PVC工業のアジアにおける展開と21世紀の課題
佐伯康治
塩化ビニル工業協会副会長
新第一塩ビ梶@社長

1.日本のPVC工業の現状 添付 PowerPoint
日本のPVC工業は1960年代の高度成長期をえて、70年代から80年代の初期にかけては停滞の状況が続くが、80年代後半から一時期成長を見せる。90年代にはいると不況のため再び停滞をする。
一方92年頃よりアジアに対する輸出が急激に伸びて史上最高の輸出を行っている。日本の国内需要はほぼ飽和に達した状況である。こうしたことから日本のPVC産業は基本的に成熟段階にはいったとみられる。。
現在欧米で成長しているサイジング材や窓枠などの日本での需要の開拓が行われようとしているが、日本の建築基準法などの規制が開発の妨げになっている。また、ダイオキシンにはじまるPVCと環境問題が緊急の課題である。
成熟した日本のPVC産業の中で、新第一塩ビや大洋塩ビなど産業の再編成が行われ、メーカーは15社から11社に減少した。上位5社での生産能カシエアーは80%以上となっている。
2.アジアでの展開
韓国、台湾はすでに高度経済成長をとげ先進国になっている。90年以降ASEAN諸国、そして中国の沿岸地区の経済成長が急速に進んでいる。
しかし、ASEAN諸国や中国のプラスチック消費量をみるとまだ少ない。1人当たりの消費量は先進国では70〜120kg/年・人であるのに対して、これらの国のほとんどは10kg/年・人以下のレベルである。
現在これらの国でプラスチックの消費量は急激に伸びようとている。それは家電やコンピュータなどのハウジングなど先進国からの委託生産による工業製品の需要が伸びていること。さらに経済の発展による生活の向上がプラスチックの需要の増加をもたらしている。その中でPVCの需要の伸びは著しい。
1990年アジア(日本を除く)の消費量は約300万トンであったが、2000年には約700万トンの需要が予想されている。こうした需要の増加のために日本をはじめ韓国、台湾の輸出が急速に伸びる結果となっている。これに対応してアジアでのPVCの生産能力の増強が進められている。1980年に約100万トンの生産能力(中国を除く)だったものが、2000年には530万トンヘの増設計画がなされている。さらに中国が大幅な増設を計画している。
3.アジアの発展と21世紀の課題
ASEAN請国と中国の沿岸地区だけの人口は合わせて約10億人である。一方北米、EU、北欧、台湾、韓国、日本などの先進国の人口は約9億人である。このアジアの10億の人々が先進国並みの豊かさを求めて、経済の高度成長に向かってすでにテイク・オフしている。21世紀にはいると、まずはこれらの国々の発展によって、地球の資源と環境問題が深刻な課題となる。
世界の石油化学製品の需要量(エチレン換算量)は、1990年には約5000万トンであった。2000年には8700万トンと予想されている(石油化学エ業協会−JPCA)。それ以後も、ASEAN諸国、中国、その他の発展途上国はさらに加速度をつけて先進国の豊かさに追いついてくるであろう。ここにおいて、現在の技術体系や経済システムのままでは、それだけの多くの人口の豊かさを維持するには地球の資源が絶対的に不足することになる。
またこのような生産と消費の世界的な拡大によって、環境汚染問題も深刻になってくる。中国の例でみると、石炭、石油などのエネルギーの使用量が増加して、排出されるSO2の量は2000年で2000万トンになるといわれている(日本では現在約100万トン)。さらに炭酸ガス、その他の有害物質の増加を考えると、環境汚染は地球の人類の生存にかかわる深刻な問題となる。
そこで21世紀には、資源を大切に使い、環境を汚染しないような新しい技術体系への転換と現在の経済システムを変えるような生活様式の転換が必要になる。
これをプラスチックでみると、現在プラスチックの製品は使い捨て商品や日用雑貨など5年以内で廃棄される製品が55%もある。これは現在のプラスチックがその特徴である耐久性とは反対に、いかに短寿命に使われているかを示すものである。
これらプラスチック製品の寿命を伸ばし、資源としてのプラスチックをいかに大事に使って行くかが、21世紀の全世界の重要な課題となってくる。
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4.PVCは貴重なプラスチックとして生き残る
こうした深刻な資源と地球環境の問題の中で、PVCは貴重なプラスチックとして生き残る基本的な特性を持っている。その一つはすでに現在のPVCの製品寿命が他のプラスチックに比して非常に長<、10年以上の製品が67%を占めていることである。さらにPVCはその57%が食塩からの塩素であり、PVCは資源的にもエネルギー的にも有利なプラスチックである。また塩素は多くの産業に絶対に必要なか性ソーダの生産と共に生産されるものであり、塩素の最も安全で、有効な利用がPVCである。
しかしそのためには、今後さらにより長寿命にシフトする製品の開発と廃棄物の量的な削減に努力して行かねばならない。そうした上で、それでも出てくる廃棄物に対しては環境に全く影響を与えないような処理技術の開発と、それを実行する社会システムの構築が必要になる。こうした課題を克服することによってPVCは、人類に役立つ、貴重なプラスチックとして生き残ってゆくことができる。