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2011/8/9  JXエネルギーとSKグループ、韓国でパラキシレンと潤滑油ベースオイル製造のJV設立

JXエネルギーと韓国のSK Innovationは8月5日、韓国でパラキシレンと潤滑油ベースオイル製造のJV設立製造に係る合弁会社を設立することで合意したと発表した。

SK Innovationは旧称 SK Energy。
2011年1月に石油事業(SK Energy)と化学事業(SK Global Chemical)を分離し、2009年設立のSK Lubricantsとともに100%子会社とした。

SK Innovationは持ち株会社で、主に研究開発(R&D)分野と資源開発(E&P)分野を担当し、リチウムイオン電池用分離膜(LiBS)事業も受け持つ。

今回の合意は、2007年1月22日に当時の新日本石油とSKが合意した戦略的業務提携に基づくもの。

新日本石油とSKはグローバル化が進展する石油産業において両社の競争力強化を図り、また、経済成長の著しいアジア地域における事業展開を通じて相互の発展を期するため、戦略的業務・資本提携について合意した。

期間は10年間(自動延長条項付き)で、検討・実施項目は以下の通り。

資本提携(取得株式数)
  新日石のSK株式購入:129万株(SKの発行済株式総数の1.0%)
  SKの新日石株式購入:1,432万株(新日石の発行済株式総数の1.0%)

業務提携
(1)上流分野
  探鉱・開発および資産買収案件における共同事業化の可能性検討
      技術委員会の設置など恒常的な評価分析・情報交換体制を構築。

(2)供給分野
  需要減少下における最適供給体制構築
     原油および石油製品の交換・融通、出荷設備・輸送機関等の相互利用・共同利用を推進
     製油所定修時の製品・半製品の相互融通も推進。

(3)石油化学分野
  アジア地域における圧倒的な競争力確立
     石油化学製品の相互融通等を推進すると共に、生産設備の共同建設も視野に入れ検討を推進。

(4)潤滑油分野
  需要増加の著しい海外潤滑油事業の拡大に向け、安定的かつ効率的な供給体制を構築
     潤滑油ベースオイルの交換および融通、潤滑油ブレンド設備の相互利用・共同利用を推進。

(5)海外事業分野
  経済成長の著しいアジア地域において、生産設備の共同建設を含む石油・エネルギー分野での共同事業化検討。

 この他、外航・精製・研究開発の各分野で、コスト削減・効率化、新たな事業機会の創出を検討。

 

(1)パラキシレン製造に係る合弁会社設立

新設備は、世界最大となる100万トン/年の生産能力による圧倒的なコスト競争力の実現が期待される。

JXエネルギーは、日本国内の製油所より今回の新設備にパラキシレン原料を供給することで、製油所の高付加価値化・石化工場化を推進し、またアジアにおけるパラキシレン外販のトップメーカーとしてのプレゼンスを更に高め る。

SK Global Chemicalにおいても、高付加価値化につながる石化製品製造装置の増設により 蔚山コンプレックスの競争力強化に資する。

1.社名 未定
2.所在地 蔚山広域市(SKエナジー社蔚山コンプレックス内)
3.設立時期 未定
4.出資比率 JXエネルギー      50%−1株
SK Global Chemical 50%+1株
5.事業内容 パラキシレンの製造
6.生産能力 約100万トン/年 (世界最大)
7.商業生産 2014年予定
8.総投資額 約1兆ウォン(約800億円)

(2)潤滑油ベースオイル製造に係る合弁会社設立

潤滑油ベースオイルは潤滑油製品の原料で、これに各種添加剤を配合することで、潤滑油製品となる。

潤滑油製品においては、より一層の省燃費・長寿命化への対応が求められており、高品質潤滑油製品の基材であるグループⅢベースオイル (最高グレードで、高粘度指数、低蒸発性、低温粘度特性に優れる)の需要拡大が見込まれている。

1.社名 未定
2.所在地 蔚山広域市(SKエナジー社蔚山コンプレックス内)
3.設立時期 未定
4.出資比率 JXエネルギー 28%
SK Lubricants 72%
5.事業内容 潤滑油(ベースオイル)の製造
6.生産能力 約135万kl/年
7.総投資額 約3,500億ウォン(約280億円)

2011/8/9  New York市場、株価と原油価格 急落 

8月5日のS&Pによる米国債の格下げ後、初の取り引きとなる8日のNY株式市場で、ダウ平均終値は前日比634.76ドル安の10,809.85ドルとなった。
2010年10月初め以来、約10か月ぶりの安値である。

NY原油先物相場も市場の警戒感が強まり、リスク回避の動きが加速する中、売りが加速し、WTI原油の終値は81.31ドル/バレルとなった。
その後の時間外で一時80.17ドルまで下落した。

原油、ナフサの価格情報は http://www.knak.jp/


2011/8/9 東京電力、2011年1Q決算発表 

東京電力は8月9日、2011年1Qの決算を発表した。

電力の販売などが落ち込んだ一方、燃料費などの費用が膨らんだため、経常損益ベースで627億円の損失となった。
特別損失に5,032億円を計上し、当期損失は5,717億円となった。

2012年3月期の連結業績見通しは、需要と供給の両面で先行きを見通すのが困難として、開示しなかった。

 

連結決算 (億円)

  2011/1Q 2010/1Q 増減
売上高  11,331  12,216   -885 
営業損益 -520 628 -1,149
経常損益 -627 494 -1,122
特別損失  災害損失 -1,055   -1,055
損害賠償 -3,977   -3,977
資産除去会計   -571 571
合計 (-5,032) (-571) (-4,460)
当期損益 -5,717 -54 -5,663

   

特別損失(億円)

    2011/1Q 2010年度   累計
災害損失 福島第一原発1~4号機  693 6,333 7,026
その他 362 3,842 4,204
合計 1,055  10,175 11,230
原子力損害賠償 精神的損害 882   882
その他
(就労損害 1,412
 営業損害  1,012
 他)
3,094   3,094
合計 3,977   3,977

原子力損害賠償について:

現在の仮払とは別で、原子力賠償損害紛争委員会がまとめた中間指針に基づき、9月から賠償申込みを受け付ける。
現時点で合理的に見積もり可能な金額だが、始めてみないと分からない。

中間指針等の記載内容や現時点で入手可能なデータ等により合理的に見積ることができない風評被害や間接被害及び財物価値の喪失や減少等については計上していない。

新設する損害賠償支援機構からの賠償資金は特別利益に計上し、損失を埋める。


参考  2011/5/20 東京電力 決算発表


2011/8/10 Peabody Energy とArcelorMittal、豪州Macarthur Coal の買収提案 

Peabody Energy とArcelorMittalは8月1日、共同でMacarthur Coal 買収提案を行った。

Macarthurは世界最大の低揮発・高炉直接吹込用石炭(low volatile pulverized coal injection coal)のメーカーで、豪州のクイーンズランド州東部Bowen Basinで生産及び開発を行っている。

主な鉱山と権益は以下の通り。

  Macarthur  CITIC 丸紅 双日  JFE商事 日鉄商事 Gloucester
Coppabella鉱山 73.3% 7% 7% 7% 3.7% 2%  
Moorvale鉱山
Middlemount鉱山 50%           50%
新規 Codrilla鉱山 85% 15%          

中国中信集団(CITIC)はMacarthurの第一位の株主で24.60%を所有している。

ArcelorMittalは、2006年にインドのMittal Steel が欧州のArcelorを買収して統合した世界最大の鉄鋼メーカー。
Macarthurの二位の株主で、16.07%を保有している。

両社は7月11日にMacarthur Coal に対して15.50豪ドルで買収提案をしたことを発表した。
その後、同社と協議し、7月14日にDue Diligenceを開始した。

この時点でMacarthurは買収価格を16豪ドル以上に引き上げるよう求め、さらに2社が株式の9割以上を取得した場合は買収価格を同18豪ドルにするよう主張したが、2社は結局、この条件を拒否した。

Due Diligenceの結果、今回の正式な買収提案となった。

2社は買収契約(Bid Implementation Agreement)の締結を求めたが、Macarthur は他の買収提案の可能性もあるとして拒否した。

両社が設立する新会社PEAMCoal Pty Ltd (Peabody 60%、ArcelorMittal 40%)が買収を行う。
ArcelorMittal は既に
Macarthurの株式の16.07%を所有している。

同社の第一位の株主は中国の中国中信集団(CITIC)で24.60%を所有している。
二位が
ArcelorMittal の16.07%で、五位に韓国POSCO(7.02%)がいる。

買収の条件は以下の通り。

・買収金額は1株当たり15.50豪ドル(7月11日終値に41%のプレミアム)
・総額47億豪ドルとなる。
・株主は第2四半期分の配当 16セントを受け取るため、実質15.66豪ドルとなる。
・最低 50.01%の買収
・政府、関係当局の認可

これに対し、Macarthur は8月1日、2社の提案は企業価値を正当に評価していないと批判し、株主には買収提案に反応しないよう訴えた。

付記

ArcelorMittal は2011年10月25日、Macarthurの買収から撤退すると発表した。

10月23日の発表では、同社とPeabody EnergyがMacarthur買収のため設立したPEAMCoalはMacarthur株の約59.85%を取得し 、買収は成立したが、買収した株式はPeabodyが引き継ぐ。
なお、
PEAMCoalは8月に買収提示額を1株当たり16豪ドルに引き上げた。

ーーー

Macarthur Coalに対しては2010年春に、Peabodyを含め、3社による買収合戦があった。

2009年12月に香港のコモディティ会社のNoble Groupが豪州の子会社 Gloucester Coal の株式と交換に、Macarthurの株式23.2%の購入を提案した。

Macarthurがこれを株式総会に諮る準備中の2010年3月にPeabodyが1株13豪ドルでの買収を提案、4月に14豪ドルにアップしたが、直後に豪州の同業のNew Hopeが14.58ドルでの買収を提案した。
これを受け、Peabodyは一気に16豪ドルに引き上げた。

更にスイスのXstrataがMacarthur Coalの株主との話し合いを始めた。

その後、Peabodyは帳簿をチェックし、豪州政府の新しい鉱山税の影響も勘案し、買値を15豪ドルに引き下げた。
(当時は増資前で、15豪ドルでも総額は38億豪ドルであった。)

しかし、MacarthurとGloucesterの合併交渉はつぶれ、New HopeとPeabodyの提案もMacarthurが安過ぎるとして拒否した。
Macarthurは拒否の理由の一つとして、大株主のCITICと
ArcelorMittal の意向を挙げている。

 

今回、PeabodyはそのArcelorMittal と組んで買収提案を行ったもの。

 


2011/8/10 Bayer、ドイツの脱原発政策でドイツからの工場移転も 

8月7日付の英国のGuardian紙は、ドイツの脱原発の決定の結果、ドイツの多くの企業が安いエネルギーコストを求めて工場を移転する可能性があると報じた。

BayerのMarijn Dekkers社長は、 「ドイツは他国と比して競争力がなければならない。さもなければ、Bayerはエネルギーコストの安い国に生産を移転することを考えねばならない」と述べた。「ドイツの電力コストは既にEUで最も高く、化学産業にとって魅力的ではなくなっている」としている。

成21年度エネルギー白書によれば、電気料金の国際比較は以下の通り。
EUでは原子力大国のフランスが安いが、産業用ではイタリア(原発なし)と英国がドイツを上回っている。



  1.各国の1年間の使用形態を限定しない平均単価を計算したもの
 2.米国は課税前の価格
 3.2008年(日本とドイツは2007年)
 出所 OECD/IEA, Energy Prices & Taxes, 3rd Quarter 2009

Bayerはドイツ国内で 35千人以上を雇用している。Bayerはドイツで1700人など、世界で4500人の人員カットを計画しているが、同時にブラジル、インド、ロシア、中国などで新規に2500人を雇用している。

インターネット会社の 1&1の社長は、電力をノルウェーの水力発電所から購入しているが、それでもドイツの再生可能エネルギーの税金を払う必要があると述べ、移転したいとしている。

参考

英国のINEOSは節税のため、2010年に本社をスイスのRolleに移転した。

2010/3/5  INEOS、節税のためスイスへの移転を検討

ーーー

ドイツ政府は早くも 2002年に、原子力法を改正し、2021~23年の脱原発を決めた。

2009年の総選挙で過半数を獲得した保保連立政権が、脱原発期限を平均12年間延長する原子力法の改正を行った。

しかし、福島第一原発の事故を受け、本年3月に原発の運転を延長する政策を3カ月間凍結した。

メルケル首相は福島事故の直後に3カ月にわたる「原子力モラトリアム」を発令し、1980年末までに運転を開始したドイツで最も古い7基の原子炉を停止させた。

政府は6月6日、これら 7基とトラブルで2007年以降停止している1基の合計8基の原発を再稼動せず廃炉にすること、残りの9基の原発についても、2022年までに順次停止することを正式に閣議決定した。

全く新しい決定ではなく、2002年の脱原発決定の修正(運転延長)を取りやめただけ。

ドイツ連邦上院は7月8日、2022年までに国内17基の原発を停止する改正原子力法案に同意した。既に下院が可決しており、「脱原発」が法的に成立した。

  稼働中 廃止 停止時期
既停止 2010s 2020s  
Avr Juelich    1基       
Biblis  2基    moratorium    
Brokdorf  1基        2021
Brunsbuettel  1基    moratorium    
Emsland  1基        2022
Grafenrheinfeld  1基       2015  
Greifswald    5基       
Grohnde  1基        2021
Grosswelzheim    1基       
Gundremmingen  2基   1基    2017  2021
Isar  2基    moratorium   2022
KNK    2基       
Kruemmel  1基    2007 停止
  トラブル
   
Lingen    1基       
Muelheim-Kaerlich    1基       
MZFR    1基       
Neckarwestheim  2基    moratorium   2022
Niederaichbach    1基       
Obrigheim    1基       
Philippsburg  2基    moratorium  2019  
Rheinsberg    1基       
Stade    1基       
THTR-300    1基       
Unterweser  1基    moratorium    
Vak Kahl    1基       
Wuergassen    1基       
合計  17基   20基   7基+1基 3基 6基

 


2011/8/11   BP、ベルギーのPTA工場にPETプラントを誘致

BPは8月4日、JBF RAK LLC との間でベルギーのGeel に年産39万トンのPETプラント建設で合意した。

BPは同地にPTA 1,400 千トン、パラキシレン 560千トンのプラントを有しているが、JBF RAKがこのコンプレックスにPETプラントを建設し、BPはこれに原料のPTAを供給する。
2014年スタートを目指す。

両社の協力で、Geel工場を欧州における競争力ある PX-PTA-PET 統合コンプレックスとする。

   BPのPTAについては 2011/2/22  BP、中国のPTA事業を拡大

ーーー

JBF RAK はインドのポリエステルチップ、ポリエステル糸のメーカーのJBF Industries Ltd とアラブ首長国連邦のRas Al Khaimah首長国の王子が所有するRAKIA (Ras Al Khaimah Investment Authority) のJVである。

 

JBF Industries Ltd は1982年に設立された。
工場はインド西部の
Sarigam, Gujarat にある。

繊維グレード及びボトルグレードPET 625千トン
ポリエステル 部分延伸糸 (POY)     200千トン
ポリエステル 延伸糸 (FDY) .      50千トン

同社は最近、年産112万トンのPTAプラントをMangalore SEZ(Special Economic Zone) に建設することを決めた。

付記 

2012年7月、BPが最新技術を供与。能力125万トン、完成は2014年末。

 

同社はまた、Oman Oil Companyとの間で、約680百万ドルを投じてOmanに年産120万トンのPTAプラントをJVで建設する覚書を締結した。
工場は Oman Aromatics のプラントに隣接し、同社からパラキシレンの供給を受ける。

Oman Aromatics はOman Oil が60%、Oman Refinery 20%、LGが20%出資するJVで、Benzene 210千トン、Paraxylene 810千トンを生産している。

 

JBF RAK はRas Al Khaimahに以下の工場を持っている。

Bottle Grade PET Resin     年産400千トン (一部はフィルム用、残りはボトルグレード)
BoPET(二軸延伸PETフィルム)      72千トン



2011/8/11 深井 有 「気候変動とエネルギー問題 - CO2温暖化論争を超えて」 

中公新書の 「気候変動とエネルギー問題 - CO2温暖化論争を超えて」 を読んだ。

 「地球温暖化の議論をリードしてきたIPCCがスキャンダルに揺れている。温暖化を印象付けるためのデータ操作や、不都合な報告の黙殺など、あるまじき行為が明るみに出た。」

本書では、気候変動の真因を最新の知見から解説する。

二酸化炭素が温室効果で気温を上昇させる可能性は否定しないが、その効果は小さい。

真の原因は宇宙線の影響である。現在の太陽活動は弱まっており、今後、気温は低下する。

「さらに化石燃料を温存する上で必要な、バイオマス、核融合など代替エネルギー技術の最前線を紹介する。震災復興が急がれる今、莫大な国費を根拠薄弱なC02削減策のために浪費することは許されない。」(同書の帯)

 

 

概要は以下の通り。

序章 クライメート事件 暴かれた二酸化炭素原因説の陰謀

序章では、クライメート事件の概要を述べ、IPCCが人為的温暖化説以外は排除し、「科学」が二酸化炭素削減という目的に奉仕するようになったとする。

地球温暖化は排出権取引などで国のレベルで金儲けの種になると判断されたに違いない。
「IPCCとは、・・・空気から排出権取引という巨大ビジネス ー 実業ならぬ虚業 ー を作り出した詐欺師と言う方が適当かも知れない。」
IPCCは原発推進の隠れ蓑になっているのではないかとの指摘もある。

二酸化炭素が気温変化の主因であったという科学的根拠は存在しない。将来に大きな気温上昇をもたらすという予測も科学的根拠はない。
南極の氷床コア試料の分析では、二酸化炭素の変動は気温の変動よりも遅れており、しかも二酸化炭素とメタンの濃度が全く同様の変化を示しており、共通の原因即ち気温によって変化していることが分かる。

大気中の二酸化炭素濃度が増えるにつれ、海洋中に溶解する量も増え、ある濃度で平衡化する。

大気中の二酸化炭素は植物の成長を促すプラスの効果はあっても、人間の環境にとっていかなる意味でもマイナス要因にはならない。

二酸化炭素排出削減は炭素資源を子孫に残すためにこそ意味がある。

日本だけがIPCC信仰は崩れておらず、二酸化炭素の排出削減を崇高な目標と信じ込まされている。
地球温暖化防止対策として年間1兆円を超える税金が使われており、排出権取得に巨額の負担を強いられる。
無意味な支出を止め、震災復興に使うべきだ。

* Climategateについては 2009/12/2 IPCCデータの捏造疑惑

第1章 気候変動はどうして起こるか

太陽黒点数と気候の相関は古くから気付かれていた。
しかし、太陽からの入射エネルギーの長期変動を気候の長期変動の主因とする見方は、大気圏外で流入エネルギーを測定した衛星観測の結果、エネルギーの変動幅が小さすぎることから否定された。

このため、二酸化炭素の温室効果がクローズアップされてきた。
IPCCは(偽装と分かった)ホッケースティックを論拠に、自然要因の長期変動は無視できるとした。

しかし、長い歴史にわたって比べると、気温と二酸化炭素の相関はあまり明らかでない。二酸化炭素が温室効果で気温を上昇させる可能性は否定しないが、その効果は小さい。
大気中の二酸化炭素は無限に増える訳ではなく、平衡状態に到達し、頭打ちになる。
6000万年前に濃度は約4000ppmもあったが、徐々に低下し、現在に到っている。地球には気温を安定化する機構が具わっている。

1998年になり、デンマークのH. Svensmark が宇宙線が低雲層量を変化させていることを見付けた。この後、気温と宇宙線との相関を示すデータが多数発表された。

宇宙線は超新星爆発で放出された高エネルギー粒子だが、太陽活動が活発な時は太陽磁場が強くなるため、地球に到達する一次宇宙線が少なくなる。

太陽磁場が強く、 宇宙線強度が減ると、エアロゾルが出来難くなって雲量が減り、地表の温度は上がる。
(水と植物プランクトンから出る硫酸が宇宙線でイオン化し、成長後にイオン再結合でエアロゾルの核を形成、水を吸着して水滴になり、雲を形成する。)

逆に、太陽磁場が弱まり、宇宙線強度が増えると、低雲層が増え、太陽エネルギーを反射するため、地表の気温を低下させる。
(水蒸気は温室効果で地表の気温を上昇させるが、低雲層は太陽エネルギーの反射により気温を低下させる。)

過去の氷河期もこれで説明できる。
地球形成初期に、若い太陽からの放射は7%も少なかったはずなのに地球が凍結しなかった「暗い太陽のパラドックス」も、当時の太陽磁場が非常に強く、宇宙線がほとんど地球に到達せず、雲による寒冷化が起こらなかったと説明される。

現在の太陽活動は弱まりつつあり、今後、気温は低下傾向に動く。

過去120年の実績では、平均気温と太陽磁場の変動とで相関関係がみられる。二酸化炭素濃度との対応は良くない。

第2章 「地球温暖化」から「エネルギー問題」へ

温暖化対策で原発が復活したが、福島原発事故で原発停止の声が高まる。
原発抜きでエネルギー需要は賄えるか?

今や問題は「地球温暖化」から「エネルギー問題」へ移った。

   1.日本のエネルギー事情
   2.エネルギーをどこから得るか  
   3.エネルギーをどう使うか

炭素資源は数十年で使い尽くされる。代わりうるのは原子力しかないが、暴走の危険と放射性廃棄物問題があり、長期使用は好ましくない。

将来のエネルギーシステムで理想的なのは水素エネルギーシステムとバイオマスエネルギー(藻類に期待)。
究極のエネルギー源は下記の核融合。

第3章 未来のエネルギー源 − 核融合

   1.磁場核融合
   2.慣性核融合

第4章 これからどうするか

付録として、地球環境についての基礎知識と、詳細な引用文献がある。


2011/8/12 BASF、バイオベースのコハク酸のJV設立へ 

BASFは8月1日、CSM 子会社のPuracとの間でバイオベースのコハク酸製造のJVを設立する交渉を開始したと発表した。

CSMはオランダに本社を置 き、欧州、北米、南米、アジアで活動する世界最大規模の製菓製パン材料メーカー
PuracはCSMの子会社で、乳酸、乳酸の誘導品、ラクタイド(乳酸の環状二量体)のリーダー。米国、オランダ、スペイン、ブラジル、タイに工場を持ち、世界中で販売している。

BASFとPuracは2009年以降、共同開発契約の下でバイオベースのコハク酸の開発を続けてきた。

コハク酸の需要は今後急速に増大すると見られている。主な分野は、バイオプラスチック、化学品中間体、溶剤、ポリウレタン、可塑剤である。

まず、遅くとも2013年までにスペインBarcelona近郊のPuracの工場で、年産25千トンの発酵プラントの商業生産を開始し、需要の伸びに応じてワールドクラスの50千トンのプラント建設を計画する。

BASFでは新事業を担当するBASF Future Business GmbH (2001年4月設立)が担当している。

ーーー

バイオベースのコハク酸は多くの企業が手掛けている。

1)三菱化学

三菱化学は、コハク酸と1,4-ブタンジオールを主な原料とする環境持続型樹脂「GS Pla®」の市場開発を推進している。
これは
ポリブチレンサクシネート系樹脂(PBS系樹脂)、商品名は Green Sustainable Plastic から名づけた。

三菱化学は、生分解性プラスチック GS Plaの植物原料化に向け、バイオコハク酸の製品供給、研究開発及び製造について、 米国のBioAmber(及び同社に既に出資している三井物産)と提携した。
  BioAmberは旧称
DNP Green Technology

GS Plaの原料であるバイオコハク酸をBioAmberから調達が可能となるとともに、BioAmberのもつバイオコハク酸の既存のプロセス技術と、三菱化学のもつ高度生産技術及び分離精製技術をそれぞれ組み合わせることによって、より高効率なバイオコハク酸の製造技術の確立を目指す。

三菱化学はまた、米国のGenomatica社と戦略的提携で合意した。
Genomaticaが開発した植物を原料に1,4-ブタンジオールを製造する技術に、三菱化学の技術を組み合わせ改良した技術を用いて、中東、インドを含むアジアでの1,4-ブ
タンジオール事業化を検討する。

付記
BioAmberはフランスに3千トンのバイオコハク酸のプラントを持つが、2011年8月にカナダのSarniaに17千トンのプラントの建設を決めた。2013年に稼働の予定で、2014年にはCargillとともに開発している次世代イーストを導入し倍増する。
また、DuPontから独占権を得たコハク酸を1,4 butanediol (BDO)に変換する技術で同地でBDOを生産する予定。
Sarniaでは最終的に35千トンのバイオコハク酸、23千トンのバイオBDOを生産する。

三菱化学は3月30日に、GS Plaの海外事業展開に向け、タイのPTT Public Company Limitedと合弁会社を設立した。
GS Pla事業の投資計画検討や更なるマーケティング等を実施する。

三菱化学は2010年7月、タイ王国政府科学技術省国立イノベーション機構が進めているバイオポリマー普及プロジェクトの一環として、PTTなどと共同で、生分解性樹脂普及プログラムを実施した。

生活ゴミによる環境問題が深刻化しているサメット島において、
「GS Pla」を使用したゴミ袋を使用し、有機廃棄物を効率的に収集するとともに、堆肥製造設備を設置し、ゴミの量を減らしかつ有効活用しようとするもの。

2)DSM

DSMは5月9日、フランスのスターチのメーカーのRoquette Frèresと共同でバイオベースのコハク酸を生産する商業規模のプラントを建設すると発表した。

年産10千トンのプラントをイタリアのRoquetteの工場内に建設し、2012年下期の生産開始を目指す。

 
3)
Myriant Technologies, Inc.

Myriant Technologiesは2009年、トウモロコシからコハク酸を精製する技術に関し、二酸化炭素の排出量抑制に大きく貢献できる画期的製法を開発した。従来の製法に比べてエネルギー効率が高く、工程を通じた二酸化炭素の排出量よりも吸収量の方が多い。
米ルイジアナ州にバイオコハク酸の新工場(14千トン)を建設中。

なお、タイPTTの子会社のPTT Chemicalは2011年1月、Myriant Technologiesに6000万ドル出資すると発表した。
Myriantは、PTT Chemicalの出資で得た資金を上記の建設費に充てる。

PTT
Chemicalはバイオコハク酸を原料に、タイ初のバイオポリマー工場を建設する意向で、PTTと三菱化学とのJVと競合となる可能性がある。


2011/8/13  Rio Tintoと三菱商事、豪石炭会社の株追加取得へ 

Rio Tintoと三菱商事は8月8日、豪石炭事業会社Coal & Alliedの株式の追加取得を提案したと発表した。

Rio Tintoと三菱商事(完全子会社の三菱デベロップメント)は合計で同社株を85.91%保有するが、残りの14.09%を14億8800万豪ドル(約1200億円)で買い取り、2社で経営権を完全に握る計画 。

Rioは出資比率を現在の75.71%から80%へ、三菱商事は10.2%から20%にそれぞれ引き上げる。

残りのうち、大手投資ファンドのPerpetual Ltd は7.32%を保有していたが、本年4月に一部を売却し、現在は6.32%を保有している。
同社は、より優位な提案が新たに浮上しない限りにおいて、本提案を支持すると表明している。

なお、双日は同社の株の5.69%を保有していたが、2009年にすべてを売却した。約200億円の特別利益を計上。

Coal & Alliedは豪州最大級の電力用石炭(一般炭)の生産会社で、 2010年の生産実績は1870万トン、日本やアジアに輸出している。

Coal & Alliedはニューサウスウェールズ州のHunter Valley地区の3つの炭鉱(Mount Thorley Warkworth、Hunter Valley Operations、Bengalla)で生産中で、他に多くの開発計画を持っている。

操業中

 1) Mount Thorley Warkworth炭鉱

隣接するMount Thorley とWarkworth を統合して運営している。

Mount Thorley: Coal & Allied 80%、韓国POSCO 20%.
Warkworth: Coal & Allied 55.57%、三菱商事 28.9%、新日鉄 9.53%、三菱マテリアル 6%

 2) Hunter Valley Operations炭鉱
   Coal & Allied 100%

 3)Bengalla炭鉱
   Coal & Allied 40%、Wesfarmers 40%、台湾電力(Taipower) 10%、三井物産 10%

計画中のもの
 Mount Pleasant
 Lower Hunter Lands
 Hunter Valley Operations South
 Warkworth Extension


2011/8/13  人民元高騰

この数日、人民元が高騰している。

2010年6月19日以来、中国人民銀行が毎日発表する基準値に対し、±0.5%の変動を認めているが、本年初め以降は人民元の緩やかな上昇を狙い、終値が上昇した場合は翌日の基準値を下げるなどの操作を行ってきた。

しかし、8月9日の終値が上昇したにもかかわらず、10日の基準値は大幅に引き上げ、その後も終値が最高値を更新しているが、翌日の基準値を引き上げている。

12日の基準値、終値、一時高値はいずれも2005年7月の人民元切り上げ以来の最高値を更新した。
昨年6月18日の終値に対し、昨年末では3.59%の上昇であったが、12日の終値は6.83%の上昇となった。

  基準値 終値 一時高値 '10/6/18比
終値 一時
2010/6/18   6.8262      
           
2011/8/  8 6.4305 6.4360 6.4250 6.06% 6.24%
8/  9 6.4335 6.4306   6.15%  
8/10 6.4167 6.4181   6.36%  
8/11 6.3991 6.3945 6.3895 6.75% 6.83%
8/12 6.3972 6.3895 6.3890 6.83% 6.84%

7月の中国の消費者物価指数(CPI) は前年同月に比べ6.5%上昇した。6月の6.4%を上回り、2008年6月の7.1%以来、3年1カ月ぶりの高水準となった。(うち、食品が14.8%、非食品が2.9%の上昇であった。中国の食卓に欠かせない豚肉が56.7%上昇した。)

このため市場では「当局が輸入物価の値下がりにつながる元高を加速させ始めた」との見方が広がっている。

中国の政府系メディアは12日、中国人民銀行による政策変更の可能性を一斉に報道した。

中国証券報は、中国人民銀行が輸入インフレを管理する上で、人民元を主要ツールとして活用する用意があることを示していると報じた。 

人民日報は、元の上昇加速は短期的に物価圧力の緩和を可能にし、長期的には中国の輸出セクターの成長を助けるとの見方を伝えた。

「元高傾向は、沿海の輸出産業の技術力強化、製品イノベーション、中西部地区への移転を推進する。同時に輸出部門の資源を、サービス業など内需部門に向けることを促し、経済の輸出に対する過度な依存を防ぐことができる。これらは産業のアップグレード、構造改革、経済発展方式の転換に役立つだろう」

中国政府にとっては、現在の物価高は国民生活に直接響くため対策が必要であるが、人民元の上昇は輸出産業に深刻な影響を与える。金融引き締めにも限度があり、非常に難しい選択を迫られている。


2011/8/15  京大のiPS細胞特許、米で成立 

京都大学は8月11日、山中伸弥教授らが開発した新型万能細胞(iPS細胞)の作製技術に関する特許が米国で成立したと発表した。
 
8月5日付で米特許商標庁から通知を受けた。

特許の権利期間:2006年12月6日から2027年6月25日まで(推定)
通常の権利期間は20年間だが、今回はUSPTOの審査が遅延したため、その日数分(201日となる見込み)が加算される。

付記

京大は11月24日、iPS細胞に関する特許について、4つの遺伝子を用いてiPS細胞を作製する方法に関する米国特許(出願番号 12/457,356、特許番号8,058,065)が1件成立したと発表した。 2件目の米国特許となる。

特許請求の範囲:
体細胞にOct3/4, Klf4, Sox2及びc-Mycの4遺伝子をレトロウイルスベクターで導入してiPS細胞を作製する方法
(2008年9月に成立した日本特許における審査結果を利用した特許審査ハイウェイを活用)
特許の権利期間: 2006年12月6日から20年間

付記

京都大学は2012年5月、3件目の米国特許を取得した。

今回の特許は
(1)「山中因子」と呼ばれる4種類の遺伝子か、そのうちの3種類を特殊なウイルスを使って皮膚などの細胞に組み込みiPS細胞を作る
(2)そこから別の細胞に変化させる
(3)できた細胞を使用して様々な研究開発をする——という一連の過程が対象。

これまで「別の細胞に変化させる」ところまでは権利が及んでいたが、「できた細胞」を、他の企業や研究機関が譲り受けて使用する場合は規制できなかった。今後は、こうした細胞を企業などが創薬研究に利用したり、販売したりする際、京大の許可が必要になる。特許の有効期限は2026年12月。

ーーー
 
iPS細胞基本特許は、日本では3件成立し、海外では欧州、南アフリカ、ユーラシア(*)、シンガポール(2件)、ニュージーランドおよびイスラエルで成立している。 (他に、iPierianから譲渡を受けた英国特許:下記参照)

ユーラシアは旧ソ連諸国で、ユーラシア特許条約を締結、1995年8月12日に発効した。

加盟国はアルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、モルドバ、ロシア連邦、タジキスタン、トルクメニスタンの9か国で、ウクライナ、グルジアは条約に署名したが批准していない。
バルト三国及びウズベキスタンはこの条約に参加していない。

日本では、2008年9月12日に1件、2009年11月20日に2件の合計3件が成立している。
いずれも有効期間は出願日の2006年12月6日から20年間。

欧州では2011年5月30日付けで特許査定が通知され、7月7日付けで特許登録決定が通知された。
今後欧州特許庁において特許登録となり、その後、京大が指定する欧州特許条約加盟国(イギリス、ドイツ、フランス等)に移行し、各国毎の権利として登録され る。31カ国で登録できるが、17カ国で手続きを取る意向。
権利期間は出願(2006年12月6日)から20年間。

各特許の権利範囲は以下の通りで、
日本特許は「Oct3/4」や「Klf4」など特定の遺伝子に限定されているが
米国、欧州特許は遺伝子の「ファミリー」という範囲をカバーし、より広い範囲で認められた。
欧州は、遺伝子だけでなく遺伝子産物にも権利が及び、米国よりもさらにより権利範囲が広い。

日本
(先願主義)
4種の遺伝子(Oct3/4、Klf4、c-Myc、及びSox2)でのiPS細胞の製造方法
3種の遺伝子(Oct3/4、Klf4、及びSox2)/ bFGFの存在下で培養するiPS細胞の製造方法
3種の遺伝子(Oct3/4、 Klf4、及びSox2)/ bFGFの存在下で培養 or
4種の遺伝子(Oct3/4、Klf4、c-Myc、及びSox2)でのiPS細胞を製造する工程
このiPS細胞を分化誘導する工程を含む体細胞の製造方法
米国
(先発明主義)
(1)Octファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子及びMycファミリー遺伝子を含む初期化因子
(2)Octファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子及びサイトカインを含む初期化因子
欧州
(先願主義)
(1)Octファミリー、Klfファミリー及びMycファミリーを含む初期化因子
(2)Octファミリー、Klfファミリー及びサイトカインを含む初期化因子
(3)前記初期化因子の、体細胞初期化における使用
  (各ファミリーは「遺伝子」でも「遺伝子産物」でも良い)

なお、2010年1月に米ベンチャー企業
iPierian, Incが英国特許の取得を発表した。
Bayerが特許を申請し、権利を譲渡されたもの。

バイエル薬品神戸リサーチセンターの研究チーム(桜田一洋センター長ほか)が山中伸弥京大教授らが2006年8月にマウスiPS細胞の作成を発表した直後から、ヒトでの研究を始め 、山中教授らのチームより早く、ヒトの「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を作成した。
Bayerは2007年6月15日付けで国内で特許を出願、これに基づき世界各国に出願した。

3因子によるiPS細胞樹立に関する特許内容の違い
  クレーム概要 特長
京大特許 Oct3/4、Sox2、Klf4遺伝子が導入された体細胞をbFGFの存在下で培養するiPS細胞の作製方法 ・体細胞の由来をヒトに限らない。(全ての動物種を含む)
・3因子以外の条件なし
iPierian社特許 ヒト体細胞に、Oct3/4、Sox2、Klf4遺伝子を導入し、C-Myc遺伝子は導入しないで、FGF-2(bFGF)の存在下で培養するヒトiPS細胞の作製方法 ・ヒトの体細胞に限定
・導入因子からC-Myc遺伝子は除く条件あり

京都大学は2011年2月1日、京大のiPS 細胞技術に関する知的財産の管理活用会社 iPSアカデミアジャパンを通じて、米国のiPierian Inc.にiPS細胞関連特許のライセンスを許諾し、iPierian Inc.から同社保有のiPS細胞特許を譲り受けたと発表した。

米国では、米国特許庁がどちらが先に発明したかを選定する審判Interference)の開始を宣言する可能性が高まった。

米国では先願主義でなく、先発明主義のため、係争になると、どちらが先に発明したかの調査などに膨大な時間と多額の費用がかかる。

このため、iPierianは2010年末に、山中所長の発明を尊重し、将来想定される京大との特許係争を回避するため同社保有特許を京大に譲渡したいと申し出た。

京大としても、もしiPierian社の特許が成立すれば、京大の米国でのクレーム内容はかなり限定されたものに留まり、ヒトiPS細胞の樹立技術の応用についてはiPierian社の意向に左右されてしまう可能性も あった。

金銭のやり取りはなく、見返りにiPierianは、全世界で京大有するiPS細胞関連特許に基づき、ヒト用治療薬の研究開発を行うことができる。

京都大学は2009年4月にiPierianの前身のiZumi Bio とiPS細胞の研究で協力することで合意し ている。

2011/2/3  京都大学、米社からiPS細胞関連特許を譲り受け


2011/8/15 中国・大連で化学工場の撤去求め デモ  

中国遼寧省大連市で8月14日、化学工場の撤去を求める市民およそ1万2,000人が市政府庁舎前に集まり、抗議を始めた。

撤去を求めているのは、大連の市街地から北東約20kmの大孤山石化産業園区の沿岸部にある大連福佳・大化石油化工有限公司の工場で、パラキシレンを生産している。

能力は年産 700千トンで、450千トンの増設計画あり。
他に、OX 100千トン、トルエン 400千トン、LPG 100千トンを生産している。

8月8日に台風9号中国名:梅花が接近した際、工場から約50mの距離にある防波堤が決壊した。
防波堤のすぐ近くに保管されていたパラキシレンが漏れ出す恐れが強まり、付近住民らが避難する騒ぎとなった。

大連の地元当局は9日、新華社通信などに「防波堤の修復は終わり、有毒物質は漏れなかった」と述べた。

市政府は当初、 工場の移転を一つのオプションとして検討するとし、同時に有毒物質を出来るだけ早く取り除くとしてい たが、夕方になり工場の即時操業停止と早期移転を決定し、抗議活動は収束した。

毎日新聞は以下の分析をしている。
経済の急成長に伴って市民の権利意識が高まる一方、浙江省温州市で先月起きた高速鉄道事故のずさんな対応などによって政府への不満がくすぶる。中国当局に、事態の長期化で批判の矛先が政府に向き、収拾がさらに難しくなるという懸念があったのは間違いない。

報道では、大連工科大学の専門家(匿名)が、国際的な規則ではパラキシレンは都市部から少なくとも100km離れて建設されることになっていると述べた。 (これでは日本のコンピナートでは生産できないこととなる)
工場は大連から21kmしか離れていないため、市民に不安が広がった。

ほとんどの住民は工場で何を作っているかを知らなかったため、「危険施設がこんなに近くにあったとは」と住民らの反発は収まらず、インターネットなどでデモ呼びかけが行われた

ーーー

大連福佳・大化石油化工大連福佳企業集団(Fujia)と大化集団(Dahua)JV。

工場の建設に関して、疑惑が取りざたされている。

計画は2005年12月にNDRCの承認を得て、2009年5月に生産を開始した。しかし、環境部が環境インパクトの評価を行い、生産の許可を与えたのは2010年4月で、その1年近く前に生産を開始していたことになる。

なお、同地では逸盛化学80%、大化集団20%のJVの逸盛大化石油化学が実質能力年産150万トンのPTAプラントを持っている。
同社は浙江省寧波市でPTA第3期の認可を取得、完成後は寧波で300万トン、大連を合わせ450万トンの能力となる。

2011/3/24 浙江逸盛石化、寧波でPTA第三期計画の認可を取得

ーーー

パラキシレンに関しては、2006年11月に台湾資本のDragon Group(騰龍グループ)は福建省厦門の海滄投資区で芳香族とPTAプラントの建設に着工した。PXはDragon Aromatics (Xiamen) Co.(騰龍アロマティックス)担当した

当初、コラムニストがPXプラントの危険性を問題とする記事を新聞に書いたが、市当局は関連記事の記載を禁止した。
ところが、「事故が起こると何千トンもの毒物が放出される」といった内容の記事がインターネットに次々掲載され、反対運動が広がった。

2007年12月、福建省と厦門市当局は騰龍アロマティックスの海滄投資区での芳香族計画を取り止め、これを福建省漳州市の古雷半島に移転させることを決定した。

2009年5月8日、古雷半島で2年遅れで建設が始まった。PTA(150万トン)の建設も同地で始まった。

2007/6/11 中国のインターネット反対運動が石化計画を止め 

 

中国のパラキシレンの能力及び新増設計画は以下の通り。

2009/9/30 中国でパラキシレン能力が需要を上回る 

大連福佳・大化石油化工の工場の安全対策がどうなっているのか不明だが、都市部から100km離れるのが国際的な基準などという誤ったコメントが新聞に載り、厦門市や大連市のように反対運動で当局が移転を決めたことが前例となり、他の工場にもこの動きが広がると大変なこととなる。

 

付記

コメントをいただいた、近くの北良港の穀物サイロです。


2011/8/16 コバレントマテリアル、シリコンウエハー事業を売却 

コバレントマテリアルは8月11日、半導体ウエハー事業を台湾のSino-American Silicon Products Inc.(SAS:中美矽晶)に約4億5100万ドル(約347億円)で売却すると発表した。

子会社のコバレントシリコン(CVS)にシリコンウエハー事業を集約し、CVS全株式をSASに譲渡する。

収益が悪化していたウエハー事業を切り離し、セラミック関連事業に注力する。

半導体製造装置用セラミックス製品など、半導体関連部材事業について競争力の維持・強化を図るとともに、第二の柱となるエネルギー・環境事業も用途開発と新製品の投入を強化、成長を加速させる。

SASは台湾で太陽電池向けのウエハー事業を展開している。連結売上高は約600億円。コバレントのウエハー事業を買収することで半導体向け事業に参入する。

ーーー

コバレントの前身は東芝が40.4%を出資していた東芝セラミックス。

2006年10月、東芝セラミックスはCarlyle Groupとユニゾン・キャピタルが設立した特別目的会社エスアイシー・インベストメントを通じた自社株の株式公開買付を宣言、東芝の賛同を得て、これを実施した。

2007年6月にエスアイシーはTOBとその後の株式交換により完全子会社化した東芝セラッミクスと合併し、コバレントマテリアルとして発足した。

現在の株主は以下の通り。

Carlyle Group    45.6%
ユニゾンキャピタル    22.8%
UC Mask Investor   24.7%
東芝   3.1%

世界のシリコンウエハーのシェアは、信越化学が36%、SUMCO(旧三菱住友シリコン)が29%を占めるのに対し、コバレントはMEMC(米)、LG Siltron(韓)、Siltronic AG(独)の後塵を拝し、6位となっており、シェアは5%程度に過ぎない。

半導体需要は伸びているが、価格競争に拍車がかかっており、開発投資の負担も増えている。

同社の決算(百万円)は以下の通りだが、 前々期、前期とも大赤字で、累積損益は-33,239百万円となっている。
うち、ウエハーの営業損益は当期は黒字だが、 前々期は-2,212百万円、前期が-1,550百万円となっている。

当期も税引前損益は赤字で、最終が黒字になったのは繰延税金資産の計上によるものだが、これは今回の事業売却に伴う特別利益を前提にしたものである。

  2009/3 2010/3 2011/3
全社 セラミックス ウエーハ その他
売上高 93,717 67,859 82,867 37,832 40,949 4,085
営業損益 -3,818 -12,505 2,733 1,743 519 430
経常損益 -5,844 -14,356 -372      
税引前損益     -1,131      
税金     -1,762      
当期損益 -15,976 -16,408 573      

大株主として収益回復を急がせたいCarlyle等が事業譲渡を促したとみられている。

しかしウエハー事業の売却により、同社の売上高は半減することとなる。 

ーーー

売却先の台湾のSino-American Silicon 中美矽晶太陽光パネル用ウェハーで急成長してきた新興勢力 。
2010年の連結売上高は約600億円。

半導体も太陽光パネルもシリコン製のウエハーを加工して生産するが、ユーザーが求める純度や品質の水準は半導体用が圧倒的に高い。
技術力で後れを取る台湾企業は、大量生産体制を築く資金力が勝敗を分ける太陽光パネル用で勢力を伸ばしてきた。

SASはコバレントの持つ高純度のウエハー製造・加工技術を獲得することで、半導体ウエハー事業に本格参入する。

SASでは、台湾には世界最大級の半導体メーカーのTSMC(Taiwan Semiconductor)、半導体受託生産で世界第二位のUMC、半導体組み立て/検査大手のASEがありながら、大手のウエハーメーカーがないが、今回の買収により台湾の半導体産業の国際競争力を著しく増大させるとしている。

同社は2008年に米国のエピウェーハのメーカーのGlobitechを買収して、売上高を3倍、利益を2倍にし、シナジー効果を体験している。

今後、欧米に加え、日本にも進出するとしている。


2011/8/17  渤海湾の原油流出事故

ConocoPhillipsと中国海洋石油(CNOOC)が共同で開発している渤海湾の海底油田のPenglai (蓬莱) 19-3で新たな原油流出が見付かり、ConocoPhillipsに対する批判が高まっている。

同油田はConocoPhillipsが権益49%を保有してオペレーターを務めており、残り51%はCNOOCが保有している。

1980年代に日中石油開発が蓬莱19-3油田エリアを含む25,000km2の鉱区を取得し探鉱を行ったが、当時は2,000m以深が主な対象層とされ、同エリアで商業量の発見はなく、放棄した。
その後CNOOCとConocoPhillipsが浅層を対象に掘削を行った結果、蓬莱油田を発見した。

蓬莱 19-3での最初の原油漏れは本年6月4日に Platform B付近で発見され、6月17日にはPlatform C 付近でも発見された。
しかし、
ConocoPhillipsとCNOOCはこの事実を1カ月近く隠し、非難を受けた。

7月10日に新たに油の流出が確認され、監督機関の国家海洋局は7月13日にConocoPhillipsに対し、Platform BとPlatform C(生産量は蓬莱油田の3分の1相当)の稼働停止を命じた。

中国国家海洋局は7月末に油田付近の4.6km2にいくつかの油膜が形成されていると明らかにした。Platform C で原油が毎日流出していることがわかり、 Platform B付近でも油膜が発見された。

7月14日までに集計された原油流出量は1,500バレルで、海水が汚染された面積は4,240km2と推測された。

原油流出によりすでに河北省と遼寧省一帯の海岸には黒い油膜が押し寄せており、該当地域の養殖業が大きな被害を受けている。

ConocoPhillipsは8月7日、蓬莱19-3で、6月の原油流出事故現場から10.8メートル離れた地点に新たな原油流出が発生したと認めた。現場の点検作業員が確認したという。

国家海洋局は8月10日、ConocoPhillipsに対し、クリーンアップの遅れを中国国民に謝罪するよう求めた。汚染地域、量、クリーンアップ済み地域と未処理地域、クリーンアップ方法、漏れ防止策などの報告を求めた。

中国の法律では原油漏れの罰金は最高で20万元(3万ドル強)となっており、これがConocoPhillipsの対応の遅さの理由ではないかと問題視する声が出ている。ConocoPhillipsには中国の海洋環境への社会的責任が欠けているとの批判もある。

付記

中国海洋石油総公司(CNOOC)の王宜林董事長は8月24日、香港で記者会見し、原油流出事故について謝罪した。事故原因の究明は中国政府の調査を待つとしたうえで、賠償問題もその結果に委ねる考えを示した。

ConocoPhillipsは期限として決められた8月31日に、原油流出が止まったと発表した。

しかし、国家海洋局は流出が完全に止まっていないと判断し、9月2日にPenglai (蓬莱) 19-3の生産停止を命じ、ConocoPhillipsはこの命令に従った。

 


2011/8/18 New York Times、日本政府の福島原発情報の公表遅れを批判 

“Japan Held Nuclear Data, Leaving Evacuees in Peril”ーーー8月8日のNew York Times はこのタイトルの長文の記事を掲載した。
   http://www.nytimes.com/2011/08/09/world/asia/09japan.html

福島第一原発の事故の際、浪江町民は政府の指示のないまま、冬なので北風が吹くと考え、北西部の津島に避難した。
実際には風は直接、津島に向かって吹いた。3月12日から15日まで、町民は最も放射能のレベルの高いところに居た。

町民は2か月後に放射能の広がりを予測する政府の緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information:Speedi)がそれを示していたことを知った。

町長はこの情報隠しは殺人に近いと怒っている。

  

文科省は当初、このコンピュータ予測はデータが不完全であるとして首相官邸に知らせなかった。
津波で原発にあるセンサーが破壊され、実際にどれだけの放射能が放出されたか分からないため、どこまで拡がるか測定できないというもの。

付記

原子力安全・保安院は9月2日、東日本大震災当日、福島第1原発1~3号機で全電源喪失などを想定し炉心溶融などを予測した「緊急時対策支援システム(ERSS)」の解析結果を公表した。
官邸の窓口に保安院職員を通じて渡したが説明はしておらず、どう活用されたかは不明という。

ERSSを開発した原子力安全基盤機構は3月11日、保安院の依頼でシステムを起動し、同原発で全電源が断たれた事態を想定したパターンを使い、1~3号機の原子炉内の水位や圧力、温度が今後どう推移するかの予測結果を同日午後10時に作成した。
それによると、11日午後10時50分に燃料棒が冷却水から露出すると予測。同11時50分に燃料の被覆管が破損し始め、12日午前0時50分に溶融が始まるとした。同3時20分に原子炉格納容器が設計上の限界圧力に達してベント(排気)が必要になり、放射性物質が外部に出ると予測した。

保安院は1号機の予測から導いた放射性物質の推定放出量を基にSPEEDIで拡散予測を実施した。
この計算結果も3月12日午前6時7分に出たが、保安院は官邸に報告していなかった。

 

首相官邸は最初はこれがあることを知らず、当初半径3kmを避難地域とし、順次広げた。

官邸は、これの存在を知り、専門家が不完全でもSpeediを使うべきだと進言した後も、この予測が問題とされた場合に、費用がかかる避難地域拡大の責任をとりたくなかったため、これを拒否した。

避難地域の拡大は数十万人を避難させ、住むところを探す必要がある。当初は道路が封鎖され、鉄道も動いていない。
これらを考え、避難を制限した。それにより補償費の支払い拡大も避けた。(官僚のインタビューから)

政府側は、Speedi が当初出したマップは首尾一貫せず、風向きにより日に何度も変わった、役に立たないものを公表しても仕方ないとするが、専門家は、専門家が見ればSpeediは非常に役に立つとしている。

ーーー

このコンピュータ予測は、政府が最初に公表しなかった情報の一つである。

福島原発のメルトダウンは何か月も公式に認められないままであった。
津波の翌日にメルトダウンの証拠であるtellurium 132を見付けたが、IAEAの訪問まで、約3か月これを抑えた。

学者グループはこれは極めて遺憾であると非難している。
同時に、被害の全容が分かる圧力容器内部の水の量や温度などを隠しているとみている。
また、冷却システムが破壊されたのが、津波のせいなのか、若しくは地震による破壊が要因なのかのデータを隠しているとしている。もし後者なら他の原発の安全性にも疑問が出てくる。

細野大臣は、当初パニックを起こすことを恐れて、Speediを含め、いくつかのデータを公表しなかったが、政府は考え方を変え、出来るだけ早くデータを公開するようにしていると述べた。


2011/8/19    最近の中国の資源買収

8月17日付の日本経済新聞は
「中国、資源買収 曲がり角 海外権益取得 急拡大のツケ 」
というタイトルで、最近の中国企業の海外投資の失敗例を取り上げている。

しかし、それぞれを見ると然るべき理由があり、不可抗力や妥当な判断によるものが多く、必ずしも急拡大のツケとは言えない。

中国にとって資源の必要性は減っておらず、今後、人民元が切り上げられると、ますます買収に励む可能性がある。

過去のブログ記事のフォローも含め、取り上げられた事例を分析する。

1)Timor海Puffin油田

Sinopecは2008年に豪州のAED Oil から Puffin油田(AC/L6 and AC/P22)と AC/R1油田の権益の60%を6億豪ドルで買収し、両社のJVとした。

掘削にはノルウェーのSeaProduction LtdのFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)を起用したが、生産は設備の不調でうまくいかず、JVは2009年5月に生産を停止し、安全性や操業改善の措置が取られなかったとして契約を打ち切った。

これに対し、SeaProduction側は落ち度はないとして60百万ドルの補償を求め、調停に持ち込んだ。

調停委員会はこのたび、JV側に60百万ドルの補償をSeaProductionに支払うよう、決定した。

 これを受け、AED Oil 任意管理(voluntary administration)手続きに入った。管財人は、会社の全権を掌握し、事業を継続しつつ、負債の整理などを行う。

 

 


 

2)イランSouth Parsガス田

イラン政府は2009年6月、フランスの石油大手 Total と実施する予定のSouth Parsガス田開発を、同社に代えて中国石油天然気集団(CNPC)と進める方針を決め、イラン国営石油会社(NIOC) CNPC が北京で Cooperation contract に調印した。

2009/6/12 中国CNPC、イランで天然ガス開発

しかし現在のところ、CNPCはこの採掘を見合わせている。

イランでは日本はアザデガン油田から撤退したが、CNPCは2009年1月に北アザデガン油田開発の契約を締結し、2009年8月に南アザデガン油田の70%の権益を取得した。(日本撤退後はイラン側が30%)

これについても開発が進んでいるとは聞こえてこない。

CNPCとしては先ず権利を取得し、様子をみているものと思われる。


3)リビア

政情不安のリビアではCNPCが権益を取得した多くの油田が開発・生産中止に追い込まれ、全員が撤退、多額損失発生のリスクを抱える。

政府関係者は「インフラ開発まで含むリビアでの中国企業の損失は400億元(約4800億円)に達する恐れがある」とみる。

CNPCは2002年にリビアに進出した。

2002年にリビア国営石油とイタリアのAgipと共同で、砂漠地帯のWAFA油田と地中海側のMellitahを結ぶパイプライン建設を請け負った。
2005年12月に
リビア国営石油会社との間でPelagian Basin の海底油田の開発契約を締結した。

CNPCは2009年にリビアのGhadames Basin に利権を持つカナダの石油会社Verenex Energy を買収する契約を締結した。
しかし、
リビアの石油利権の移譲についてはLibyan National Oil の承諾が必要となっており、リビアは承諾せず、最終的にCNPCは諦め、リビアの政府投資ファンドが買収した。

2009/9/24 中国石油天然気集団CNPC)、カナダの石油会社買収でリビア政府に敗退

2003年9月に国連安保理は対リビア制裁の解除を発表、この結果、米国はリビアを「テロ支援国家」指定から外し、その後、2006年5月にアメリカはリビアとの国交正常化を発表した。

このため、リビアの石油を狙い、多くの企業が進出している。

2007/4/25 Dow、リビアに石化JV設立    

2010/7/27 BP、リビア沖で深海油田掘削

付記

中国外務省の馬朝旭報道官は8月22日、「中国は国際社会と共に、リビアの再建で積極的な役割を果たしていきたい」との姿勢を表明した。「中国側はリビア国民の選択を尊重する。リビア情勢がいち早く安定を取り戻し、国民が正常に暮らせるよう希望する」と述べた。
中国は当初、米国とNATOによるリビア空爆に反対していたが、その後は黙認へと変化していた。


4)
カナダの天然ガス権益

PetroChinaは2011年210日、カナダの天然ガス最大手のEncana Corporation から天然ガスの権益の50%を54カナダドル(54.3億米ドル)で買収することで合意したと発表した 。

2011/2/16  PetroChina、カナダの天然ガス権益取得

しかし、両社は6月21日、条件が折り合わず、交渉を中止したと発表した。CNPCは採算に合わないとして撤回した。


5)ナミビアのウラン権益

「 国有原子力発電大手、中国広東核電集団(CGNPC)はアフリカにウラン権益を持つ英Kalahari Minerals を7億5600万ポンド(約950億円)で買収することに合意したが、日本の原子力発電所事故に伴うウラン価格下落で、買収提案を撤回した。」

実際には、本年3月にCGNPCは1株2.9ポンド、総額7億5600万ポンドの提案を行ったが、ウラン価格の下落を受けて交渉し、Kalahariとの間で1株2.7ポンドに引き下げることで合意した。
しかし、英国政府がこれを認めず、断念した。

Kalahariは、ナミビア共和国に所在する世界最大級のフッサブ・ウラン鉱山(ロッシング・サウス鉱区を含む)を100%保有するExtract Resources の株式42%を持つ筆頭株主。
ロッシング・サウス鉱区は、世界有数の資源量を誇る大規模ウラン鉱区であり、現在、事業化調査が進められており、ウラン生産開始は2013年を予定している。

伊藤忠は2010年5月、Kalahariの株式14.9%を 約85億円で取得した。
同社は2010年7月、
Extract Resources の株式10.3%を取得することで合意した。(2011/8の株主リストには未掲載)

6)豪銅鉱山開発大手Equinox Minerals

中国国有資源大手の中国五鉱集団の五鉱能源(Minmetals Resources)は、豪州とカナダに上場している銅鉱山開発会社のEquinox Minerals に対して買収提案を行った。全株取得を狙っており、買収提案額は63億カナダドル。

2011/4/15 中国五鉱集団、Equinox Minerals に買収提案 

五鉱資源は4月26日、買収計画を撤回した。
世界最大の産金会社、カナダのBarrick Gold が五鉱資源を上回る買収提示額(73億2000万カナダ・ドル)を示したことを受けた。


2011/8/20  福島原発、汚染水浄化装置 サリー 本格稼働へ

東京電力は、福島第一原発の高濃度汚染水を浄化する新しい装置の試運転の作業を8月16日正午過ぎに始めた 。

試運転は17日午後9時まで行い、想定通りの機能を確認できた。

その後、直ちに本格稼働の予定であったが、装置内の圧力が想定以上に高まり、プログラムの変更などを迫られた結果、18日午後から本格稼働させた。

このセシウム吸着装置は、SARRY (Simplified Active Water Retrieve and Recovery System) と呼ばれ、アメリカのShaw Groupが基本設計を行い、東芝とIHIが制作したもので、セシウム吸着塔は、直径1.4m、高さ3.6mの円筒形の容器。

Kurionと同じセシウム吸着装置だが、吸着塔自体に鉛遮蔽を施したことなどにより、従来のようなスキッドはなく、装置がシンプル。

吸着塔内部にはゼオライトとチタンケイ酸塩が詰めこまれており、これが5段直列に繋がる構造を持つ(2系列)。
処理能力は1,200t/日。
汚染水を送り込むポンプが2台用意されていて、1台が壊れても、もう1台によって、そのまま処理を継続できる。

下記のような組み合わせが可能で、 いずれかの装置が故障しても、残りの装置で処理を続けられるため、浄化システムの稼働率向上につながる。

当初はKurionーSARRYーArevaの三つの装置を直列に接続した。

東京電力は8月19日、従来の
KurionーArevaの系列と、SARRY単独の系列を並行して運転し始めた。処理量は1時間あたり最大50トンから70トンに引き上げられるという。

6月から稼働しているKurionーArevaの装置を使った汚染水処理施設では、ポンプの停止などのトラブルが相次ぎ、汚染水の量は思うように減っていない。東電は8月17日の会見で、前週の汚染水浄化装置の稼働率が88%だったと発表したが、浄化システムが本格稼働した6月17日からの通算の稼働率はまだ69%にとどまる。

付記

東京電力は8月21日、新たに淡水化装置2台が試運転に入ったと発表した。放射性物質を取り除いた汚染水から、逆浸透膜を使って塩分を取り除く装置で、試運転に問題がなければ本格運転に入る。淡水化の処理能力は1時間あたり50トンから70トンに増える。

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東京電力は8月22日、SARRY保守作業中に毎時3シーベルトの極めて高い放射線量を確認したため作業を中断、予定していた部品交換ができなかったと発表した。
原因は装置内部の圧力変動によって放射性汚染物質の塊が配管に漏れたため。東電は再発防止策として、装置内の弁を閉め、汚染物質が流出しないようにした。

参考 2011/6/16  福島原発、汚染水浄化装置

   2011/7/5    循環注水冷却が本格稼働


続く

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