平成9年12月9日 大日本製薬
湧永製薬とのオプション契約締結のお知らせ
大日本製薬株式会社(本社:大阪市、社長:渡守武 健)は、このたび湧永製薬株式会社(本社:大阪市、社長:草井由博)から同社が開発中のニューキノロン系抗菌剤WQ−2743の全世界における独占的な開発ならびに販売に関するオプション権を取得しましたのでお知らせいたします。
ニューキノロン系抗菌剤(以下NQ剤と略)は、核酸に作用する細菌特有の酵素であるジャイレースおよびトポイソメラーゼIVの働きを阻害することにより、 殺菌作用を示す薬剤であります。本系統の薬剤は、その強い抗菌力と広い抗菌スペクトルならびに抗生物質耐性菌にも有効なことにより、国際的にも種々の感染 症の第一選択薬として位置づけられようとしております。
今回契約の対象となった化合物は、既存のNQ剤では十分な効果が得られなかったMRSA( メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)やペニシリン耐性肺炎球菌および既存のNQ剤に耐性となった菌にも強い抗菌力を示し、安全性も高いことから、呼吸器感染 症、泌尿器感染症を含む幅広い感染症に高い有用性が期待でき、次世代のNQ剤として国際的に高い評価が得られるものと考えております。大日本製薬では本剤 を重要な品目として位置づけ、現在当社の主力NQ剤であるスパラ(一般名:スパルフロキサシン)に次ぐNQ剤として国際的にも開発する予定にしており、上市後は種々の感染症の治療に役立つ薬剤になるものと期待しております。
本化合物は、本年9月30日にカナダのトロントで開催された第37回米国化学療法学会議(ICAAC)で発表され、そのユニークな構造、さらには特筆すべ きプロファイルのため注目を集めました。現在、前臨床の段階にありますが、大日本製薬では早期に臨床開発に着手したいと考えております。
ニューキノロン(New Quinolone)とは、合成抗菌薬の系列の一つである。DNAジャイレースを阻害することにより、殺菌的に作用する薬剤である。キノロン系をもとに人工的に合成・発展させたものであり、作用機序はキノロンと同一である。
ニューキノロン系抗菌剤の特徴
1)抗菌力の著明な増大。
2)他系統の薬剤を含め交差体制がない。
3)緑膿菌に高い抗菌力を有している。
4)グラム陽性菌にも有効
5)マイコプラズマ、クラミジア、好酸菌にも基礎的抗菌力がある。
6)組織移行が改善され、上記道を含む呼吸器感染症に臨床使用可能。
2004年7月22日 湧永製薬が大阪地方裁判所に訴訟提起(第一審)
訴訟の経緯
湧永製薬 :
当社は、自社研究によって創製したニューキノロン化合物(抗菌剤)の国内外の独占的な開発・製造・販売権を、大日本製薬株式会社(その後合併し、現大日本住友製薬株式会社)に供与するライセンス契約を、1998年6月に締結しました。
大日本住友製薬株式会社は、契約に従い開発に着手しましたが、2002年5月になって突如開発を中止しました。当社は、ライセンス契約の定めに従って本件化合物の開発を履行するよう、再三にわたって求めましたが、同社がこれに応じなかったため、ライセンス契約を解除した上で、2004年7月22日、同社を相手取り、大阪地方裁判所に、当社が被った損害額89億8300万円についての一部請求として50億円の損害賠償請求訴訟を提起しました。
大日本住友製薬:
当社は、開発中止は化合物を適正に評価したうえで決定したものであり、ライセンス契約の解除は契約の規定に基づく正当な権利行使であると主張しておりました。
2007年3月16日 大日本住友製薬
訴訟の判決に関するお知らせ
当社が湧永製薬株式会社(以下、「原告」)から提起されていた訴訟に関し、本日、大阪地方裁判所において、下記のとおり判決がありましたので、お知らせします。
判決の内容
原告の請求の一部を認容し、8億9,000万円の支払いを当社に命ずるものであります。
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2007年4月2日 大日本住友製薬
訴訟の提起(控訴)に関するお知らせ
当社は、2007年3月16日に判決がありました湧永製薬株式会社から提起されていた訴訟に関し、3月30日付で大阪高等裁判所に控訴しましたので、お知らせします。
湧永製薬:
大阪地裁は、大日本住友製薬株式会社がライセンス契約に規定された開発義務を履行しておらず、契約に違反していること、また、同社が主張した有効性、安全性、経済性等に関する契約解除理由のすべてに根拠がなく不当であることを判示した上で、大日本住友製薬株式会社に、8億9000 万円の支払いを命じる判決を下しました。
大阪地裁の判決は、事実関係については当社の主張をほぼ完全に認めているにも拘らず、認定された損害賠償額は当社が被った逸失利益を正当に評価したものではなかったため、当社は、地裁判決の損害賠償額を不服として大阪高裁に控訴しました(なお、当社は、控訴審において、損害賠償請求額を全部請求に拡張しました)。また、大日本住友製薬株式会社も判決を不服として控訴を行いました。
大日本住友製薬 アニュアルレポート 2008/3月度
当社は当該訴訟に関連して発生すると見込まれる費用を潜在的な債務として認識しており、2008年3月期及び2007年3月期における当該金額はそれぞれ1,054百万円(10,540千米ドル)及び1,010百万円であります。また、当該潜在債務に起因して2008年3月期及び2007年3月期において費用に計上した金額はそれぞれ44百万円(440千米ドル)及び1,010百万円であります。なお、当該債務は2008年3月期及び2007年3月期の連結貸借対照表において訴訟関連費用引当金として表示しております。
2009/3/24 大日本住友製薬
訴訟の判決(控訴審判決)に関するお知らせ
当社は、大阪高等裁判所において、湧永製薬株式会社(以下「原告」という。)との間で締結したニューキノロン化合物のライセンス契約の解除に伴う損害賠償請求訴訟(控訴審)について係争しておりましたが、本日、下記のとおり判決がありましたので、お知らせします。
判決の内容
原判決(第一審判決)を取り消し、原告の請求を棄却するものであります。
湧永製薬 2009年03月24日
判決の内容
1 原判決中1審被告(大日本住友製薬株式会社)敗訴部分を取り消す。
2 1審原告(当社)の請求及び控訴を棄却する。
2009/4/9 大日本住友製薬
訴訟の判決に対する上告のお知らせ
当社と湧永製薬株式会社との間で係争中のニューキノロン化合物のライセンス契約の解除に伴う訴訟について、2009
年3 月24 日付けのリリースにてお知らせしましたとおり、大阪高等裁判所において、当社全面勝訴の判決が言い渡されましたが、今般、湧永製薬株式会社が当該判決に対して4月6日付けで最高裁判所に上告を行ったことを確認いたしましたので、お知らせします。