拡大を見込んだ増産が相次ぎ、2018年以降は供給過剰への懸念から相場が低迷している。

ネマスカも19年に入り資金繰りが急速に悪化。ケベック州内で進めていた採掘・製錬場の新規開発案件などが暗礁に乗り上げていた。CCAAの申請により、債権者保護を取り付けた上で追加資金の調達を進め、事業再建を目指す。資産売却や合弁化の可能性も検討するとしている。

ソフトバンクGは18年4月、約80億円を投じ、ネマスカの発行済み株式の最大9.9%を取得すると発表。ネマスカが新たに開発するリチウム鉱山の最大生産量(年間3万3千トン)の2割を優先購入できる権利を得ることでも合意していた。ソフトバンクGの孫正義会長兼社長は当時、ネマスカへの出資について「グループ戦略上、極めて重要な一手」と話していた。

 

リチウムは充電が可能な2次電池の主要材料の一つだ。各国・地域の環境規制を背景にEVやハイブリッド車(HV)の普及が進むと不足する可能性があるとの見方から、リチウム価格は2015年冬から17年冬にかけて上昇。相場の指標となる炭酸リチウムの中国国内の価格は2018年4〜5月時点で1トン14万8500元前後と高値圏で推移していた時に、ソフトバンクGは今回破綻したネマスカ・リチウムへの出資を決めた。

だが足元の価格は5万1000元前後と、直近のピークである17年11月の17万1000元前後から70%安く、15年10月以来の低水準に沈む。ネマスカは19年に入り資金繰りが急速に悪化した。

価格低下は豊かな鉱床を持つオーストラリアなど各地で開発計画が相次ぎ立ち上がった影響が大きい。米地質調査所(USGS)によると、18年の世界生産量は8万4700トンと24%増えた。消費は20%増の4万7600トンにとどまり供給過剰だ。需要をけん引するとされた中国では政府がEVへの補助金を縮小して販売にブレーキがかかり、リチウムの値下がりが加速した。

ソフトバンクGがネマスカに出資したのはEVなどに加え、国内外で進める太陽光発電事業の蓄電池にも活用する狙いがあったからだ。約80億円を投じ9.9%を出資した。ネマスカが生産するリチウムの最大2割を購入する権利も得ていた。出資を発表した際に孫正義会長兼社長は「グループの戦略上極めて重要な一手だ」とコメントしていた。

ただ、ネマスカは価格下落で業績が悪化。19年12月23日にCCAAの適用を申請すると発表した。結果としてソフトバンクGも相場を読み切れなかったことになる。

CCAAの適用を申請した企業は原則として経営陣が続投し、事業を続けながら再生計画を策定する。ソフトバンクGは今後の見通しについて「コメントを控える」としている。まずは再建策を見極める姿勢のようだ。

ソフトバンクGは本業のファンド投資で、米シェアオフィス大手ウィーカンパニーが不振に陥った。ネマスカへの投資は小規模なのに加え、投資利益よりも事業面の相乗効果を狙った点で毛色は異なる。それでも、人工知能(AI)関連に加えて成長分野と位置づけてきたエネルギー・資源でのつまずきは痛手となる。

 

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2018/4/10  ソフトバンク、カナダのリチウム事業に参加 

ソフトバンクグループは4月6日、カナダでリチウムの採掘および精錬を行うNemaska Lithium Inc.(本社 ケベック州)の全発行済株式の最大9.9%を出資する契約を締結したと発表した。

Nemaskaは、リチア輝石の採掘から高純度の水酸化リチウムと炭酸リチウム製品化まで垂直統合した事業を行う企業で、製品化されたリチウム塩は主に、世界的なEVと蓄電池の需要増加により急成長するリチウムイオンバッテリー市場へ提供される。

Nemaskaは、量、グレードともに世界で最も豊富なリチウム原石であるリチア輝石の可採掘埋蔵量を有するカナダ・ケベック州のWhabouchiで事業を開始する予定。

Whabouchi 鉱山で集中的に採掘されるリチア輝石は、Nemaskaが特許技術を有する独自の膜電解処理を行うケベック州のShawinganの施設で精錬される。

採鉱から選鉱、精錬による製品化工程を経た高純度の水酸化リチウムおよび炭酸リチウムの商業生産開始を、2020年後半に予定している。


Whabouchi の可採掘埋蔵量は約33年、精錬プロセスを経てShawinganで製造される年間リチウム生産量は3.3万トン以上と見込まれている。

ソフトバンクグループが Nemaskaの発行済み株式を少なくとも5%以上保有する限り、毎年の年間生産量のうち、最大20%を長期間にわたり購入する権利を有することになる。

Nemaskaは7月初め、LG Chemとの間で、年間7000トンのlithium hydroxide の5年間の Take or Pay 契約を締結した。