日本触媒、EV電池寿命1.6倍 福岡に新工場、材料増産

日本触媒は福岡県に電気自動車(EV)向け電池材料の工場を建設する。リチウムイオン電池の寿命を1.6倍に延ばせる電解質の生産能力を10倍に引き上げる。

375億円を投じ、2028年の稼働をめざす。福岡県でトヨタ自動車が電池工場を建設するなど、九州でEV向け部材の供給網が広がる。増産体制を整え、先行する中国勢に対抗する。

新工場で生産するのは「リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)」という新しいタイプの電解質だ。従来多く使われている「六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)」に比べてリチウムイオン電池を長持ちさせる特性がある。日本触媒が13年に世界で初めて量産技術を確立した。

Lithium Bis(fluorosulfonyl)imide

本品はイオン液体前駆体です。適当なカチオン塩とリチウムイオンをイオン交換することにより、FSIをアニオンとするイオン液体を調製する事が可能です。


有機合成用 for Organic Synthesis

規格含量 : 90.0〜102.0+% (Fより)(Absorptiometry)

製造元 : 富士フイルム和光純薬(株)

保存条件 : 室温

CAS RN® : 171611-11-3

分子式 : F2LiNO4S2

分子量 : 187.07

適用法令 : 安衛法57条・有害物表示対象物質 労57-2

電池の主要部材には、正極材と負極材に加え、電解質を水などに溶かした電解液がある。電解質は液体に溶けると陽イオンと陰イオンに分かれ、正極と負極の間でイオンが電子を運ぶことで、充放電が可能になる。

新材料のLiFSIは蒸留などで不純物を取り除く工程が難しく生産コストがかさむ。中国では既存材料のLiPF6に比べて価格が20〜30%高くなるため、日本触媒は既存材料の添加用として新材料を販売してきた。

新材料の割合を増やすほど電池は長持ちする。既存材料と半々にした場合、0%から100%に充電して100%から0%まで放電するサイクル数を寿命の目安とされる500回から800回に増やせるという。

日本触媒は電解質の国内生産能力を従来の年間300トンから3000トンに引き上げる。電解質を全て新材料にした場合、EV21万台分にあたる。

新材料の量産化に関する特許数など技術面で日本触媒は世界に先んじている。EV市場が拡大する中国の部材メーカーも新材料のシェアを伸ばし始めているが、日本触媒は「電池の高機能化につながる純度など品質ではリードしている」と説明する。EVの普及には電池の長寿命化が欠かせない。他社も含め、全てを新材料に置き換えた電解質も出始めている。日本触媒は新工場が稼働する28年には流通する電解質の2割が新材料に置き換わるとみており、新工場で量産しコストを下げて拡販につなげる。