2026/6/21 日経

TOTO、半導体部材に800億円投資 次世代「1ナノ台」製造装置視野

 

TOTOは半導体製造装置向け部材事業に今後5年で800億円規模を投資する。衛生陶器で知られる同社だが人工知能(AI)向け半導体の需要増で半導体関連が稼ぎ頭になった。長く構造転換が停滞した日本の製造業の姿をAIが変えつつある。

神奈川県の拠点で現在より数世代先とされる回路線幅1ナノ(ナノは10億分の1)メートル台の演算用ロジック半導体の半導体製造に焦点を当てた研究開発を進める。

ロジック半導体は一般的に、回路線幅が小さくなるほど高性能になっていく。半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の場合、最先端のロジック半導体は2ナノ台の量産を手掛ける。今後は、さらに最先端となる「1ナノ」台も視野に入っており、TOTOも将来をにらんだ研究開発を進める。

 

福岡の工場、新たな焼成棟が27年1月竣工

フル稼働が続く福岡県豊前市と大分県中津市の工場に最新設備を導入し能力を増強する。豊前工場内では新たな焼成棟が2027年1月に竣工も控える。今回の投資でも需要をまかない切れない場合は新工場の建設も検討する。

全体では30年3月期までに計800億円規模を投じる。既に390億円の投資を決定しており、市況を見極めつつ残りの投資を進める。

TOTOは衛生陶器で培った焼成技術を応用し1980年代に半導体部材事業に参入した。主力製品で半導体ウエハーの固定に使われる「静電チャック」は高純度セラミックによる耐久性の高さが特徴。微粒子状のセラミックを直接に吹き付けコーティングする「AD法」を使った部材にも強みを持つ。


長年赤字が続いたが、AI半導体需要の盛り上がりで20年ごろから引き合いが急拡大し、祖業の衛生陶器事業をしのぐ稼ぎ頭となった。

半導体関連部材を手掛ける「新領域事業」は26年3月期の売上高が前の期比34%増の674億円、営業利益は42%増の289億円となった。売上高は全社の1割程度にとどまるものの、利益は衛生陶器を中心とした住設事業を上回り、全社の5割超を占めた。

 

「稼ぎ方」大きく変えた企業相次ぐ

主要半導体メーカーで構成する世界半導体市場統計(WSTS)は2日、26年の世界市場が25年比90%増の1兆5112億ドル(約240兆円)になると発表した。初の1兆ドル突破が見込まれている。

国内でもTSMCが熊本県菊陽町に整備中の第2工場でAI向け半導体生産を決め、北海道千歳市でも最先端半導体の量産を目指すラピダスの計画が進む。

TOTOのように、AIの普及による半導体やデータセンター(DC)需要の急拡大を受け自社の「稼ぎ方」を大きく変えた企業が相次いでいる。

ユニチカは祖業の衣料用繊維事業から撤退した一方、電子基板用のガラスクロスがスマホ向けに伸びており、DC向けでも引き合いが増えている。

このほか花王のナノレベルの洗浄剤、味の素の絶縁体素材、サクラクレパスの品質管理用マーカーなど、従来の主力事業で培った技術を生かして半導体関連の製品を開発し収益を拡大している企業は数多い。

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Toto セラミック事業

<静電チャック>
TOTOグループの静電チャックは、非常に過酷な環境であるエッチング工程の半導体製造装置で使用されます。徹底した工程の自動化と、原料調合から最終商品出荷まですべての製造工程の品質データを自動で収集・管理するなど、セラミック事業独自のスマートファクトリー化の推進によって、高品質・高精度な静電チャックをお客様に提供できるのが強みです。

<AD部材>
世界に先駆けて開発したエアロゾルデポジション(AD)法は、セラミックの微粒子をエアロゾル化し、音速に近いスピードで基材に衝突させることで、常温で緻密なセラミック膜を形成する技術です。半導体製造プロセスにおいて、歩留まり低下や製造の妨げとなるプラズマによる腐食を抑制し、ナノレベルの超微細なパーティクルの発生を防止することで、製造装置が安定したパフォーマンスを発揮できるようにします。「セラミックスは焼いてつくるもの」という常識を覆す技術として、さまざまな分野への応用が期待されています。

<構造部材>
液晶や有機ELパネルなどの製造装置に使用される構造部材は、かつては金属が使用されていましたが、画面の大型化に伴い、金属よりも剛性が高くて軽く、耐摩耗性もあるセラミックスが使われるようになっています。TOTOグループのセラミック構造部材は衛生陶器の焼成技術や水栓金具の精密加工技術を組み合わせ、他社では実現できない大型でかつ高精度なセラミック部材を一体でつくることができます。