シンガポール石油化学計画
シンガポール石油化学計画は、46年12月に長谷川周重社長がシンガポール共和国に立ち寄った際に、奈良靖彦駐シンガポール大使の招待を受け、同席した同国のホン・スイセン(Hon Suisen)大蔵大臣から石油化学工場建設への協力を要請された時に始まった。
50年1月1日、シンガポールにおいて長谷川周重社長とホン・スイセン大蔵大臣とにより、当社とシンガポール政府間の基本契約が調印された。
政府資金の支出を含む日本政府の支援と石油化学業界の全面的協力を得ることに成功し、以後、シンガポール石油化学計画はナショナルプロジェクトとして推進されることになった。
52年5月、シンガポール現地に設立を予定されたエチレンセンター会社に対する海外経済協力基金の出資が閣議了解されたのを受け、同年7月、同エチレンセンター会社に対する日本側の投資会社である「日本シンガポール石油化学株式会社」(JSPC)が設立されした。
引き続き同年8月にエチレンセンター会社「ペトロケミカル・コーポレーション・オブ・シンガポール・プライベート・リミテッド」(PetrochemicalCorporation ofSingapore (Private)Limited,PCS)が資本金300万シンガポールドルをもってシンガポール政府と日本シンガポール石油化学の折半出資により設立された。
第二次石油危機で難航する事業推進
誘導品計画の具体化
55年3月、LDPE・PP関係の日本側投資会社「日本シンガポールポリオレフィン株式会社」(NSPC)が資本金4億2000万円で設立され、出資比率は当社78.57%、宇部興産、昭和電工各7.14%、東洋曹達4.29%、出光石油化学2.86%であった。
同年5月にはEOG関係の日本側投資会社「日本シンガポールエチレングリコール株式会社」(JSEC)も資本金1億円、三菱油化28%、日本触媒化学工業26%、三井石油化学工業26%、日曹油化20%の出資で設立された。(後、修正)そして以下のように誘導品の現地会社も発足
@LDPE・PP
The Polyolefin Company (Singapore) Pte.Ltd.(TPC) 設立 昭和55年5月23日 資本金 500万シンガポールドル 出資比率 日本シンガポールポリオレフィン
シンガポール政府70%
30%AHDPE
Phillips Petroleum Singapore Chemicals(Private)Limited(PPSC) 設立 昭和55年4月24日 資本金 10万シンガポールドル 出資比率 フィリップス石油
シンガポール政府
住友化学工業60%
30%
10%Bアセチレンブラック
Denka Singapore Private Limited(DSPL) 設立 昭和55年9月20日 資本金 1400万シンガポールドル 出資比率 電気化学工業
シンガポール政府80%
20%
プラント建設
EOG事業の立ち上がり
シェルと日本のEOGメーカー4社(三菱油化、三井石油化学、日本触媒化学工業、日曹油化)が参加することになり、55年5月にEOGメーカー4社は日本側投資会社「日本シンガポールエチレングリコール株式会社」(JSEC)を設立EOG専業メーカーである日曹油化が業績悪化によりこの事業から離脱、次いで57年2月、イラン石油化学事業で苦闘を続ける三井石油化学工業からシンガポールプロジェクトヘの追加投資を取り止めるとの事実上の撤退表明がなされるに至った。
Ethylene Glycols (Singapore) Private Limited(EGS) 設立 昭和57年4月14日 資本金 300万シンガポールドル 出資比率 日本シンガポールエチレングリコール
シンガポール政府
シェル・イースタン・ペトロリアム
住友化学工業50%
28%
20%
2%
出資比率を再編してシンガポール政府50%、シェルグループ20%、残り30%を当社を含む日本側が出資することになった。日本側出資約66億円分は伊藤忠商事、住友商事、トーメン、日商岩井の4商社が各2億円、残りを当社、三菱油化、日本触媒化学の3社が均等負担することで決着した。
操業開始の決断
@政府系金融機関は、シンガポール石油化学プロジェクトの追加出資要請に応じる。
A政府系金融機関の追加出資額は45億8000万円、日本側追加出資額(279億円)の16%強とし、残りを民間側負担とする。
Bこの結果、すでに出資済み(日本側全体で100億円、うち海外経済協力基金30億円)の負担額を合わせた全体の出資額に占める政府出資比率は、現行の30%から20%に低下する。
JSPCへの出資調整
日本シンガポール石油化学の株主構成推移 (社別明細 別紙)
株主名 | 昭57.12末現在 | 昭59.1.26払込み | 昭59.1.27現在(増資後) | |||||
会社数 | 出資額 億円 |
出資比率 % |
会社数 | 追加出資額 億円 |
会社数 | 出資額 億円 |
出資比率 % |
|
海外経済協力基金 |
1 |
30.0 |
30.0 |
1 |
45.8 |
1 |
75.8 |
20.0 |
住友化学工業 |
1 |
13.0 |
13.0 |
1 |
162.2 |
1 |
175.2 |
46.2 |
住友グループ |
5 |
6.5 |
6.5 |
5 |
32.0 |
5 |
38.5 |
10.2 |
石油化学業界各社 |
10 |
22.3 |
22.3 |
9 |
14.0 |
13 |
36.3 |
9.6 |
コントラクター各社 |
9 |
18.7 |
18.7 |
7 |
13.5 |
9 |
32.2 |
8.5 |
商社各社 |
4 |
5.5 |
5.5 |
3 |
3.5 |
4 |
9.0 |
2.4 |
銀行各社 |
4 |
4.0 |
4.0 |
4 |
8.0 |
4 |
12.0 |
3.1 |
合計 |
34 |
100.O |
100.0 |
30 |
279.0 |
37 |
379.0 |
100.0 |
注:
1.上表の住友グループ欄は住友化学工業を除く
2,昭和59年1月26日払込みの追加出資の際に、その他民間会社株主27社のうち20社が追加出資し、他に石油化学全社3社が新たに資本参加
コンビナートの稼働
順調な立ち上がり
コンビナート竣工
着工が遅れていたEGSのEOGプラントも60年2月に完成し、直ちに本格操業を開始した。このエチレン大口需要先であるEOGプラントの稼働開始により、エチレンセンターのPCSは実質フル生産に入った。これでASEAN初の石油化学コンビビナートの第1期計画のプラントはすべて完成した。
60年3月9日、シンガポール石油化学コンビナートの合同竣工式がメルバウ島においてシンガポールのトニー・タン大蔵大臣、杉山和男通商産業省顧問ら両国政府代表や関係企業代表者ら合わせて約300人の出席のもとに挙行された。
コストダウンヘの取り組み
マーケティング
現地化の進展
アジア経済の発展とともに
軌道に乗った事業
シンガポール政府持株のシェルヘの譲渡
PCSおよび誘導品各社の株主構成(平成元年10月現在)
会社名 | 出資会社名 | 出資比率 % |
PCS |
日本シンガポール石油化学(JSPC) |
50 |
TPC |
日本シンガポールポリオレフィン |
70 |
PPSC Phillips Petroleum Singapore Chemicals (Private) Limited |
フイリップスグループ |
85.7 |
DSPL
|
電気化学工業 + |
100 |
EGS
|
シェルグループ
|
70 |
なお、残るPCSのシンガポール政府持株会社保有株式20%については、4年12月、その全量がシェルグループに譲渡された。
TPCのポリプロピレン生産増強
シンガポール石油化学事業の拡張
シンガポールにおけるアクリル酸、MMAモノマー事業の展開
シンガポール政府は平成6年、メルバウ島やサクラ島などジュロン地区沖合いの諸島間を埋め立て最終的に一つの島にする「ケミカルアイランド構想」を立案し、21世紀に向け、日米欧企業進出の受け皿作りに乗り出し、環境整備を進めることとなった。
当社はPCSで増産するプロピレンと、新たに生産するメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)から得られるイソブチレンとを主原料として、アクリル酸とMMAモノマーおよび誘導品の企業化を図ることとした。アクリル酸エステル事業には東亜合成の、高吸水性樹脂事業には住友精化の、MMAモノマー事業には日本触媒の参加を得て、サクラ島にPCSと配管で接続する新たなプラントを建設することを決め、平成7年7月、設計作業を開始した。