ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp
総合化学5社と信越化学の中間決算及び通期予想は以下の通り。
業績の明暗を分けたのは液晶関連と円高。
住友化学は液晶ディスプレー用偏光フィルムの価格下落が響いた。
円高の影響は住友化学が年間で240億円程度、三菱ケミHDも140億円程度とされている。
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三菱ケミカルホールディングス
震災による鹿島地区の停止の影響が上期で146億円(通期で170億円)あり、これを除くと前期(前年)比の減益幅は縮まる。
単位:百万円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益推移(億円)
10/3 | 11/3 | 12/3予 | 増減 | 10/9 | 11/9 | 増減 | ||
ケミカルズ | 69 | 530 | 410 | -120 | 219 | 194 | -25 | |
ポリマーズ | -225 | 550 | 470 | -80 | 243 | 233 | -10 | |
エレクトロ | -14 | 10 | 10 | 0 | 32 | -12 | -44 | |
デザインド | 133 | 365 | 360 | -5 | 208 | 173 | -35 | |
ヘルスケア | 710 | 851 | 770 | -81 | 446 | 397 | -49 | |
その他 | 62 | 45 | 60 | 15 | 6 | 16 | 10 | |
全社 | -73 | -86 | -80 | 6 | -41 | -45 | -4 | |
合計 | 663 | 2,265 | 2,000 | -265 | 1,114 | 957 | -157 | |
震災影響 | -170 | -170 | -146 | |||||
震災影響なし | 663 | 2265 | 2,170 | -95 | 1114 | 1,103 | -11 |
グループ企業別の営業損益は以下の通り。(億円)
三菱レイヨンの貢献が大きい。
10/9 11/9 増減 三菱化学グループ 446 295 -151 田辺三菱製薬グループ 402 361 -41 三菱樹脂グループ 91 88 -3 三菱レイヨングループ 142 229 87 調整 33 -16 -49 合計 1,114 957 -157
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住友化学
情報電子化学(液晶フィルムなど)の価格下落の影響が大きい。
経常損益の減少は持分法投資損益の減少が大きい。(10/9 75億円→11/9 10億円)
PetroRabighは長期の定修が終わり、現在はフル稼働。
特別損失に豪州の株式市況低落による豪州農薬会社Nufarmの株式評価損
289億円を含む。
(前年上期にも計上しているが、2011年3月末には株価が回復し、下期に取り消している。)
単位:百万円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益推移(億円)
10/3 | 11/3 | 12/3予 | 増減 | 10/9 | 11/9 | 増減 | 内訳 | ||||
net 価格差 |
数量差 | コスト差 | |||||||||
基礎化学 | 206 | 170 | -36 | 118 | 125 | 8 | 10 | -22 | 20 | ||
石油化学 | 11 | 150 | 39 | 58 | 78 | 20 | 45 | -35 | 10 | ||
情報電子化 | 261 | 130 | -131 | 171 | 101 | -71 | -185 | 29 | 85 | ||
健康・農業関連 | 233 | 290 | 57 | 144 | 148 | 4 | -25 | 4 | 25 | ||
医薬品 | 287 | 200 | -87 | 147 | 155 | 8 | 33 | -25 | |||
その他 | 9 | 35 | 26 | 26 | |||||||
全社 | -219 | -190 | 29 | -115 | -101 | 14 | 4 | 10 | |||
合計 | 515 | 879 | 750 | -129 | 530 | 540 | 10 | -155 | 39 | 125 |
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三井化学
増収増益となった。フェノールなど基礎化学品が好調。ウレタンは赤字増。
当期損益の減益は、前期に退職給付引当金戻入額14,618百万円の益があったため。
単位:百万円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益推移(億円)
10/3 | 11/3 | 12/3予 | 増減 | 10/9 | 11/9 | 増減 | 内訳 | ||||
net 価格差 |
数量差 | コスト差 | |||||||||
石化 | -34 | 128 | 130 | 2 | 62 | 65 | 4 | 24 | -11 | -10 | |
基礎化学品 | -48 | 204 | 240 | 36 | 65 | 183 | 118 | 92 | 25 | 1 | |
ウレタン | -21 | -90 | -120 | -30 | -43 | -71 | -28 | -43 | -10 | 25 | |
機能樹脂 | -44 | 72 | 105 | 33 | 45 | 47 | 2 | -4 | 2 | 6 | |
加工品 | 8 | 14 | 40 | 26 | 12 | 22 | 9 | -2 | 10 | ||
機能化学品 | 74 | 100 | 120 | 20 | 45 | 55 | 10 | -6 | 12 | 4 | |
その他 | 11 | 1 | -1 | 1 | -6 | -7 | -7 | ||||
全社 | -41 | -25 | -15 | 10 | -13 | -8 | 6 | 5 | |||
合計 | -95 | 405 | 500 | 95 | 174 | 287 | 114 | 61 | 18 | 34 |
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旭化成
住宅が好調。
単位:百万円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益推移(億円)
10/3 | 11/3 | 12/3予 | 増減 | 10/9 | 11/9 | 増減 | 内訳 | |||||
売価差 | うち 為替差 |
数量差 | コスト差 | |||||||||
ケミカルズ | 261 | 644 | 580 | -64 | 373 | 341 | -32 | 173 | -91 | 2 | -207 | |
住宅 | 253 | 365 | 470 | 105 | 101 | 179 | 78 | 78 | ||||
医薬・医療 | 40 | 70 | 85 | 15 | 42 | 56 | 14 | -14 | -3 | 36 | -7 | |
繊維 | -28 | 42 | 35 | -7 | 23 | 21 | -2 | -11 | 2 | -3 | ||
エレクトロニクス | 72 | 143 | 120 | -23 | 107 | 70 | -37 | -109 | -20 | 45 | 27 | |
建材 | 12 | 21 | 25 | 4 | 11 | 8 | -3 | -2 | -4 | 2 | ||
その他 | 18 | 17 | 25 | 8 | 8 | 12 | 4 | 3 | 1 | |||
全社 | -53 | -72 | -100 | -28 | -30 | -50 | -20 | -20 | ||||
合計 | 576 | 1,229 | 1,240 | 11 | 635 | 637 | 2 | 48 | -125 | 162 | -207 |
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東ソー
増収・増益。
単位:百万円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益推移(億円)
10/3 | 11/3 | 12/3予 | 増減 | 10/9 | 11/9 | 増減 | 内訳 | ||||
数量差 | 交易条件 | 固定費他 | |||||||||
石油化学 | 79 | 104 | 151 | 47 | 28 | 79 | 51 | 16 | 15 | 20 | |
クロルアルカリ | -143 | -35 | 15 | 50 | -56 | 1 | 57 | 19 | -2 | 40 | |
機能商品 | 148 | 203 | 171 | -32 | 106 | 100 | -6 | 24 | -21 | -8 | |
エンジニアリング | 20 | 36 | 46 | 10 | 10 | 22 | 11 | 12 | -1 | ||
その他 | 26 | 27 | 27 | 0 | 12 | 14 | 2 | 1 | 1 | ||
合計 | 130 | 335 | 410 | 75 | 101 | 216 | 115 | 72 | -8 | 52 |
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信越化学
半導体デバイスメーカーの在庫調整等で減収となった。
当期損益の減は、前年に過年度法人税等戻し入れが10,698百万円あったため。
単位:百万円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益推移(億円)
10/3 | 11/3 | 12/3予 | 増減 | 10/9 | 11/9 | 増減 | ||
塩ビ・化成品 | 196 | 197 | 93 | 134 | 41 | |||
シリコーン | 249 | 341 | 175 | 174 | -1 | |||
機能性化学品 | 139 | 129 | 60 | 70 | 10 | |||
半導体シリコン | 226 | 389 | 210 | 211 | 1 | |||
電子・機能材料 | 307 | 361 | 180 | 187 | 7 | |||
その他 | 68 | 73 | 42 | 27 | -14 | |||
全社 | -13 | 3 | 2 | 0 | -1 | |||
合計 | 1,172 | 1,492 | 1,550 | 58 | 761 | 804 | 43 |
なお、Shintechの損益は前期比では増益 (ドル建では90→130百万ドルと大幅増)だが、過去の実績からは大きく下回っている。
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各社の営業損益と当期損益対比
三菱ケミカルと住友化学の当期損益は、高収益の医薬子会社の少数株主持分控除が大きいため、営業損益、経常損益と比較し、大きく減少する。
武田薬品の中間決算は、売上高が円高の影響(-287億円)と米国での糖尿病治療薬、消化性潰瘍治療剤の減収などにより、全体として減収となり、これが影響して減益となった。
売上高 | 営業損益 | 経常損益 | 当期損益 | 配当 | ||
中間 | 期末 | |||||
10/9中 | 714,025 | 221,619 | 225,473 | 144,211 | 90.0 | |
11/9中 | 702,502 | 211,046 | 209,551 | 135,660 | 90.0 | |
増減 | -11,523 | -10,573 | -15,922 | -8,551 | ||
11/3 | 1,419,385 | 367,084 | 371,572 | 247,868 | 90.0 | 90.0 |
12/3予(7/29) | 1,450,000 | 390,000 | 395,000 | 250,000 | 90.0 | 90.0 |
12/3予(今回) | 1,540,000 | 270,000 | 270,000 | 170,000 | 90.0 | 90.0 |
同 増減 | 90,000 | -120,000 | -125,000 | -80,000 |
2012年3月期の損益予想については、今回、7月29日発表のものから大きく下方修正した。
武田薬品は本年9月末に、スイスのチューリッヒに本社を置く Nycomed の96億ユーロでの買収を完了し、100%子会社とした。
2011/5/23 武田薬品、Nycomed社を買収
武田薬品「ナイコメッド社について」http://www.takeda.co.jp/pdf/usr/default/j02_47220_3.pdf
同社では、米国での糖尿病治療薬の伸び悩みに加え、この買収の影響と為替レートの見直しを加味して、前回発表の予想から修正した。
営業損益の下方修正の内訳は以下の通り。(億円)
Nycomed 買収
の影響Nycomedの営業損益(下期) 120 無形資産、ノレンの償却 -200 棚卸資産の時価評価 -570 小計 -650 糖尿病治療薬等の販売減 -390 円高の影響 -160 合計 -1,200 Nycomed買収の会計処理については、買収後1年以内に会計監査人による監査を経て確定する。
このため、現時点での予想値は同社による見通しで、確定額ではない。
なお、米国での糖尿病治療薬、消化性潰瘍治療剤の販売状況は以下の通り。(億円)
2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 上期 | 2011 年間予想 |
前年比 | |||
2010 | 2011 | 増減 | |||||||
糖尿病治療薬 (ピオグリタゾン) |
3,186 | 3,017 | 2,974 | 3,062 | 1,551 | 1,394 | -157 | 2,610 | -452 |
消化性潰瘍治療剤 (ランソプラゾール) |
452 | 1,731 | 1,190 | 428 | 315 | 140 | -175 | 235 | -193 |
ーーー
武田薬品は11月4日、移転価格税制の適用による二重課税の排除を求め、2008年7月に国税庁に対し米国との相互協議を申し立てたが、国税庁から、相互協議が合意に至らず終了した旨の通知を受領したと発表した。
2006年6月に、米国アボットとの50:50の合弁会社であったTAPファーマシューティカル・プロダクツ(TAP:その後会社分割)との間の2000年3月期から2005年3月期の6年間の製品供給取引等に関して、米国市場から得られる利益が武田に過少に配分されているとして、移転価格税制に基づき、大阪国税局より所得金額で6年間で1,223億円の所得の更正を受け、約570億円の追徴税額を課せられたと発表した。
これに対し、武田薬品は、
@TAPとの取引価格はアボットの合意なしには決められず、独立企業間価格であり、移転価格税制が適用されるべきものではない、
A価格を安くすればTAPの利益が増えて半分がアボットにいくため、武田にとってTAPに所得を移転する意図や動機はない、
として、徹底抗戦の構えで、追徴税額は返還されるものとみなし、業績は修正せず、追徴分は貸借対照表には固定資産の「長期仮払税金」として計上した。
2006/6/29 武田薬品、移転価格税制に基づく更正
付記
同社は、追徴税を支払った時点では、監査法人トーマツの「仮払い処理が妥当である」との判断に基づき、当該追徴税を長期仮払金として処理したが、その後、納付者が不服申立て等を行っている場合、あるいは、その意向がある場合であっても、一律に全額費用処理する方法に監査法人トーマツが意見を変更したとの連絡を受け、追徴税額の全額を2006年9月中間期の連結損益計算書の当期税額に含めて計上した。
米国側との相互協議は、日本で更正した額を輸出価格の値上げとして米国で追加でコスト算入して利益を減らし、米国での税金を減らすというもの。
武田の主張の通り、通常は50/50JVとの取引価格は独立企業間価格とみられ、移転価格税制は適用されないため、米国側が応じないのは当然である。
同社は相互協議の申請に伴って一旦中断していた異議申し立て手続きにつき大阪国税局へ再開を申し入れる。
移転価格税制では、信越化学が2008年に約110億円の追徴課税を受けていた問題で、還付加算金を含めて日米合計で約119億円が還付された。
2010/6/11 信越化学の移転価格課税、119億円還付へ
この2件については、国税庁の認識が明らかにおかしい。
10月14日のMichael Woodward社長解任、その後の同氏による問題指摘に端を発したオリンパス事件は、11月8日に会社側が事実を認め、過去の損失先送りの穴埋め策であったことが明らかになった。
事実関係は以下の通り。
1)Gyrus社買収
買収額 935百万ポンド(約2,117億円)
ファイナンシャルアドバイザーへのフィー
(日本の証券会社出身者が代表を務める米国のAXESとケイマン諸島のAXAMインベストメント)
基本報酬 500万ドル 2006/6 成功報酬
買収金額の5%現金15%
(上限1200万ドル)1200万ドル 2007/11 株式オプション85% 優先株発行 ワラント付与
→買取
5000万ドル
2008/9優先株買い取り
(再上場断念により
買取請求を受ける)オプション分 1億7700万ドル 2008/9 優先株値上り分 4億4300万ドル 2010/3
「価値上昇」
「第三者への売却阻止」合計 6億2000万ドル 総合計 6億8700万ドル Gyrusの元最高幹部は、「AXESやAXAMという名前は聞いたこともなく驚きだ。オリンパスのアドバイザーとは接触したことも、電話を受けたこともない」と証言している。
2)子会社買収
いずれも2006年に40%を買収し、2008年4月に追加買収で100%とした。
(オリンパスと関係の深い経営コンサルタント会社から買収)
半年後の2009年3月に減損処理した。
社名 事業 買収金額 減損処理 アルティス 環境ソリューション 28,812百万円 19,614百万円 NEWS CHEF フードキット 21,408百万円 17,699百万円 ヒューマラボ 健康食品・化粧品販売 23,199百万円 18,370百万円 合計 73,419百万円 55,683百万円
3) 含み損 1千数百億円とされる。
バブル時の財テク失敗による金融商品の含み損は1990年代に1千数百億円あり、「飛ばし」で社外に移した。
2000年頃には相場の回復で含み損は500億円程度に減ったが、処理を先送りした結果、再び1千数百億円になった。
不思議なのは、Gyrus社買収での多額のフィーの支払いや国内3社の買収と直後の減損処理等について、全国紙が報道したのはWoodward社長の問題指摘(および同氏が英米の監督官庁に資料を渡したとの報道)があってからである。
しかし、この問題は元日本経済新聞の論説委員兼編集委員で、月刊誌「選択」編集長もしていた阿部重夫氏が発行する月刊誌FACTAが早くに取り上げている。
7月15日のFACTA Online「オリンパスへの公開質問状と宣戦布告」では、3子会社の買収金額と直後の減損処理、ジャイラスの買収での優先株などについてオリンパスに質問している。(同社への質問がゼロ回答のため、公開した。)
FACTAの8月号は「オリンパス 『無謀M&A』 巨額損失の怪」を掲載、詳細に問題点を示した。
問題の3子会社は「オリンパスと関係の深い経営コンサルタント会社が05年ごろに休眠会社を業態転換させて活動を再開させたり、新規に立ち上げたりして、08年にオリンパスに売却した」としている。
ジャイラスについては、「製造業でありながら、総資産の半分以上をのれん代(買収された企業の時価評価純資産と買収価額との差額)が占め」、「株式市場は『買収価格は株価に40%ものプレミアムを上乗せしていて割高な買収』と冷ややかな目で見ていた。にもかかわらず、10年3月期にはさらに599億円出して優先株まで買い取った。この優先株取得についても、いったい誰から取得したのか不明で、『情報開示の面で大きな問題』と指摘するアナリストもいる。」
更に「コンサル会社との怪しい関係」について説明している。
Woodward氏は次のように述べている。
すべては、雑誌「ファクタ」8月号に載った記事が始まりだ。あれがなければ、私は今でも何も知らないまま社長を続けていただろう。
今回明らかになった過去の損失先送りについては10月24日のFACTA Online 「野村の元オリンパス担当、S氏の独り言」が、「闇株新聞」なるブログを紹介し、次のように述べている。
S氏は、90年代にはじけたバブルの損失の後処理をオリンパスがしていなかったとしており、それが雪だるま式に膨らんで、この巨額の背任M&Aにいたったと書いていますが、これはFACTAの見立てとほぼ一致している。
バブル期の1980年代から延々と、トップ主導で、財務担当役員やごく一部の財務担当者の間でひそかに「処理」され続けてきた。
これらの「損失先送り」などの処理も、ごく少数の「長い付き合い」の外部の人間にだけ相談されていたのです。* 10月23日のNew York Times はファイナンシャルアドバイザー2名の名前を挙げている。
ーーー
何よりも、損失隠しが20年間も続いていたのに、取締役会も監査法人も問題視しなかったのは不思議である。
また、3子会社の買収価格の異常さやGyrus買収の際のフィーの異常さについて問題視しなかったことも同様である。
アナリストや経済紙がこれまで問題視しなかったのも不思議だし、FACTAが取り上げて以降も最近まで、各紙がこれを取り上げなかったのも不思議である。
付記
朝日新聞によると、オリンパスはあずさ監査法人から不正があると指摘され、直後に解約していた。
あずさ監査法人は2009年に、オリンパスがジャイラスを買収したときに支払った助言会社への報酬の大きさを不審に思い、理由や決算への反映の仕方でオリンパス側と意見が対立した。
また、ベンチャー3社買収で、3社にはそれだけの価値はないと指摘し、買収額と実際の企業価値の差額を損失計上するよう要求、オリンパスは2009年3月期決算で、あずさ監査法人の指摘を反映する形で損失を計上した。監査法人は2010年3月期からは新日本監査法人に変更された。
(含み損失隠しについては監査法人は見抜けなかったのであろうか?)
付記
警視庁はオリンパスに経理資料の提出を求めるなど、捜査に向けた情報収集を開始した。
証券取引等監視委員会も、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)に当たる可能性があるため、すでに調査を始めている。
2011/11/11 中国、消費者物価伸び鈍化
中国国家統計局は11月9日、10月の消費者物価指数(CPI)が前年同月に比べ5.5%上昇したと発表した。
伸び率は7月の6.5%をピークに3カ月連続で鈍り、5カ月ぶりに5%台に低下した。
一時は前月比50%を超える上昇を示していた豚肉は38.9%の伸びにとどまった。
'11/5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
CPI | 5.5 | 6.4 | 6.5 | 6.2 | 6.1 | 5.5 |
うち食品 | 11.7 | 14.4 | 14.8 | 13.4 | 13.4 | 11.9 |
(豚肉) | (40.4) | (57.1) | (56.7) | (45.5) | (43.5) | (38.9) |
非食品 | 2.9 | 3.0 | 2.9 | 3.0 | 2.9 | 2.7 |
PPI | 6.8 | 7.1 | 7.5 | 7.3 | 6.5 | 5.0 |
他方、10月の工業生産や社会消費品小売総額は、前年同月比の増加率がいずれも9月を下回った。
欧州債務危機や米経済の不振を背景に、中国の輸出の伸びの鈍化が鮮明になっている。
最大の輸出先である欧州の債務危機が広がりをみせるなか、景気の下振れ懸念は根強い。
温家宝首相は10月6日、「国内の物価水準は10月以降、明らかに下落している」と表明、インフレが終息に向かいつつあるとの認識を示し、マクロ経済政策を機動的に「微調整」する方針を表明した。
2011/11/12 三菱商事、チリの銅鉱山・製錬所運営会社に出資
三菱商事は11月10日、英国のAnglo American plc から同社が100%保有するチリの銅資産権益を保有するAnglo American Sur S.Aの株式24.5%を53.9億米ドルで買収すると発表した。
Anglo American から打診を受けたものとされるが、Anglo American は別途、チリの国営資源大手チリ銅公団(CODELCO:Corporacion Nacional del Cobre de Chile)に株式の49%購入のオプションを与えており、三井物産がこの資金を供給する契約を締結している。今後、紛争を引き起こす可能性がある。(後述)
Anglo American Surは、チリ国内にLos
Bronces銅鉱山、El Soldado銅鉱山、Chagres銅製錬所、並びに大型の未開発鉱区などの優良資産を保有する。
現在の銅の生産量は年間約26万トンで、Los Bronces銅鉱山の拡張後(2012年フル操業)は合計生産量は年間約44万トンとなる。
Los Bronces銅鉱山:現在生産量 22万トン→2012年 40万トン
近隣にLos Sulfatos鉱区及びSan Enrique Monolitoト鉱区の有望未開発鉱区が存在
El Soldado銅鉱山:生産量 4万トンChagres銅製錬所:年間約14万トンの銅アノードを生産
ーーー
チリ銅公団(CODELCO)によると、同公団はAnglo American Surの株式の49%を取得する権利を有しており、そのために三井物産との間で短期つなぎ融資の契約を締結した。
三井物産の発表(10月12日)によると、三井物産はCODELCOとの間で、CODELCOによるAnglo American Surの最大49%の株式取得資金に関し、67.5億米ドルを上限とする短期つなぎ融資契約を締結した。
また、CODELCOが取得したAnglo American Sur 株式の半分を譲渡することによって返済する権利を借主に与える契約も締結した。
さらに、両社の多面的な関係を構築する一環として、両社は下記の銅売買契約を締結した。
銅売買契約 (1)期間 10年間 (2012年〜2021年) (2)年間平均買取数量 銅精鉱 65,000 DMT
銅地金 12,000 MT
合計 30,000 MT(銅地金換算)(3)買取価格 市場価格及び市場取引条件により決定
Anglo Americanは今回の売却に当たり、CODELCOへの売却はAnglo Americanの持分の49%であり、三菱商事への売却部分は除かれるとしている。
これに対し、CODELCOは、株式取得の権利を確保するための法的措置を模索しているとし、「われわれの権利は明確だ。49%の株式を取得する」と主張した。
そのうえで、CODELCOの株式取得権利を侵害しない限り、Anglo
Americanが残りの株式を売却するのは自由だ、と語った。
付記
サンティアゴの裁判所は11月15日、CODELCOの求めに応じ、Anglo American に対し、Anglo American Surの株式の追加売却を禁じる命令を下した。三菱商事が取得した株式には影響しない。
2012年1月2日、CODELCOはAnglo American Surに対し、49%の株式を取得する権利を行使すると発表した。株式取得のため「あらゆる手段を講じる」としている。
Anglo Americanは月末までに回答する方針。
ーーー
三菱商事は他に、チリ国で以下の権益を保有している。
1)Escondida 銅鉱山プロジェクト(8.25%)
チリ北部にある世界最大の銅鉱山で、2009年の年間銅生産量は約110万トン。
日本側3社は二回にわたりIFCから権利を取得した。各社の権益比率は以下の通り。(%)
当初 1988 2010/6 BHP Billiton 57.50 57.50 57.50 Rio Tinto 30.00 30.00 30.00 International Finance
Corporation (IFC)12.50 2.50 - 三菱商事 - 7.00 8.25 三菱マテリアル - 1.00 1.25 日鉱金属 - 2.00 3.00 合計 100.00 100.00 100.00
2)Los Pelambres銅鉱山プロジェクト(5%)
露天堀の銅鉱山としてはチリ国内最大級の生産規模を持つ銅鉱山。チリの首都Santiagの北約200kmの位置にある。銅の副産物としてモリブデンも採掘される。
英国Antofagasta PLC(事業はチリ主体)が所有しており、日本側は1997年5月に同社から取得した。
このプロジェクトには日本輸出入銀行が多額の融資を行っている。2009年の生産量は銅量で323千トン。
各社の権益比率は以下の通り。(%)
Antofagasta PLC 60.00 Nippom LP
Resources日鉱金属 15.00 三井物産 1.25 丸紅 8.75 MMLP
Holding三菱マテリアル 10.00 三菱商事 5.00 合計 100.00
3)鉄鉱石生産販売会社 Compañía Minera del Pacifico(CMP)(25%)
チリに本社を置く同国内最大の鉄鉱石生産企業で、チリの年間鉄鉱石生産量のほとんどを占める。
チリの資源大手CAP(旧Compañía de Acero del Pacífico S.A. de Inversiones)が所有していたが、2010年に三菱商事が株式の25%を取得した。取引は2つに分かれる。
・三菱商事とチリの鉄鉱石生産会社Compania Minera del PacificoのJVのCompañia Minera HuascoがLos Colorados鉄鉱山を運営していたが、JVの50%持分と交換にCMPの15.9%を取得
・三菱商事は401百万ドルの増資に応じ、合計25%とする。
・三菱商事の取得価額は合わせて924百万ドルとなる。
参考 最近、商社が相次いで資源への投資を行っている。
2011/5/21 住友金属鉱山、チリの銅鉱山開発に参加 (住友金属鉱山と住友商事)
2011/11/3 丸紅と三菱商事、石炭事業を拡大 丸紅(カナダ)、三菱商事(豪州クイーンズランド州)
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2011/6 伊藤忠、コロンビアの炭鉱に出資
伊藤忠は米国Drummond Company との間で、同社グループが100%保有しているコロンビアで操業中の炭鉱及び輸送インフラ資産に20%出資する契約を締結したと発表した。
約15.235億米ドル(約1,265億円)で取得すると共に、同炭鉱から産出される一般炭の日本向け独占販売権を獲得する。
炭鉱は露天掘りで埋蔵量は19億トン、生産数量は25百万トン/年。
インフラは40.96%出資の鉄道会社と100%保有の貨車及び専用積出港。
2011/11/14 BP、Pan American Energy の持株のBridas Corporationへの売却を取り消し
BPは11月7日、Bridas CorporationからPan American Energy の持株60%の購入契約を終了するとの通知を受け取ったと発表した。
BPは2010年11月28日、アルゼンチン最大の原油輸出企業のPan American Energyの持株(60%)を、残り40%を保有するBridas Corporationに売却する契約を締結したと発表した。
Bridasは対価として70.6億ドルを現金で支払う。うち35.3億ドルを前払いとして12月に2回に分けて支払い、残りを2011年前半に予定される取引完了時に支払う予定であった。
Bridas CorporationはアルゼンチンのCarlos Bulgheroni氏傘下のBridas Energy Holdings が50%、中国のCNOOCが50%を保有している。
2010/12/1 BP、アルゼンチンのPan American Energy の持株をBridas Corporationに売却
現時点でアルゼンチンと中国の独禁法当局の承認が得られていない。
契約では全ての条件が満たされない場合は、2011年11月1日以降、双方はいつでも契約を終了できることとなっている。
BPは、前受金として受け取り、(売却益ではなく)短期債務として処理している35.3億ドルを11月14日に返金する。
BPは長期に保有してきた貴重な資産を取り戻してhappyとしており、当面は資金確保の必要がないため、非戦略的資産の売却のみとし、この売却の代わりに追加で資産を売却する計画はないとしている。
当初予定していた450億ドルの資産売却を2013年末までに延長する。
BPはまた、契約上、当局から独禁法上の認可などを得る責任はBridas Corporationのみにあるとし、Bridas を非難した。
CNOOCでは、Bridas Corporationは今後、これまで通り、40%株主としてPan American Energy に参加を続けるとし、CNOOCはBridas Energy Holdingsとのパートナーシップを強化し、アルゼンチンでの活動を更に拡大すると述べた。
ーーー
本件は非常に不思議な話である。
当初は2011年前半に取引完了が予定されていたが、今まで延び延びとなった。
しかもその理由が、アルゼンチンと中国の承認が得られていないことという。
両国が何かを問題として認めなかったという事情はなさそうである。
通常はなにかが問題の場合は、企業と当局が交渉して問題の解決を図るが、その動きもない。
この程度の買収が競争制限を起こすとみなされるとは考えにくい。
CNOOCのアルゼンチンでの活動の拡大を中国が承認をしないというのは理解できない。
買い手側が契約後に何らかの理由で解約を図り、解約料の支払いを避けるために、契約の期限が来るまで引き延ばした可能性がある。
ーーー
これは中国の石油会社が本年に買収に失敗した二番目のケース。
本年2月にPetroChinaがカナダの天然ガス最大手のEncana Corporation から天然ガスの権益の50%を54億カナダドルで買収することで合意したと発表したが、6月に条件が折り合わず、交渉を中止している。
2011/2/16 PetroChina、カナダの天然ガス権益取得
2011/11/15 電気化学、Sinochemにアセチレン製造技術を供与
電気化学は11月8日、Sinochemに対し乾式アセチレン発生技術を供与したと発表した。
Sinochemは、この契約に基づき、平煤神馬集団に同技術のサブライセンスを行った。
他に中国の数社より当技術の引合いがあり、順次対応する予定。
Sinochem はエネルギー、農業資材、化学品、ファイナンス、不動産をコア事業として展開する国営企業。
平煤神馬集団は、河南省、湖北省、江蘇省、上海、陜西省をはじめ、中国全土で事業展開している大型国有企業グループ で、主要事業は石炭、ナイロン66、塩ビ、苛性ソーダなど。
中国石炭工業協会が2010年11月に発表した「中国石炭企業ベスト100」ランキングでは、
第1位は神華集団
第2位は河南煤業化工集団
第3位は平煤神馬エネルギー源化工集団となっている。
乾式アセチレン発生設備は、粉砕したカーバイドと必要最小量の水を反応させてアセチレンガス発生させ、副生する消石灰を数%の水分を含む乾燥状態で排出することを特色とした設備。
カーバイド法アセチレン
・ 石灰石を焼いて生石灰に還元。CaCO3→CaO+CO2 ・ 生石灰とコークスの混合物をカーバイド炉に投入し、電極放電で得られる2,000度C以上の高温下でカーバイドを製造。 CaO+3C→CaC2+CO ・ カーバイドからアセチレンと水酸化カルシウム(消石灰)を製造。 CaC2+2H2O→C2H2+Ca(OH)2
中国ではアセチレン法塩ビ生産の拡大で、カーバイドの生産量も増加している。
しかし、中国のカーバイドメーカーは年産5万トンに満たない企業が殆どで、その多くが非効率な小規模設備で生産しており、環境問題や電力不足の要因となっている。
中国政府は2004年以降、過剰能力、廃棄物対策、公害防止などの理由で、小規模設備の規制を続けてきた。
2006年5月、カルシウム・カーバイド工場について、年1万トン以下の炉、開放型の炉、環境基準に満たない炉は停止。
2010年8月、4万トン以下の多数の老朽カーバイド工場に停止命令が出された。アセチレン法PVCについては、2004年5月に年産8万トン以下の新設を禁止、2005年12月にはこれを12万トン以下に変更した。
2008年11月に行われた第3回日中省エネルギー・環境総合フォーラムで、中国カーバイド工業協会から日本カーバイド協会に対して、環境・省エネ対策について打合せしたいとの申し入れがあったことがきっかけとなり、その後の工業会等での協議を経て、 電気化学の乾式アセチレン発生設備の実績が認められた。
電気化学では、今般の技術供与が、同社が日本のカーバイド化学のパイオニアとして果たすべき社会的責任であると認識しているとしている。
中国ではカーバイド法PVCは70%以上を占めている。
なお、中国では、2000-05年の5カ年計画で水銀法電解は廃止され、現在は使われていない。
2011/11/16 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉
野田首相は11月13日、APEC首脳会議でTPP交渉への参加を表明した。カナダやメキシコも参加の意向を示した。
TPP(Trans-Pacific Partnership)はシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国(通称 P4)が域外への経済的影響力を向上させることを戦略的な目的として締結し、2006年5月に発効した。
他に規定がある場合を除いて、発効と同時に他の締約国の原産品に対する全ての関税を撤廃すると規定しているが、実際は下記のとおり順次撤廃する。
ブルネイ チリ ニュージーランド シンガポール 発効時 92% 発効時 89.39% 発効時 96.5% 発効時 100% 2010年 残り1.7% 2009年 残り0.94% 2008年 残り0.03% 2012年 残り1.1% 2011年 残り0.29% 2010年 残り1.54% 2015年 残り5.2% 2015年 残り0.12% 2015年 残り1.92% 2017年 残り9.26%
4か国に加え、米、豪、マレーシア、ベトナム、ペルーの合計9か国が交渉を行っており、既に市場の相互開放に向けた大枠を確認した。
今回の参加表明に当たり、野田首相は「TPPはアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の基礎となる」と強調した。
FTAAPはアジア太平洋経済協力(APEC)の加盟国全域(21カ国:下図の赤字表示)において、自由貿易圏を構築する構想の名称。
2010年のAPECの首脳宣言「横浜ビジョン」では、下記のように記載されている。
「我々は、APECの地域経済統合の課題を進展させるための主要な手段であるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現に向けて具体的な手段をとる。
FTAAPは,中でもASEAN+3、ASEAN+6及び環太平洋パートナーシップ(TPP)協定といった、現在進行している地域的な取組を基礎として更に発展させることにより、包括的な自由貿易協定として追求されるべきである。」
関係各国の立場は以下の通り。
TPP交渉参加国 |
ASEAN 10か国 |
中国は米国に対抗するため、ASEANを核とする自由貿易圏の構築で巻き返しを図る。
中国はASEAN+3のFTA締結を主張しているが、日本は中国を警戒、ASEAN+6を主張している。
ASEAN+6のFTA締結状況は以下の通り。
ASEAN 日本 中国 韓国 インド 豪州 NZ ASEAN ーーー ○ ○ ○ ○ ○ ○ 日本 ○ ーーー ○ 中国 ○ ーーー ○ 韓国 ○ ーーー ○ インド ○ ○ ○ ーーー 豪州 ○ ーーー NZ ○ ○ ーーー
* 韓国は米国(及びEU、EFTA)とFTAを締結している。
TPP協定交渉では、21分野が交渉対象となる。
(1)物品市場アクセス |
(作業部会としては、農業、繊維・衣料品、工業) 物品の貿易に関して、関税の撤廃や削減の方法等を定めるとともに、内国民待遇など物品の貿易を行う上での基本的なルールを定める。 参考 2010/11/10 TPP参加と農業問題 |
|
(2)原産地規則 | 関税の減免の対象となる「締約国の原産品(=締約国で生産された産品)」として認められる基準や証明制度等について定める。 | |
(3)貿易円滑化 | 貿易規則の透明性の向上や貿易手続きの簡素化等について定める。 | |
(4)SPS(衛生植物検疫) Sanitary and Phytosanitary Measures |
食品の安全を確保したり、動物や植物が病気にかからないようにするための措置の実施に関するルールについて定める。 | |
(5)TBT(貿易の技術的障害) Technical Barriers to Trade |
安全や環境保全等の目的から製品の特質やその生産工程等について「規格」が定められることがあるところ、これが貿易の不必要な障害とならないように、ルールを定める。 | |
(6)貿易救済(セーフガード等) | ある産品の輸入が急増し、国内産業に被害が生じたり、そのおそれがある場合、国内産業保護のた めに当該産品に対して、一時的にとることのできる緊急措置(セーフガード措置)について定める。 |
|
(7)政府調達 | 中央政府や地方政府等による物品・サービスの調達に関して、内国民待遇の原則や入札の手続等のルールについて定める。 | |
(8)知的財産 | 知的財産の十分で効果的な保護、模倣品や海賊版に対する取締り等について定める。 | |
(9)競争政策 | 貿易・投資の自由化で得られる利益が、カルテル等により害されるのを防ぐため、競争法・政策の強化・改善、政府間の協力等について定める。 | |
サービス | (10)越境サービス | 国境を越えるサービスの提供(サービス貿易)に対する無差別待遇や数量規制等の貿易制限的な措置に関するルールを定めるとともに、市場アクセスを改善する。 |
(11)商用関係者の移動 | 貿易・投資等のビジネスに従事する自然人の入国及び一時的な滞在の要件や手続等に関するルールを定める。 | |
(12)金融サービス | 金融分野の国境を越えるサービスの提供について、金融サービス分野に特有の定義やルールを定める。 | |
(13)電気通信サービス | 電気通信サービスの分野について、通信インフラを有する主要なサービス提供者の義務等に関するルールを定める。 | |
(14)電子商取引 | 電子商取引のための環境・ルールを整備する上で必要となる原則等について定める | |
(15)投資 | 内外投資家の無差別原則(内国民待遇、最恵国待遇)、投資に関する紛争解決手続等について定める。 | |
(16)環境 | 貿易や投資の促進のために環境基準を緩和しないこと等を定める。 | |
(17)労働 | 貿易や投資の促進のために労働基準を緩和すべきでないこと等について定める。 | |
(18)制度的事項 | 協定の運用等について当事国間で協議等を行う「合同委員会」の設置やその権限等について定める。 | |
(19)紛争解決 | 協定の解釈の不一致等による締約国間の紛争を解決する際の手続きについて定める。 | |
(20)協力 | 協定の合意事項を履行するための国内体制が不十分な国に、技術支援や人材育成を行うこと等について定める。 | |
(21)分野横断的事項 | 複数の分野にまたがる規制や規則が、通商上の障害にならないよう、規定を設ける。 |
2011/11/17 東ソー・南陽事業所の第二VCMプラントで爆発事故
11月13日午後3時24分ごろ、
東ソー・南陽事業所(山口県周南市)構内にある第二VCMプラント(年産能力55万トン)で爆発・火災が発生、社員1人が死亡した。
14日午後3時30分に消防が鎮火宣言した。
同工場では13日6時頃、EDCプラント不具合が生じ稼働を停止、点検中だった。
10人が午前6時ごろから、不具合箇所から約100メートルの場所で、塩ビモノマーなどを貯蔵タンクに一時抜き出す移液作業をしていたという。
塩ビモノマーを精製する工程に直径10メートルの空洞ができており、ここで爆発が起きたとみている。
2次災害を防ぐためなどとして、同事業所全体の約8割のプラント稼働を緊急停止した。
付記
東ソーは11月18日、南陽事業所の排水口からの排水に含まれるEDCが排水基準値を超過していることが判明したと発表した。
漏えいしたEDCが冷却用散水とともに流出したと推測される。
同社では冷却用散水を停止し、土嚢を構築してプラント外への流出を防止する。付記 (2011/12/10 日本経済新聞)
苛性ソーダに供給懸念
2010年度実績では、
需要:内需356万トン、輸出64万トン
能力:東ソー137万トン、その他283万トン、合計420万トン
うち、事故で停止90万トン、稼働能力330万トンで、国内で26万トン不足となる。
同社はわが国最大のVCMメーカー。
PVCでは大洋塩ビに属し(ペーストは東ソーとして製造販売)、各工場にVCMを供給するとともに、隣接する徳山積水にも供給するほか、中国や東南アジア子会社向けを含め、大量の輸出を行っている。
能力は以下の通り。(単位:千トン)
VCM PVC
南陽 No.1 250 No.2 550 No.3 400 小計 1,200 四日市 254 合計 1,454
大洋塩ビ
東ソー 68%
三井化学 16%
電気化学 16%電気化学・千葉 90 VCM
京葉モノマーとスワップ
(パイプ)東ソー・四日市 310 東ソー四日市からパイプ 三井化学・大阪 158 南陽からタンカー輸送 小計 558 東ソー
(ペースト塩ビ)南陽 28 パイプ 徳山積水工業
積水化学 70%
東ソー 30%南陽 114 東ソー南陽からパイプ 合計 700
事故を起こした第二VCMは、山口県などから停止命令を受けた。
残る2基も法定の定期修理などで現在は停止しており、国内PVCの減産は必至で、海外のPVC子会社も原料調達で対応を迫られる。
宇田川社長は記者会見で、「損失額はまだ計算できないが、業績の下方修正を行う可能性がある」とした上で、100億円単位の復旧費用がかかる見通しを示した。
東ソーは11月15日に取締役会を開催し、今回の事故による当期の業績が不透明であることから、第2四半期決算発表で3円とした中間配当を無配とし、同じく3円としていた期末配当は未定に修正した。
ーーー
付記 11月18日夜 発表
同事業所内の塩ビモノマー設備は現在、1−3号機すべてがなお停止している。
第一塩ビモノマー設備(年産25万トン)は定修のため停止中。
第三塩ビモノマー設備(40万ン)は、火災事故の原因特定が必要なことから自主的に停止している。
同事業所のその他のプラントでは、東ソー・エスジーエムの石英ガラス工場に建屋・設備損傷の被害が生じ、現在運転停止中。
また、二次災害防止のため、以下の製造設備、連結子会社工場が現在自主的に停止している。今後、安全を確認し次第、順次再開する。
【停止中】
・ ポリエチレン(LDPE)
・ クロロプレンゴム(CR)
・ クロロスルフォン化ポリエチレン(GSM)
・ ペースト塩ビ
・ ジルコニア
・ 一酸化炭素
・ アニリン
・ 日本ポリウレタン工業
【稼動中】
・ 電解(最低ロードで稼働中)
・ 動力
・ セメント
・ 重曹
・ 臭素
・ エチルアミン
・ ハイシリカゼオライト
・ 東ソー ・ ファインケム
・ 東ソー ・ エフテック
・ 東ソー有機化学
・ 東ソー ・ シリカ
付記 ペースト塩ビは12月後半に生産開始した。
なお、同社が2012年2月3日に発表した損益予想では、
第二・第三VCMは3月末まで停止
プロセスの異なる第一VCMは3月1日の運転再開
を想定している。
WTI原油価格が高騰している。
10月4日に本年最安値の75.67$/bbl
をつけた後、上昇に転じ、10月14日には90$を超えた。
11月7日には95.52$、15日には99.37$となり、16日に100$を超え、一時102.89$を付け、終値は102.59$となった。
(その後の時間外取引で103.37$となった。)
付記 その後、17日は98.82$、18日は97.41$と下落。
Cushing の余剰在庫解消(下記)が期待したほどは見込めないのではないかとの懸念。
他方、北海ブレントは北海油田のトラブル、リビア紛争による軽質・低硫黄の高品質原油の途絶で急騰し、WTIとの格差は6月央には22$、10月央には一時28$近くにまでなった。
しかし11月16日は、欧州債務問題への懸念やリビアの石油生産増の期待で、終値は111.88$に下がり、WTIとの格差は9.29$にまで縮まった。
最近までの北海ブレントとWTIの価格差にはいろいろの理由がある。
基本的には米国経済の低迷があるが、WTI原油の受渡し制度の問題や、欧州と異なり、リビア原油の影響がほとんどないことなどである。
WTI(West
Texas Intermediate)は、米国テキサス州で産出される原油。
生産量は多くないが、米国の石油先物市場であるNYMEXが一日数億バレル の取引を行っているため、世界の指標となっている。
WTI原油の市場取引の大部分は売買差額のみの決済で、現物の受け渡しはほとんど発生しないが、現物はオクラホマ州Cushingにある貯蔵庫のみで受渡がされることとなっている。
付記
20世紀の初め、Cushingは近辺の油田の開発・製造の中心で、2つの製油所が稼働していた。
その後、油田が枯渇し、重要性は低くなったが、無数のパイプラインや石油タンク群が残っており(市のニックネームは "Pipeline Crossroads of the World")、このためNYMEXが1983年にWTI原油の公式受け渡し場所とした。
CushingにはWTI原油のほか、ノースダコタ州のオイルシェールなどが集まり、更に、カナダ・アルバータ州の原油やオイルサンドを処理した合成原油が下記のKeystone XL
PipelineやEnbridge Energyのシカゴ経由のパイプラインで運ばれている。
(なお、Keystone Pipeline はCushingの北のネブラスカ州Steel Cityから分岐して東のイリノイ州Patokaにも伸びている。)
他方、Cushing から大需要地かつ輸出基地のあるメキシコ湾岸地域に送り出すパイプラインは存在しないため、割高なタンクローリーや列車、バージを利用するしかない。
昨年末からCushingの在庫が積みあがっており、投機家の思惑も重なって売り浴びせられていた。
なお、米国の石油在庫は現在減少基調にあり、Cushingの在庫は、4月に付けた史上最高水準から25%も減っている。 これが最近の価格上昇の一つの理由である。
11月16日のWTI原油価格の急騰の理由に、Cushingの在庫に影響を与える発表があった。
カナダのパイプライン運営会社 Enbridge Energy
Partnersは11月16日、米石油大手ConocoPhillipsから米テキサス州とオクラホマ州を結ぶ Seaway Oil
Pipelineの権益の50%を1,150百万ドル取得することで合意したと発表した。
残り50%の権益を持つ同業の米Enterprise Products Partners LP と共同で同パイプラインの運営にあたる。
Seaway Pipeline はこれまで、輸入原油をFreeport, TXからCushing に輸送していた。
EnbridgeとEnterprise Productsは同日、このパイプラインを2012年第2四半期までに逆向けにし、WTI原油を受け渡し場所のCushingから製油所の集まるメキシコ湾岸に輸送すると発表した。
Seaway Pipelineの輸送能力は当初は15万bbl/dだが、2013年には40万bbl/dに拡大する。
更に、カナダからのKeystone
Pipelineを運営するTransCanadaも、Cushingから
Seaway Oil Pipelineの逆送を期待する声は以前から多かったが、ConocoはWTI価格が安い方が精製マージンが大きいため、 これに難色を示していた。 TransCanadaの
しかし、Keystone PipelineのPhaseV(Cushing→Gulf Coast)が完成するとSeaway Oil Pipelineの資産価値が低下する恐れ(6.7億ドルとの試算)があるため、高値で売り抜けた。
付記
2014年3月時点ではメキシコ湾岸への3つのパイプラインが開通しており、Cusingでの在庫滞留は解消に向かった。
@ Keystone
Pipeline Phase V
TransCanada は2014年1月、Cushingからの送油を開始した。
Keystone | Seaway |
ASeaway Crude Pipeline Company LLC:50/50
JV of
Enterprise Products Partners L.P. and Enbridge Inc.(ConocoPhillipsから権益買収)
以前は南から北に輸送したが、2012年5月に逆送を開始した。
BLonghorn pipeline
Magellan Midstream Partnersは2013年4月、それまでHoustonからEl
Pasoに精製製品を送っていたパイプラインを逆にOdessaからの原油送付に変更。
これにより、Cushingに運ぶ原油を減らした。(精製製品は従来のDallas経由のパイプを通じてEl Pasoに送る)
中国国家発展改革委員会(NDRC)は11月14日、独禁法違反で製薬会社2社に合計で約110万ドルの罰金を科したと発表した。
摘発されたのは、山東省の濰坊順通医薬有限公司と濰坊華新医薬貿易有限公司の2社。
NDRCによると、両社は6月9日に、高血圧治療薬の原料の塩酸プロメタジンのメーカー2社とエージェント契約を締結した。
契約では原料メーカーに両社の了承なしに第三者に原料を販売することを禁止している。中国には他にこれのメーカーはない。
この契約締結後に、両社は原料の価格を200人民元から1,350人民元に大幅値上げした。
多くの高血圧治療薬メーカーは、原料価格の大幅アップを受け、生産を止めざるを得なくなった。
そして原料独占の結果、この治療薬は需給がタイトとなった。
NDRCは両社に対し、違法行為を止め、原料メーカーとの契約を解消することを命じた。
ーーー
中国の反壟断法(独占禁止法)は2008年8月1日に施行された。
2008/8/4 中国、独占禁止法施行
執行機関は中国国家発展改革委員会、商務部、工商行政管理総局の3つとなっている。
発展改革委員会:価格独占行為の調査・処分を担当
商務部:事業者結合行為に対する独占禁止審査
参考 2011/10/21 中国の企業統合に関する独禁法施行状況工商総局:独占協定、市場支配的地位の濫用、行政権力を濫用した競争の排除・制限に対する執行
(価格独占を除く)
反壟断委員会(公正取引委員会に相当)は2008年8月1日の施行日当日になって、ようやく設立が発表された。
委員会は国務院直属の組織で、業務は、独占禁止政策の調査、市場動向のモニター、執行機関間の政策の調整となっている。
10月12日の公取委競争政策研究センターセミナーで時建中・中国政法大学教授は以下の通り述べた。
執行を3機関が行うのは妥協の産物である。
実際には事業結合も独占も値上げの弊害が問題となるため、分けるのは不合理。
3機関に分かれるため、それぞれの人員も少ない。
早く反壟断委員会の執行に切り替えるべきだ。
なお、独禁法の前に、中国には価格カルテルを禁止するPrice Law of China が制定されている。
その第4条は次の通り規定している。
事業者は合意、決議、調整その他不正な方法で価格を決めたり、維持したり、修正したりしてはならない。.その第14条は以下のような異常な価格設定を禁止している。
・他と共謀して価格コントロールを行い、他の事業者や消費者の利益を損なうこと
・価格を過度に上げるために、値上げ情報をでっち上げたり、広めること
・法や規則に反して暴利をあげること
・その他2011/5/10 中国、値上げ計画の情報流布でUnileverに罰金
実際には、独禁法施行までは、業界で価格を決め、更にそれを発表する慣行があったという。
NDRCは2007年に、中国ラーメン麺協会の価格カルテルを有罪とした。
ラーメン麺協会は原料の油や小麦の値上がりを受け、2006年から2007年の6ヶ月間に3回の会議を行い、統一した値上げを決めた。
協会はその業界誌に会議の議事録を掲載、値上げのニュースが消費者にパニックを起こし、ラーメン麺の大量買い占めが起こったという。
独禁法施行後は、発表はなくなったが、業界での価格決定は行われている模様。
なお、中国の独禁法でもLeniency制度があるが、第一通報者は100%、第二は50%以上、第三は50%以下の減免を与えることが出来るという規定だけで、具体的な細則はなく、実際に減免が与えられるかどうか不明なため、実効はない模様。
東京電力は11月4日、中間決算を発表した。
今回初めて、損害賠償額が計上されたが、年度合計では支援機構からの支援で全額が相殺される。
(単位:百万円、配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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経常損益では前期比で約3100億円の減益となったが、主な内訳は以下の通り。
電気料収入減 ...... -2,200億円 燃料費増 -2,100億円 購入電力増ほか -400億円 固定費減 1,500億円 その他収入増 100億円 合計 -3,100億円
特別損益は-5,078億円となった。
・災害損失 -1,850億円 (前年度 -10,205億円、累計 -12,055億円) ・損害賠償 -8,909億円 (見込み額 10,100億円 マイナス 賠償補償* 1,200億円) ・支援機構より 5,436億円 (差し引き) (-3,473億円) この額について支援機構が11月4日に資金交付決定、下期に特別利益
(下記参照)・有価証券売却益 245億円 差引合計 - 5,078億円 * 通常の原子力損害の場合の賠償に対しては、民間の損害保険会社による保険である責任保険により、賠償措置額(発電用原子炉の場合は通常1200億円)まで保険金が支払われる。
地震、噴火、津波の自然災害による原子力損害等の場合は政府補償により、賠償措置額まで補償金が支払われる。
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枝野経済産業相は11月4日、東京電力の合理化策を盛り込んだ緊急特別事業計画を認定した。
これで事故の賠償費用として、東電が原子力損害賠償支援機構から8909億円の資金支援を受けることが決まった。
東電は社員やOBの年金削減などで10年間に2.5兆円を超える経費を削減、発電施設を含む資産売却を進める。
来春をメドに、より抜本的な「総合特別事業計画」に改定する。
電気料金値上げの是非、廃炉への対応、東電の資本増強といった懸案は総合計画に盛り込む。
要旨は以下の通り。
【原子力損害の賠償】
東電は要賠償額の見通しを1兆1010億円とし、保険収入を控除した残り 8,909億円の資金援助を申請した。
損害状況把握の進展など状況が変化した場合は、要賠償額見通しを変更申請する。
【東電の事業運営に関する計画】
(1)事業および収支の中期的な計画
東電は「改革推進チーム」を編成。機構は東電社内の常駐スペースに職員を派遣する。
機構・東電のトップが参加する「経営改革委員会」を設置する。
(2)経営合理化
東電と機構は11月中に「アクションプラン」を策定し、直ちに具体的施策を実行する。
資材・サービス、燃料などの調達コストや人件費を全面的に見直し、11年度は2374億円のコスト削減を実行。
人員数は13年度末までに連結で11年度期初比約7400人、単体で同約3600人減らす。
社員の年収一律減額措置は、管理職25%、一般職20%を当面の間継続。
確定給付企業年金は現役1.5%、受給権者(OB)2.25%以下に再評価率の下限を引き下げる。
終身年金も30%削減に向けて取り組み、12年度中の新制度実施を目指す。
原則3年以内に不動産は2472億円相当、有価証券は3301億円相当、関係会社は1301億円相当を売却。
関係会社328億円相当は11年度に売却を目指す。
(3)賠償資金確保のための協力要請
総合特別事業計画認定までの間、全取引金融機関に対して本計画認定時の与信を保つことを要請。
日本政策投資銀行に賠償金支払いのため3000億円の短期融資枠設定を要請。
主要取引行には震災後の緊急融資1兆9650億円の資金使途追加を要請。
(4)円滑な事業運営
電力供給力不足に対応するため、11年度は緊急電源設置などで7199億円の設備投資を実施。
(5)経営責任明確化
役員報酬の減額措置を継続。
総合特別事業計画では、役員退任や退職慰労金放棄などさらなる経営責任明確化のための方策について結論を得る。
【資金援助の内容】
(1)東電に対する資金援助の内容および額
機構は8909億を、損害賠償の履行に充てる資金として今年度交付。
(2)国債の交付希望額
11年度第3次補正予算が成立した場合、合計5兆円の国債交付を希望。
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