ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  http://blog.knak.jp


2012/2/1 バージン諸島のセントクロイ製油所閉鎖へ  

米の石油会社Hess Corporationとベネズエラ国営石油会社Petroleos de Venezuela, S.A. (PDVSA)の50/50JVの合弁会社HOVENSA L.L.C. は1月18日、米領Virgin Islands のSt. Croix の製油所を2月半ばに閉鎖し、石油貯蔵ターミナルに転用すると発表した。

過去3年だけで13億ドルもの赤字を出しており、今後もこれが続く見通しのため、閉鎖を決めた。

同社によると、赤字の理由は、世界的な不況による石油精製製品の需要の減少と、新興成長市場での新製油所の建設によるもので、これが過去3年で欧米で18の製油所(合計精製能力 日量200万バレル以上)の閉鎖の原因となっている。
また、天然ガス価格の低下も同社にとって不利に働いているとしている。

同製油所は1966年にHess により建設され、その後能力を増強、1998年にPDVSAとのJVとなり、現社名に改称した。

精製能力は日量50万バレルで、原油を輸入し、製品のガソリン、ディーゼル油、灯油、ジェット燃料、ケロシンなどをメキシコ湾岸や米国東海岸に販売している。32百万バレルのタンクも所有している。

ほかにBTX設備を持ち、能力はベンゼン 15万トン、トルエン 25万トン、混合キシレン 25万トンとなっている。

ーーー

PDVSAは米国に100%子会社のCITGO Petroleum Corporationを持っている。

同社は元々、1910年に設立されたCities Service Companyである。1965年に商標をCITGOとした(社名の初めに"Go"を付けた)。

1982年にOccidental Petroleum が買収したが、1983年に当時7-ElevenのオーナーであったThe Southland Corporationがコンビニチェーンへのガソリンの安定供給のために買収した。

1986年9月にPDVSAが50%を買収、1990年1月に残りも買収し、100%子会社とした。

CITGOは以下の3つの製油所を持つ。

 ・Corpus Christi Refinery 日量165千bpd、ガソリン生産 日量 420万ガロン
    ・Lake Charles Manufacturing Complex  日量425千bpd、ガソリン生産 日量 880万ガロン
    ・Lemont Refinery(イリノイ州)  日量167千bpd、ガソリン生産 日量 400万ガロン 

このほか、1993年にLyondellとの合弁会社Lyondell-Citgo(Lyondell 58.75%)を設立した。
Houstonに268千bpdの製油所を持っていたが、両社の関係が悪化し、2006年8月にLyondellがCitgoの持株41.25%全てを買取った。(PDVSAとの間で、230千bpd、5年間の原油供給契約を締結した)


2012/2/1 ExxonMobil とPDVSAの争い 

ExxonMobil とベネズエラ国営石油会社Petroleos de Venezuela, S.A. (PDVSA)の間のベネズエラによる石油の国有化を巡る争いで、2011年12月、国際商業会議所はPDVSA側に非常に有利な決定を行った。

2007年にベネズエラは石油の国有化を決め、各石油会社は国営石油会社 PDVSAと条件交渉を行なった。
Chevron、Total、BP、StatoilHydroはPDVSAの条件を呑み、Minority partner として操業を続けることとした。

しかし、Exxon Mobil はこれを拒否した。同社は油田国有化で損害を被ったとして補償を求めて訴訟を行い、米欧の裁判所は2008年に同国が支払いに応じなかった場合に備え、PDVSAが海外に保有する資産を差し押さえる命令を下した。

米ニューヨーク連邦地裁は3億ドルの現金、英裁判所は120億ドルまでの資産の差し押さえを命じた。

既報の通り、PDVSAは米国に子会社CITGOを持つが、社債等が大きく、社債権者が優先権を持つことから除外された。

その後、英裁判所はPDVSAの資産(120億ドルまで)の凍結命令を撤回した。判事は、このような凍結命令は稀であり、重大な国際的不正の強い証拠があるときに出されるが、今回のケースはそのようなものではないとした。
PDVSAは英企業でないうえ、英国内にまとまった資産を保有していないというPDVSAの主張も認めた。

ExxonMobilは世界銀行付属の国際投資紛争解決センター(ICSID)に提訴した。これに対し、ベネズエラ側はパリに本部を置く国際商業会議所(ICC)に問題を提起した。

ICSID ( International Centre for Settlement of Investment Disputes )  は、「国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決に関する条約」のもとに設立された。この条約は1965年に署名が開始され、翌1966年に発効した。

2011年12月の国際商業会議所の裁定は、PDVSAがExxonMobil にネットで746.9百万ドルを支払うというもので、接収資産の簿価にほぼ等しい。

裁定額は907.6百万ドルだが、PDVSAのExxonMobilへの債権(ロイヤリティや税金)161百万ドルを控除した。

907.6百万ドルは1997年に両社で結ばれた契約に基づくもので、1997年の原油価格(27ドル/bbl)を基に、2035年までの失われた収益を高い割引率で現在価値に換算したものであり、資産の評価額ではない。

PDVSAはこの裁定を受け入れ、この額からNew York で凍結されている300百万ドルとExxonのベネズエラ子会社の債務191百万ドルを除外し、残りの255百万ドルを支払うとしている。

ExxonMobilは当初、接収資産の補償として120億ドルの資産の差し押さえを求めたが、英国裁判所が凍結命令を撤回したため、2010年に70億ドルを要求して仲裁を求めた。今回の裁定はExxonMobilの要望の1/10に過ぎない。

ExxonMobilはこの裁定に同意せず、ICSIDの判断を待つ構え。

チャベス大統領は1月8日の国営テレビ番組で、ExxonMobilが過去50年間、税金も払わず大もうけしてきたと指摘し、120億ドルの要求の不当性を訴えた。

米国が決定的な影響力をもつICSIDがいかなる裁定を下そうとも、ベネズエラとしては従わず、場合によってはICSIDからの脱退もありうることを示唆した。


2012/2/1 矢崎総業とデンソー、自動車用ワイヤーハーネス等のカルテル問題で米司法省と司法取引

米司法省は1月30日、矢崎総業とデンソーが米国での自動車用ワイヤーハーネス等のカルテルで有罪を認め、548百万ドルの罰金を支払うことで合意したと発表した。 (DOJ発表)  

矢崎総業はワイヤーハーネス、インパネクラスター、ヒューエルセンサーの3件に係わった。
デンソーは電子制御ユニット(ECU)と
ヒーター操作パネル(HCP)の2件に係わった。

矢崎総業の罰金は470百万ドルで、これは米独禁法(Sherman Act)での2番目に大きい罰金となる。
デンソーの罰金は78百万ドル。

過去最高額は1999年にスイスのF. Hoffmann-La Rocheがビタミンカルテルで支払った5億ドル。

ビタミンカルテルはリジンカルテルを契機に摘発された。クエン酸カルテルに関するHoffman-LaRocheなどの調査でビタミンカルテルの存在が分かった。

米・スイス・独・日・加の計11社に総額9億1050万ドルの罰金  
 武田薬品 72百万ドル  
 エーザイ 40百万ドル  
  第一工業製薬 25百万ドル  
  Roche 500百万ドル  
  BASF 225百万ドル  
  Merck  14百万ドル  
  Degussa-Huls  13百万ドル  
  Lonza 10.5百万ドル  

別途、矢崎総業の4人が15か月から2年の禁固刑を受ける。2年は米独禁法で外国人の禁固刑では最長となる。
(下記の通り、
ブリヂストン社員がマリンホース国際カルテルで2年の禁固刑を受けている。)

O氏、T氏 各15か月
H氏、K氏 各2年

4人はまた、それぞれ2万ドルの罰金を支払う。

既報の通り、古河電工は9月29日、米国司法省との間で、自動車用ワイヤーハーネス に係るカルテルに関して以下の内容の司法取引に合意した。(DOJ 発表

 1.罰金200 百万米ドルを支払う。

 2.社員3名が有罪を認め、禁固刑に服する。
     F氏 1年と1日
     N氏 15か月
     U氏 18か月

2011/10/4 古河電工、自動車用ワイヤーハーネス・カルテル問題で米国司法省と合意 

司法省によれば、日本の自動車部品3社の罰金合計は748百万ドルとなり、昨年度の独禁法の罰金合計を超えた。

付記

司法省は2012年10月30日、東海理化がヒーターコントロールパネルでの価格カルテルで有罪を認め、1770万ドルの罰金支払いで合意したと発表した。

これで合計9社と役員11名が有罪を認めた。

古河電工、デンソー、矢崎、GSエレクテック、フジクラ、Autoliv Inc、TRW Deutschland、東海理化の8社が合計790百万ドルの罰金を支払うこととなり、日本精機が罰金判決待ちとなっている。

役員はすべて日本人

 

矢崎総業は日本でも、ワイヤーハーネスカルテルで96億円(1社に対する課徴金額として過去最高額)、建設・電販向けでは72.6億円、VVFケーブルでは24.6億円の課徴金支払い命令を受けている。

2012/1/28  公取委、自動車用ワイヤーハーネスのカルテルで課徴金 

ーーー

日本人で米国の独禁法で禁固刑となるのは、2012年8月16日現在、合計13名となる。(2012/8 補正)

 
最初はダイセル社員(防カビ剤のソルビン酸価格カルテル)  H. H.氏

日本在住であったが、今後一切、海外に行けないのでは仕事にならないため、自ら渡米し、3ヶ月の禁固刑(と罰金2万ドル)に服した。

2006/2/16 独禁法改正

 もう一人はブリヂストン社員(マリンホース国際カルテル) M. H.氏

現場で逮捕された。有罪を認め、2年の禁固刑と8万ドルの罰金を課せられた。

2008/12/12 マリンホース国際カルテル事件で日本人に有罪判決

 これに自動車部品関連での11人が加わった。

    禁固 罰金  
古河電工 J. F. 1年+1日 各人
2万ドル
2011/10/24
H. N. 15か月 2011/10/13
T. U. 18か月 2011/11/10
矢崎総業 T. H. 2年 2012/1/30
R. K. 2年 2012/3/26
S. O. 15か月 2012/3/26
H. T. 15か月 2012/3/26
T. S. 14か月 2012/8/16
K. K.   2012/9/26決定
デンソー N. I. 1年+1日 2012/3/26
M. H. 14か月 2012/4/26

実際にはこれ以外に非常に多くが起訴されているが、日本在住の場合は犯罪人引渡条約の対象(両国でいずれも処罰の対象となり両国の法律で死刑、無期懲役、1年以上の拘禁刑に当たる罪の場合)に該当しないため、米国での時効の中断状態となっている。
(米国や欧州などに行った場合は逮捕され、米国で裁判を受ける)

 

付記

米国において罰金が科された日本企業上位10社

  企業 罰金額($) 対象商品
1 古河電工 2011 2億 ワイヤーハーネス
2 シャープ 2009 1億2000万 液晶ディスプレイパネル
3 日本航空 2008 1億1000万 国際航空貨物輸送運賃
4 エルピーダメモリ 2006 8400万 DRAM
5 全日空 2010 7300万 国際航空貨物輸送運賃及び旅客運賃
6 パナソニック 2011 4910万 冷却用コンプレッサー
7 日本貨物航空 2009 4500万 国際航空貨物輸送運賃
8 日立ディスプレイズ 2009 3100万 液晶ディスプレイパネル
9 ブリヂストン 2011 2800万 マリンホース
10 日本通運 2011 2111万5396 国際航空貨物輸送運賃

(注)平成24年1月現在。
(※)古河電工の罰金額については,現時点において連邦裁判所未承認。
(出所)米国司法省反トラスト局ホームページに基づき公正取引委員会作成。

参考 欧州において制裁金が賦課された日本企業上位10社

  企業 罰金額
  (ユーロ)
対象商品
1 YKK 2007 1億5025万 ファスナー
2 三菱電機 2007 1億1857.5万 ガス絶縁開閉設備
3 東芝 2007 9090万 ガス絶縁開閉設備
4 ブリヂストン 2009 5850万 マリンホース
5 日立製作所 2007 5175万 ガス絶縁開閉設備
6 ソニー 2007 4719万 業務用ビデオテープ
7 電気化学工業 2007 4700万 クロロプレンゴム
8 旭硝子 2011 4513万5000 ブラウン管ガラス
9 日本電気硝子 2011 4320万 ブラウン管ガラス
10 日本航空 2010 3570万 燃油サーチャー

 (注)平成24年1月現在。
(出所)欧州委員会ホームページに基づき公正取引委員会作成。

http://www.jftc.go.jp/teirei/h24/120118siryou.pdf


2012/2/2 コノコフィリップス、渤海湾原油流出事故で10億元賠償へ  

ConocoPhillipsと中国海洋石油(CNOOC)は1月25日、蓬莱19-3油田の原油流出事故による漁業への損害賠償・補償問題について、中国農業省、河北省・遼寧省両政府との間で合意に達したと発表した。

蓬莱 19-3での最初の原油漏れは2011年6月4日に Platform B付近で発見され、6月17日にはPlatform C 付近でも発見された。しかし、ConocoPhillipsとCNOOCはこの事実を1カ月近く隠していた。

7月10日に新たに油の流出が確認され、監督機関の国家海洋局は7月13日にConocoPhillipsに対し、Platform BとPlatform C(生産量は蓬莱油田の3分の1相当)の稼働停止を命じた。

合計で約700バレルの原油が渤海湾に流出し、約2500バレルのミネラルオイルベースの掘削用泥(MOBM)が海底に流れた。被害は少なくとも 6,200km2にも及んでいる。

Platform Bはシールされ、Platform Cは廃棄された。

2011/8/17 渤海湾の原油流出事故

ConocoPhillipsは河北省と遼寧省の養殖業、および渤海の天然漁業資源への損害賠償・補償に10億元(約158百万ドル)を拠出する。

これとは別に、天然漁業資源の回復や漁業資源環境の調査などのために、海洋環境・生態保護基金からConocoPhillipsは1億元、中国海洋石油は2億5千万元を拠出する。

両社は昨年、海洋環境・生態保護基金を設定することに同意した。
ConocoPhillipsは基金の詳細を発表していない。CNOOCは5億元を出資した。

CNOOCは、原油流出事故による損害への早急かつ理にかなった賠償・補償に向けて、引き続き的確な措置を積極的に講じていく方針を表明。合意に基づく損害賠償・補償、環境保護の実行を促していくと述べた。

両省政府は補償金を被害を受けた漁民に配分するが、配分方法が明確でなく、懸念する声が出ている。


2012/2/3  Eastman Chemical、Solutia を買収  

Eastman Chemical は1月27日、Solutia Inc. の買収を発表した。買収価額はSolutiaの負債込みで47億ドル。

Solutiaは1997年9月にMonsantoの化学部門が分離独立して設立された会社である。
(日本のソルーシアの元は1952年設立の三菱モンサント化成)

Monsanto からスピンオフした際に引き継いだ法的債務(訴訟費用・賠償金、環境対策費用、退職者医療費債務等)で毎年1億ドル程度を支払い、これが負担となっていた。

このため、2003年12月に連邦破産法11条申請を行った。
2008年2月28日、Chapter 11手続きを終了し、再生に向けスタートした。

2008/3/4 Solutia、破産手続き終了

なお、現在のMonsantoは農業バイオテクノロジーのリーディングカンパニーで、除草剤「ラウンドアップ」などの農薬事業と畜産事業の「農業関連製品事業部門」と、遺伝子組み換え種子等の「種子とバイオテクノロジー製品事業部門」を持つ。

Eastman Chemical の企業戦略は以下の通りで、Solutia買収はその全てに合致したものであるとしている。

 ・Growing core businesses    自動車や建築等の市場を狙う。
 ・Bias toward emerging markets Eastmanの売り上げの25%がアジア太平洋地域(Solutiaは30%)
 ・Focus on sustaibale businesses 再生可能資源利用、製品の安全性

2006/11/22 Eastman Chemical、石炭ベースの化学品志向へ

Eastmanはこれまで、汎用品事業、非コア事業から撤退し、スペシャルティ事業を拡大、アジアに展開してきた。
Solutiaも同様で、統合により、スペシャルティの事業を拡大するとともに、成長するアジアへの展開を促進する。

Eastman の動き

2004   CASPI(coatings, adhesives, specialty polymers and inks)のうち、不採算事業をApollo Managementに売却
2005   工業用酵素のGenencorの42%持分をDaniscoに売却
 その後、DuPontがDaniscoを買収(
2011/5/27 DuPontDaniscoの買収成功
2007   PE事業売却
  2006/10/16  Eastman、ポリエチレン事業をWestlakeに売却
2009   Beaumont, Texasのindustrial gasification計画を中止(高コスト、原料価格差、環境問題等)
  2007/8/10 
Eastman、メキシコ湾岸で石油コークスのガス化計画 2件に参加
2010   PET事業売却
  2010/10/29 
Eastman Chemical、PET事業をメキシコ企業に売却 
2011   Sterling Chemicals 買収
  
2011/6/29  Eastman Chemical、Sterling Chemicalsを買収

ーーー

Solutiaの動き

2004 食品添加物事業をNovus International に売却
2005 
Acrylic Fibers事業から撤退
2007 水処理用フォスホン酸塩製造事業部門であるDequestをThermphos Trading GmbHに売却
2009 Nylon事業を
SK Capital Partners IIに売却

2010年の売上高は 1,950百万ドルで、内訳は以下の通り。

Advanced Interlayers  世界最大のポリビニルブチラール(PVB)樹脂中間膜メーカー
  自動車や建築用合わせガラスに使われる機能性中間膜、太陽電池用封止材など

Performance Films  全世界の自動車用および建築用ウィンドウフィルム市場でN0.1のシェア
  省エネ、プライバシー防犯、防災の機能を付加するウィンドウフィルム

Technical Specialties 
  有機合成熱媒体、航空機用作動油など

 

両社ともアジアに進出しており、統合によりアジア(特に中国)での存在感が強まる。

 


2012/2/4  新興国の金融・財政浮揚余力指数 

2012年1月28日付 Economist 誌は新興国の金融・財政浮揚余力指数 (Monetary and Fiscal Wiggle-room Index)を発表した。

  記事 http://www.economist.com/node/21543468
   根拠  http://www.economist.com/blogs/graphicdetail/2012/01/daily-chart-11
        (グラフの上部の各項目をクリックすると、項目毎のグラフが出る)

欧州と米国の経済不振で、新興国の平均成長率も2011年第1四半期の6.5%から第4四半期には3%以下に下がった。
輸出減や資金流入の減も理由の一つ。EU問題が続くと、更に影響が強まる。

しかし、多くの新興国では金融・財政政策により、経済を浮揚させる余地が多い。
新興国の財政赤字は平均してGDPの2%に過ぎず、政府の債務もGDPの36%に過ぎない。

同誌では、27の新興国について、金融政策と財政政策で景気を浮揚させる余力を指数化し、これをMonetary and Fiscal Wiggle-room Indexと呼んだ

具体的には以下の項目を勘案した。

金融面での
 経済浮揚余力
 Monetary
  Manoeuvrability
インフレ率  
与信余力 銀行貸し出し伸び率と名目GDPの伸び率の差
実質金利率 金利率とインフレ率の差
通貨の動向 対米ドルレートの過去6か月の動き
経常収支(対GDP)  
財政面での
 経済浮揚余力
 Fiscal-Flexibility
政府債務(対GDP)  
構造的財政赤字
 (対GDP)
 

 

結果は下図の通りで、Wiggle-room indexが小さいほど、景気停滞を迎えた時に、経済成長を後押しするために通貨・財政政策を稼働できる余地が大きいことを意味する。

サウジ、インドネシア、中国は成長を支えるために金融財政政策を最も利用し得る国である。
チリ、韓国、シンガポール、ロシア、ペルーがこれに続く。

逆に、エジプト、インド、ポーランドは景気刺激策を採る余地が最も少ない。
ブラジル、ベトナム、パキスタン、トルコ、アルゼンチン、ハンガリーも危険ゾーンにある。

ーーー

各項目での特記事項

1)インフレ率

台湾が2%で最も低く、ベネズエラとアルゼンチンは20%を超える。
食料価格の低下で多くの国でインフレ率は下がったが、半分の国で依然として5%を上回っている。

2)与信余力

アルゼンチン、ブラジル、香港、トルコは危険水準。
逆に中国は銀行貸し出しの伸びがGDPの伸びよりも少ない。

3)実質金利率

半分の国でインフレ率より低いマイナス金利となっているが、ブラジルと中国では+2%を超えている。

4)通貨動向

ブラジル、ハンガリー、インド、ポーランドなど9か国では半年で米ドルに対し10%以上下がっており、輸入価格の上昇でインフレを招く恐れがある。

5)経常収支

グローバルの金融情勢が悪化した場合、経常収支の大幅な赤字の場合にはファイナンスが出来ず、金利率引き下げが困難となる。
トルコがGDP比で9%の赤字で、最も弱い。ポーランド、南ア、インドも4%程度の赤字。

6)政府債務

政府債務はエジプトとハンガリーがGDP比で75%を超えており、ブラジル、インド、パキスタン、ポーランドも60%前後となっている。
(シンガポールはゼロ、サウジは10%以下)

7)構造的財政赤字

エジプトとインドが8%を越え、パキスタンとポーランドも6%を超えている。
逆にサウジは10%近い黒字、韓国とシンガポールも黒字で、財政出動の余地が大きい。

 

ーーー

このうち、中国については、2009年の時のような膨大な景気刺激策を今後は取り得ないのではないかとの議論がある。

政府の公式の債務はGDPの27%に過ぎないが、地方政府への銀行貸し付けが除かれており、これを含めるとGDPの60%にもなる。
Economist誌は、中国政府には国有企業の持株など膨大な資産もあるため、問題ないとの立場を取っている。


2012/2/6   中国のレアメタル輸出規制、WTOが規則違反認定 

中国のレアメタルの輸出規制が世界貿易機関(WTO)のルールに違反しているとして、2009年に米国・EU・メキシコが訴えた貿易紛争を巡り、WTOの最終審に当たる上級委員会は1月30日、欧米側の主張を認める第1審裁決を支持する報告書を発表した。

問題となったのは、下記の9種の鉱物資源の輸出関税、輸出割当、最低輸出価格、輸出許可制などの輸出制限で、その結果、これらの価格が上がり、各国の産業に幅広い被害が出たと訴えた。

ボーキサイト、亜鉛、黄燐、コークス、蛍石、マグネシウム、マンガン、炭化ケイ素、シリコン金属。

ほとんどの製品で中国が主要産地となっており、輸出制限でグローバルに需給ギャップが広がった。
中国は2010年末時点で亜鉛と蛍石の最大産地で、ボーキサイトも2番目に大きいとされる。

このうち、石炭コークスについては2012年に臨時の40%の輸出関税を課しており、黄燐の輸出関税も20%となっている。

米国などの批判に対し、中国は天然資源の保護や環境保護を輸出規制の理由として説明した。
WTOの前身のGATTの規定では、希少天然資源の保護、環境保護のために輸出関税を課したり、輸出を制限することを認めている。

しかし、上級委員会は、中国が天然資源保護を言いながら国内での生産・消費を制限していないこととの関連を説明できなかったとし、環境保護についても、輸出制限が短期的、長期的に環境汚染を減らすということを説明できなかったとしている。

中国商務部では、この決定について「遺憾だ」としながらも、「中国はWTOの裁決を真剣に評価し、またWTOのルールに基づき資源製品に対する科学的な管理を行い、持続的な発展を実現する」と表明した。

今回の決定そのものは、影響は限定的とみられている。

貿易紛争が起きた2009年以降、これら9品目の需給関係は大きく変化した。世界経済が低迷する中で、欧米では原材料需要が伸び悩んでおり、中国が規制を解除したとしても、需給関係を速やかに変化させることはなく、短期的にみれば業界や企業への影響は限定的とみられる。

しかし、これが今後のレアアースの輸出問題に与える影響が注目されている。

上記の9品目とは異なり、レアアース価格が過去最高の水準にあり、欧米や日本にとって今回の裁決は問題の対象をレアアースに向けさせることに真の意義がある。

付記

日本と米国、EUは3月13日、中国によるレアアースの輸出制限について、WTOに提訴した。
提訴対象にはレアアースのほか、タングステンとモリブデンも含まれる。

付記

WTOは2014年3月26日、日米欧の提訴内容を全面的に認める第一審の報告書を公表した。

中国はレアアース、タングステン、モリブデン3品目について2006年から5〜25%の輸出税を課し、2010年からは輸出数量も大幅に減らしてきた。

輸出規制を環境や天然資源の保護のためと主張してきた中国の言い分を退け、国内産業を恣意的に優遇する政策だと断定し、「環境や天然資源の保護のためなら、国内生産を制限する代替措置をとるべきだ」と判断した。

中国は60日以内に最終審にあたるWTOの上級委員会に異議を申し立てられる。

 

このほか、錫、タングステン、アンチモンなどに対する中国の輸出政策も注目されている。

商務部は2011年12月、タングステン、アンチモンなどの非鉄金属の2012年第1弾の輸出割当枠を発表した。
タングステンは1万1400トン、酸化アンチモンは3万3500トン、錫は1万800トンの輸出枠を設定した。


2012/2/7  Shell とPetroChina、非在来型ガス開発での提携強化

Shell とPetroChinaはカナダと米国での非在来型ガス開発での協力を強化する。

ーーー

PetroChinaの親会社のChina National Petroleum Company (CNPC) とShell は2011年6月20日、中国及び海外で相互にメリットのある開発案件で相互に協力するGlobal Alliance Agreement を締結した。

両社は又、Well Manufacturing JV (50% CNPC / 50% Shell)を設立する契約を締結した。
JVは両社の技術を統合して、陸上での井戸掘削の効率を著しく改良する革新的で高度に自動化されたWell Manufacturing System (WMS)を開発するもの。

タイトガス、シェールガス、炭層メタン(coal bed methane) の採掘には何年にもわたって、毎年数百の井戸の掘削を必要とする。WMS は最新のオードメーション技術を使用して、標準化され、繰り返し可能なやり方で掘削を行うことを狙いとする。

中国には1275兆立方フィートもの技術的に採掘可能なシェールがあり、中国の通常の天然ガスの埋蔵量の12倍にもなる。
U.S. Energy Information Administrationによると、これは米国の862兆立方フィートより50%多い。

Shell とCNPC は昨年3月に中国の最初の水平シェールガス井戸を完成させた。
両社は2011年に中国のシェールガスの開発に4億ドル以上を投資した。

ーーー

PetorChinaは2月6日、Shell のカナダのBritish Columbia州Groundbirchシェールガス計画の20%の権益を取得したと発表した。
詳細は明らかにされていないが、対価は10億ドル以上と報道されている。

Shell は又、両社が中国のシェールガス掘削井戸数を2011年の15から2012年には20〜25に増やす計画であることを明らかにした。

GroundbirchはFort St. JohnとDawson Creek の間に位置する。
Shellは2008年にカナダのDuvernay Oil を59億カナダドルで買収し、この権利を取得した。

Shell は従来通りオペレーターを続け、製品は北米市場に供給される。PetroChinaでは将来はLNGの形でアジアに輸出することも考えたいとしている。

PetroChinaでは本投資を通じて、先進技術を中国に持ち帰りたいとしている。

 

PetroChinaは2011年2月にカナダの天然ガス最大手のEncana Corporation から天然ガスの権益の50%を54カナダドルで買収することで合意したと発表した。

しかし、両社は6月21日、条件が折り合わず、交渉を中止したと発表した。

  2011/2/16  PetroChina、カナダの天然ガス権益取得


2012/2/8 米が反ダンピング課税で「ゼロイング」廃止 

米政府は2月6日、日本とEUの要求に応じ、反ダンピング(不当廉売)関税の計算法「ゼロイング (Zeroing)」を廃止することで日欧と合意したと発表した。7日以内にゼロイングを撤廃することを約束した。

米通商代表部(USTR)のRon Kirk 代表は声明で「厄介な、損害を与える可能性のある貿易問題とついに決別した」とし「貿易における報復の不確実性を伴うことなく、米国の農家、企業は雇用を創出する輸出市場に投資できる」との見解を示した。
米国の輸出業者に対する数億ドルもの報復措置を回避できるとしている。

一方で、Kirk代表は今後のWTOの交渉でZeroingがWTOのルールに合致するという主張を続けると述べた。

反ダンピング関税の計算で米国が用いてきた「ゼロイング」は世界貿易機関(WTO)が国際ルール違反と認定している。

ゼロイングとは以下の例のように、高値輸出を無視し、安値輸出のみで計算することにより、全体のアンチダンピング税率を不当に高くする計算方法。高値輸出のダンピングマージンをゼロとするもの。

正常価格 100
輸出価格がAが80(ダンピングマージン 20)、Bが125(同
-25)、Cが150(同 -50)の場合
(いずれも同数量とする)

通常の計算 〔(20)+(-25)+(-50)〕/(80+125+150) = -15.5% ダンピングなし
  

ゼロイング  〔20+0+0〕
/(80+125+150) = 5.6% ダンピングあり

ーーー

日本は、2004年11月、米国のゼロイングはWTO協定に違反すると主張し、WTOに対して協議を要請した。
2007年1月、WTOは日本の申立てを認め、米国にゼロイングの撤廃を勧告したが、米国は勧告履行期限である同年12月を経過してもこれを是正しなかった。

WTO の紛争処理上級委員会は2009年8月、日本の提訴に基づきWTO協定違反と認定されたゼロイングについて、日本の主張を認めた小委員会(第1審)の判断を支持し、米国がWTOの是正勧告に従っていないと認定した。日本の「勝訴」が確定し、米国は計算方法の見直しが義務付けられた。

2009/8/20  米の反ダンピング関税調査、WTO違反が確定

しかし、米国は依然としてゼロイングを適用し続けた。

国際社会においては、当事国の意思に反して国際法上の義務の履行を強制することは難しい。
ゼロイング案件において米国が紛争解決機関勧告を履行しない場合の対策としては、紛争解決機関の事前承認を受けた上で「譲許その他の義務の停止」をすることができる。
具体的には、WTO協定のその他の加盟国との間で約束した関税率を、勧告を履行しない国との関係においては引き上げることもできることになる。

このため日本は、米国に対してゼロイングを撤廃するよう繰り返し求めるとともに、2010年4月からは米国への対抗措置(関税引上げ)に着手するためのWTOの手続を進めてきた。

ーーー

日本の産業界は、ゼロイングにより米国から多額のアンチダンピング税を過剰徴収されてきた。
特にベアリング業界は同税の賦課が開始された1989年以降、22年間にわたって年間約10億円を過剰支払となっている。

ベアリングの関税は通常は2〜9%だが、対米輸出ではこれに10%程度上乗せされてきた。
ゼロイングの撤廃で上乗せ関税がなくなるほか、米国からは2010年5月以降の上乗せ関税(計20億円程度)が還付される。

枝野経産大臣は、「世界経済が停滞し保護主義措置の蔓延が懸念される中で、多角的貿易体制の下でWTO加盟国によるルール遵守が徹底され、WTO紛争解決メカニズムが機能することを重視する」との立場を表明した。
その上で、「今後、米国の新規則がWTO勧告に沿って運用され、ゼロイングが確実に廃止されるよう引き続き注視していきたい」との考えを示した。


2012/2/8  日本の経常収支(2011年)

財務省は2月8日、2011年の国際収支状況(速報)を発表した。

経常収支は年間で9兆6289億円の黒字で、黒字額は前年比で43.9%減と、1985年以降で最大のマイナス幅を記録した。

内訳は以下の通り。

1)貿易収支(財貨の輸出入の差、FOBベース)

東日本大震災後のサプライチェーン寸断や海外景気減速の影響で輸出が落ち込む一方、火力発電用LNGの輸入増加が響き、1兆6089億円の赤字に転落した。
旧統計基準を含めた国際収支ベースで1963年以来、48年ぶりの貿易赤字。

輸出額は62兆7234億円で、1.9%減少した。輸入額は64兆3323億円で15.0%増えた。

財務省が2月8日発表した2012年1月上中旬(1〜20日)の貿易統計(通関ベース)によると、貿易収支は1兆5600億円の赤字となった。
輸出は前年同期比11.9%減となる一方、輸入は同12.6%増加した。

付記
財務省が4月19日発表した2011年度の貿易赤字は4兆4101億円となった。1979年度以降で最高。
 輸出 65兆2819億円
 輸入 69兆6920億円

地域別貿易収支
 米国   4兆3024億円 (前年度比 -4.8%)
  EU          9194億円 (      -49.8%)
  アジア 5兆2185億円
 (うち中国 -2兆3020億円)
 中東  -11兆2770億円      

2)サービス収支(輸送、旅行、通信、建設、保険、金融など、財貨以外のサービスの取引差)

大震災と原発事故をきっかけに訪日外国人が減り、「旅行収支」などの赤字が増え、1兆6407億円の赤字となった。
「特許使用料」では黒字が拡大している。

上記2つの合計の貿易・サービス収支は1985年以降初の赤字となった。

3)所得収支(利子・配当など)

所得収支黒字は19.9%増え、14兆296億円となった。所得黒字の拡大は4年ぶり。

外国債券などへの「証券投資」から得る利益は9兆5375億円で、海外金利の低下にもかかわらず、前年より15%増えた。
海外への「直接投資」に絡んだ収益は34%増の3兆8136億円となった。

2009年度税制改正で、海外法人からの受取配当は2009年4月からほぼ非課税となった。

それまでは、海外の税率が低い場合、国内税率との差が課税された。
このため、配当を日本に還流させず、現地で再投資する方が有利であった。

世界的に配当免税の流れが加速したため、税制改正が行われた。

4)経常移転収支(政府間の無償資金援助、国際機関への拠出金など)

1兆1510億円の赤字となった。   

付記

財務省が3月8日発表した2012年1月の国際収支状況(速報)によると、経常収支は4373億円の赤字だった。単月の経常赤字は2009年1月以来で、3年ぶり。対前年同月では9845億円の悪化となった。

貿易収支 -1兆3816億円
サービス収支 -930億円
所得収支 1兆1326億円
経常移転収支 -952億円
経常収支合計 -4373億円

 

経常収支の推移は以下の通り。        

 財務省では今後、所得収支は一定の黒字基調が見込めるとしながらも、貿易収支の赤字転落は、震災以外にも海外景気減速の影響など一時的ではない要因もあると指摘、経常収支がすぐに赤字となることは考えづらいが、黒字幅の推移は弱含みが続きそうだとしている。


2012/2/9  スイスの資源会社Glencore InternationalとXstrataが合併  

スイスの商品取引最大手Glencore Internationalは2月7日、同国の資源大手Xstrataを260億ポンドで買収し、対等合併すると発表した。
新会社の社名はGlencore Xstrata International PLCとなる。

付記

Xstrataの株主のカタールの政府系ファンド Qatar Holding (12%出資)などが合併条件の見直しを求めており、7月中の株主総会承認は難しくなった。

付記

Glencoreは2012年9月7日、Xstrataの買収案を引き上げた。Xstrata株主に割り当てるGlencoreの新株数を2.8株から3.05株に引き上げた。
買収額はおよそ370億ドル規模となる。
Glencoreはまた、株主による承認を得やすくするため、合意の仕組みを変更する可能性についても提案した。

Xstrata 1株に対し、Glencoreは新株2.8株を割り当てる。これは2月1日のXstrata株価に対して15.2%のプレミアムとなる。 

Xstrataは2月2日、Glencoreが株式交換による「対等合併」案について打診してきたことを明らかにした。
Glencoreは既にXstrataの株式の 34%を保有している。

XstrataがGlencoreの炭鉱を取得した際に、Glencoreが大株主となった。
Glencoreは商品取引が中心だが、鉱山事業への投資を加速中で、同社のCEOは2011年5月の新規株式公開後、XstrataへのM&Aに取り組むことを公言していた。

これに対し、Xstrataの株式を合わせて3.6%保有するStandard Life InvestmentsとSchrodersは、今回の合併案はXstrataの価値(Xstrataの資産と今後の業績の寄与)を過小評価しているとし、合併に反対する意向を表明した。今後他の株主も同様の動きに出る可能性がある。

新会社は採掘から処理加工、貯蔵、輸送、物流、マーケティング、販売までを一貫して手掛ける総合資源会社となり、今年の総売上高は2,090億ドルになると見込まれている。

Glencoreは現在、年間約2000万トンの火力発電向け石炭を生産しているが、Xstrata買収で生産能力は5倍に跳ね上がる。
日本の石炭輸入に影響が出ると懸念されている。

ーーー

Xstrataはスイスに本拠を置く資源会社で、銅、コークス用石炭、発電用石炭、クロム鉄、ニッケル、バナジウム亜鉛の7つのコモディティを中心に国際市場で活動しており、このほか、プラチナ、金、コバルト、鉛、銀なども扱っている。
発電用石炭では世界最大の輸出業者である。

Xstrata に対してはブラジルの資源大手Vale do Rio Doceが2008年初から買収交渉を続けたが、同年3月、買収交渉が決裂した。

Xstrataの株の34%を握るGlencore International が障害となった。
Rio Doceが45ポンド/株を提案したのに対し、
Glencoreは50ポンド/株を要求した。
同社はまた、
Rio Doce によるXstrata 買収後に両社の製品を販売する権利を要求したが、これはValeが呑めない要求であった。

Xstrata は2009年6月、Anglo American に対等合併の提案書を送付した。
両社の合併は大きなシナジー効果があるとした。

Anglo American の前身は1917年9月にSir Ernest Oppenheimer (ダイヤモンドへの投資で成功)が金鉱床の開発を目的として設立したAnglo American Corporation of South Africaである。

鉱物資源、製紙・林業、建設業、金融サービス業など幅広い分野に事業を展開、プラチナ(Anglo Platinum)では世界最大で、世界需要の37%を扱っており、ダイヤモンドではDe Beers Investments に45%出資している。

しかし、Anglo Americanはこれを拒否し、2009年10月にXstrataは交渉を断念した。

2009/6/25 スイスの資源大手 Xstrata が英国のAnglo American に合併提案

ーーー

Glencore Internationalは1974年設立のスイスの商品取引最大手で、40か国以上に50の事務所を置いて商活動を行い、13か国に15工場を有する。

Metals and Minerals、Energy Products、Agricultural Productsの3部門を持ち、以下の製品を扱っている。
   Metals and Minerals
   アルミ
ナ/アルミニウム、亜鉛/銅/鉛、フェロアロイ/ニッケル/コバルト/鉄鉱石

 Energy Products
   石油製品、石炭
/コークス

   Agricultural Products
         
  小麦/トウモロコシ/大麦、食用油/油糧種子、砂糖

Glencore InternationalはXstrataの34%を所有するほか、以下の各社に出資している。
 スイスのCentury Aluminum(アルミ事業持株会社)44%(議決権の39%)
 コンゴの銅・コバルト鉱山Katanga Miningの74.8%
 ロシアのアルミ大手
United Company RUSALの8.8% 
   
2006/9/5 
ロシアのアルミ最大手RUSAL、同国2位のSUALを買収 
 海上燃料輸送のChemoil Energy の51.5%
 金属・プラスチックのリサイクル大手のRecylexの32.2%


2012/2/10 BPの2011年決算好調、第4四半期増配 

BPは2月7日、第4四半期と2011年の決算を発表した。

事故関連費用を除いた損益は2010年を若干下回ったが、石油価格の高騰を受け、2009年をはるかに上回っている。
 

なお、損益内訳では「川上」が圧倒的である。
 

メジャー各社は川上分野に注力している。

参考 2011/7/20 ConocoPhillips、石油開発と精製に会社分割

    2012/1/30 ExxonMobilが東燃ゼネラル石油から実質撤退


事故関連費用については、パートナーであったAnadarkoと三井石油開発、及び掘削業者2社との和解による入金などで38億ドルの戻入があり、最終損益で257億ドルもの利益を計上した。

同社は2010年第1四半期から第3四半期分を無配とし、第4四半期に復配したが、2011年第4四半期については増配する。
 

決算内容は以下の通り(単位:百万ドル)
 

  2009 2010 2011
一般 事故 合計 一般 事故 合計
Exploration &
Production
24,800 30,886   30,886 30,500   30,500
Refining &
 Marketing
743 5,555   5,555 5,474   5,474
事故関連     -40,858 -40,858   3,800 3,800
調整 -717 447   447 -113   -113
金利・税前損益 22,504 35,372 -40,858 -5,486 33,383 3,800 37,183
金利(net) -1,302 -1,046 -77 -1,123 -925 -58 -983
税金(Replacement
cost base)
-7,066 -10,804 12,894 2,090 -10,516 -1,387 -11,903
少数株主持分 -181 -395   -395 -397   -397
Replacement cost
損益
13,955 23,127 -28,041 -4,914 21,545 2,355 23,900
在庫損益 3,922 1,784   1,784 2,634   2,634
対応の税金 -1,299 -589   -589 -834   -834
財務損益 16,578 24,322 -28,041 -3,719 23,345 2,355 25,700


BPは2010年決算で事故関係の費用409億ドルを引き当てた。
これには2010年
616日のオバマ大統領とBP首脳陣の会談でBPが約束した200億ドルの基金を含んでいる。

一方で同社はパートナーのAnadarkoと三井石油開発に持分相当の請求を行うとともに、掘削業者の責任も追求した。

2010/7/1  BP、パートナー2社に事故関係費用分担金を請求

長期間の交渉の結果、パートナー2社と業者2社とは和解に達した。

2011/5/20  BPと三井石油開発、メキシコ湾原油流出事故損失負担で和解

2011/10/19   BP、メキシコ湾原油流出事故でAnadarko Petroleum と和解

なお、掘削業者のTransoceanとHalliburtonはともに、BPとの契約で損害賠償について免責されていると主張、2社とBPはともに訴訟を行った。

1月末に出たそれぞれの判決では、損害賠償については契約に基づき免責となったが、懲罰的賠償や民事制裁金については免責されなかった。Halliburtonについては損害賠償の免責は条件付となったが、現時点では欺瞞行為は認定されていない。

  相手 和解 判決
損害賠償 懲罰的損害賠償
民事制裁金
2011/5 三井石油開発 10%の持分 1,065百万ドル    
2011/10 Anadarko 25%の持分  4,000百万ドル    
2011/6 Weatherford U.S 掘削機器部品
float collar
供給
  75百万ドル    
2011/12 Cameron International Blowout preventerの
設計・製造
  250百万ドル    
           
2012          
 1/26 Transocean Rig 所有、掘削作業   免責 免責せず
 1/31 Halliburton セメント作業   免責
但し、BPへの欺瞞行為
あれば免責せず
免責せず
和解金合計 5,390百万ドル    

 

BPは事故を受け、2010年の第1四半期から第3四半期分の配当を無配とした。

2010年第4四半期分からは普通株について1株当たり7セントの配当を再開したが、今回、第4四半期分の配当を8セントに増配することを決定した。

BPでは2011年のOperating cash flowが220億ドルに達し、2010年を60%も上回り、また、現在の原油100ドルが続いた場合に2014年のCash flowは2011年の50%増しになるとみている。

同社では増加分の半分は投資に回し、残り半分は増配を含めた他の目的に使うとしている。


2012/2/11 Total、韓国のSamsung Total Petrochemicalsを増強

Totalは1月27日、Samsung Group との50/50JVのSamsung Total Petrochemicalsの大山コンプレックの増強を発表した。

18億ドルを投じて芳香族の第二系列とEVAプラントを新設する。

新設能力は芳香族第二系列はベンゼンが42万トン、パラキシレンは100万トンで、EVAは24万トンとなっている。

パラキシレンについては既存の61万トンを2012年に76万トンに増強する予定で、第二系列の完成で合計能力は176万トンとなる。

Totalでは、この投資は成長市場での拡大を目指す同社の戦略に基づくとしている。
JVの大山コンプレックスの製品の50%は主に中国に輸出されている。

パラキシレンは三星石化のPTA用に供給される。

三星石化はBPと三星グループのJVであったが、BPが撤退し、三星グループの企業となっている。
   
2006/7/26 BPが韓国のPTA事業から撤退

なお、PTAのもう一つの原料の酢酸はBPと三星のJVの三星BPが生産している。

ーーー

三星グループと現代グループは供給過剰時の1988年に業界や政府の反対を押し切り、中国向け輸出を中心とするとして大山地区にエチレンコンプレックス(三星総合化学、現代石油化学)を建設した。

1998年夏に韓国・全国経済人連合会が主管して進めた五大財閥の構造調整案(いわゆるビッグディール)に基づき大山地区で隣接する三星総合化学と現代石化との統合計画が進められ、一時は三井物産、住友商事を含めた4社で基本合意書を締結したが、出資額で調整がつかず、まとまらなかった。

その後、現代石油化学はLGと湖南石化連合が買収した。

三星は2002年12月仏石油大手トタルフィナ・エルフの化学部門であるアトフィナから資本を受け入れる覚書を結んだ。
2003年8月
50/50JVのSamsung Atofinaが設立され、三星総合化学の資産が移管された。(その後Samusung Total と改称)

2005年10月、同社は「選択と集中」戦略に基づく600億円の拡張計画を発表した。

エチレン   63万トン 83万トン
プロピレン   32万トン →  55万トン
SM   67万トン →  87万トン
PP   27万トン →  57万トン

その後の増強で現在の能力は以下の通り。(千トン)

 


2012/2/13  米国の貿易収支赤字

米商務省は2月10日、2011年の貿易収支を発表した。

財とサービスの取引を合計した国際収支ベースの赤字は前年比11.6%増の5580億ドルと大幅に拡大、2008年以来3年ぶりの高水準となった。GDP比で3.7%になる。

但し、赤字は金融危機前からは縮小している。

単位:億ドル
  輸出 輸入 バランス
2007  16,546  23,613 -7,067
2008 18,427 25,410 -6,983
2009 15,750 19,563 -3,813
2010 18,376 23,376 -5,000
2011 21,031 26,611 -5,580

 

内訳は以下の通りで、輸出、輸入ともに増大した。(いずれも過去最大)

単位:億ドル
  輸出 輸入 バランス  
2010 12,887 19,346 -6,459  
 うち中国 919 3,649 -2,731 42.3%
日本 605 1,205 -601 9.3%
その 11,363 14,491 -3,127  
サービス 5,489 4,030 1,458  
合計 18,376 23,376 -5,000  
2011 1,498.2 2,235.3 -737.1  
うち中国 1,039 3,993 -2,955 40.1%
日本 662 1,288 -626 8.5%
その 13,282 17,072 -3,790  
サービス 6,049 4,259 1,790  
合計 21,031 26,611 -5,580  

サービスを除く貿易赤字のうち、対中国赤字が2955億ドルで全体の40%を占めている。(対日赤字は8.5%)

対中赤字は2000年代前半から一貫して増加、2009年には金融危機の影響で貿易量が減少して一時減ったが、2011年は10年比で増加している。

このため、米国内で人民元問題などで対中強硬論が拡大する可能性がある。
共和党の大統領候補のロムニー前マサチューセッツ州知事は「為替操作国認定」の方針を明言している。

オバマ大統領は1月24日の一般教書演説で、「競争相手がルールを無視した場合に傍観はしない」と述べ、中国の通商政策や知的財産侵害を批判した。
中国などの「不公正な貿易慣行」を調査する新部局の新設を明言し、米中摩擦の解消に善処するようくぎを刺した。

ーーー

中国の次期指導者に内定している習近平国家副主席が2月13日から訪米し、オバマ大統領などと会談する。

中国当局者は逆に、習副主席の訪米時にハイテク製品の対中輸出規制の撤廃を求めることを明らかにした。
「中国は米国からの輸入を拡大する用意があり、障害を取り除いてほしい」と述べ、米が軍事転用が可能だとして制限しているハイテク輸出の条件緩和を求めた。

人民元については、「我々は確固たる改革を進めてきたし、今後もさらに改革する」と述べるにとどめた。

中国人民銀行は2月10日の人民元の中間値を過去最高の6.2937元/ドルに設定した。
同日に一時、過去最高の6.2884元/ドルを記録、
人民元を管理フロート制に戻した2010年6月19日の前日の終値 6.8262人民元に比して8.55%の人民元高となった。

中国の2011年の輸出額は1兆8986億ドル、輸入額は1兆7434億ドルで、貿易黒字は1551億ドルとなった。

2012/1/12 中国の2011年貿易収支

なお、2012年1月の中国の輸出入は大きく減少した。
本年は春節の休み(1週間)が1月になったこともあるが、それを折り込んだ予想より減少しており、ユーロ圏の金融危機や米国の景気低迷の影響が出ていると見られており、中国経済の減速への懸念が高まっている。


2012/2/14 東京電力、第3四半期決算 

東京電力は2月13日、2011年4-12月決算を発表した。

災害損失、損害賠償額が増大した。
損害賠償額の増大に伴い、政府は支援機構資金交付金の6900億円の追加を認めた。

(単位:億円、配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
10/1-3Q 39,599 3,269 2,786 1,399 30  
11/1-3Q 38,008 -1,444 -2,205 -6,230 0  
増減 -1,591 -4,713 -4,992 -7,629    
             
10/3 50,163 2,844 2,043 1,338 30 30
11/3 53,685 3,996 3,177 -12,473 30 0
12/3 52,800 -2,650 -3,900 -6,950 0 0

特別損益は以下の通り。

単位:億円
  1-3Q実績 中間決算  中間決算比 前年度
特別損失        
   災害特別損失   3,123  1,850   +1,273  10,205
 原子力損害賠償額 16,445     8,908   +7,537  
 その他 449      
 合計 20,017      
特別利益        
   支援機構資金交付金 15,803    5,436
(+3,473)
     +6,895  
 その他 395      
 合計 16,198      
特別損益 -3,819      

参考  2011/11/19  東京電力、2011年9月中間決算 

災害損失
 東電社長は、「廃炉の関係で損失を積み増している」と語った。
 廃炉にかかる費用は「2〜3年、全部ではないが見通せるものは見通した」と説明したが、
 一方で「先々は見通せない。どのくらいかも不確定だ」とも語った。

損害賠償額
 中間決算での損害賠償額は8,909億円(見込み額 10,100億円 マイナス 賠償補償 1,200億円)
 東電社長は今回、賠償に必要な金額を見直したことも明らかにした。
 「2012年3月をめどに(賠償の)業務を開始したい」と語った。対応人員を3500人増やし、1万人を超す体制で取り組む。

支援機構資金交付金
 中間決算では5,436億円で、その後11月4日に、残り3,473億円の資金交付を決定した。
 今回、経産相は以下の基本姿勢を示したうえで、東電と機構が申請していた6,900億円の賠償資金の追加援助について認定した。

付記 

東京電力は4月23日、原子力損害賠償支援機構から、2,186億円の交付を受けたと発表した。5月末までに必要となる支払い見込額が計1兆22億円となったため。

 支援機構交付金   15,803億円
 政府賠償補償    1,200億円
 合計   17,003億円
     
交付済    
 2011年11月   5,587億円
 2012年3月   1,049億円
 2012年4月    2,186億円
 小計   8,822億円
 政府賠償補償    1,200億円
 合計   10,022億円

ーーー

東電と機構は3月末までに、賠償への政府支援を続ける前提となる総合特別事業計画をまとめる。
機構が1兆円の公的資金で東電に資本注入し、廃炉費用などで悪化する東電の財務基盤を強化することが柱。

計画は経産相の認定が必要となるが、計画の策定に向けた枝野経産相の主な指示は以下の通りで、東電の経営権の掌握を目指している。

公的資金による資本注入の前提として、注入額に見合う十分な議決権を要求
 (3分の2以上を視野に、少なくとも過半の議決権を取得し、経営権を掌握することを想定)
・経営責任の明確化
・電気料金原価の見直し結果を企業向け料金にさかのぼって適用
・原子力被害賠償の加速
・思い切った事業再編、不動産売却・経営合理化の加速

経産相は東電社長との会談で「資本注入額に照らし、十分な議決権を伴わない形で資本注入を求める総合計画が提出されても、認定するつもりは全くない」と強調した。


2012/2/14 Moody's、ユーロ圏6か国の国債格付けを引き下げ 

Moody'sは2月13日、イタリアなど欧州6カ国の国債の信用格付けを引き下げたと発表した。

スペイン   A1A3 (2段階)
イタリア、マルタ   A2A3 (1段階)
スロバキア、スロベニア   A1A2 (1段階)
ポルトガル   Ba2Ba3 (1段階)

いずれも見通しを更に格下げの可能性を示唆する「ネガティブ」とした。

付記 
S&Pは4月26日、スペイン国債をAからBBB+に2段階引き下げた。
S&Pは5月2日、ギリシャ国債をSD(選択的デフォルト)からCCCに引き上げた。

Moodysは8月2日、スロベニアの国債格付けをA2からBaa2に引き下げた。
S&Pは8月3日、スロベニアの長期格付けをA+からAに引き下げた。

最上位格付けのフランス、オーストリア及びユーロ圏外の英国について、格付けは据え置いたが、見通しを「安定的」から格下げの可能性を示唆する「ネガティブ」とした。

欧州金融安定基金(EFSF)の債務格付けは「Aaa」に据え置いた。

Standard and Poorsは1月13日、最上位である「トリプルA」のフランス、オーストリアを含むユーロ圏9カ国の国債格付けを引き下げている。また1月16日には、欧州金融安定基金(EFSF)の長期債の格付けを最上級のAAAから1段階引き下げ、AA+にした。

2012/1/14 米格付け会社S&P、フランスなどユーロ圏 9カ国を一斉格下げ
2012/1/18 S&P、欧州金融安定基金の長期債の格付けを引下げ

付記 S&Pは2012年2月27日、ギリシャの長期信用格付けを「CC」から部分的なデフォルト(債務不履行)を示す「SD(選択的デフォルト)」に引き下げたと発表した。

Moody'sは3月2日、ギリシャ国債の格付けを従来の「Ca」から1段階引き下げ、最低の「C」にしたと発表した。
「C」は通常、デフォルト(債務不履行)に陥っており、元利の回収の見込みが極めて薄い状態を示す。

Moody'sは3月13日、キプロスを投機的格付けのBa1に1段階引き下げた。

Moody'sは6月13日、スペインをA3からBaa3に、キプロスをBa1からBa3に引き下げた。

Moody'sは7月13日、イタリアをA3からBaa2に引き下げた。

Moody'sは8月27日、韓国をA1からAa3に1段階引き上げた。
S&Pは9月14日、
韓国をAからA+に1段階引き上げた。

Moody'sは10月8日、キプロスを3段階下げ、B3にした。

Moodysは10月8日、新設のESMの長期信用格付けを最上級の「Aaa」にした。

S&Pは10月10日、スペイン国債をBBBマイナスに2段階格下げした。

Moodys は11月19日、フランスの政府債格付けを最上級の「Aaa」から「Aa1」に1段階引き下げた。

Moodys は11月30日、ESMとEFSFの格付けを最上級の「Aaa」から「Aa1」に1段階引き下げた。

S&Pは12月5日、ギリシャの長期債務格付けについて、「CCC」から再び「SD」に引き下げた。

S&Pは12月18日、ギリシャの長期債務格付けを「SD」から「B-」に引き上げた。
追加融資が承認されたことを受けた。

ーーー

S&PとMoody'sの各国の格付けは以下の通り。うち、EFSFは欧州金融安定基金。

青字2011年に格下げがあったもの
赤字は2012年に格下げ or 格上げ
以前の格付け(日付は格下げ日) 

S&P Moody's
- ユーロ ユーロ圏外 - ユーロ ユーロ圏外
AAA (EFSF 1/16)
ドイツ

(フランス
↓1/13)
(オーストリア
↓1/13)
オランダ

フィンランド
ルクセンブルグ
英国
カナダ
(米国
8/5)
Aaa (EFSF↓11/30)
ドイツ
(フランス
↓11/19)
オーストリア
オランダ

フィンランド
ルクセンブルグ
(ESM  10/8
↓11/30)
英国
カナダ

米国
AA+ EFSF
フランス
オーストリア

(ベルギー
11/25)
米国 Aa1 (ベルギー12/16)
フランス
EFSF
ESM
-
AA ベルギー (日本1/27) Aa2 - (日本8/24)
AA- (スペイン↓1/13)
エストニア
(スロベニア
↓1/13)
日本
中国
Aa3 ベルギー
(スロベニア
12/22)
日本
中国
韓国
A+ (スロバキア↓1/13)
(スロベニア8/3)
(中国'10/12/16)
韓国
A1 (スペイン2/13)
エストニア
(スロバキア
2/13)
(スロベニア
2/13)
(韓国'12/8/27)
(中国'10/11/11)
A (スペイン↓4/26)
スロバキア
(イタリア↓1/13)
(マルタ
↓1/13)
スロベニア
(韓国'12/9/14) A2 (イタリア2/13)
(マルタ2/13)
スロバキア
(スロベニア
8/2)
-
A- マルタ - A3 (ギリシャ'10/6/14)
(スペイン↓6/13)

(イタリア
↓7/13)

マルタ
-
BBB+ イタリア
アイルランド
(スペイン↓10/10)
(ギリシャ'10/4/27)
(キプロス
7/29)
- Baa1 (キプロス11/4) -
BBB (キプロス↓1/13) - Baa2 イタリア
スロベニア
-
BBB- (ポルトガル↓1/13)
スペイン
(ハンガリー12/21) Baa3 (キプロス3/13)
スペイン
(ハンガリー11/24)
 投資適格     投機的格付
BB+ (キプロス↓8/1)
(ギリシャ3/29)
ハンガリー Ba1 アイルランド
(キプロス↓6/13)
(ギリシャ3/7)
ハンガリー
BB ポルトガル
(キプロス↓10/17)
- Ba2 (ポルトガル2/13) -
BB- (ギリシャ5/9)
(キプロス
- Ba3 ポルトガル
(キプロス↓10/8)
-
B+ - - B1 (ギリシャ6/1) -
B (ギリシャ6/13)
(キプロス↓12/21)
- B2 - -
B- -ギリシャ - B3 キプロス -
CCC+ キプロス - Caa1 (ギリシャ7/25) -
CCC (ギリシャ7/27)
(ギリシャ12/5)
- Caa2 - -
CCC- - - Caa3 - -
CC (ギリシャ2/13) - - - -
SD (ギリシャ↑5/2)
(ギリシャ↑12/18)
  Ca (ギリシャ2/13) -
D - - C ギリシャ -
SD:Selective Default 選択的デフォルト       
D :Default デフォルト
Ca:一部デフォルト
C:デフォルト

2


2012/2/15  SABIC/Sinopec のTrinidad and Tobagoメタノール計画

SABICとSinopecはTrinidad and Tobago に共同で53億ドルを投じてメタノールコンプレックスを建設する件で同国政府との交渉を開始した。SABICが2月11日に証券取引所に報告した。両社は他の各社も入った入札で一番札となった。

SABICとSinopecは2012年1月14日、新規事業開発に関する協力覚書を締結している。
  2012/1/18 Saudi AramcoとSinopec、サウジでの製油所建設の合弁契約締結

具体的な計画は明らかにしていないが、地元紙はMethanol-to-olefins (MTO) と Methanol-to-petrochemicals (MTP) が含まれていると報じている。
同地の天然ガスを原料とするもので、立地はPoint Lisas。

付記
SABICは2013年3月3日、計画を取り止めると発表した。基本条件で合意できなかったためとしている。

 

Trinidad Tobagoは天然ガスが豊富で、液化能力は1,520 万t/年あり、米国への最大のLNG 輸出国である。
2009年の天然ガス利用量のうち、LNGは59%、メタノールは15%、アンモニアは15%となっている。

詳細(上記グラフも)はJOGMEC資料 http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/3/3638/1008_out_l_tt_lng.pdf

本計画の入札の透明性についてTrinidad and Tobago で論争が起きており、野党議員も、Sinopecが参加することを知らなかったと述べ、交渉内容を明らかにするよう求めている。
報道によると、米大使は政府に書簡を送り、米国企業(Celaneseが参加)などの競合相手を抑えてSABICを選ぶことに懸念を表したとされる。

問題の一つは原料の天然ガスの価格の大幅値引きである。

SABICはNYMEXでの天然ガス価格が100万BTU当たり2.48ドルであるのに対し、1ドル以下を要求していると伝えられている。

このため、国内メーカーよりも極端に安い価格を外国企業に認めるのはおかしいとの声が出ている。

Point Lisasでは国営Methanol Holdings (Trinidad) やMethanexがメタノールを生産しているが、減税などの恩典はあるが、原料の天然ガスについては国営National Gasから特別な割引は受けていないとされる。

ーーー

現在、Point Lisasには合計7つのメタノールプラントがあり、能力合計は660万トンに達する。

     国営 Trinidad and Tobago Methanol Company

1999年に子会社を統合した。
下記のメタノール5工場のほか、アンモニア/尿素プラントを持つ。

子会社
統合
Trinidad and Tobago Methanol Company (TTMC) 1984年 TTMC I 46万トン
1996   TTMC II 55万トン
Caribbean Methanol Company Limited (CMC) 1993 50万トン
Methanol IV Company Limited (MIV) 1998 55万トン
M5000
(5000T/D+既存プラント排ガスで400T/D)
2005 184万トン
合計   400万トン

   Methanex 及び Atlas Methanol

工場 能力  備考
Methanex   85万トン  
Atlas Methanol  170万トン  BP 36.9%/Methanex 63.1%

現在はメタノールはそのまま海外に輸出されている。

今回の計画は、単にメタノールを生産するだけでなく、酢酸やエチレン・プロピレンを生産し、付加価値をつけるもの。
同国では川下分野の多角化を進め、付加価値の高いプラスチック産業の基礎をつくるという戦略をつくっている。

既にLyondellBasellがこの方針に基づき、Methanol - Propylene - PP計画を進めている。

Basell Trinidad and Tobago National Gas CompanyNational Energy Corporation 及びLurgi AG は2007年12月に、Trinidad and Tobago で統合PP コンプレックスを建設するMoU を締結した。

2008年9月、LyondellBasell は上記各社にTrinidad and Tobago 政府も参加して、本プロジェクトのProject Development Agreement に調印したと発表した。

計画内容は以下の通り。
  Methanol :Lurgi'
s MegaMethanol technology
        Methanol-to-propylene
 (Lurgi's MTP technology)
        PP
 490千トン(Spherizone technology)
  

 2007/12/25 Basell など、Trinidad and Tobago PP 事業

ーーー

SABICは今後、サウジで原料を大量に得るのは難しいと考えており、サウジでのプロジェクトのほとんどは高付加価値製品である。

逆にSABICは最近、シェールガスを原料に米国でクラッカーを建設することを考えていると明らかにした。


次へ

最新分は  http://blog.knak.jp