2008年01月11日

 

薬害肝炎救済法の要旨           福田総理大臣の談話

 11日成立した特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第9因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法の要旨は次の通り。

 【前文】

 フィブリノゲン製剤及び血液凝固第9因子製剤にC型肝炎ウイルスが混入し、多くの方々が感染するという薬害事件が起き、感染被害者及びその遺族の方々は、長期にわたり、肉体的、精神的苦痛を強いられている。

 政府は感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、感染被害者及びその遺族の方々に心からおわびすべきである。さらに今回の事件の反省を踏まえ、命の尊さを再認識し、医薬品による健康被害の再発防止に最善かつ最大の努力をしなければならない。

 もとより、医薬品を供給する企業には、製品の安全性の確保等について最善の努力を尽くす責任があり、本件においてはそのような企業の責任が問われるものである。

 C型肝炎被害者から企業及び国に対し、損害賠償を求める訴訟が提起されたが、これまで五つの地方裁判所の判決においては、企業及び国が責任を負うべき期間等について判断が分かれ、現行法制の下で法的責任の存否を争う訴訟による解決を図ろうとすれば、さらに長期間を要することが見込まれている。

 一般に、血液製剤は適切に使用されれば人命を救うために不可欠の製剤であるが、フィブリノゲン製剤及び血液凝固第9因子製剤によってC型感染ウイルスに感染した方々が、日々、症状の重篤化に対する不安を抱えながら生活を営んでいるという困難な状況に思いをいたすと、我らは、人道的観点から、早急に感染被害者の方々を投与の時期を問わず一律に救済しなければならないと考える。しかしながら、現行法制の下でこれらの製剤による感染被害者の方々の一律救済の要請にこたえるには、司法上も行政上も限界があることから、立法による解決を図ることとし、この法律を制定する。

第1条〈趣旨) この法律は、特定C型肝炎ウイルス感染者及びその相続人に対する給付金の支給に関し必要な事項を定めるものとする。

第2条(定義)

1 この法律において「特定フィブリノゲン製剤」とは、乾燥人フィブリノゲンのみを有効成分とする製剤であって、次に掲げるものをいう。
   一〜二 略

2 この法律において「特定血液凝固第9因子製剤」とは乾燥人血液凝固第9因子複合体を有効成分とする製剤であって次に掲げるものをいう。
   一〜二 略

3 この法律において「特定C型肝炎ウイルス感染者」とは、特定フィブリノゲン製剤または特定血液凝固第9因子製剤の投与(後天性の傷病に係る投与に限る)を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染した者及びその者の胎内または産道においてC型肝炎ウイルスに感染した者をいう。

第3条(給付金の支給) 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「機構」という)は、特定C型肝炎ウイルス感染者に対し、請求に基づき、医療、健康管理等に係る経済的負担を含む健康被害の救済を図るためのものとして給付金を支給する。

2 支給を受ける権利を有する者が死亡した場合においてその者がその死亡前に給付金の支給の請求をしていなかったときは、その相続人は支給を請求することができる。

3 略

第4条(給付金の支給手続き) 支給の請求をするには、当該請求をする者またはその被相続人が特定C型肝炎ウイルス感染者であること及びその者が第6条第1号、第2号または第3号に該当する者であることを証する確定判決または和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものの正本または謄本を提出しなければならない。

第5条(給付金の請求期限) 給付金の支給の請求は、次に掲げる日のいずれか遅い日までに行わなければならない。

一 法律の施行日から起算して5年を経過する日

二 特定フィブリノゲン製剤、特定血液凝固第9因子製剤の投与によってC型肝炎ウイルスに感染したことを原因とする損害賠償の訴えの提起または和解もしくは調停の申し立てを経過日以前にした場合に、判決が確定した日または和解もしくは調停が成立した日から起算して一月を経過する日

第6条(給付金の額) 給付金の額は、次の各号に掲げる特定C型肝炎ウイルス感染者の区分に応じ、当該各号に定める額とする。

一 慢性C型肝炎が進行して、肝硬変もしくは肝がんに罹患(りかん)し、または死亡した者 4000万円

二 慢性C型肝炎に罹患した者 2000万円

三 前二号に掲げる者以外の者 1200万円

第7条(追加給付金の支給) 機構は、給付金の支給を受けた特定C型肝炎ウイルス感染者で、身体的状況が悪化したため、給付金の支給を受けた日から起算して10年以内に新たに前条第1号または第2号に該当するに至ったものに対し、その者の請求に基づき、医療、健康管理等に係る経済的負担を含む健康被害の救済を図るためのものとして追加給付金を支給する。

2 略

第8条(追加給付金の支給手続き) 追加給付金の支給の請求をするには、特定C型肝炎ウイルス感染者の身体的状況が悪化したため新たに第6条第1号または第2号に該当するに至ったことを証明する医師の診断書を提出しなければならない。

第9条(追加給付金の請求期限) 追加給付金の支給請求は、新たに第6条第1号または第2号に該当するに至ったことを知った日から起算して3年以内に行わなければならない。

第10条〜第13条 略

第14条(特定C型肝炎ウイルス感染者救済基金) 機構は、給付金等の支給及びこれに付帯する業務に要する費用に充てるため、特定C型肝炎ウイルス感染者救済基金を設ける。

2 略

第15条(交付金) 政府は、予算の範囲内において、機構に対し、給付金支給等業務に要する費用に充てるための資金を交付するものとする。

第16条(厚生労働大臣と製造業者等との協議) 厚生労働大臣は、給付金支給等業務に要する費用の負担の方法及び割合について、製造業者等と協議の上、その同意を得て、あらかじめ基準を定めるものとする。

第17条〜第18条 略

【付則】

第1条(施行期日) この法律は、交付の日から施行する。

第2条 略

第3条(給付金等の請求期限の検討) 給付金等の請求期限については、この法律の施行後における請求状況を勘案し、必要に応じ、検討が加えられるものとする。

第4〜5条 略


福田内閣総理大臣の談話  平成20年1月11日


 本日、特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法が成立いたしました。

 これら製剤による感染被害者とその遺族の方々は、これまで長きにわたって、心身ともに言葉に尽くせないほどのご苦労があったと思います。感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止できなかったことについて、率直に国の責任を認めなければなりません。感染被害者とその遺族の皆さまに心からお詫び申し上げます。

 私自身、一日も早くこの問題を解決したいと思ってまいりました。大阪高等裁判所における和解協議にも誠実に対応してまいりましたが、地方裁判所ごとに異なる内容の判決が出されてきたC型肝炎訴訟について、司法の判断を踏まえつつ、一方でこれらの製剤による感染被害者の方々の一律救済の要請に応えるには、現行法制の下では限界があり、議員立法による全面解決を決断いたしました。

 一日も早い救済を実現するために、与党と弁護団との精力的な協議、迅速な立法化作業、会派を超えて国会での速やかな対応が行われ、本日、法案が成立し、長年にわたるC型肝炎訴訟の解決が図られることになりました。心より感謝を申し上げます。

 感染被害者の方々は、国に対し、肝炎対策の充実を要請してこられました。その懸命な活動が一つの契機となり、政府・与党において肝炎対策について真剣に検討を進めることになりました。

 その結果、無料で受けられる肝炎ウイルス検査を拡大するとともに、来年度から国と地方公共団体が協力して7か年で総額1800億円規模のインターフェロン治療に対する医療費助成を行うこと等を内容とする新たな肝炎総合対策を実施することといたしております。これにより、肝炎の早期発見、そして必要な方々すべての早期治療が進むことを期待いたしております。

 さらに、今回の事件の反省に立ち、薬害を繰り返してはならないとの決意のもと、命の尊さを再認識し、医薬品による健康被害の再発防止に向けた医薬品行政の見直しに取り組んでまいります。

 改めて、長年にわたる感染被害者の方々のご労苦にお詫び申し上げるとともに、再発防止に最善、最大の努力を重ねることをお約束いたします。


薬害C型肝炎訴訟 和解基本合意書(要旨) 2008/1/15

1 責任と謝罪
 国は、C型肝炎ウイルス感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、被害者及び遺族の方々に心からおわびする。国は今回の反省を踏まえ命の尊さを再認識し、薬害ないし医薬品による健康被害の再発防止に最善かつ最大の努力を行うことを誓う。

2 和解の内容
 各原告が、後天性傷病についてフィブリノゲン製剤または血液凝固第9因子製剤の投与を受けたことでC型肝炎ウイルスに感染した者、その者の胎内で感染した者、これらの相続人であること。
 各原告は、医薬品医療機器総台機構に和解調書を提出して給付金支給を受け、国に対するその余の請求を放棄する。
 提訴手数料は既に納付した分を除き全額国の負担とする。

3 投与事実、因果関係、症状の認定
 原告らは血液製剤の投与事実について、医療記録及び同等の証明力を有する証拠に基づいて証明する。
 投与事実、因果関係、症状に争いがある場合は証拠調べにより裁判所が判断。
 裁判所が所見を示した時は、当事者双方は尊重する。
 国は認否に当たって、被害者救済法の一律救済の理念を尊重する。

4 恒久対策等
 国(厚生労働省)は、血液製剤の投与を受けた者の確認促進、検査の呼びかけに努め、給付金請求手続きや期限等、救済法を周知する。
 肝炎医療の提供体制整備、肝炎医療研究の推進等の措置を講ずるよう努める。
 第三者機関で検証を行う。
 恒久対策、薬害再発防止対策について原告・弁護団と継続的に協議する場を設定する。

5 後続訴訟の扱い
 後続訴訟の原告については「3」の認定を経た上、順次和解の対象とする。
 和解の内容は「2」と同様。
 国は救済法施行後3年以内の新規提訴者に消滅時効の主張をしない。