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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  http://blog.knak.jp


2012/2/16 民主党の年金試算 

民主党は2月10日、社会保障と税の一体改革調査会の総会を開き、一体改革後に導入を目指す新しい年金制度案について4通りの財源試算を公表した。
   http://www.dpj.or.jp/download/6008.pdf

いろいろな前提を置いてのものであり、非常に分かり難い。
制度の完全実施までに40年かかる(無年金・低年金問題の解消にも40年かかる)。

概略は以下の通り。

1)現行制度との違い 

                                                 図は日本経済新聞 2012/2/11
 

現在は、国民年金(基礎年金)と厚生年金(サラリーマン)、共済年金(公務員)の3つの制度に分立している年金制度を一つに統一する。

民主党案では、所得の15%の保険料を財源とする所得比例年金と、消費税を財源とする最低保証年金から成る。
夫婦の所得は二分二乗して計算する。

所得比例年金:財源は保険(所得の15%) (夫婦二分二乗)
最低保証年金:財源は消費税(月額7万円、所得で限度)

所得比例年金の保険料は15%で、企業と従業員が折半する。(個人は7.5%)
自営業者は「雇い主兼従業員」とみなされ、合計15%を払う。

(2)最低保障年金

所得がゼロ(所得比例年金がゼロ)の場合は満額(月額7万円)が払われるが、所得がある場合に、どこまで最低保障年金を払うかが問題となる。

民主党案では4つのケースを考えている。
下記の最低保障年金の7万円とゼロの間を直線的に支給

  最低保障年金(双方を直線で結ぶ) 備考
月額7万円 ゼロ
@ 所得比例年金
 ゼロ
生涯平均年収
 380万円
生涯平均年収380万円=
    所得比例年金7万円
A  同上 生涯平均年収
 520万円
生涯平均年収520万円=
    全体の平均年収の2倍
B  同上 生涯平均年収
 690万円
生涯平均年収690万円=
所得比例年金12.6万円=
    男子単身の標準的な年金額
C 生涯平均年収
 260万円まで
生涯平均年収
 690万円
生涯平均年収260万円=
    全体の平均年収

夫婦の所得は二分二乗するため、生涯平均年収 260万円のケースは、
 妻の所得がゼロの場合は、夫の所得は520万円

これを図示すると以下の通り。

なお、2007年の参院選時に、民主党が年金改革案を提示した時には、最低保障年金の減額スタートが年収600万円(二分二乗では300万円)、打ち止めが1200万円(同600万円)というものであり、今回のC案(260万円〜690万円)とほぼ同じ。

3)年金試算

2016年度から新制度に移行すると仮定。支給月額は2065年度の推計、生涯平均年収は260万円。
 二分二乗のため、妻の収入がゼロの場合、夫の年収が520万円。

現行制度では夫の厚生年金は7.4万円、国民年金(基礎年金)は各5.3万円で、夫婦合計で18万円。
このケースでの所要財源は11.7兆円で、消費税換算で4.1%となる。このままでは2075年度では+2.4%が必要。

これに対し、各ケースでの試算は以下の通り。
2075年度の必要な消費税は、2015年度の制度移行直前の現行ケース(4.1%) と比べ、
 ケース@で+2.3%
 ケースCで+7.1%
が必要となる。

図に示される通り、高所得者の場合は、現行より減額となる。

最低保障は2016年度「月額7万円」だが、これが上図及び下表では5.8万円と表示されている。

制度移行後、見なし運用利回りで伸ばすと2065年度で19.8%、これを賃金上昇率で割り戻せば、2065年度で5.8万円となると注記されているが、非常に分かり難い。

  C案 B案 A案 @案 現行制度
支給月額
 
夫婦2人 21.1万円 16.7万円 15.3万円 13.2万円 18万円
1人 10.6万円 8.4万円 7.7万円 6.6万円 夫12.7万円 妻5.3万円
基礎年金           5.3万円  5.3万円
厚生年金           7.4万円     ー
所得比例年金 4.8万円x2 4.8万円x2 4.8万円x2 4.8万円x2  
最低保証年金 5.8万円x2 3.6万円x2 2.9万円x2 1.9万円x2  
▼所要財源(単位兆円、カッコ内は追加で必要になる財源の消費税率換算 %)
     (見なし運用利回りスライド)
2015年度
制度移行直前
11.7 (4.1%) 11.7 (4.1%) 11.7 (4.1%) 11.7 (4.1%) 11.7 (4.1%)
2035年度 17.8 (+0.6) 17.0 (+0.4) 16.4 (+0.2) 16.1 (+0.1) 16.5 (+0.3)
2055年度 38.7 (+4.4) 33.0 (+3.2) 28.9 (+2.3) 26.3 (+1.7) 27.0 (+1.9)
2075年度 61.3 (+7.1) 49.3 (+4.9) 40.5 (+3.3) 35.1 (+2.3) 35.7 (+2.4)

注 今回の消費税の5%アップ分のうち、1%分は子育て支援や在宅介護の充実など社会保障機能の強化に使われ、残りは基礎年金の50%国庫負担を維持するため(うち一部は交付国債の償還財源)に使われる。
2015年度の4.1%は現行体制維持のためのもので、2035年度以降の消費税率アップは更に必要な追加分。

ーーー

民主党案については、色々な問題点が提起されている。
学習院大学教授・鈴木亘のブログ(社会保障改革の経済学)が分かり易い。
    上 http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/36051663.html
      下 http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/36051666.html

■最低保障年金は、月額7万円を保障しない

月額7万円の実質価値が、将来的にどんどん下がってゆく制度設計(図では5.8万円)
5.8万円という数字も甘い経済見通しに基づいた単なる目安の数字で、もっと減る可能性も。

■不自然な消費税率の上昇テンポ

2016年度に新制度がスタートしても、その移行には60年ぐらいかかるから、その間、基礎年金制度は存在していなければならない。
基礎年金の年金給付をするために、2016年から消費税を引き上げなくてはならない。
このために必要な消費税率は4.1%。

所得比例年金は、払った分は返ってこない制度

運用利回りよりもはるかに低い賃金上昇率から、さらに少子化分を差し引いた「みなし運用利回り」で年金額を決めるということであり、「支払った分に見合う年金が戻ってくる」という積立方式ではない。

■甘すぎる経済前提

今後100年近い経済前提は、運用利回り4.1%、賃金上昇率2.5%という「バラ色のお花畑シナリオ」

■民主党案で、低所得者対策が改善されるか?

自営業、農林水産業の人々の所得把握の実現性
(最低保障年金への「ただ乗り」が広範に起きる可能性)
*自営業者は「雇い主兼従業員」とみなされ、所得比例年金の保険料はサラリーマンの倍の合計15%を払う必要がある。

■民主党案で世代間不公平は改善するか?

給付額が少子化の進展を反映してどんどんカットされてゆく仕組み
消費税率についても、将来ほど、どんどん引き上げられるような制度設計
 →世代間不公平はかなり残る


2012/2/17 サウジ、Jubail地区の大規模石化計画を承認 

サウジ政府のJubail/Yanbu王立委員会は2月12日、Jubail Industrial Cityでの総額212億サウジリアル(56.5億米ドル)の石化計画を承認、調印式が行われた。

1)Kemya(Al Jubail Petrochemical Company:SABIC/ExxonMobil JV)

EPDM、合成ゴム、カーボンブラック計画(120億サウジリアル)

このプロジェクトはブチルゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、EPDM、熱可塑性特殊ポリマー、カーボンブラックを合計年間40万トン生産するもので、新興の国内市場やアジア・中東の海外市場に供給する。

サウジアラビアの国家産業クラスター開発計画庁と提携して職業訓練センターと製品応用開発・サポートセンターの設立も行い、サウジアラビアの製造業の発展と多角化を図る。

このうち、カーボンブラック製造技術についてはContinental Carbonから、SBRおよびポリブタジエンゴム技術についてはGoodyear Tyre and Rubber から技術導入した。

2011年5月にJacobs Engineering と三井造船との間で基本設計(FEED)契約を締結した。

付記

2012年7月、halobutyl のEPC(engineering, procurement and construction)契約をTechnip と締結。
能力は110千トンでExxonMobil技術。

2)Jubail Chemical Industries Company (JANA)

既存製品の増強及び新製品の生産のためのコンプレックス(30億サウジリアル)
能力60万トンとされるが、内容は不明。

JANAは現在、Jubailで
Epoxy Resinsを幅広く生産している。
中東・アフリカでの唯一のEpoxyメーカーで、既存能力及び計画は以下の通り。

 既存能力 6万トン(Huntsman Advanced Materialsから技術導入、元はCiba-Geigy技術)

 計画  +6万トン(2012/6)
     +12万トン(2017) 
     原料エピクロルヒドリン増設 (+9万トン)

3)Saudi International Petrochemical Co. (SIPCHEM)

EVA/LLDPE 20万トン計画(28億サウジリアル)

同社の第3期計画の追加で、ExxonMobil の高圧法LDPE技術を導入、本事業を韓国のHanwha Chemical とのJV(Sipchem 75%、Hanwha 25%)とすることで合意したと発表している。

2010/8/12 サウジのSipchem、酢酸エチルを事業化

4)National Industrialization Co. (Tasnee)

高吸水性樹脂 8万トン計画(14億サウジリアル)

Evonikは2011年8月、Tasnee とSahara Petrochemicalsのアクリル酸系製品の統合会社の Saudi Acrylic Acidとの間で、高吸水性樹脂を製造するJVのSaudi Acrylic Polymersを設立する契約に調印した。
出資比率は明らかにされていない。(他のJVの例からみると、Evonikの出資比率は25%か?)
工場はAl Jubail chemical parkのTasneeの工場に立地し、能力は年産80千トン。2013年下期のスタートアップを目指す。

2011/8/31 Evonikも高吸水性樹脂を増強 

Tasnee、Saharaについては、
2006/5/13 サウジの民間ポリオレフィン計画

5)Saudi Arabian Fertilizer Co. (SAFCO)

尿素 367万トン計画 (20億サウジリアル)


2012/2/18 愛知沖でメタンハイドレート掘削スタート 

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2月15日、愛知県渥美半島沖で、次世代エネルギー資源と期待される「メタンハイドレート」の海洋産出試験に向けた海底掘削を始めた。

掘削する海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」は、船中央部のやぐらから海底に向けて、先端にドリルをつけたパイプを下ろした。

「ちきゅう」は全長210m、幅38mで、海底から地中へ7千メートル掘る能力がある世界最高水準の探査船。波や風を受けても、高い精度で船を同じ位置に保つことができる。

計画では、水深約1000mの海底を約260m以上掘る。氷状のメタンハイドレートを地層内でメタンガスと水に分解して地上に取り出す試験井戸と、周辺の環境への影響を調べるための観測井戸の計4本を10〜20m間隔で3月下旬までに掘る。

「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」のフェーズ1(2001〜2008年度)では、東部南海トラフ海域(静岡県から和歌山県の沖合にかけた海域)をモデル海域として地震探査・試掘などの調査を実施し、同海域において、相当量のメタンハイドレートの賦存を確認している。

2009年度から開始された同計画のフェーズ2では、メタンハイドレートを天然ガスとして取り出す技術の開発を目指しており、今回の試験は、海洋における世界初のメタンハイドレート産出実験となる。

来年1〜3月に世界初となる海洋産出試験を計画している。

事業費は約170億円。

陸上では石油天然ガス・金属鉱物資源機構が世界で初めて減圧法によりメタンハイドレートからメタンガスを連続的に生産することに成功した。
2008年3月、カナダ北西部のBeaufort海沿岸陸上地域で、永久凍土の地下約1100mに存在するメタンハイドレート層からメタンガスを産出する試験を実施したと発表した。カナダの天然資源省と共同研究の形で、約6日間の産出試験に成功した。

ーーー

清水建設は2009年3月、ロシア科学アカデミー陸水学研究所、北見工業大学及び北海道大学と共同で、バイカル湖水深約400mの湖底で、湖底表層に閉じ込められたメタンハイドレートから、ガスを解離・回収する実験に成功したと発表した。

2008年8月にバイカル湖の南湖盆の水深約400mの湖底で成功したガス回収は、「チャンバー」と呼ばれる鋼鉄製・茶筒状の反応容器内で、メタンハイドレートと水を攪拌、水に溶かしたメタンハイドレートを湖上へ運び、ガスを解離・回収した。
海底または湖底を含め、表層メタンハイドレートから、ガスの解離・回収に成功したのは、今回の実験が世界で初めて。

ーーー

韓国は2007年に東海(日本海)の鬱陵海盆(対馬海盆)海域で埋蔵量6億トンを超えると推定される大規模ガスハイドレート層を発見したと発表した。

韓国知識経済部は2010年2月、このガスハイドレート開発のため、4月末から2次ボーリング作業を始めると発表した。
(その後の報道は見当たらない)

     日本政府は1978年に国際水路機関に「対馬海盆」とし登録

2010/2/23   韓国、対馬海盆でガスハイドレート開発

Frank Schatzing の海洋サイエンスフィクション “The Swarm”(邦訳「深海のYrr」)には、北海のMethane hydrate 採掘現場で海底が大崩壊し、発生した津波で欧州の沿岸区域が壊滅する話が含まれている。


2012/2/19 福島原発事故の原因 

国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会は2月15日、国会内で第4回委員会を開催し、参考人として、原子力安全委員会の班目春樹委員長と原子力安全・保安院の寺坂信昭前院長の2人を招致し、質疑が行われた。

国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会は次の目的で国会に設置された機関
  @福島原発事故に係わる経緯・原因の究明
  A今後の原発事故の防止及び被害の軽減のための施策又は措置の提言

委員長は黒川清氏(東京大学名誉教授、元日本学術会議会長)で、委員には地震学者の石橋克彦氏(神戸大学名誉教授)や島津製作所の田中耕一氏などが入っている。

委員会終了後、黒川委員長は以下の通り述べた。
   http://www.naiic.jp/wp-content/uploads/2012/02/ik04.pdf

1)原子力安全委員会の班目委員長自身が安全指針そのものに瑕疵があったことを認め、謝罪した。
  ・昭和39年の原子炉立地審査指針という、時代に沿わない指針をもとに設置が許可されていること
  ・現状の発電所の安全性に大きな問題がある
    同指針の「仮想事故」(技術的には起こることは考えられない事故)よりも、はるかに多くの放射能が放出された。
  ・原子力発電所を建てられない日本に、建てられるように基準を作っており、全面的にその改訂が必要

2)原子力の安全を担う使命を持つそれぞれの組織に緊急時の備えが出来ていなかった。
  また、そこには事故はないであろうという前提で推進されてきた原子力の根本的な問題を含んでいる。
  それぞれの組織が住民あるいは国民の安全を守るという意識が欠如しているということも判明した。

3)組織としての専門性のなさ、組織の長としての専門性のなさによる問題も浮き彫りにされた。
  独立性の高い、科学的根拠に基づいた勧告や提言の行える制度や組織の重要性が改めてクローズアップされた。
  今後、原発事故を引き起こした日本としては国際的な信頼に足る安全基準をつくる責務がある。

斑目委員長と寺坂前院長の発言は以下の通り。両氏が平然と(時には笑いながら)問題点を挙げているのには愕然とする。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/wmpdyna.asx?deli_id=41555&media_type=wb&lang=j&spkid=&time=

1)斑目委員長

原発の安全対策を示した国の指針について、いろんな意味で瑕疵があった。原子力安全委員会を代表してお詫びする。

 ・津波に対する十分な記載がなかったり、すべての電源の喪失も「長時間考えなくてもいい」とされていた。

 ・アメリカでは全電源喪失への対応など安全基準を高める動きがあった。
  これに対し、日本では、対策をやらなくてもいいという言い訳づくりばかりやっていた。
  抵抗があってもやるという意思決定ができにくいシステムになっている。

 ・官僚制度の問題
   任期(2年)の問題、減点主義から大きな改革が出来ない。やらない言い訳だけを考える。

 ・事業者の責任を強く求めるべき。事業者と規制当局の間にオープンなコミュニケーションが必要。
  実際には護送船団方式で、低い安全基準を事業者が提案し、規制当局がのんでしまう。
  国がお墨付きを与えたから安全だとなり、事業者が安全性を向上させる努力をしなくなる悪循環に陥っていた。

  一義的には事業者に責任。指針を超えてでも安全性を求めるべし。

斑目委員長は、浜岡原発訴訟の中部電力側の証人として証言、複数の非常用発電機が起動しない可能性を問われ、以下の通り答えた。
「非常用ディーゼルが二台同時に壊れて、いろいろな問題が起こるためには、そのほかにもあれも起こる、これも起こる、あれも起こる、これも起こると、仮定の上に何個も重ねて初めて大事故に至るわけです。[・・・]何でもかんでも、これも可能性ちょっとある、これはちょっと可能性がある、そういうものを全部組み合わせていったら、ものなんて絶対造れません。だからどっかでは割り切るんです。」
事故後の3月22日の参院予算委員会で社民党の福島瑞穂党首がこの発言を追及したのに対し、班目氏は「割り切らなければ(原発の)設計ができないことは事実。
割り切り方が正しくなかったことも、十分反省している」と述べた。

今回、これについて質問を受けたが、記憶にないと述べた。

 ・津波が想定を超えても、それを超えた防御がなされているべきだった。
  福島沖で大きな津波の可能性の知見があった。これへの対応がなかったのは残念。

 ・国際安全基準に全く追いついていない。30年前の技術で安全審査をしている。早急に直さないといけない。
   IAEAでは五重の防御が必要とし、シビアアクシデント対策、防災対策も求めているが、日本にはない。

放射性物質の拡散を予測するSPEED1のデータのが迅速に公開されていたらもっとうまく避難できたというのは、全くの誤解だ。
SPEED1の予測結果に頼った避難計画にしていること自体が問題で、直ちに避難するようなルールにしておくべきだった。

 

2)原子力安全・保安院の寺坂前院長

2001年に発足以降、人材育成や能力向上をはかってきたが、欧米と比べると専門性や知見は十分なものでなく、弱い。
緊急事態に対応できる人材がいたかというと否定的にならざるを得ない。専門性、知見、習熟度は米国やフランスと比べて弱かった。

SPEED1は避難方向など何らかの形で有用な情報になったのではないかという思いはある。

原子力緊急事態宣言後に官邸をあとにしたが、「私は事務系なので、理系の次長が官邸に残った方がいいと判断した」。

 

付記

斑目委員長は2月20日、ストレステストについて、「欧米でもストレステストを稼働条件には使っていない。1次評価は安全評価としては不十分で、しっかり詰めないといけない」と語った。


2012/2/20  メキシコ湾原油流出事故で三井石油開発が米政府と和解 

米司法省、Coast Guard、EPAは2月17日、三井石油開発のMoex Offshore がClean Water Act に基づき70百万ドルの罰金を支払うとともに、環境保全のための土地買収の為、少なくとも20百万ドルを支払うことに同意したと発表した。

Clean Water Act に基づく70百万ドルの罰金はこれまでの最高額で、このうち、45百万ドルは国が受取り、法律に基づき将来の原油流出事故への対応、クリーンアップ、損害補償のために使われるOil Spill Liability Trust Fundに充当される。
残りの25百万ドルは和解に参加した各州が受け取る。

三井石油開発はこれに加え、環境保全のための土地買収の為、少なくとも20百万ドルを支払う。
Louisiana、Texas、Mississippi、Floridaの各州にある環境保全すべき土地を開発から守るため、州政府、非営利団体、土地信託その他が購入するのに使用される。

    政府  
Civil penalties
(Clean Water Act)
70百万ドル 45百万ドル   政府のOil Spill Liability Trust Fundに充当
  25百万ドル
Louisiana  6.75
Alabama 5.00
Florida 5.00
Mississippi 5.00
Texas 3.25
land acquisition projects 20百万ドル   20百万ドル  

メキシコ湾の原油流出事故を巡り、米司法省は2010年12月15日、BPと三井石油開発子会社MOEXなど計9社を相手取って、損害賠償請求訴訟をルイジアナ州ニューオーリンズの連邦地裁に起こした。

今回の和解はこれに基づくもので、米国連邦政府は三井石油開発と関連会社、その関係者に対して制裁金等につき提訴しない旨に同意することとなる。
また、各州は州法に基づく制裁金等について請求権の放棄および訴訟を提起しないことに同意する。

    2010/12/17 米司法省、BP原油流出事件で提訴

司法省は和解を受け、これは重要な一歩だが、第一歩に過ぎないとし、BPなど他の各社の責任を追及する姿勢を強調した。

三井石油開発の和解は、同社が10%の持分所有者に過ぎず、掘削には全く関与していないため、他社の参考にはならない。

Clean Water Actでは、原油の流出量1バレルに対して、1,100ドルの罰金が決められている。
但し、重大な過失による場合は、罰金は4,300ドルとなる。

政府は410万バレルが流出したと見ており、重大な過失であれば、罰金は176億ドルにもなる。
BPでは流出量を320万バレルとし、バレル1100ドルを適用し、35億ドルを引き当てており、現在政府と交渉中。

ーーー

BPは2011年520日、メキシコ湾原油流出事故の損失負担で三井石油開発(及び子会社MOEX USA とその子会社で事業参加者のMOEX Offshore 2007 LLC )との間で合意に達したと発表した。

三井石油開発はBPに対し、106500万ドルを支払う。
三井石油開発は当該鉱区の全権益を
BPに譲渡、また本事故に関与する当事者に対する請求権をBPに譲渡する。

今後発生する本事故関連費用について、BPは三井石油開発に対して請求を行なわない。
また、三井石油開発に対する第三者の請求の大部分は
BPが全額補償する。

但し、水質浄化法に基づく米当局からの制裁金や州の環境法に基づく制裁金など(civil, criminal or administrative fines and penalties, claims for punitive damages, and certain other claims) は和解の対象外となっていた。

2011/5/20  BPと三井石油開発、メキシコ湾原油流出事故損失負担で和解 


2012/2/21  三菱商事がカナダのシェールガス開発に参加 

カナダの天然ガス最大手のEncana Corporationは2月17日、British ColumbiaCutbank Ridgeの未開発の土地でのシェールガス開発で三菱商事 と提携したと発表した。

三菱商事は新たに子会社Cutbank Dawson Gas Resources を設立し、29億カナダドルを投じて40%の権益を取得し、Cutbank Ridge 埋蔵エリア(Play)の409千エーカーのMontney層天然ガスランドの開発を行う
三菱商事は2月末までに権益を取得する予定。

付記

国際協力銀行(JBIC)は8月12日、三菱商事のCutbank Dawson Gas Resourcesとの間で、融資金額650百万加ドル限度の貸付契約に調印した。三菱東京UFJ 銀行及びみずほコーポレート銀行との協調融資。
JBICの「円高対応緊急ファシリティ」の下での資源・エネルギーの確保・開発の促進に係る案件。

 

なお、この取引にはEncanaの既存の生産分(天然ガス日量6億立方フィート)や加工プラント、集荷システム、EncanaのAlbertaの土地などは含まれない。

Encanaは2011年2月、PetroChinaとの間でCutbank Ridge事業を50/50のJVとすることで合意した。
PetroChinaはEncana Corporation から権益の50%を54億カナダドルで買収するもの。

Encanaが生産している日量4億立法フィートに新たなMontney層を加えると、約7億立法フィートとなる。
資産は130万エーカーの土地、3,400km
のパイプライン、Hythe地下ガス貯蔵タンクを含む。

しかし、両社は6月21日、条件が折り合わず、交渉を中止したと発表した。

2011/2/16  PetroChina、カナダの天然ガス権益取得

今回の三菱商事の取得権益は今後のCutbank Ridge事業のみで、PetroChinaのケースと比べると範囲は狭い。

契約ではEncanaはCutbank Ridge Partnershipの60%、三菱商事は40%の権益を持つ。
三菱商事は契約発効時に14.5億カナダドルを支払い、今後、開発投資費用の40%と伴に、今後5年間の開発期間のEncanaの
開発費用の半分の肩代わりとして14.5億カナダドルを負担する。
Encanaは操業を担当する。

Cutbank Ridge Partnershipが保有する天然ガス資産の合計可採埋蔵量は、35兆立方フィート(約7.2億トン)以上と推定され、日本の天然ガス年間需要の約9年分に相当する膨大な量が見込まれている。

今後5年間でPartnershipとして総事業費約60億カナダドル以上を投じ、累計約600本以上の生産井を掘削して開発を進める。
生産期間は50年以上で、今後10年の間に日量約30億立方フィート(約2,250万トン/年)の生産を目指す。

三菱商事は現在、コルドバ堆積盆地で天然ガスの開発を進めている。
同社は又、現在、カナダで生産した天然ガスを原料に、液化天然ガス(LNG)として輸出する可能性についても検討を進めている。

ーーー

福島第1原発の事故後、火力発電の燃料として日本のLNG需要が急増している。
2011年の輸入量は7853万トンと前年比12%増えた。

世界的な需要増でスポット価格も上昇している。

日本でLNG輸入が本格化した1970年代の発電燃料は石油のため、原油価格連動でLNG価格を決めた。
その後LNGを導入した韓国や台湾も同じシステムを採用し、これが一般ルールとなった。
このため、原油価格の上昇により、LNG価格も上がっている。
(米国では天然ガス価格は需給で決まる。)



これに対し、米国の天然ガス市況はシェールガス増加で大幅に下がり、100万BTU当たり 2$台になっている。

付記 LNG輸入の場合、これに液化費用と輸送費合計で100万BTU当たり5〜6ドル?)がかかる。

従来は、原油100ドル/bbl天然ガス10ドル/100万BTUであった。
現在の 米国の天然ガス価格は原油価格との格差が大きく、アジアの天然ガス価格とも大きな差がある。

天然ガスの輸出にはそのための設備が必要で、時間がかかる。
また、米国は基本的に戦略物資として「エネルギー輸出禁止」政策を採っており、政府の承認が必要。


日本の各社のシェールガス等非在来型資源の開発状況は以下の通り。

三菱商事
@ブリティッシュ・コロンビア州の
Cordova堆積盆地のシェールガス
 
Penn West Energy Trustから50%の権益

 
2010/8/26 三菱商事、カナダのシェールガス開発プロジェクトに参画
 
2011/5/14 中部電力、東京ガス、大阪ガスとJOGMEC、カナダシェールガス開発プロジェクトに参加

Aカナダのシェールガス(今回) 

三井物産
@ペンシルベニア州のMarcellus Shaleエリアのシェールガス
 
Anadarko Petroleum から32.5%の権益

 
2010/2/18  三井物産、米国でシェールガス開発生産プロジェクトに参画

Aテキサス州Eagle Ford shale 
  
SM Energyから12.5%の権益

  2011/7/4  三井物産、テキサス州のシェール開発に参加

住友商事
@テキサス州
Barnett Shale field開発
 
Carrizo Oil & Gasから12.5%の権益

Aペンシルベニア州
Marcellus Shale field開発
 
Rex Energyから30%の権益

 
2010/8/26 三菱商事、カナダのシェールガス開発プロジェクトに参画
双日
テキサス州北東部
Carthage onshore gas 鉱区Tightsand gas、シェールガス
 
20077月に権益取得

 2010/10/19 伊藤忠、米国のシェールオイル開発に参加、商社の非従来型石油/ガス開発出揃う

伊藤忠
@ワイオミング州
Niobraraのシェールオイル
  
Fidelity Exploration & ProductionMDU Resources Group子会社)から25%の権益

 2010/10/19 伊藤忠、米国のシェールオイル開発に参加、商社の非従来型石油/ガス開発出揃う

A2011/11/28 KKRと伊藤忠など、米Samsonを72億ドルで買収へ

丸紅
@Niobrara shale oil
  2011/4/13 丸紅、米国のシェールオイル開発計画に参加

AEagle Fordシェールオイル・ガス田
  
2012/1/9 丸紅、イーグルフォード・シェールオイル・ガス開発事業に参画

日揮
@テキサス州
Eagle Ford シェール
  
2011/6 TriTech I, LLCからChesapeake Energy運営の鉱区の10%の権益

A国際石油開発帝石と日揮、NexenのBritish Columbia州北東部のシェールガス開発に参加

 

2012/2/22  ミヨシ油脂、東ソー特許侵害訴訟で上告取下げ 

ミヨシ油脂は2月13日、同社のピペラジンジチオカルバミン酸系飛灰用重金属固定化処理剤で東ソーから提訴されていた特許権侵害訴訟に関し、最高裁への上告を取下げ、ミヨシ油脂側の特許権侵害を認めた2011年12月の知財高裁判決に従って対象製品の製造・販売停止や損害賠償などに応ずることを発表した。

同社は、ピペラジン系飛灰用重金属固定化処理剤を名古屋工場で製造し、商品名「エポルバ」シリーズとして、ごみ焼却灰に含まれる重金属処理向けに販売してきた。

自治体が建設したゴミ焼却施設で発生するダスト(飛灰)は、集塵機(バグフィルター)で集められるが、非常に細かく、このままでは処分できないので、 重金属を混練機で「高分子系液体キレート」のエポルバ と練り込んで固定化し、処分 する。
雨で重金属が溶け出さない効果に、高い評価を得てい る。

東ソーは、2007年1月、ミヨシ油脂の製品が、自社の特許第3391173号「飛灰中の重金属固定化方法及び重金属固定化処理剤」を侵害しているとして、対象製品の製造差止めと約27億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

ミヨシ油脂は、「同特許は出願時点での先行特許・技術と同じで、無効」などと主張したが、東京地裁は2010年11月18日、「先行特許・技術と同一とはいえず、特許は有効」と判断し、東ソー勝訴の判決を下した。

ミヨシ油脂による対象製品の製造販売の禁止
対象製品の廃棄
損害賠償金1,191百万円(+遅延利息)の支払い

これに対し、双方が控訴したが、知的財産高等裁判所は2011年12月22日、東ソー勝訴の判決を下した。

ミヨシ油脂による対象製品の製造販売の禁止
対象製品の廃棄
損害賠償金1,800百万円(+遅延利息)の支払い

専門家によると、控訴審で損害賠償金が増額となるのは珍しいとのこと。
対象製品の製造販売の禁止、対象製品の廃棄も認められ、「近時にない、教科書的勝利」とされる。

ミヨシ油脂はこれを不服として、2011年12月26日、最高裁に上告したと発表した。

しかしミヨシ油脂は今回、訴訟継続による経営への影響を熟慮し、当該事業の一刻も早い立て直しが急務であるとの結論に達したとし、上告を取り下げ、対象製品の製造・販売停止や損害賠償などに応ずると発表した。
弁護士らと協議した結果これ以上正当性を主張することは難しいと判断した。

同社はまた、特許権侵害訴訟に対する経営責任の明確化と、新しい経営体制のもとでの業績回復と社業の発展のため、会長と社長の交代を発表した。

ミヨシ油脂は今後、同処理剤の事業化から手を引く。
但し、対象品目が「飛灰用処理剤」のため、水処理用など対象以外の商品は、引き続き製造販売していく方針。

同社は飛灰用のエボルバのほか、以下の製品を扱っている。

「エポラス」 
  水の浄化などに使われているイオン交換樹脂

  水銀専用キレート樹脂一般重金属用キレート樹脂など

「エポフロック」 
  分子タイプの液体重金属捕集剤で、メッキ工場や金属加工工場などの排水に含まれる重金属類を捕捉

「エポアース」
  
高性能な土壌用高分子重金属固定剤

 

東ソーは2月16日、業績予想の修正を発表した。損害賠償金18億円を特別利益に計上、純損益を11億円上方修正した。


2012/2/23 ギリシャ第二次支援決定 

EUのユーロ圏17カ国は2月21日の財務相会合で、ギリシャへの総額1300億ユーロの第2次支援を決めた。
支援実行と引き換えに、同国をEUの監視下に置き、財政緊縮策を確実に履行させることで一致した。

第2次支援の実行が決まったことで、ギリシャは3月下旬の国債の償還資金を手当てし、債務不履行(デフォルト)を回避することになった。

ギリシャ支援を巡る合意内容の骨子は以下の通り。

 ・EUとIMFが1300億ユーロ(約13兆6500億円)を支援

 ・民間債権者が保有するギリシャ国債の元本削減率を50%から53.5%に引き上げ

ギリシャ国債を最長30年の新発国債などと交換する。

銀行等保有の国債
 2000億ユーロ
1070億ユーロ(53.5%) 削減
 930億ユーロ(46.5%) 31.5%  最長30年の複数の新規国債 利率2.0〜4.3%
15.0% 短期の欧州金融安定化基金債

クーポンは最初の3年間がわずか2%で、30年間の平均では3.65%となる。 (実勢は10年満期で30%超)
金利減を含めると約7割の債務削減となる。

国債の交換は、民間側の代表である国際金融協会(IIF)と合意したが、債権者はこれから個別に文書にサインする必要があり、最終的な参加率がどの程度になるのか、まだ確定的はことは言えない。

ギリシャ政府は、一定以上の合意があれば全ての国債交換を進められるようにする集団行動条項(CAC:collective-action clauses)を盛り込んだ法案を議会に提出した。

 ・ECBとユーロ圏各国の中央銀行が支援に参加

ECBは債券買い入れプログラムに基づき購入した債券の利益を放棄
  購入した500億ユーロのギリシャ債からの利益 120-150億ユーロを放棄、
  ユーロ圏17カ国の中央銀行のギリシャ向け融資の損失を補てん

ECBと中央銀行は投資ポートフォリオで保有している債券の利益を放棄
   ギリシャが資金調達する必要のある金額は今後3年間に18億ユーロ圧縮される見通し。

ECBによる担保の受け入れ
  ギリシャ債がデフォルトと分類されても、オペの担保として銀行が保有するギリシャ債を受け入れる。

 ・ギリシャの対GDP債務比率を現状の160%から2020年に120.5%に

 ・ギリシャをEUの監視下に置き、財政緊縮策を確実に履行させる
    財政主権を事実上制限して、4月の総選挙後も同国が財政健全化の取り組みを緩めないようにするのが狙い

EUなどの代表がギリシャに常駐し、予算編成なども含めて同国が約束した財政緊縮策を確実に履行しているかどうかを監視。
第2次支援でギリシャに融資される資金は、通常の予算とは別の特別会計で管理し、債務返済を優先させる。


当面のデフォルト危機は回避できるが、EU・IMFの報告書は、ギリシャの景気が想定以上に悪化するなどの場合、第2次支援を実施しても2020年時点で債務の対GDP比率が160%程度に高止まりするリスクを指摘しており、ギリシャの財政再建の前途は厳しい。

これまでの経緯は以下の通り。

2009/10 ギリシャの財政赤字粉飾が表面化
2010/5 ギリシャに対する支援策(2010〜2012年で1,100億ユーロの協調融資)
欧州金融安定化メカニズム(European Stabilization Mechanism)創設
 EFSF 最大4400億ユーロ
 IMF 2500億ユーロ
 欧州委員会が発行する債券 600億ユーロ
 最大合計 7500億ユーロ

2010/5/10  統一通貨ユーロの危機

2010/11 アイルランド支援(850億ユーロ)
2011/5 ポルトガル支援(780億ユーロ)
2011/6 EFSF拡充決定(2011/10 最後のスロバキアが一旦反対した後、賛成し、成立)
2011/7 ギリシャ向け第二次金融支援
 公的支援 1090億ユーロ、民間金融機関による支援 370億ユーロ(21%の損失負担
2011/10 欧州債務危機克服に向けた「包括戦略」で合意。
ギリシャ問題については
民間銀行によるギリシャ債務の損失負担は7月時点の21%から50%に アップ
(新旧の国債交換、国債の再投資を通じギリシャ国債の元本を削減)
ギリシャ債務残高は2020年にGDP比120%に削減へ
(当初案なら150%で高止まり)
ギリシャの財務状況を常時監視
ギリシャに下記の改革を求める。
 ・女性年金支給開始 60歳→65歳
 ・一定額以上の受給者への支給額減額
 ・公務員3万人の削減、給与カットも
 ・民間企業の賃下げのための規制緩和
 ・保有不動産からの利益に対する課税の導入
 ・付加価値税 21%→23%(実施済み)
 ・ガス(DEPA)、通信(OTE)など国営企業の民営化
 ・公共事業の凍結、削減(2011年度は前年比3.3%減)
 ・軍事費の大幅削減
2011/11 ギリシャ首相は、国民の反対を受け、一度は国民投票実施の意向。
EUとの協議の後、首相は11月3日、緊急閣議を開き、国民投票を撤回

G20首脳会議は11月4日、首脳宣言を採択。
EUが合意したギリシャの債務削減などの包括対策の速やかな実施を要請

2011/11/7   EU 金融危機

その後 EU・IMFの試算では、当初予定していた第2次支援を実施しても、2020年時点でギリシャの政府債務の対GDP比率は129%までしか低下せず、目標の120%を実現するための追加策が残された大きな論点となった。

ギリシャ政府の追加緊縮策が整わないことなどを理由に正式決定が先延ばしされてきた。

EUは第二次支援を1300億ユーロとするとともに、民間銀行のギリシャ国債元本削減幅を従来の50%から更に拡大することとし、ギリシャにそのための条件を科した。

2月15日、3条件をようやく達成
1)「財政緊縮関連法案の議会承認」
   2012年で33億ユーロ分の 賃金、年金、公務員削減による節減策を議決

2)「財政緊縮策実行の誓約書」
   ギリシャ与党党首が「緊縮策実行の誓約書」に署名。

3)「歳出削減策の具体化」(これが難航した。)
   6億2500万ユーロの歳出削減めぐって暗礁に乗り上げたが、
    うち、3億ユーロを年金の削減で賄うことを決定
   残り 3億2500万ユーロについては、最終的に国防費や公共投資などの削減で賄うことを決定。

 


2012/2/24   旭化成とダイソー、水島の塩素共同生産を解消

旭化成とダイソーは今春をめどに、塩素や苛性ソーダを生産する岡山化成への共同出資関係を解消する。
旭化成は岡山化成の持株をダイソーに売却、ダイソーの100%子会社とする。2月21日付の日本経済新聞が報じた。

付記 両社は3月7日、正式発表した。

岡山化成は1968年設立で、旭化成ケミカルズとダイソーが50%ずつ出資している。
1970年に岡山県水島臨海工業地帯のC地区コンビナートで電解の稼働を開始した。
現在の生産能力は苛性ソーダが18万トン、塩素が16万トンとなっている。

ーーー

岡山化成の設立は、旭化成にとっては、日本ゼオンのエチレン法塩ビを水島コンビナートに誘致するための塩素の確保のためであり、ダイソーにとってはエピクロルヒドリンなどへの進出のための塩素の増設であった。

旭化成は山陽モノマーに30%出資、エチレンと塩素を供給し、VCMを延岡の塩化ビニリデンや溶剤用に一部引き取った。

2000年に山陽モノマーと新第一塩ビ(水島)が停止した。

このため、旭化成は隣接するヴイテック(三菱化学)に塩素を送り、VCMの委託加工を行った。
(当時、ヴイテックは電解能力が不足し、輸入EDCを購入してVCMにし、輸出していた。)

 ッソは2002年に水島のPVCを停止、PVCから撤退した。
 (その前に2000年に五井と水俣のPVCを停止している)

チッソ向けのVCM供給が無くなったうえ、肝心のヴイテックが2011年に水島の電解とVCMを停止(水島PVCは2008年に停止済み)、2011年9月末に解散した。

この結果、旭化成は大口の塩素供給先が無くなったため、撤退する。

ダイソーは主力のエポキシ樹脂原料の強化に向け、原料の塩素を安定確保する。


2012/2/24 米国からのLNG輸入問題 

日本のLNG輸入のニーズはたかまっており、輸入量が増大する一方、輸入価格は大幅に上昇している。

また、中部電力は6割がカタール産となっているが、仮にホルムズ湾が閉鎖されると、中部電力は発電量の約4割を失うという。

2011年の日本のLNG輸入7,853万トンのうち、カタールが15.1%、UAEが7.0%、オマーンが4.9%ほかで湾岸諸国が28.1%を占める。
他に、豪州17.8%、マレーシア19.1%、インドネシア11.9%など。

原油は官民で200日分の備蓄があるが、LNGには備蓄の義務がなく、電力各社には2〜3週間分の在庫しかないとされる。

一方、米国の天然ガス価格は、原油価格が上昇しているのに対し、シェールガスの増大に伴い、逆に下落しつつある。

  以上については 2012/2/21  三菱商事がカナダのシェールガス開発に参加 参照 

しかし、米国からのLNG輸入は簡単ではない。

米国はLNGを戦略物質とみなし、輸出を個別の許可制にしている。

唯一の例外は本土48州に輸送不可能だったアラスカのKenai LNGの輸出だった。

日本の各社が米国のシェールガス開発に相次いで参加しているが、日本への輸出には米国政府の個別承認が必要となる。

米国は輸出承認で米国とFTAを締結している国とそれ以外で差をつけており、FTAを結んでいない日本はガス輸入のハードルが高い。

政府はLNGの新たな資源調達先として昨年秋から米国と交渉を始めた。経産省の牧野副大臣は2011年に米エネルギー省のチュー長官と会談し、ガス輸出事業を許可するように働きかけた。

読売新聞(2月22日)によると、政府が米国のLNGの対日輸出許可を求め、米政府と交渉に入ったことが明らかになった。
日本政府は、米ルイジアナ、メリーランド両州で進む民間のLNG生産プロジェクトからの輸出許可を求めており、野田首相訪米の際、オバマ大統領とLNG輸出で合意する方向で両政府が調整している。

ーーー

現時点での米国のLNG輸出計画は下記の通りだが、エネルギー省の認可は2件のみで、エネルギー規制委員会の認可はどこも取得していない。

プロジェクト 事業者 申請液化能力
万トン/年
       政府認可状況
エネルギー省 エネルギー規制委
Sabine Pass ルイジアナ Cheniere 1,600 認可済 審査中
Freeport テキサス Freeport LNG 900 審査中 審査中
Lake Charles ルイジアナ Southern Union 1,500 認可済 未申請
Cove Point メリーランド Dominion 800 未申請 未申請
Jordan Cove オレゴン Jordan Cove LNG 900 未申請 未申請
Cameron ルイジアナ Sempra 1,200 未申請 未申請
 米国計画 合計  6,900    

         

先行しているのはCheniere Energy が海外からのLNG受入基地に天然ガスのLNG化設備を建設してLNGを輸出する計画で、2010年9月に米国がFTAを締結している国(将来締結した国も含む) に限定して輸出許可が出された。

それまでアラスカ産を除けば、米国からの天然ガス輸出はほとんど前例がなく、認められないというのがおおかたの見方だったが、それを覆す意外な決定だった。

これに対し、同社は、多国間での自由貿易協定を目指すWTO加盟国へのガス輸出を禁止することが正当かどうかの判断を政府に求め、エネルギー省は2011年5月、同社に条件付きですべての貿易相手国への輸出を認めた。
CheniereのSabine Pass プロジェクトへの承認であり、個別に承認するが、FTA締結国とそれ以外で差が存在する)

Cheniereは2012年1月に建設着工、早くて2015年に稼働開始の予定で、既に売買契約を締結済である。

売買先は以下の通りで、既に米国とのFTAを締結し、間もなく発効予定の韓国の韓国ガス公社(Kogas)が含まれている。
(韓国以外の各国は米国とのFTAを締結していない)

輸出先 数量
万トン/年
供給開始 契約期間 定額固定費
$/百万BTU
BG Group (英) 350 2016 20年間 2.25
同上 追加 200 2016 同上 3.00
Gas Natural(スペイン) 350 2016 同上 2.59
Gail(インド) 350 2017 同上 3.00
Kogas(韓国) 350 20142017 同上 3.00
合計 1,600      

FOB価格は、原料ガスコスト(Henry Hub 渡し市況 x 115%)+固定費(ガス化費用など)
15%は天然ガスのトレーダーとしてのマージン。

ーーー

米国からのLNG輸入には他にも問題がある。

1)事業者

Chiniereやその他の事業者中小規模のガス・トレーダーで、大規模な資金負担に耐えられるか疑問視され、またLNG事業操業能力にも疑問が残るとされる。

大手石油企業・ガス生産者がLNG液化・輸出事業に参入する気配はない。

2)国内の反応

米国のエネルギー多消費型の産業界(発電業界、化学、アルミ、米国ガス協会等)から米国のLNG輸出に対する懸念が頻繁に提起されている。輸出により国内ガス価格が上昇するのを懸念し、一定の制限を設けるべきとの主張を展開している。

付記

DowのAndrew Liveris CEOは3月8日、エネルギー関連の調査機関が主催する年次会合CERAweek でスピーチし、シェールガスからのLNGの輸出を制限するよう求めた。

アメリカのこの安く豊富なガスの産業での有利性は、首尾一貫した国のエネルギー政策をつくらなければ消えてしまう。天然ガスを輸出する代わりに、液体形態ではなく、これを加工した固体形態で輸出するべきだ と述べた。

3)米国政府の「エネルギー戦略物資」論

米政府は「LNG輸出の国内ガス需給への影響」に係る調査実施を2012年第1四半期に完了させる予定。
米市場への適切なエネルギー供給を維持するために、LNG輸出に対しては何らかの条件が加えられる可能性がある。

中国向けの輸出を認めるかどうかは大問題である。米国はハイテク製品についても軍事転用が可能だとして制限している。

4)LNG輸出に対する米国政府の低い支援

米国投資銀行は、米国の政治的リスク、ガス市場価格の不安定性を理由として、液化設備建設への投資に慎重な姿勢を見せている。

5) 米国の将来のガス供給力

今後のシェールガス掘削費用のアップ、環境対策費のアップなどから、将来も安い生産コストを維持できるかどうかは別問題。

付記

野田首相は4月30日のオバマ米大統領との首脳会談で、LNGの対日輸出拡大などエネルギー面での協力を求めた。

オバマ大統領は首相の輸出要請に対し、「日本のエネルギー安全保障は米国にとっても重要」と理解を示す一方、「(対日輸出は)政策決定プロセスにある」として、明言は避けた。日本政府内には「少なくとも11月の大統領選までは、オバマ大統領が輸出認可に動く可能性は低い」との見方が強い。

ーーー

資料 2012/2/1 JOGMEC  世界LNG: 実現に近づく次世代LNG供給地域・プロジェクト
  http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/4/4585/1201_out_c_green_lngs.pdf 

 

付記

大阪ガスは2012年6月22日、米国テキサス州のPearsall Shale ガス・オイル開発プロジェクトに参画することを決め、Cabot Oil & Gas Corporationとの間で、権益35%を250百万米ドルで取得すること等を定めた権益売買契約を締結した。

所在地:米国テキサス州南部(イーグルフォード地区)
参加者:Cabot 65%:オペレーター 、大阪ガス 35%
開発対象:ピアソール層
主な産出資源:天然ガス、軽質原油、NGL

 

付記 日本向けLNG運賃 ($/百万BTU)
      資料:Platts LNG Forum, Tokyo 2012/9/25
  

  Kirimat(カナダ西海岸)   1.24  
  US Gulf Coast        2.96  
   Cove Point(東海岸)   3.07  
         
   Gordon(豪)   1.17  
   Gladstone(豪)   1.21  
   Ichthys(豪)   1.23  

 


2012/2/25 サムスン創業者の遺産相続で訴訟

サムスングループの創業者、故李秉普iイ・ビョンチョル)氏の長男、李孟熙氏(81)が弟の李健熙サムスン電子会長を相手取り、総額7100億ウォン(約494億円)の株式の分与を求める訴訟を起こした 。

李秉浮ヘ1938年に大邱で三星商会を設立した。
1948年には三星物産を設立、続いて第一製糖と第一毛織を設立した。

サムスングループは現在、韓国最大手の総合家電・電子部品・電子製品メーカーのサムスン電子、総合電子部品企業のサムスン電機、薄型パネルや電池製造のサムスンSDI、デジタルカメラや製造装置、軍事機器のサムスンテックウィン、造船やプラント生産のサムスン重工業、商社事業と建設事業のサムスン物産、サムスンエンジニアリング、サムスン生命などを抱える。

李秉浮ヘ1987年11月19日に逝去、現在の体制は以下の通りで、三男の李健熙がその地位を受け継いだ。

李孟熙の長男の李在賢が会長を務めるCJグループは旧第一精糖で、1993年にサムスングループから分離した。
また、長女の率いるハンソルグループは1991年にサムスングループから独立したチョンジュ製紙が起源で、製紙に加え、インテリア、精密化学品、建築・レジャー施設開発、物流、IT、そして環境へと事業分野を拡大している。

付記 次女(LG系列の食品・レストラン業アワホームの具会長の夫人)の李淑姫も2月27日、同様の訴訟を起こした。

ソウル中央地裁によると、李孟熙氏は「父が生前に第三者の名義で信託した株式などの財産を、李健熙氏がほかの相続人に無断で単独名義に書き換えた」と主張し、相続分に相当する株式の分与を求めた。

今度の訴訟の争点は、故李秉浮ェ経営権保護などを理由に役職員の名義で管理していた三星生命と三星電子の借名株式。
故李秉浮ヘ後継者として3男の李会長を選び、この過程で役職員の名義で管理していた三星生命の借名株式などが李会長の所有になった。

これに関しては2008年4月に特別検察官チームが、経営権継承疑惑、裏資金疑惑、不法ロビー疑惑で李健熙会長を背任と脱税など3つの容疑で起訴、三星幹部10人を書類送検した。

会長は執行猶予付きの刑が確定したが、韓国政府は、2018年冬季五輪招致に弾みをつけるため、2009年末に特別赦免した。

2010年3月24日、李健煕氏がグループ社長団会議の要請を受け、サムスン電子の会長に復帰した。

2008/4/26 揺れる韓国サムスングループ

「父が生前に第3者名義で信託した財産を李健煕会長が他の相続人に知らせず、単独名義に変更した」とし、「これは不当利益および不法行為に当たるため、民法上相続分189分の48に合わせて株式と今までの配当分を譲渡してほしい」と請求した。

また、 1998年12月にサムスンエバーランドが買収する形で名義変更されたサムスン生命の株式3447万株も法定相続分に従い返還されるべきだと主張している。

要求額は以下の通り。

李健煕会長に対し
  三星生命の株式824万余株、
  三星電子の株式20株(相続分 普通株57万株、優先株3100株の一部として)
  現金 1億ウォン(約696万円)
三星エバーランドに対し
  三星生命の株式100株(相続分 876万株の一部として:名義変更の経緯が不明確なため)
    現金 1億ウォン  

今後、訴訟の進行状況を見ながら、追加的な訴訟で財産分割を求める。

李孟熙氏が要求したサムスン生命の株式824万株を全て手にしたとしても、李健熙氏とサムスンエバーランなどの系列企業がサムスン生命の株式を40%以上保有しており、経営権に影響を及ぼすことはできない。

当時の民法によれば、相続回復請求権は「相続権侵害を知ってから3年が経過するか、あるいは相続開始(被相続人の死亡)から10年が経過した時点で消滅する」と規定されている。

李孟熙氏は「昨年6月に受け取った文書に、他人名義の信託財産に関する言及があるのを見て、相続権が侵害された事実を知った」と主張している。
但し、2008年4月の三星秘密資金疑惑と関連した特別検事の捜査結果の発表には借名株式の存在が含まれており、この時点からは相続財産を要求できる除斥期限(3年)が既に経過している。

付記

本件は、2011年6月に国税庁が長男の李孟熙ら相続人に送った公文書がきっかけだったことが分かった。

国税庁は「イ・ビョンチョル会長が他人名義で保有していた財産が、2008年12月に李健熙サムスン電子会長の名義に書き換えられたが、相続人は法定相続分を放棄し、李会長に贈与したのか」と照会する公文書を送った。

国税庁の照会を知った李健熙会長は、直後に李孟熙氏の息子の李在賢CJ会長に「先代会長の財産は、相続当時に分割が決定され、全ての相続人はほかの相続人の財産にいかなる異議もない」とする文書を送り「この文書に押印し、ソウル地方国税庁に送ってほしい」と要求した。

しかし、李在賢会長はそれに応じず、今回の訴訟となった。

李秉侮≠フ遺言状が存在しない状況で、李健熙氏は父が他人名義で管理していた株式を相続した根拠を明らかにすることも容易ではなく、財界関係者は「失う部分が多い李健熙氏が譲歩し、金銭で和解する可能性が高い」と指摘している。


2012/2/27  米オバマ政権、税制改革案発表

オバマ政権は2月22日、連邦法人税の最高税率を現行の35%から28%に引き下げることを柱とする税制改革案を発表した。
国際的に高い水準にある法人税率を引き下げて米企業の国際競争力の強化や雇用拡大を狙う。

特に国内雇用の増加に貢献する製造業などには優遇措置を講じ、法人税の実効税率を25%以下に抑えるとしている。
一方で、石油やガス、投資ファンドなど特定の産業に与えている優遇を縮小・廃止し、全体としての税収は維持する。

石油・ガス関連、保険、資産運用企業を対象とした税控除が撤廃される。
とりわけ、プライベートエクイティやその他ファンドマネジャーが受け取る成功報酬に対する優遇税制を廃止する。
また、雇用や研究・開発の海外移転に対する優遇税制を廃止する。

オバマ大統領は「雇用を海外に出す企業に報いるのをやめ、米国内で雇用を増やす企業に報いるべき時だ」と声明で訴えた。
改革方針を記した資料では「日本は今年4月に税率引き下げを予定しており、米国を下回る見通しだ」と、日本を引き合いに出して危機感を表した。

野党・共和党の大統領選の有力候補であるロムニー前マサチューセッツ州知事も、「法人税率を25%に引き下げる」との減税策を発表した。

但し、優遇廃止に反対する動きは強く、減税案が通る可能性は低いと見られている。

ーーー

日本の法人税率は2012年から、従来の30%から25.5%に引き下げられる。
    
2010/12/13 法人税率引き下げとナフサ課税
    2010/12/19 税制改正大綱

しかし、復興財源確保法が2011年11月30日に成立し、2012年4月から3年間、復興特別法人税(年税額の10%)が上乗せされる。

この結果、実効税率は以下の通りとなる。(%)

    従来    2012年度以降
基本 3年間
法人税     30.00   25.50   25.50
復興特別法人税 法人税率x10%     2.55
住民税 法人税率x20.7% 6.21 5.28 5.28
事業税 下記参照 7.56 7.56 7.56
合計   43.77 38.34 40.89
実効税率 合計/(1+事業税) 40.69 35.64 38.02

・実効税率は、事業税が翌期に損金に算入され、課税を減らす効果があるため、これを勘案した実質課税率。
・事業税率は、東京都の外形標準課税法人で、3以上の都道府県に事業所を持つ資本金 1千万円以上の法人のケース

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先進諸国では法人税率の引き下げが進んでいる。

カナダの法人税は2011年1月に11.5%減の16.5%となったが、2012年1月からは15%となる。
  基本税率38%−軽減率 10% - 2012年減税 13% (2011年はこれが11.5%) =15%
  このほかに州の法人所得税がかかる。(軽減率10%は州の法人税賦課の場合)

英国の法人税率はこれまで28%だったが、2011年4月から26%に引き下げられた。以降2014年4月まで毎年1%ずつ23%まで引き下げられる予定。

INEOSは英国の税率が28%の時に、本社をスイスに移転した。
  2010/3/5  INEOS、節税のためスイスへの移転を検討 

日本の法人税の実効税率は米国と並んで高い。
これの是正のため、難航の末に5%の引き下げを達成したが、復興財源確保法で3年間は引き上げられる。

米国の減税が実行されると、日本は先進国では最高税率となる。

 


2012/2/28 Sinopec、SK及びBPと重慶石化計画

Sinopec子会社のSinopec Sichuan Vinylon Works は2月22日、韓国のSK Global Chemical 及びBP Chemicals Investmentとの間で、重慶の長寿経済技術開発区に1,4-ブタンジオール、酢酸、アンモニアの石化コンプレックスを建設する契約に調印した。
投資額は合計で11億ドルで、年間440百万立方メートルの天然ガスを使用する。

既にFSを政府に提出済で、政府の承認を得て7月か8月にも着工し、2014年末〜15年初めに完成する予定。

アンモニアは年産能力25万トンで、Sinopec が単独で建設する。

1,4-ブタンジオールは年産能力が20万トンで、Sichuan Vinylon WorksSK Global Chemicalの50/50JVが建設する。
投資額は588百万ドル。

付記

2015年生産操業の予定だったが、天然ガス価格の上昇、ブランジオールの市場のスランプで建設は延期されていた。

2016年12月、持株会社 SK Innovation は計画の破棄を決めた。天然ガス原料のブタンジオールの競争力が問題。

酢酸は年産能力60万トンで、SinopecとBPのJVのYangtze River Acetyls Company (YARACO) が建設する。

YARACOはBP 51%、Sinopec Sichuan Vinylon Works 44%、地元のChongqing Energy Investment 5%のJVで、既に下記の生産を行っている。

  第一期 第二期
酢酸  40万トン  65万トン
エステル   8万トン  

2009/1/9  シノペック四川ビニロン、重慶で酢酸ビニル第二期計画スタート

1,4-ブタンジオールプラントからは酢酸プラントにアセチレンオフガスを供給、逆に酢酸プラントから水素の供給を受ける。

1,4-ブタンジオールはアセチレンをホルムアルデヒドと反応させて、これを水素化して生産する。

最近では、ブタンから生産する無水マレイン酸を原料に生産されている。
また、三菱化学はブタジエンを原料とする1,4-ブタンジオールとその誘導品(C4 ケミカル製品)事業を成長戦略のための集中事業の一つに位置付けている。

SKは蔚山に年産4万トンの1,4-ブタンジオールを2008年から生産している。

ーーー

SKにとってはこれは、中国でSinopecとの3つ目のプロジェクトとなる。

第一番目は2004年に上海に設立した50/50JVのShanghai Gaoqiao-SK Solventで、SKのSolplusプロセスで年産6万トンの溶剤を生産する。

二番目はSinopecの武漢のエチレン80万トン計画への35%の参加で、両社は2008年5月に基本契約に調印した。

2008/6/2  韓国SK Energy、シノペックの武漢エチレン計画に出資

その後、2009年4月に、中国SKのトップが中国メディアに対し、SKに十分な資金がないとして、この投資を延期することを明らかにしていた。

一方、Sinopecは2010年4月に、2013年上半期の生産開始を目指し、建設を軌道に乗せることを明らかにした。

2011年12月2日、両社は北京で戦略的協力の覚書を締結した。武漢エチレン計画について協議を続けるとともに、戦略的提携を行い、両社に有益なWin-winの関係を創るとしている。エチレンJVは年内にも中国政府の承認が得られると期待されている。

今回の提携はこの一環となる。


2012/2/29 水俣病訴訟、遺族が逆転勝訴 

感覚障害があるのに水俣病と認定せず、認定申請を21年後に棄却したのは違法として、熊本県水俣市の女性の遺族が県を相手に、棄却決定の取り消しと認定義務づけを求めた訴訟の控訴審判決が2月27日、福岡高裁であった。

裁判長は遺族側の請求を退けた一審・熊本地裁判決を取り消し、棄却決定を取り消して水俣病と認定するよう命じた。

女性は1974年に水俣病認定を申請したが、認定に必要な検診が完了しないまま1977年に死亡した。
県は20年後の1994年に生前のカルテなどを探す作業を始め、1995年に判断資料がないとして申請を棄却した。

遺族は2001年に棄却取り消しを求めて提訴、2005年には県に対し認定を命じるよう求める「義務付け訴訟」を追加提訴した。
女性の生前の診断書に「四肢末端に知覚鈍麻を認める」との記述があることなどから「2004年の水俣病関西訴訟最高裁判決に従えば水俣病」と主張したが、県側は「腎臓病による尿毒症が原因」と反論した。

一審の熊本地裁は2008年に、病状に関する客観的な資料が乏しいとして、請求を退けた。

控訴審では遺族は、「関西訴訟判決などから母が水俣病なのは明らか。処分が21年もかかり、手続きも違法だ」と主張。これに対し、県は「資料がなく、感覚障害は腎臓疾患の影響もある。処分は生存者を優先したため、遅れはやむを得ない」と反論していた。

県は申請者が亡くなっている場合には審査の棚上げを決めていたことが、今回、県の提出資料で判明した。

国の水俣病認定基準は感覚障害の他、運動失調や視野狭さくなど複数の症状の組み合わせを求めている。

判決内容は以下の通り。

現行の認定基準は唯一の基準とするには十分ではない。
この基準は汚染が直接的かつ濃厚な場合の典型的症状であり、基準を満たさない各症状についても水俣病と考えれる可能性の程度はさまざまで、メチル水銀に対する曝露状況などを総合考慮することで水俣病と認める余地がある。

認定基準を硬直的に適用した結果、軽症者を除外しており、運用は適切であったとは言い難い。
   
女性には四肢末端の知覚鈍麻と口の周辺の感覚障害が認められる。
メチル水銀の摂取歴や生活環境などを慎重に検討すれば、メチル水銀の曝露歴を有すると推認するのが相当で、水俣病と認定できる。
腎臓病による尿毒症との主張は、医学的知見から認められない。
   
熊本県の棄却処分は違法で、水俣病認定をすべきなのは明らか。
   

水俣病と認定するよう命じる判決は2010年に大阪地裁で出ているが、高裁段階では初めて。

これは、2004年の最高裁で水俣病と認められた大阪府豊中市の女性が、国と熊本県を相手に行政としても認定するよう求めた訴訟。

国は、「最高裁の判決は有機水銀中毒症の判断基準であり、水俣病と有機水銀中毒は別」とし、現行の水俣病認定基準の見直しは行わないとしていた。

判決は以下の理由を挙げ、女性の認定申請を退けた処分を取り消し、公害病訴訟では初めてとなる改正行政事件訴訟法に基づく行政認定を義務づけた。

1)  現行の認定基準の「感覚障害や運動失調など2つ以上の症状の組み合わせ」がない限り水俣病と認めないとの国の主張は医学的正当性を裏付ける根拠がない。
   
2) 四肢の感覚障害は水俣病の基礎的症候で、神経症状が感覚障害のみである水俣病も存在すると認められる。
   
3) 原告の症状は四肢の感覚障害のみだが、メチル水銀の摂取状況、他に原因になる疾患がないことなどを総合考慮すれば、原告は水俣病と認められる。

2010/7/19 大阪地裁、国の基準を否定し、水俣病認定を義務づけ  

付記

熊本県は3月7日、二審福岡高裁判決を不服とし、一両日中に上告受理申し立てをすると発表した。
知事は「判決には認定基準の根幹に関わる問題が含まれており、行政の長として受け入れられない」と上告理由を説明した。
環境省事務次官は、「妥当と考えている。判決には法解釈上の問題があった。(現行の水俣病認定基準については)否定されたわけではなく、見直さない」と語った。

ーーー

政府はこれまで、認定基準の見直しを避け、水俣病被害者救済法に基づく救済策を最終解決としてきた。

国が1977年に設定した水俣病認定基準では、感覚障害と聴覚障害、視野狭窄、運動失調など複数の症状が組み合わさっていることが必要とされる。

国は1971年の旧環境庁発足に伴い、初めて認定基準を示し、「感覚障害など4症状のいずれかの症状があり、水銀の影響を否定しえない場合」としたが、1977年に上記の通り修正した。感覚障害は糖尿病など他の疾病や加齢でも起こるため、水俣病かどうか区別がつかないというのが理由であった。

この基準で認定を受けたのは新潟水俣病と合わせ約3000人で、公害健康被害補償法に基づき、1973年のチッソとの補償協定により1,600万円〜1,800万円の補償が行われた。

この基準で認められなかった多くの人たちは、1980年から行政の責任を問い、水俣病と認定するよう求めて各地で提訴した。

このため、政府は2回にわたり救済策を取った。

@1995年 政治決着

1995年に村山首相が政府として初めて「結果として長期間を要したことについて率直に反省しなければならない」と首相談話で遺憾の意を表明し、自民・社会・さきがけ3党連立政権が訴訟や認定申請の取り下げなどを条件に政治決着を行なった。

四肢末端優位の感覚障害がある場合は「医療手帳」を交付
  チッソから一時金260万円、国・県から医療費自己負担分全額、月額約2万円の療養手当などを支給

感覚障害以外で一定の神経症状がある場合は「保健手帳」を交付
  医療費自己負担分などを上限付きで支給
  国の責任を認めた2004年10月の関西訴訟最高裁判決後に受け付けを再開、
   医療費自己負担分は全額支給に改めた。

これに対し一部患者はこの解決策を拒否し 、政府の行政責任追及にこだわった。

2001年の高裁判決は、排水規制をしなかった国と県の過失を指摘、水俣病の認定基準も間違っているという判断を下した。
家族に認定患者がいるなど一定の条件を満たせば、感覚障害だけでも有機水銀中毒と認めた。
2004年10月、最高裁もこれを支持し、県と国の法的責任が確定した。

しかし国は、「司法と行政は別」とし、基準の見直しを拒否した。

最高裁の判決を受け、認定申請者が急増したが、認定委員会は「認定基準が変わらない以上、認定を再開することが難しい」とし 、認定を再開しなかった。過去10年間で認定患者は12人しか認められていない。

このため公明党が20064月に新救済案の提言をまとめ、それを基に与党PTを設置し、紆余曲折の結果、新救済策を決定した。

A水俣病救済法案

水俣病の未認定患者を救済するための特別措置法案が2009年7月8日、可決成立した。

2009/7/3 水俣病救済法案、衆院を通過、来週成立の見通し

これに基づき、鳩山内閣は2010年4月、水俣病の未認定患者を救済するための特別措置法の「救済措置の方針」を閣議決定した。
内容は下記参照。

2010/4/16 水俣病「救済措置の方針」を閣議決定

なお、水俣病特別措置法に基づく救済制度の申請期限について、細野豪志環境相は本年2月に、2012年7月末で申請を 打ち切ることを表明した。

 

2001年の高裁判決は、排水規制をしなかった国と県の過失を指摘、水俣病の認定基準も間違っているという判断を下した。
最高裁も2004年にこれを支持した。

しかし、救済法でも、政府は認定基準を見直さないまま、未認定患者の「救済措置」に とどまっていた。

2010年の大阪地裁による水俣病と認定するよう命じる判決に加え、今回、高裁段階でも認定を命じる判決が出たことで、国の水俣病対策は抜本的な見直しを迫られることになる。

またチッソは、水俣病被害者救済法に基づく救済策を最終解決とすることを前提に、2010年12月に「事業再編計画」の認可を取得し、2011年1月に事業会社のJNCを設立した。
今後、事業会社を
全面譲渡し、譲渡益を熊本県に納付して補償業務を委ね、清算する構想を進めている。

2011/1/12 チッソ、「事業再編計画」に基づく、新会社「JNC株式会社」を設立

しかし、今後認定患者が続出し、補償額が増大した場合、このシナリオも狂う可能性がある。


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