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2012/1/16 国際石油開発帝石、豪州イクシスLNGプロジェクト 最終投資決定 

国際石油開発帝石(INPEX)は1月13日、豪州のIchthys LNGプロジェクトに関する最終投資決定を行ったと発表した。
生産開始は2016年12月末の予定。

本プロジェクトは、同社がTOTALとともに推進する西豪州沖合WA-37-R鉱区ほかに位置するIchthys ガス・コンデンセート田の開発プロジェクトで、日本企業が主導する初の大型LNG(液化天然ガス)開発プロジェクト。

同社にとり、マハカム沖鉱区プロジェクト(インドネシア)、バユ・ウンダンプロジェクト(チモール海共同石油開発地域)、タングーLNGプロジェクト(インドネシア)に次ぐ4件目のLNG開発・生産プロジェクトで、このプロジェクトにおいては初めて操業主体(オペレーター)を務める。

Ichthys ガス・コンデンセート田の埋蔵量は、年間800万トン超のLNGを約20年の長期にわたり生産できる規模。
産出される天然ガスを、Darwinに建設する陸上プラントで液化し、年間840万トンのLNGと年間約160万トンのLPGとして生産・出荷する。
また、洋上貯油・出荷施設(FPSO:Floating Production, Storage and Offloading)等から日量約10万バレル(ピーク時)のコンデンセートを生産・出荷する。

権益比率はINPEXが76%、Totalが24%で、INPEXは一部を東京ガス等に譲渡予定で、豪州政府承認後は以下の通りとなる。

INPEX 72.805 72.070 66.070 %  
Total 24.000     30.000   6%権益については契約上の先行条件の充足が条件
東京ガス 1.575     1.575    
大阪ガス 1.200     1.200    
東邦ガス 0.420     0.420    
中部電力     0.735 0.735    

付記
2013/6 台湾のCPC Corporationとの間で、66.070%の一部2.625%を譲渡する契約を締結

プロジェクトの総投資額は340億米ドルで、同社負担分(権益比率72.805%)は247億米ドル(約1.9兆円)を見込む。

LNGについては既に、下記の通り、2017年から15年間の長期LNG売買契約を締結しており、7割相当が日本に仕向けられる。

買主 LNG年間販売量
東京電力 105万トン
東京ガス 105万トン
関西電力 80万トン
大阪ガス 80万トン
九州電力 30万トン
中部電力 49万トン
東邦ガス 28万トン
CPC社(台) 175万トン
TOTAL社(仏) 90万トン
当社 90万トン
合計 (832万トン)

同社はIchthys周辺の開発プロジェクトに参加している。

  参加権益比率(*オペレーター)
Ichthys:
WA-37-R、WA-285-P
*同社76%、TOTAL 24%
WA-274-P 同社 20%、Chevron 50%、 *Santos 30%
WA-281-P 同社 20.00%、*Santos 47.8306%、Chevron 24.8300%、Beach 7.3394%
WA-341-P *同社 60%、TOTAL 40%
WA-343-P *同社 60%、TOTAL 40%
WA-344-P *同社 60%、TOTAL 40%
WA-410-P 同社 20%、*Santos 30%、Chevron 50%
WA-411-P 同社 26.6064%、*Santos 63.6299%、Beach 9.7637%

付記    2016年の入札でWA-532-P 鉱区を単独で落札 (2017/11/2発表) 
            2017年の入札でWA-533-P 鉱区を単独で落札 (2018/3/19発表)

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2010年代後半までに予定される主なアジア向け新規LNGプロジェクトは以下の通り。(2012/1/14 日本経済新聞)

  プロジェクト 能力
万トン/年
操業主体
豪州 Gorgon 1,500 Chevron
Wheatstone 860 Chevron
Queensland Curtis  850 英BG Group
Ichthys 840 INPEX
Australia Pacific 700 ConocoPhillips
Pluto 430 豪 Woodside
インドネシア Tangguh 380 BP
Abadi 250 INPEX
Donggi-Senoro 200 三菱商事
パプアニューギニア PNG 660 ExxonMobil

 


2012/1/17 ニプロ、医薬品でベトナム、バングラデシュに進出 

ニプロは昨年末に医薬品でバングラデシュに進出、1月10日にはベトナムでの製造子会社の設立を発表した。

ニプロは、1954年に日本硝子商事として創業以来、アンプル用・錠剤瓶用の硝子管販売等の素材・材料関連事業に携わり、そこで培われた技術を礎に医療機器、医薬品等の事業に拡大展開を図ってきた。

1969年、富沢製作所を子会社とし医療機器の生産を開始。
1977年、商号をニッショーに変更。
1988年、菱山製薬に資本参加し医薬品分野へ進出。
2001年、ニプロを吸収合併し、商号をニプロに変更。

医薬用硝子容器事業では2011年7月に、インド、ロシア、欧米への進出を発表した。

2011/7/30 ニプロ、医薬用硝子容器事業で海外展開 

医薬品では下記各社に参加して子会社とし、ジェネリック医薬品の製造・販売と、製造受託を行っている。

ニプロファーマ(旧菱山製薬):ジェネリック医薬品、キット製品、受託製造
ニプロジェネファ(旧竹島製薬):ジェネリック医薬品
東北ニプロ製薬(旧東北中外製薬):受託製造
全星薬品工業:ジェネリック医薬品
ニプロパッチ(旧埼玉第一製薬):パッチ剤(経皮吸収製剤)

ニプロは2011年7月、Novartis generic 部門であるSandozとの間で、日本国内における後発医薬品の開発、販売、製造等の事業活動において、広く協力する旨を定めた戦略的業務提携契約を締結した。

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(バングラデシュ)

ニプロは人口が多く医療ニーズが拡大している地域を中心に医療機器の現地生産・現地販売体制の構築を進めているが、2011年3月に人口1.6億人を有するバングラデシュに血液回路等の医療機器製造販売の合弁会社を設立した。

社名:Nipro JMI Company Ltd.
出資:ニプロ 60%、JMIグループ 40%

同社は2011年12月、上記JVのパートナーのJMIグループの製薬会社JMI Pharma Ltd.の第三者割当増資を引き受ける形で出資を行い、同社を子会社とすると発表した。同社に51%を出資し、社名もNipro JMI Pharma Ltd.に改称する。

バングラデシュの製薬市場は年15%の成長を続けており、今後の市場成長が見込まれる地域である。

ニプロでは、JMI Pharma Ltd.がすでに構築した生産体制および営業基盤をベースとし、JMI グループとの協力関係を活かし、ニプロの培った医薬品製造技術も必要に応じて投入して新規品目の製造およびバングラデシュ国内での販売強化を図るとともに、ニプログループの販売ネットワークも活用して世界中の販路開拓を行うとしている。

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ベトナム)

ニプロは1月10日、ベトナムに医薬品工場を設立すると発表した。

日本国内におけるジェネリック医薬品業界は、政府の使用促進策等により急速な拡大局面を迎えているが、これに伴い国内大手先発医薬品メーカーや外資系企業の新規参入が本格化し、熾烈な市場競争に拍車がかかることが必至となっている。

同社の医薬品事業部門は、2020年度に売上高2,000億円を目標としているが、販路のグローバル化及びコスト面での競争優位の確立が急務となっているとしており、ベトナム進出を決めた。

会社名 : ニプロファーマ・ベトナム・リミテッド (仮称)
設立場所: ハイフォン市 (VSIP工業団地内)
操業予定時期: 2015年4月頃

日本を含めた先進国市場向けに良質で低価格な医薬品を供給することをミッションとする。

注射剤を中心にスタートし、将来的には、経口剤や外用剤を含めた多種製剤に対応可能な工場を目指し、ベトナム国内や他の新興国への販路開拓も進めていく。日・米・欧の3極のGMPに対応した品質保証体制を完備する。


2012/1/17 中国の2011年のGDP、前年比9.2%増  

中国国家統計局が1月17日発表した2011年第4四半期のGDPは、物価変動の影響を除いた実質で前年同期比8.9%増と、2年半ぶりに9%を割り込んだ。

2011年の年間は前年比9.2%増で、2年ぶりに1桁成長にとどまった。

GDP伸び率の推移は以下の通り。


2012/1/18 Saudi AramcoとSinopec、サウジでの製油所建設の合弁契約締結

Saudi AramcoとSinopecは、温家宝首相のサウジ訪問中の1月14日、サウジのYanbuでの製油所建設の合弁契約に調印した。

2010年7月にAramco 100%で設立し、建設を開始しているRed Sea Refining CompanyにSinopecが参加する形で、Yanbu Aramco Sinopec Refining Co.(YASREF) と改称し、Saudi Aramco62.5% Sinopec 37.5%を出資する。

日量400千バレルのArabian Heavy 原油を処理し、日量90千バレルのガソリン、同263千バレルの超低サルファディーゼル、同6300トンの石油コークス、同1200トンの硫黄などを生産する。2014年下半期に生産を開始する。

付記 2016年1月20日、習近平国家主席とサルマン国王が出席し、製油所の生産開始式が行われた。

投資額は85〜100億ドルで、ファイナンスについてはまだ決まっていない。

両社は2011年3月に覚書を締結、中国のNDRCは8月にこれを承認している。

2011/3/25  Saudi Aramco Sinopec、サウジで製油所建設

なお、本製油所は当初、Saudi Aramco ConocoPhillipsの合弁で計画されていた。

 2008年11月に金融危機の影響でAramcoの他の計画と同様に、本計画も延期された。

2008/12/10 サウジアラムコ、石油開発計画を延期

 2010年4月にConocoPhillipsが川下分野削減という戦略変更に基づき、本計画から撤退した。

Sinopecにとっては、海外で製油所を建設する初めてのケースで、Saudi AramcoとSinopecとの4つ目のJVとなる。

@Fujian Refining & Petrochemical (福建聯合石油化工)
  Aramco 25%、Exxon 25%、中国側50%(Sinopec 50 / 福建省政府50)
ASinopec SenMei (Fujian) Petroleum (中石化森美(福建)石油)
  
Aramco 22.5%、Exxon 22.5%、Sinopec 55%

B Sino-Saudi Gas (サウジRub' al-Khali Basinでのガス開発)
   
Sinopec 80%Aramco 20%

付記
Sino-Saudi Gasは何年間も天然ガスの探索をしているが、発見したものも、工業ガス価格が安いため、開発していない。

しかし、本年下半期に第二フェースの採掘を始める。

記者会見で、両社とExxonMobilとの中国の合弁会社で第二の製油所(240〜300千バレル)の建設を協議していることが明らかにされた。
福建省のJVの能力増(製油所のデボトルネッキング、エチレン能力の80万トンから120万トンへの増強)も検討している。

ーーー

これと同時にSABICとSinopecの間の新規事業開発に関する協力覚書も締結された。温家宝首相も式典に参加した。

この中にはすでに合意している天津でのポリカーボネート生産JVも含まれている。

2011/5/26 SABICSinopec、天津でポリカーボネート生産 


2012/1/18 S&P、欧州金融安定基金の長期債の格付けを引下げ 

米格付け会社S&Pは1月16日、欧州金融安定基金(EFSF)の長期債の格付けを最上級のAAAから1段階引き下げ、AA+にすると発表した。

「EFSFの保証提供国やEFSF債券を裏付ける証券の信用度が低下しており、これを相殺するだけの信用補完が現時点では行われていない」と指摘した。

 

2010年5月に設立されたEFSF はユーロ圏各国の政府保証を受けて4400億ユーロの債券発行が可能だが、最上級の格付けを維持するためには、そのうち格付けがAAAの6か国の2554億ユーロしか貸し出すことができな かった。

ギリシャ危機を受け、EUは2011年6月に、融資可能金額を引き上げることを目的に、EFSFの拡充を決定した。スロバキアが10月に一旦は反対を決め、その後賛成し、成立した。

ユーロ圏各国が政府保証をつける金額を7800 億ユーロに引き上げ、このうち、AAA格付け6か国の合計は4515億ユーロとなった。

2011/11/7   EU 金融危機

しかし、フランスとオーストリアがAA+に格下げされると、残りのAAA格付け4か国の合計は2714億ユーロと4割減となる。 

各国が負担する保証負担額は以下のとおり。(100万ユーロ)

  保証負担額 拡大後 S&P決定後
オーストリア 12,241    21,639 (その他へ)
フィンランド 7,905 13,974 13,974
フランス 89,657 158,488 (その他へ)
ドイツ 119,390 211,046 211,046
ルクセンブルグ 1,101 1,947 1,947
オランダ 25,144 44,446 44,446
AAA格付 6か国
  合計

255,439

451,540
AAA 4か国    271,413
その他 184,561 328,243 508,370
合計 440,000 779,783 779,783

現在のところ、他の格付け会社のMoody'sとFitchはEFSFの格付けをAAA相当を維持しており、EFSFのレグリング最高経営責任者は、EFSFの実質融資能力を維持する方針を表明している。

しかし、他の2社が格下げをした場合、実質融資能力の維持のためには、以下の方法しかない。

1)低い格付けで債券を発行。

2)AAA格付けの4か国が保証枠を積み上げる。

S&Pでは「AAA格付けを有する保証提供国やAAAの証券により、EFSFの長期債務が完全に裏付けられているとわれわれが十分に判断できる水準までEFSFが信用を補完することができれば、EFSFの長期格付けをAAAに戻す可能性が高い」としている。

1)の場合は金利が上がり、被援助国の負担がさらに増える。
2)については、4か国が受け入れる可能性は少ない。

EFSFは1月17日に6カ月債 約15億ユーロの入札を実施したが、この日の入札はスムーズで、182日物の平均落札利回りは0.2664%。応札倍率は3.1倍と昨年12月13日の3カ月物入札時とほぼ同等だった。


2012/1/19 オリンパスとテルモ 

1月11日付け朝日新聞は、オリンパスが他社との資本・業務提携によって再建を目指す方針を固め 、国内外の5社を軸に提携先の検討を進めており、2月にも提携先を決める考えだと報じた。

候補5社は下記の通り。
 ・ソニー
 ・パナソニック
 ・富士フイルムホールディングス
 ・テルモ
 ・韓国 サムスン電子

ロイターによると、オリンパスはSMBC日興証券、シティグループ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を財務アドバイザーに選定し、具体的な検討に入っている。

各社は、オリンパスとの資本・業務提携により、オリンパスの内視鏡事業を手に入れ、医療事業への参入、拡大を狙う。

富士フイルムは2011年12月15日、携帯型超音波診断装置の大手企業SonoSite, Inc.をTOBにより友好的に買収することについて合意した。
  2011/12/21 富士フイルム 超音波診断装置の大手 SonoSite, Inc.の買収合意

複数の関係者によると、SonoSiteの買収には、富士フイルムのほかにソニーやパナソニック、テルモなども参戦して いたとされる。

ソニーは新たな成長の柱を求めて医療機器関連会社の買収を積極化している。
医療事業強化のために1月1日付で、吉岡浩副社長(プロフェッショナル事業担当)に、医療関係の全レポートを集める体制に変更したとされる。

現在の扱い製品は、 メディカルモニター、メディカルレコーダー、メディカルカメラ、メディカルプリンターに止まる。

パナソニックも、ヘルスケア事業部門を中心にオリンパスの事業との相乗効果を検討している。

パナソニック ヘルスケアは下記ビジネスユニットを持つ。
 ・バイオ診断BU:独自のバイオセンシング技術を駆使し、体外診断デバイスを展開
 ・画像診断BU:超音波診断装置を中心に、画像診断技術を駆使した機器を展開
 ・補聴器BU:「オーダーメイド耳あな型」、「耳かけ型」、「ポケット型」など、豊富なラインナップ
 ・医療機器・システムBU:高性能で高品質な医療機器・システムの提供

同社はまた、デジタルカメラの光学部品の企画をオリンパスに発注し、両社でデジタル一眼カメラ「ミラーレス」機の交換レンズ仕様を共同策定しており、オリンパスを他社に取られると、デジカメ事業はとん挫しかねないとの危機感もある。

但し、パナソニックの大坪文雄社長は1月10日、米ラスベガスの家電見本市での記者会見で、「(パナソニックが)救済するとの話は推測だ。直接アプローチしたり、されたりということは一切ない」と観測を否定した。

富士フイルムは、メディカル・ライフサイエンス事業を重要な成長分野として位置付け、「予防〜診断〜治療」の全領域をカバーする総合ヘルスケアカンパニーを目指した事業展開を進めている。
    
2011/12/21 富士フイルム 超音波診断装置の大手 SonoSite, Inc.の買収合意

テルモの事業内容は以下の通りで、オリンパスと医療機器分野で包括的な業務・資本提携を行っており、JVも持っている。

各種使い切り医療機器、医薬品・栄養食品、血液バッグ、人工心肺システム、カテーテルシステム、腹膜透析関連、血糖測定システム、ME機器 ・ 電子体温計など医療用機器の製造・販売

韓国のサムスン電子の関係者は、サムスンはオリンパスのカメラ事業には関心がないが、他の分野での提携を検討する可能性はあるとしていたが、その後、両社の技術や製品ブランドの組み合わせによるシナジー効果が薄いと判断し、結局見送ったことを明らかにした。(ロイター)

付記

富士フイルムは1月30日の決算会見で、同日付でオリンパスに提案書を提出したことを明らかにした。

オリンパスとの事業シナジーについて「内視鏡事業に知見がある富士フイルムと連携すれば、継続的、安定的に医師や医療施設をサポートできる。さらにオリンパスの内視鏡事業と当社のIT(情報技術)システム、エックス線画像診断装置、超音波診断装置などとの連携でシナジーが期待できる」と強調した。

「独禁法に抵触しないで、なおかつ両社のシナジーを発揮できる場があると考えている」と述べた。

付記

オリンパスは2012年6月8日、Michael C. Woodford元社長が英国労働審判所で申し立てていた労働審判に関し、同日の取締役会で和解合意が承認されたと発表した。
和解金として1000万英ポンドを支払う。

付記

ソニーとオリンパスは2012年9月28日、資本業務提携すると発表した。ソニーがオリンパスに500億円を出資し、11.46%を持つ筆頭株主になる。

両社は2013年4月、ソニー・オリンパスメディカルソリューションズを設立した。ソニー51%、オリンパス49% 出資。
事業内容:
(1) 4K以上の解像度技術、3D機能等を有する新型外科用内視鏡及びその関連システムの開発・設計・製造・販売 
(2) 手術室等向けの医療機器・映像機器の統合ソリューション事業 など
 

ーーー

テルモとオリンパスは2001年4月25日、医療機器分野における開発、製造、販売等に関し、包括的な業務提携基本契約を締結した。

低侵襲診断・治療機器(内視鏡やカテーテルなど、身体に対する侵襲度が低い医療機器を用いた診断・治療)に関して両社で開発を進め、当面は心臓外科、消化器科、泌尿器科の各領域で使われる先端的な治療機器から共同開発に着手、開発から販売までの関係を強化し、両社合わせ5年後には100億円以上の売上げを目指すとした。

両社は2005年8月、業務提携の強化に合意した。

日本における消化器分野の診断・治療系医療機器リーダーであるオリンパスと、循環器分野の診断・治療系医療機器リーダーであるテルモが、「低侵襲医療の実現」という両社共通の目的に向かって、それぞれのコア技術や幅広いノウハウを持ち寄ることは、両社の国際競争力を大きく強化するものとの認識で一致した。

両社はまた、この業務提携強化を経営レベルで推進するため、その裏付けとして両社間の資本提携を行うこととした。
両社の持ち株は以下の通りで、いずれも金融機関以外では最大株主となっている。

テルモ:オリンパスの6811千株  2.51%  
オリンパス:テルモの4715千株  2.20% 

更に両社は2006年12月に、共同事業に関して合意、2007年4月にオリンパス バイオマテリアルにテルモが参加し、オリンパス テルモ バイオマテリアルとしている。

オリンパスは2004年10月にオリンパス バイオマテリアルを設立した。
オリンパスの生体材料事業を承継するとともに、将来の再生医療事業に向けた研究開発に取り組んだ。

2005年9月に住友大阪セメントが製造し、住友製薬が販売する骨補填材の事業部門の譲渡を受けた。

2007年4月、テルモが参加、オリンパス テルモ バイオマテリアルに改称した。
  事業内容:セラミックス人工骨・コラーゲンなどの生体材料および再生医療に関する研究開発、製造販売
  出資比率:オリンパス66.6%、テルモ33.4%

生体の骨は、主にリン酸カルシウムとコラーゲンから出来ている。
オリンパスがリン酸カルシム、テルモがコラーゲン の製造技術・ノウハウを持つため、両社の技術を融合することで、より生体の骨に近い、新しい人工骨複合材を開発する。


2012/1/20 Westlake Chemical、Georgia Gulfに買収提案、Georgia Gulfは拒否  

Westlake Chemical は1月13日、Georgia Gulfに対し、全株を11億ドルで買収する提案を行った。
1株30ドルでの買収提案で、これは直近30日の株価の平均に51%のプレミアムを乗せたもの。

WestlakeはGeorgia Gulfの株をすでに4.8%所有していることを明らかにした。

両社の統合で、北米でのオレフィン、塩ビ、建材の有数のメーカーの一つになるとしている。

これに対し、Georgia Gulf の取締役会はこの提案を拒否した。Westlake の提案は業界の未曽有の不況から回復しつつある同社を安く買い叩くもので、株主の利益にならないとしている。

Georgia Gulfは住宅需要の激減で、破産寸前までいった。
2009年7月に債務の92%を資本金に転換、既存株主は株数を1/25に減らした。(1-for-25 reverse stock split)

Georgia Gulfによれば、Westlakeの提案は提案前日の株価に対し23%のプレミアムに過ぎず、過去52週の最高値に対しては26%のディスカウントになっている。
提案価格は合併による大きなシナジー効果を無視しており、メリットは全てWestlake(特に69%の株主のChao一族)に帰属することとなるとしている。

付記

Westlake Chemical は2月1日、Georgia Gulf に対して修正提案を行ったと発表した。前回の1株30ドルに対し、17%アップの35ドルとするもの。しかし、Georgia Gulf はこれも拒否した。

Westlake Chemical は又、Georgia Gulf 株主が合併のシナジーを享受できるよう、対価の一部をWestlake Chemicalの株式で支払うことも考えるとしている。

ーーー

Westlake Chemicalは台湾でCGPCを設立した故 T.T. Chao 1986年に米国に進出、設立した。

2006/9/16 Westlake Chemical、20周年

2008/3/12 T.T. Chao 逝去

現在、Chao一族が株式の69%を保有している。

同社の現在の能力は以下の通り。100万lbs単位を2.2で割ると千トン能力となる)

  立地 千トン  
エチレン Lake Charles   1,140 増強検討(180〜230) (*1)
Calvert City 205 BF Goodrichから買収
LDPE Lake Charles 680 Cities Serviceから買収、拡張
Eastmanから買収 LDPE   320、LLDPE 190
LLDPE 445
 
SM Lake Charles 260  
塩素
(ソーダ)
Calvert City 250
(270)
BF Goodrichから買収
Geismar   増設検討(*2) 塩素 350、ソーダ 380
VCM Calvert City 590 BF Goodrichから買収
Geismar 270 Bordenから買収(VCM 295、PVC 260)停止
その後、VCM、PVC新設(PVC 2段階)
PVC Geismar 270
Calvert City 360 BF Goodrichから買収

PVC加工製品

North American Pipe PVC Pipe
Westech Building Products Fence, Deck and Railing
Doors and Window Profiles

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(*1) エチレン増強
Westlakeは2011年4月、低コストのエタンや他の軽質原料を活用するという戦略から、
Lake Charlesでエチレンの増設を行うと発表した。2基あるクラッカーをそれぞれ増強する。

(*2) 電解増設
Westlakeは2008年8月、Geismarに電解を建設することを発表した。

2008/9/4  Westlake Chemical、ビニルチェーン強化のため、電解増設

2011年12月、能力を従来計画の25万ECUから35万ECUに増やすと発表した。
(1ECUは塩素1トン+ソーダ1.1トンの組み合わせ、35万ECUは塩素35万トンとなる)
投資額は370 〜420百万ドルと見込んでいる。

Georgia Gulf の買収が出来れば、この投資は不要となる。

ーーー

Georgia Gulf は1985年に製紙・製材業大手のGeorgia-Pacific からPVC関連とキュメン関連の事業を買収してスタートした。

Georgia-Pacific は建材事業拡大のため、1975年にPVC生産を始めたが、PVC成形品はコスト高で木製品と競合できなかった。
その後、景気悪化でPVCの販売が減少、売却した。

同社は1998年に軟質コンパウンドのメーカーのNorth American Plastics を買収した。
1999年にCondea Vistaを買収した。

2006年にはカナダに本社を置く塩ビ建材大手のRoyal Group Technologies を買収し、川下に進出した。

取得した事業は以下の通り。
 PVC:
Sarnia, Ontario
のPVCプラント
 添加剤:74千トン
 窓枠・ドア材
 建材:サイディング、パイプ・継手、デッキ・フェンス、物置

Georgia Gulf は2008年12月、カナダのSarnia工場(PVC 450百万lbs)の停止を発表した。

  2008/12/17 Georgia Gulf、カナダのPVC工場閉鎖

なお、鐘化が1996年にペースト塩ビ工場を買収し、鐘化デラウエアとしたが、2003年に解散した。

現在の売上高は28億ドルで、内訳は以下の通り。
 Chlorvinyls  44%
 Aromatics    28% Acetone、α-Methylstyrene、Cumene、Phenol
 建材      28%

塩ビ関連の現在の能力は以下の通り。
 電力:250MWコジェネ
 塩素:450千トン
 ソーダ:500千トン
 VCM:1,400千トン(うち元Condea Vista 695
千トン)
 PVC:1,230千トン  (うち元Condea Vista 695千トン

 PVCコンパウンド:440千トン(うち元Condea Vista 135千トン
North American が85千トン) 


2012/1/21 Texas RangersShintech 

ダルビッシュ投手のTexas Rangers入りが決まった。

1月18日、交渉期限ギリギリで合意した。契約内容は、6年で総額6000万ドル。

ポスティングシステム(入札制度)によるもので、テキサス・レンジャーズの落札額 5,170万ドルは、これまでの最高のレッドソックス/松坂大輔投手の約5,111万ドルを上回った。

日本ハムは1月19日、受領する移籍金約40億円を特別利益として計上すると発表した。

Texas Rangersは、American League西地区所属で、テキサス州Arlingtonを本拠地としている。

創立は1961年で、Washington D.C. に本拠を置くWashington Senators(2代目)として発足した。

メジャーリーグは以前は16球団であったが、1961年から拡大策をとり、1998年までに30球団になった。

その1961年に、American League発足から60年間に亘ってWashington D.C.に本拠を構えていたWashington Senatorsがミネソタ州Minneapolisに移転し、Minnesota Twinsとなったが、球団拡大策に乗り、新球団が2代目のWashington Senatorsとして発足した。
1972年にテキサス州
Arlingtonに移転し、Texas Rangersと改名した。

通算5714奪三振のメジャーリーグ記録を持つ投手Nolan Ryan, Jr.が、引退後、2008年にRangers球団社長に就任、2010年には投資グループの一員として球団を買収し、共同経営者兼社長となった。

ーーー

実は信越化学のShintechが一時、Texas Rangersに出資していた。

信越化学は1973年に塩ビパイプ大手のRobintech との50/50JVとしてShintechを設立した。
テキサス州FreeportのDow Chemicalのコンビナートに隣接して年産10万トンのPVCプラントを建設した(1974年に完成)。

金川千尋会長の「私の履歴書」(日本経済新聞 2006年5月)に以下の記載がある。

米ロビンテック社のCEO(最高経営責任者)、コーベット氏(Bradford G. Corbett)は自由奔放で何かを思いつくとすぐ実行する人だった。

ある日、米大リーグのテキサス・レンジャーズを買収すると宣言し、シンテックにも出資するよう私に了解を求めてきた。ロビンテックの取引先を球場に招待できれば本業にもプラスだから、という。
シンテックは娯楽産業には無縁だが、コーベット氏は「税制上有利になるから」としきりに勧めてきた。最初は何のことか分からなかったが、出資球団が赤字の場合は損金で落とせるという。

ロビンテックは、シンテックが生産する塩化ビニール樹脂の大口得意先の一つでもあった。私は渋々同意した。

彼がレンジャーズのオーナーになると、私も試合に招待された。本拠地、アーリントン球場の特別席に入ると、電光掲示板に「ウエルカム・ミスター・チヒロ・カナガワ・フロム・ジャパン」と表示され、驚いた。試合終了後は選手全員を紹介され、サイン・ボールをもらった 。

(その後、Robintechの経営が悪化、信越化学が同社保有のShintech 株を買い取り、100%子会社とした。)

1973年の第一次石油危機後、塩化ビニール樹脂の価格はうなぎ登りだったが、翌年半ばから反動で急落した。日の出の勢いだった米ロビンテックの経営も急速に悪化した。

信越化学が米ロビンテックからシンテック株50%を買い取る交渉がまとまり、契約の日取りも決まった。調印式は1976年7月8日、テキサス州のロビンテック本社で行うことになった。

実際、シンテック株の放出はロビンテックの凋落を象徴するかのようだった。拡大路線が裏目に出て坂道を転げ落ちるように経営が悪化。75年の前半まで30ドルを超えていた株価は82年には2ドル強まで下がり、84年末にはとうとう上場廃止に追い込まれた。テキサス・レンジャーズも手放した。
Corbett氏のオーナー期間はMay 29, 1974〜April 29, 1980)

その後、ブッシュ米大統領が一時オーナーになっている。
George W. Bushは1989年4月にEdward W. RoseとのPartnershipでTexas Rangersの株を購入してオーナーとなり、1998年に株を売却したが、当初の80万ドルの出資で1500万ドルの利益を得ている。)

Robintechは一時立ち直るが、1980年代後半、再び苦境に陥り、Chapter 11を申請したが、再建できず、破産に追い込まれた。

ーーー

日本企業では任天堂がイチローのSeattle Marinersのオーナーとなっている。

1991年にMarinersのオーナーがMarinersをフロリダの投資家グループに売却 することを検討していた。

このため、同州選出の上院議員が任天堂に買収を要請、同社の山内溥社長(当時)が投資家グループと組んで買収し、大リーグ史上初の非白人オーナーとなった。

2004年8月まで、山内氏がチームの共同所有者の一人となっていたが、現在はNintendo of Americaが山内氏の出資持ち分全てを買い取り、筆頭オーナーとなっている。


2012/1/23 Eastman Kodak、米連邦破産法11条申請 

経営危機に陥っていたEastman Kodakは1月19日、ニューヨークの連邦地裁に米連邦破産法 Chapter 11(民事再生法)を申請したと発表した。米国以外の事業は対象外。米国でも事業は継続する。

これを受け、New York証券取引所は同日、同社株式の上場廃止を発表した。

負債総額は6,751百万ドル。つなぎ資金(debtor-in-possession credit)としてCitigroupから18か月期限 で950百万ドルの融資を受けた。

同社では、Chapter 11申請は、米国内外における手元流動性の強化、非戦略的知的財産の収益化、過去の経緯にかかわる債務の整理、最も価値のある事業分野への集中を目的とするとしている。

CEOは以下の通り述べている。
「Kodakは、その変革を完了するための重要な一歩を踏み出した。我々は、デジタル事業を立ち上げたとほぼ同時期に、既に伝統的な事業からは効率的に撤退し、2003年以降、13の生産工場と130の研究所を閉鎖、47,000の人員を削減した。今は、費用構造に着目し、主力ではない知的財産の効率的な収益化によって変革を完了しなければならない。我々は、投資家の皆様と連携して効率的かつ世界クラスの、デジタル イメージングおよびマテリアル サイエンスの会社として再興することを目指している。」

「Chapter 11の適用は、我々の保有技術の中でも最も重要な2つの分野の価値を最大化する機会となる。その一つは、携帯電話やその他の消費者向け電子機器に不可欠な、2003年以来30億米ドルの収益を生み出したデジタル画像を保存する特許権で、二つ目は、成長を続ける米国コダックのデジタル事業において優位な競争力をもたらす画期的な印刷技術、および様々な材料へのイメージング技術である。」

コダックを巡っては最近、経営不安説がたびたび浮上。昨年9月に金融機関との間で設定したクレジットライン(融資枠)から1億6000万ドルを引き出すと発表したことなどをきっかけに株価が急落 、昨年12月上旬以降、株価が1ドルを下回る状態が続いていた。

昨年7月以降、Chapter 11申請を避けるため、長年蓄積してきた保有特許のうち1千件以上もの売却交渉を進めてきたが、間に合わなかった。
合わせて、特許価値の維持のため、世界の各社を特許侵害で訴えている。

最近の純損益の状況は以下の通り。

2008    -442百万ドル  うち、Graphic部門のノレン減耗 -785百万ドル
2009    -210百万ドル  うち、LGへの有機EL事業売却益 100百万ドル
2010    -687百万ドル  うち、Film部門のノレン減耗 -626百万ドル 

同社は近年、デジタル製品および様々な材料へのイメージング技術開発を行い、デジタル事業が収入の約75%を生み出しているが、中途半端とみられている。
尚、2012年より Consumer とCommercail の2部門とする。

2010年 Net sales(百万ドル)
  US Others Total 比率  
Consumer Digital Imaging
(
Consumer)
1,781 958 2,739 38% Digital Capture and Devices、Consumer Inkjet Systems、Consumer Imaging Services
Graphic Communication
(
Commercial)
810 1,871 2,681 37% Prepress Solutions、Digital Printing Solutions、Business Services and Solutions
Film, Photofinishing and Entertainment
(
→分割して上記2部門に)
397 1,370 1,767 25% Entertainment Imaging(映画用フィルム)、Traditional Photofinishing、Film Capture(写真フィルム、使い捨てカメラ)
Total 2,988 4,199 7,187 100%  

付記

Kodakは2月9日、2012年上半期中にデジタルカメラ、ポケットビデオカメラ、デジタルフォトフレーム事業から撤退すると発表した。

Kodakは3月1日、KODAK Gallery on-line photo services事業をShutterflyに2380万ドルで売却すると発表した。

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Eastman Kodakは1880年にGeorge Eastmanが設立、写真用乾板の商業生産を開始、1935年に35ミリ カラーフィルムを発売した。
1975年には世界初のデジタルカメラの開発に成功している。(商品化せず)

しかし、高収益のフィルム事業にこだわり、急速に普及したデジタルカメラへの対応で大きく出遅れた。
1990年代にモトローラから移ったフィッシャー会長が、今後もフィルムが基本であり続けると考え、
「選択と集中」の原則に基づき、フィルム以外の事業を次々と放出した。

1994年1月に化学部門が分離され、Eastman Chemicalとなった。(Eastman ChemicalはPET樹脂では世界最大のメーカーであったが、これを売却し、石炭化学メーカーを志向している。)
Eastman Kodakが光学フィルムに参入しなかったのは、化学部門の分離で技術を失ったからとされている。

他方、富士フィルムはデジタル化を追求するとともに、液晶パネル用光学フィルム、医療用器具から医薬品、化粧品と多角化を進めている。

コニカミノルタ(ミノルタと小西六コニカが統合)もカメラや写真フィルムなどの事業を分離した。

ーーー

有機ELの権威、山形大学の城戸淳二教授はブログ「大学教授のぶっちゃけ話」(2012/1/5)で以下の通り述べている。

ご存知のとおり、有機ELの関連特許はすでに 韓国のLGに売り飛ばされ、有機EL研究者、技術者の多くはすでにこの難破船から脱出し、コダックには有機ELのカケラも残ってません。
 
思えば1987年のコダックのタンさんらの論文が有機ELの実用化に火をつけた。
なのに、この有様とは。
いったい誰がコダックの有機ELをダメにしたのか。

実は、三洋との合弁会社(三洋コダックディスプレイ、SKD)の失敗が大きい。
これは必ずしもコダックだけの責任じゃなく、当時の三洋のトップ、名前忘れたけど、あの女性が悪い。 
 
彼女が社長に就任した時、SKDでは有機ELディスプレイ量産技術がようやく完成し、これから利益を生もうとしていた。
しかし、赤字部門だったという理由で、この金のタマゴを産む鶏をむざむざと絞め殺した。
その責任はあまりにも大きくて、その結果、三洋、コダック、両社の経営に大きなダメージを与えた。

その結果、サムスンの独走を許した訳で、しかも、韓国の内製化政策により、部材や装置などの有機EL周辺企業までもが日本から韓国に事業所を移しだした。
このままだと、いづれは材料、装置、部品、その他もろもろ、すべて韓国や中国に生産拠点は移ってしまうだろう。
 
この始まりが、三洋/コダックの失敗のキッカケになっていると言っても過言じゃない。
 

有機ELの原理は1980年代にKodakで太陽電池の研究を行っていたDr.Chin.W.Tang(ケ青雲)が見つけた。

太陽電池は光エネルギーを電気エネルギーに変換するが、有機ELはこの逆で、有機物に電気を流し、電気エネルギーを光エネルギーに変えて光らすもの。

太陽電池では一般にシリコンなどの無機物を使うが、Dr. Tangは有機薄膜を積み重ねるという方法で高効率化を実現した。

Dr. Tang と Steven Van Slykeは研究を続け、有機物に効率よく電気を通せ ば有機物質を光らせることは可能と考え、1987年に低分子系の超薄膜の有機材料を2層にするというアイデアで非常に高い輝度で光らせることに成功した。(「コダック特許」)

 

Kodakと 三洋電機は2001年12月4日、アクティブ型の有機ELディスプレイの生産を行なう合弁会社「エスケイ・ディスプレイ」の設立を発表した。

出資比率は三洋電機が66%、Kodakが34%で、低温ポリシリコン液晶で培った三洋のガラス基板上へのドライバ回路形成技術と、コダックの持つ有機ELに関する要素技術を利用した有機ELディスプレイの生産を行なうことを目的とした。

当初の生産品は携帯電話やPDA、カーナビ向けの1〜7インチのアクティブ型有機ELディスプレイで、 計画では、三洋岐阜工場内に有機工程を設置し、2002年2月より生産開始、2003年4月に大型ガラス基板を用いた本格生産を開始し、2005年の「フェーズ3」では、売り上げ700億円を目指した。

しかし、2006年1月、Kodakと 三洋電機は同社を解散し、三洋も有機EL事業から撤退した。

小型機器向けの1〜7型のディスプレイの製造から開始し、大型TV向け製品の製造も目指していたが、歩留まりの低さなどから、製品化は進まなかった とするが、城戸教授によれば、有機ELディスプレイ量産技術がようやく完成し、これから利益を生もうとしていたのに、赤字部門だったという理由で、この金のタマゴを産む鶏をむざむざと絞め殺した。

2002年にTVキャスター出身の野口ともよ氏が三洋電機の社外取締役になり、その後、会長 に就任し、直後に三洋電機の主要ビジネスの改革に着手した。
2007年3月、経営不振の責任を取り、三洋電機代表取締役会長を辞任。

 

Kodakは2009年12月、有機EL事業をLGグループに売却すると発表した。

「我々は、材料などにおいて有機EL関連の必須の特許ポートフォリオを有している。しかし、このビジネスの価値を最大化していくためには、より多くの投資が必要になると理解した」と説明している。

LGはKodakから取得した有機EL関連特許を管理するために2009年12月に米国にGlobal OLED Technology LLCを設立した。

2010年6月、出光興産は同社の株式を32.73%取得した。同社の有機EL事業に必要な特許を確保するために出資を決定したとしている。

KodakとLGはまた、特許紛争を終結することで合意した。

Kodakは2008年11月、画像取込み、圧縮、データ保存、動画のプレヴュー方法などの技術に関するデジタルカメラ関連特許が侵害されたとして、LG電子とサムスン電子の対象製品の調査と、輸入・販売差し止めを求めた。

LG電子は2009年2月に、KodakのデジタルカメラEasyShareがオートフォーカス、音声生成、画面表示等の特許を侵害しているとしてITCに訴えていた。

 

ーーー

PS 城戸淳二教授の1月19日のブログ「大学教授のぶっちゃけ話」は東大の秋入学を痛烈に批判している。


2012/1/24    BP Energy Outlook 2030 

BPは1月18日、2030年までのエネルギーの見通し  BP Energy Outlook 2030 を発表した。グラフは一部補正した。
http://www.bp.com/liveassets/bp_internet/globalbp/STAGING/global_assets/downloads/O/2012_2030_energy_outlook_booklet.pdf

1)エネルギー需要と供給

世界のエネルギー需要は過去10年の年2.5%の伸びから2020年までは2.0%、以降10年で1.3%の伸びと、伸び率は低下する。
OECD諸国(先進国)の需要は伸び悩みで、全体の伸びはNon-OECD諸国の需要の伸びによる。

 特に中国のエネルギー需要の伸びが異常に大きい。

 インドは2030年には人口では中国と肩を並べる。
  しかし、中国のGDPが今後、急増するのに対し、インドのGDPは増加はするが伸び率は中国より少ない。

 これが、エネルギーの需要にそのまま反映されている。

 中国の需要は以下の通り。今後も石炭の比率が圧倒的。

2)石油類(オイルサンド、バイオ燃料を含む)の需給

 石油類の供給の2010年からの増減は以下の通り。
 NGL、オイルサンド、バイオ燃料の貢献が大きい。

3)天然ガス需給

 供給面ではLNGの貢献が大きい。

 

 

4)石炭の需要

 中国の需要が大きい。

5)非化石燃料の需要

 OECD諸国では、原子力と水力は横ばい、再生可能エネルギーが増大する。
  Non-OECDでは、原子力と水力、再生可能エネルギーがそれぞれ、大きく増大する。


2012/1/25 BASF、ドイツに年産30万トンのTDIプラントを建設 

BASFは1月17日、ドイツのLudwigshafenに1系列で年産30万トンのTDIプラントを建設すると発表した。

昨年5月に、同社のAntwerpかLudwigshafenのいずれかのComplex(Verbund)に建設すると発表していた。

TDIプラントのほか、塩化水素のリサイクルプラントの新設、硫酸・塩素・合成ガスの増設や、トルエン供給のためのBTXプラントの増設も行う。

インフラも含めた投資額は約10億ユーロで、2014年末の完成を予定しており、完成後にはドイツのSchwarzheideにある年産8万トンプラントは停止する。

同社では、1系列として世界最大である規模の利益と、最大のコンプレックス(Verbund)に建設することによる原料面、製造面でのシナジー、物流などでのメリットにより、欧州での低コストメーカーの地位を確保できるとしている。

同社はAntwerpのVerbundには年産56万トンのMDIプラントを持っており、欧州にポリウレタン原料の2大基地を持つこととなる。

 

BASFは現在、TDIとMDIをそれぞれ4か所で生産している。

    TDI MDI  
ドイツ Schwarzheide  8万トン   本計画完成後、停止
ベルギー Antwerp    56万トン  
米国 Geismar 16万トン 26万トン  
韓国  麗川 14万トン 19万トン MDI 25万トンに増設の計画中
中国 上海 16万トン   Shanghai BASF Polyurethane
(上海華誼公司
SINOPEC上海高橋石化とのJV)
  24万トン Shanghai Lianheng Isocyanate
(Huntsman、上海クロルアルカリ、
上海華誼公司
SINOPEC上海高橋石化とのJV)

付記 BASFは2014年8月、Shanghai BASF の増設を発表した。2016年完成予定。
     TDI  160千トン→220千トン
     硝酸  390千トン→416千トン
     DNT   190千トン→260千トン

同社は2006年11月に、ダウと共同で30万トンのTDIとその原料プラントを建設するFSを実施すると発表したが、実現していない。

2006/11/27 BASFとダウ、欧州で共同でTDIプラント建設のFS実施         


2012/1/25   BASF、欧州での遺伝子組み換え事業を諦め、事業を米国に移管

BASFは1月16日、同社の植物バイオテクノロジー(遺伝子組み換え)事業について、欧州市場を諦め、北米、南米の主市場に絞ることを決め、組織を再編すると発表した。

・BASF Plant Science本部をドイツのLimburgerhof から Raleigh, North Carolina に移転。
・欧州市場専用で開発してきた製品は全て開発を中止する。
・研究開発はRaleighと、従来からのベルリンとベルギーのGhent の3か所で行う。
 (欧州市場からは撤退するが、BerlinとGhentには近くにワールドクラスの研究所や大学が多くあるため)

同社では、「遺伝子組み換え技術は21世紀のキイとなる技術であると信じているが、欧州の多くで、消費者、農民、政治家に受け入れられない。このため、この市場のためだけの開発投資をする意味がない。 北米南米市場と成長するアジア市場に集中することとした」としている。

開発を中止する欧州専用製品には、遺伝子組み換えのスターチ用ポテトなどがある。既に承認手続きを始めているものについては、今後の可能性を考え、手続きを継続する。

同社はMonsantoと組んでコーン、大豆、棉、菜種、小麦の開発を行っており、2011年末に第1号として干ばつに耐えるコーンの栽培が米国で承認された。

ーーー

BASFは2008年、欧州で遺伝子組み換え馬鈴薯 (工業デンプン用専用品種) “Amflora”の販売承認が下りず、同年度の植え付けにも間に合わないことから、7月24日、欧州委員会をLuxembourg の欧州第一審裁判所に訴えた。

2008/4/23 BASF、遺伝子組み換え馬鈴薯の承認求め、訴訟も

欧州委員会は2010年3月、Amfloraの一般圃場での栽培を認めることを発表した。食用に使われることはないが、皮などの残渣が餌として家畜に提供されることは規制されていない。

BASFは2011年10月31日、疫病に抵抗性を持つ食用遺伝子組み換えジャガイモ“Fortuna”の認可をEUに申請したと発表した。


2012/1/26 米エネルギー省、米国のエネルギー見通しを発表  

米エネルギー省は1月23日、Annual Energy Outlook 2012 の速報を発表した。(完成版は4月に発表)
  http://www.eia.gov/forecasts/aeo/er/executive_summary.cfm

1)エネルギー需要

 経済は回復するが、需要面でのエネルギーの効率化により、需要の伸びはゆっくりしたものとなる。

輸送分野でのエネルギー需要は2035年までで年率0.2%の伸びを予想。
電力需要の伸びは0.8%。
1人当たりエネルギー消費は平均して0.5%の減となる。
2005年の物価換算でのGDP 1ドル当たりエネルギー消費(Btu)は2010年から2035年で42%下落する。

2)国内原油生産は増加

 国内原油生産は1986年に始まった減少がこの数年は増加に転じた。

2007年の日量510万バレルから、2010年には550万バレルとなった。
今後10年では、メキシコ湾での開発の継続とタイトオイル
(シェールオイル:Bakken Shaleなど)の開発で、2020年では1994年以来の670万バレルにまで増える。
2020年以降は減少するが、2035年まで610万バレル以上の水準を維持する。

3)エネルギー消費の効率化、国内生産の増、石油以外の液体燃料の開発などで、ネットの石油輸入は減少する。

国内原油生産 日量100万バレル増(2010-2020)
バイオ燃料    原油換算日量100万バレル以上増(2010-2024)

4)天然ガス生産は増加する。

   シェールガス以外の生産は減少するが、シェールガスは大きく増加し、2035年には全体の49%を占める。(現在は23%)

 

5)米国の天然ガス生産は消費を上回る。

米国は2016年にはLNGのネット輸出国に、2025年には天然ガスのパイプライン輸出国になる。
2021年には天然ガス全体でのネット輸出国になる。

 北米以外でのLNG消費の増加、国内の天然ガスの生産増、他国と比べ安い米国の天然ガス価格を反映。
 

6)発電での再生可能エネルギーと天然ガスの使用が増加する。

  石炭と原子力は横ばい(比率は減少)で、再生可能エネルギーと天然ガスの使用が増加する。

7)エネルギー関連でのCO2排出量は、2035年まで2005年水準を下回る。

ーーー

現状は天然ガス相場は、シェールガスの増加と最近の暖冬の影響で、100万BTU(英国熱量単位)=2ドル台と、10年ぶりの安値となっている。 大手のChesapeake Energy は1月23日、減産を発表した。

米国の天然ガス価格(スポット価格)は、1999 年までは100 万BTU 当たり2〜3 ドル前後で推移してきたが、2000 年に入り上昇基調となり、2000 年12 月には10 ドルを超える史上空前の高値をつけた。

その後、一時的な乖離はあるが2008年末までは原油価格に合わせ上下し、2005年末には最高16ドル近くまで上昇した。
2009年に入り、原油価格が再度上昇に転じたの対して、天然ガス価格は(シェールガスの生産増に応じ)下落を続け、1月20日の先物は 2.322ドル/100万BTUとなっている。

付記
2012年4月11日には1.972ドルとなり、2002年1月以来の最安値となった。

アジア等での天然ガス相場と大きく差が出ており、原油価格との格差も大きい。

アジアの天然ガス相場は18ドル程度。
原油価格は100ドル/bbl。
(従来は図の通り、原油100ドル/bbl
天然ガス10ドル/100万BTU)

天然ガスの輸出にはそのための設備が必要で、時間がかかる。


2012/1/27 福島第一原発、多核種除去設備を設置 

東京電力は1月23日、福島第一原発で発生する高濃度汚染水から、ほぼすべての種類の放射性物質を除去できる「多核種除去設備」(Advanced Liquid Processing System=ALPS)を今年秋ごろまでに設置すると発表した。

 

現在の処理設備では主にセシウムしか除去できない。

2011/12/9  福島原発、汚染水処理問題

今回導入する他核種除去設備の概要は以下の通り。

処理するのは、セシウムを除外した後の逆浸透膜濃縮水、逆浸透膜淡水、逆浸透膜入口水で、処理流量は20m3/h(約500m3/day)以上を処理する設備とする。

法令で濃度限度が定められているほぼすべての放射性物質の濃度が、濃度限度を大幅に下回るようにする。

  核種分析結果 (Bq/L)
γ 核種 β 核種
Cs-134 Cs-137 Co-60 Sb-125 Mn-54 Sr-89 Sr-90
告示濃度限度 60 90 200 800 1000 300 30
処理前(オーダー) 1,000 1,000 10,000 100,000 10,000 10,000,000
(合計)
処理後 いずれも告示濃度限度以下

但し、トリチウムだけは、水の一部となって存在するため除去が難しく、現状では、濃度限度の50倍以上が残る可能性がある。

多核種除去設備より発生する廃棄物については、専用容器に入れ脱水して保管することを検討している。
1日あたり容器 1.5本分の廃棄物が発生する見通しで、敷地内に保管場所の造成を予定している。


2012/1/27 EU、イラン原油禁輸を7月完全実施へ

EUは1月23日、ブリュッセルで外相理事会を開き、イランへの制裁措置として、同国産原油の輸入禁止と同国中央銀行の資産凍結など、下記の項目を正式決定した。

・イラン原油及び石油製品の欧州での輸送・購入・輸入の禁止、及び関連するファイナンスと保険契約の禁止
  既に締結済の契約は6月末までは認める。5月1日までに再検討する。

付記
EUは6月25日の外相理事会で、7月1日から域内保険会社がイラン産原油輸送タンカーに損害保険を販売することを禁止することを決めた。

日本では、「特定タンカーに係る特定賠償義務履行担保契約等に関する特別措置法」が6月20日の参議院本会議で全会一致で可決・成立した。
イラン産原油を運ぶ日本のタンカーに重大な事故が起きた場合、最大で76億ドルを国が補償する。

・イランのエネルギー部門への重要技術の輸出禁止、及びイランの石油化学企業、JVへの新規投資の禁止

・EU内のイラン中央銀行資産の凍結、イラン政府と中央銀行との金・希少金属・ダイヤモンドの売買禁止

・ "Sensitive dual use" goods(軍事用にも使用できる製品)のイランへの販売禁止

原油禁輸をめぐっては、フランスなどが早期発動を主張。一方、財政危機に直面しているギリシャはイラン原油への依存度が高い上、低価格で調達しており、経済的影響を配慮して猶予期間などの調整が図られていた。

EUの決定に対し、イランはこれを強く非難し、ホルムズ海峡の封鎖を警告した。

パネッタ米国防長官は1月18日の記者会見で、イランが海峡封鎖を実行すれば、軍事行動を取る方針を改めて明言した。

中東を歴訪している中国の温家宝首相は1月19日、ホルムズ海峡の封鎖について「どのような状況でも、海峡の安全と正常な航行は保障されるべきだ」と述べ、緊張回避に向けイランに自重を求めた。

他方で、イランの核兵器開発には「断固反対」とする一方、「中国とイランの石油貿易は正常な活動で、保護されるべきだ」とイランからの原油輸入を続ける意向を示した。

ーーー

米エネルギー省によると、ホルムズ海峡を通過する原油の量は2009〜10年は平均1550万〜1600万バレルで、2011年には日量1700万バレルまで増え、世界の原油需要の2割近い。

ホルムズ海峡を回避するルートは以下の通りで、30%程度しかカバー出来ない。

  単位:bbl/d
能力 既使用 使用可能量 
サウジ East-west Pipeline    500万   150万 350万
サウジ Trans Arabian Pipeline 50万 5〜50万
Abu Dhabi Crude Oil Pipeline 150万 150万
Iraq-Turkey Pipeline 30万 30万
合計     535〜580万

 

サウジのEast-west PipelineJubail とYanbuの1170kmを結ぶもので、1982年に完成した。

Yanbuの石化コンプレックスに原料を送るNGLパイプライン(日量 555千バレル)と、ホルムズ海峡が封鎖された場合に備え紅海側に原油を送るための原油パイプライン(日量500万バレル)がある。

PetroRabighは、精製する石油はYanbuからタンカーで運び、石化原料はEast-west Pipelineから分岐したパイプで受け入れている。
PetroRabighの精製能力は日量40万バレル。

East-west Pipelineの送油量は500万バレルだが、現在の使用量は150万バレル程度とみられている。

YanbuからBab al-Mandab海峡を通って主な需要家のアジアに運ぶには、ホルムズ海峡を通るのと比べ往復5日が余分に必要なため。

Trans Arabian Pipelineはサウジからヨルダン、シリアを通り、レバノンまで原油を運ぶものだが、政情不安によるテロの脅威から送油が停止されている。実際の送油可能量は能力の1/10の5万バレル程度との説がある。

Abu Dhabi Crude Oil Pipeline2008年から建設を進めてきたもので、アブダビ南西のHabshan(Abu Dhabiの陸上原油の半分以上を集める拠点)からUAE東部のFujairah港まで370kmを結び、UAEの原油生産量の約7割に相当する日量150万バレルのMurban 原油を輸送する。

2010年12月に試運転を開始、本年6月に稼動を開始する。

2010/12/3 Abu Dhabi Crude Oil Pipeline 完成 

イラクのパイプラインは以下の通り。

Iraq-Turley Pipelineは使用可能だが、Iraq-Syria-Lebanon Pipelineは何度も爆破され、修理には新設と同額程度の費用が必要とされている。

1991年まで、イラクから165万バレルの石油をサウジの紅海沿岸までつなぐIraq-Saudi Arabia Pipelineが使われていたが、サウジのEast-west Pipelineにつながるので、容量は増えない。
 

 


2012/1/28  公取委、自動車用ワイヤーハーネスのカルテルで課徴金 

公取委は1月19日、トヨタ自動車等の自動車メーカーが発注する自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の見積り合わせの参加業者らに対し、排除措置命令と課徴金納付命令を行った。

  排除
命令
課徴金額 (千円)   《 》は減免率
トヨタ
    向け
ダイハツ
     向け
ホンダ
    向け
日産
   向け
富士重工
    向け
合計
矢崎総業 5 4,979,950
《30
%
872,150
《30
%
2,763,500
《30
%
440,030
《30
%
551,500
《30
%
9,607,130
 
住友電気工業 738,610
《50
%
482,950
《50
%
880,660
《50
%
0
《100
%
2,102,220
 
フジクラ 1件 1,182,320
《30
%
1,182,320
 
古河電気工業 0
《100
%
0
《100
%
0
《100
%
0
《100
%
0
 
合計 12,891,670
 

公取委は2010年2月、米国司法省、欧州委員会などとほぼ同時期に調査を開始した。

古河電工は立ち入り検査前に最初に自主的に報告したため、課徴金を全額免れた。

矢崎総業の96億円は、1社に対する課徴金額として過去最高額。同社は下記の通り、建設・電販向けでは72.6億円、VVFケーブルでは24.6億円の課徴金支払い命令を受けている。

付記

フジクラから課徴金納付命令に係る審判請求が行われたため、公取委は4月25日、審判手続を開始することとした。

公取委は2014年6月9日、審判請求を棄却する旨の審決を行った。

付記

2012年5月、住友電気工業の株主2人が、本件課徴金納付で損害を被ったとして、当時の役員ら47人を相手に損害賠償を求める訴訟を起こすよう会社側に請求した。

光ファイバーケーブルと自動車用ワイヤーハーネスの2件の価格カルテルで課徴金合計88億円を支払った住友電工に対し、同社の株主が当時の経営陣に同額の損害賠償を求めた株主代表訴訟で、2014年5月7日、経営陣側計22人が同社に解決金5億2000万円を支払うことなどを条件に大阪地裁で和解が成立した。

2014/5/9 住友電工の株主代表訴訟が和解 

ーーー

米当局はこれら各社に立ち入り検査をした。

古河電工は2011年9月、米国司法省との間で、自動車用ワイヤーハーネス係るカルテルに関して司法取引を行った。

2011/10/4 古河電工、自動車用ワイヤーハーネス・カルテル問題で米国司法省と合意 

ーーー

電線業界はこのところ、相次いでカルテルの摘発を受けている。

公取委は2010年5月、NTT東日本などが発注した光ファイバーケーブルなどの受注をめぐり、価格カルテルを結んだとして、住友電気工業など5社に排除措置命令と課徴金納付命令を出した。
課徴金総額 16,099,430千円)

2010/5/26  光ファイバーケーブルのカルテルで過去最高の課徴金

公取委は2010年11月、建設・電販向け電線カルテルで5社に対し排除措置命令及び課徴金納付命令を出した。
課徴金総額 10,838,170千円、うち矢崎総業 7,261,700千円)

2011年7月、VVFケーブル(主に建物内のブレーカーからコンセント等までの屋内配線として使用)の製造業者及び販売業者に対し、排除措置命令及び課徴金納付命令を出した。
(課徴金総額 6,222,860
千円、うち矢崎総業 2,460,670千円

2010/11/30 公取委、建設・電販向け電線カルテルで排除措置命令及び課徴金納付命令

 


2012/1/30  夏の電力制限見送り

枝野幸男経済産業相は1月27日の記者会見で、今夏の電力需給対策を巡って「日本の産業に大きな影響を与えることなく乗り切る検討を進めている」と話した。
その上で「いかなる状況でも制限令なしで乗り切りたい。強い意志だ」とし、電力使用を強制的に制限するような措置は回避する姿勢を強調したが、具体的な裏付けは示さなかった。

電力需給対策については原発が全く稼働しない最悪のケースも想定する一方で、原発の再稼働については安全確保を最優先して今後も取り組む考えを改めて強調した。

現在、54基の原発のうち、稼働中は北海道電力泊3号機(4月定検)、東京電力柏崎6号(4月定検)、関西電力高浜3号(2月定検)の3基のみで、4月末には全て停止する。

ストレステストは15基について提出されているが、仮に安全委員会で確認されても、政府が簡単に稼働を認めるとは考え難く、また政府が認めても、地方自治体の了承を得るのは難しい。

少なくとも本年の夏については、原発の稼働はないという前提で考える必要がある。

ーーー

1月23日付の毎日新聞は、原発なしケースでの本年夏の電力需給について、昨年時点で2つの予測があったが、政府は不足ケースのみを発表していたと報じた。

政府のエネルギー・環境会議が2011年7月にまとめた見通しが発表された。過去最高の猛暑だった2010年夏の需要と全原発停止という想定で、需要ピーク時に9.2%の供給不足になるとの試算である。

これに対し、国家戦略室に置いた総理補佐チームが菅首相(当時)の指示でまとめ、2011年8月に、首相に報告した。
結果は、電力使用制限令を発動しなくても最大6.0%の余裕があるというものだが、これは公開されなかった。

2012年夏の電力需給見通し (2011年夏時点 単位:万kW)
  政府発表 未公表
最大需要 17,954 16,822 1,232
供給 原子力 0 0 0
火力 13,200 13,784  584
水力 1,296 1,296 0
揚水 1,804 2,400 596
地熱等 47 47 0
再生可能エネルギー 0 350 350
融通等 -49 -49 0
合計 16,298 17,828 1,530
供給余力 -1,656
(-9.2%)
1,006
(+6.0%)
2,662

1)最大需要
  政府発表は、過去最高の猛暑だった2010年夏の需要

  未公表分は、各電力の見通しの積み上げで、需給調整契約を発動 
   (電力の大口消費者に対し、平常時の電気料金の割引きの見返りに、電力需給逼迫時の消費抑制を求める契約)

2)供給
  政府発表分 一部火力発電で定期検査を8月に設定、揚水発電を低めに設定、再生可能エネルギーはほぼゼロ

  未公表分 現在の法律に基づいて電力会社が調達できる再生可能エネルギー容量を折り込む

3)供給余力
  政府発表では1,656万kWの不足だが、未公表分では逆に1,006kWの余力があることとなる。

ーーー

河野太郎議員のブログ「ごまめの歯ぎしり」も2011年10月26日の「原発がなくとも電力は足りるか」で(本年冬の電力不足について)以下の通り書いている。

原発が全て止まっても、この冬に電力が足らなくなることはなさそうだし、来年の夏も原発なしで電力が足りるかもしれない。

この冬の電力状況と政府の需給予測の問題点をISEP(環境エネルギー政策研究所 )のレポートでみてみると:

北海道電力 原発なしでも冬の需要を上回る供給力がある。

東北電力  政府は需要を過大に見積もると同時に他社受電を内容不明に低下させている。

東京電力  政府は需要を過大に見積もると同時に、冬の需要期に火力発電所を三基定期検査する想定。これをずらせば200万kW以上の供給力が出てくる。自家発電の受電を、意味なく削減している。さらに100万kW以上の火力発電の出力低下が組み込まれている。

中部電力  政府の供給予測では、火力発電が300万kW以上出力低下することになっている。火力発電所を需要期に定期検査するのか。

北陸電力  原発なしでも冬の需要を上回る供給力がある。

関西電力  政府の予測は火力発電が100万kW以上出力低下する想定になっている。自家発電の受電を夏よりも減らしている。揚水発電の供給を大幅に減らしている。中国電力からの受電余力がある。

中国電力  原発なしでも冬の需要を上回る供給力がある。政府の予測は火力発電の出力を100万kW以上減らしている。

四国電力  政府予測は火力発電の出力低下等を想定すると同時に関西電力への電力融通をそのまま残している。余力がある中国電力からの融通に切り替えれば、四国電力は供給に余裕が出る。

九州電力  政府予測は火力発電の出力を低下させている。中国電力からの融通も可能なはず。

ーーー

揚水発電については、これまでとは意味が異なってくる。

原子力発電は需要に応じて発電量を変えられないため、不需要時の電力で水を揚げ、ピーク時にこれで発電する。
原発が止まった今は、わざわざ燃料を使って発電して水を揚げる必要がある。

このため、ピーク時以外でも節電は必要である。


2012/1/30 ExxonMobilが東燃ゼネラル石油から実質撤退

東燃ゼネラル石油は1月29日、ExxonMobilからエクソンモービル有限会社の持分の99%を2012年6月に取得すると発表した。
東燃ゼネラル
/エクソンモービルは今後、Exxon Mobilと一定の資本関係を維持しつつ新たな提携関係に移行し、製販一体経営を実現する。

東燃ゼネラルはExxonMobil からエクソンモービル持分の99%を3,020億円で取得する。
エクソンモービルは有限会社から合同会社に組織変更する。
エクソンモービルの事業の一部はExxonMobil に移管される。

これに際し、ExxonMobilはエクソンモービルの所有する東燃ゼネラルの株式50.5%のうち、80百万株を取得し、一部を売却する。残る200百万株はエクソンモービル所有のままとなるが、東燃ゼネラルの子会社であるため、議決権はなくなる。

この結果、東燃ゼネラルの株式関係は以下の通りとなる。

東燃ゼネラル株式           (百万株)
  現在 異動 異動後
株式合計 議決権
合計    560     560     360  
 うちエクソンモービル 283 50.5%   -83 200 36% 0
   ExxonMobil      80 80 14% 80 22%
   外部 277 49.5%  3 280 50% 280 78%

 

東燃ゼネラルは石油製品の精製・供給、石油製品の販売、石油化学事業(自社及び東燃化学)を行っている。

現在は、石油製品の一部は自ら「ゼネラル」ブランドで販売しているが、大半は、極東石油(エクソンモービルと三井石油とのJV)の製品とともに、エクソンモービルで「Esso」や「Mobil」のブランドで販売している。

今後は、エクソンモービルの子会社化により、製販一体経営を実現する。
石油精製・供給、燃料販売、潤滑油・スペシャルティー、石油化学の4つの事業分野において、さらに競争力を向上させるため、新たな一歩を踏み出す。

従来の体制

今後の体制

東燃ゼネラルとExxon Mobil Corporation は新たな提携関係を定める各種の提携契約を締結する。

1)東燃ゼネラルグループによる、「Esso」「Mobil」商標の日本国内における独占的な使用
2)潤滑油事業における事業協力関係
3)石油精製事業および石油化学事業における、Exxon Mobil Corporationによる継続的な技術提供
4)原油調達におけるExxon Mobil Corporationとの協力関係の継続
5)化学品事業における製品商標の継続使用

Exxon Mobil Corporationは、東燃ゼネラルの株式80百万株を保有することを約しており、Exxon Mobil Corporationが推薦する2名を取締役候補者とする。

付記

日本経済新聞(1/31)によると、ExxonMobilは東燃ゼネラル以外とも交渉を進めていた。
コスモ石油が昨年前半から極秘にExxonMobilに接触し、日本事業全体の買収を打診、コスモの筆頭株主のアブダビ首長国系のファンドから買収資金を手当てしようとした。

ーーー

東燃ゼネラル石油の歴史は以下の通り。

  東燃 ゼネラル石油
1939 国策会社として設立  
1947    石油製品の販売、輸出入を目的として設立
1949 SVOC(Standard VacuumOil)と資本、技術、原油供給、販売提携  
SVOC(→Mobil)が株式の51%を取得
1952    SVOCと石油製品の供給、委託販売契約を締結
1960 東燃化学を設立  
1963 Mobilと三井物産の合弁で極東石油工業設立  
1972 キグナス石油に資本参加(出資比率50%) 南西石油(沖縄)に資本参加
1979   Esso株式の47.5%を取得、合計49%に。
1980 東燃化学が日本ユニカーに参加(三菱レイヨンから肩代わり)
 UCCとのJV
 相手は日東化学→三菱レイヨン→東燃化学
 
1984   エッソ石油と業務提携
1997   Essoが株式を追加取得し、50.2%に。
1999    昭和シェル石油、エッソ石油との3社間で、製品出荷に係る相互委託契約
ExxontとMobilが合併、ExxonMobil 発足
2000 東燃ゼネラル石油が発足
2001 キグナス石油精製(ニチモウとの50/50JV)を吸収合併
2002 エクソンモービル発足 (エッソ石油・モービル石油ほかが合併)、東燃ゼネラル石油の50.02%出資
2004 販売会社キグナス石油(ニチモウとの50/50JV)を三愛石油に売却
2008 南西石油全保有株式(87.5%)をペトロブラスに売却(住商も残り12.5%を売却)
     

ーーー

エクソンはすでに米国やオーストラリアでは給油所運営など小売りからは撤退している

2011年8月には、マレーシアで石油精製販売事業をフィリピンのSan Miguel 売却 した。

一方で2010年に、米天然ガス大手XTOエナジーを410億ドルで買収した。

2010/2/18 三井物産、米国でシェールガス開発生産プロジェクトに参画 に記載

また、2011年には北極海大陸棚などの油田開発を狙い、ロスネフチと提携した。

2011/9/1  Rosneft、石油開発でExxonMobil と提携

 


2012/1/31 Kodak と Bayer  

Eastman Kodakが一時、米国でBayer Aspirinを製造販売していた。

Kodakは1988年に医薬会社Sterling Drug を買収した。
Sterling は第一次世界大戦後に敗戦国のBayerから米国におけるBayerの商標を買い取り、Bayer Aspirinを製造販売してきた会社である。

筆者は1970年代に米国でBayer アスピリンを買い、箱に「製造元 Sterling Drug 」とあるのを見て驚いた経験がある。

Bayerは1994年になって、ようやくSterling Drug を買収し、1918年以来初めて、米国でBayerの社名を使い、Bayer Aspirinを販売できるようになった。

KodakがSterling Drug を売却したのは「選択と集中」の一環である。(これは有機EL事業売却などと異なり、妥当なものである)

2012/1/23 Eastman Kodak、米連邦破産法11条申請 

ーーー

Sterling Drugは1901年に Neuralgyline Co.として設立された。

第一次世界大戦後の1918年、敗戦国ドイツのBayer AGの米国資産は敵国財産接収法(Alien Property Custodian Act)により没収され、Sterling Drugが入札で531万ドルで買収した。

参考 2006/3/23   2つのMerck社

同社はイギリスとその植民地などでも商標権を獲得し、中南米、南アフリカ、インド、オーストラリアなどにもアスピリン販売網を広げた。(1921年に判事がSterlingによる"aspirin"の製品名使用を認めたため、Bayer Aspirinとして販売できるようになった。)

この結果、ラテンアメリカでは両社が同一製品名で競合することとなり、混乱を避けるため、話し合いにより1923年にSterlingは子会社Winthrop Laboratoriesの株の50%をBayerに与え、見返りに製造面の情報を受け取った。ラテンアメリカ市場は分割した。

1971年にアスピリンが何故効くのかが初めて分かり、Johnson & Johnsonは非アスピリンのTylenol を発売、その後、Bufferinなどが次々発売され、1983年にはBayer aspirinのシェアは13億ドルのアスピリン市場の10%にまで下がった。

1970年代にSterlingは医療用医薬品の開発を開始した。

1988年にEastman Kodakが51億ドルでSterling Drugを買収した。
1991年にSterlingは当時のElf Sanofi(現在のSanofi-Aventis)と戦略的提携を行った。

1994年にSanofiはSterling の処方箋医薬品事業を買収した。
Kodakは残りのOTC医薬品事業(Bayer Aspirinが中心)をSmithKline Beecham に 10億ドルで売却し、SmithKlineはこれを同額でBayerに売却した。

これにより、Bayerは米国でのBayer Aspirinを取り戻した。

ーーー

米国でのBayerの商標を失ったBayer は1954年に米国にMonsantoとのJVのMobay Chemical (ポリウレタン事業)を設立し、1970年代に100%子会社とした。(MobayはMonsanto と Bayer から取った)

1979年にMiles Laboratoriesを買収し、米国の拠点とした。
1992年に米国子会社のMobayやAgfaなどをMilesに吸収した。

1994年にBayerの商標を持つSterlingをSmithKlineから買収したのに伴い、1995年にMilesをBayer USAに改称した。


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